機動戦士ガンダム:UC0081 異惑星重力戦線 作:izuminnー3305
第1話:運命の出会い
ザビ家がジオンの政権を握って月日が経った宇宙世紀0076年。
サイド3のスペースコロニー群の一つ、ガーディアン・バンチのジオン士官学校に『シャア・アズナブル』として偽造入学した。
ある日、ジオン士官学校の校長を勤めているザビ家次男の『ドズル・ザビ』は緑のジオン男性高官服を着こなし、学長室のデスクに座り士官生達の紙媒体の成績データに目を通していた。
「ふむ。ガルマの成績は概ねよしか。まっあいつは俺と比べて体力がないからなぁ。しかし、このシャアと言う学生は凄いな。すべての科目はAプラス、ただ一つ問題があると言えば眼球機能に障害ありか。しかし、それを除けば問題ないなぁ・・・ん⁉」
ドズルはシャアの書類をテーブルに置いた瞬間に一人の士官学生のデータに目が入り、それを手に取った。
「名前はジョウジ・シン。6バンチの出身で人種は日本人で年齢は18歳。成績は・・・っ‼全ての科目でSプラスだと⁉信じられん!少数ではあるが、一科目でSを取る士官学生は居るが‼全てでSプラスの士官学生はいない!一体何者なんだ?」
驚くドズル。それも無理はない。なぜなら、この時のシャアでも自分の持つまだ理解出来ていない力をシンは既に理解していた。
昼時、黒髪でツーブロック・ヘアが特徴の日本人でジオン士官学生の『ジョウジ・シン』は日課で一人、体育館の和室で袴姿で胡坐をして精神統一を行っていた。
(前に比べると力の扱いに慣れてきたな。しかし、力を使う時に聞こえて来る歌は何だ?そして目を閉じて見えるキラキラは何だ?)
シンは不思議に思いながらも目を開け、精神統一を終え、立ち上がり和室を出た。
シンは前々からニュー・タイプの素質があり、そしてシャアよりも早くニュー・タイプの力を日本の精神統一で理解し扱っていた。
そんなシンは実力とニュー・タイプの力で全科目でシャアを抜いて学内トップなり、またドズルの目に留まった事で彼の人生は大きく動き出した。
■
二日後の夕暮れ。ジオン公国の首都である1バンチの公王庁の謁見室ではジオン総統であるザビ家の長男『ギレン・ザビ』、ジオン突撃軍の総指揮官であるザビ家の長女、『キシリア・ザビ』、そして公王でザビ家の当主『デギン・ソド・ザビ』に対して三つ編みにした美しい桃髪の美少女、『ソフィア・ルル・ザビ』は三人に向かって訴えていた。
「嫌です!いくらギレン兄様とキシリア姉様の言いつけでも‼私は士官学校には入りません!私は医者になります‼」
水色のジオン女性高官服を着こなすソフィアの訴える姿に黒いジオン男性高官服を着こなすギレンはソフィアに背を向けながらフッと笑う。
「ソフィアよ。お前はザビ家の次女なんだぞ。誇りと気品のあるザビ家の人間として、そして何より敬愛する父君を喜ばせたいと思わないか?」
そう言いながら笑顔で振り返るギレンの冷静で冷酷な眼差しにソフィアは恐れる。そして続けて紫のジオン女性高官服を着こなすキシリアも笑顔でソフィアに話し掛ける。
「ソフィア、貴女の気持ちは分かるわ。でもね、ザビ家の次女である以上は例え自らザビ家を出たとしても何も変わらないのよ。貴女は死ぬまでザビ家の人間なのよ」
キシリアの口から出た残酷な現実にソフィアはハッとし、たじろぐ。そして少し悲しげな表情でソフィアは紅色のジオン男性高官服を着こなし玉座に座るデギンに目配せをするが、デギンは何も言わなかった。
するとそこにドズルが不思議そうな表情で謁見室へと入って来た。
「どうしたんだ一体?外までソフィアの声が聞こえて来たぞ」
謁見室に入って来たドズルにソフィアは助けを求める様に駆け寄った。
「ドズル兄様!お願いです‼ギレン兄様とキシリア姉様、お父様を説得して下さい!」
少し困惑するドズルではあったが、ソフィアの事を優しく慰める。
「よしよしソフィア。少し落ち着きなさい。一体何があったのか話しなさい」
少し落ち着いたソフィアはドズルに事の経緯を詳しく話した。そして全てを聞いたドズルは両腕を組んで少し難しい表情をする。
「なるほどな。確かにお前の気持ちも分からなくもない」
そう言うとドズルにソフィアは希望を持てた様な明るい笑顔をする。
「それじゃ!・・・」
「だが士官学校に入っても悪くはないと思うぞ。ガルマは軍人を目指しているが、士官学校に入って卒業するば選択しも多いぞ。入学した学生全員が軍人になるわけじゃないし、将来の選択の為に入学する者も多い。だから・・・⁉」
ドズルは驚く。ようやく持てた希望を失い突き付けらる残酷な現実にソフィアは俯きながら悲しみに溢れた表情で大きな涙を流す。
「私が自分の力で医者になりたいのはただ!友達が欲しいのです‼それもザビの人間としてではなく!普通の人として‼でもザビ家の令嬢と言う肩書のせいで幼年学校では誰一人!真に友達として接してくれませんでした‼それどころか!大人達もザビ家と親しくなろうと私に近づく人達でした‼」
そしてソフィアは涙を流しながら怒りを感じる表情で顔を上げる。
「もうそんな想いは嫌なのです!どうして誰も私の気持ちを理解してくれないの‼ドズル兄様も!ギレン兄様も!キシリア姉様も!お父様も!皆!皆、大嫌いっ‼」
ソフィアはそう言ってドズルを避けて謁見室から走って出て行く。
「おっ!おい‼ソフィア‼」
ドズルは急いで振り返り止めようとしたが、ソフィアはドズルの制止を振り切り出て行ってしまった。
弱った表情をするドズルに対してギレンが話し掛けた。
「気にするなドズル。色々と我々に言われてソフィアは混乱しただけだ。すぐに落ち着く。それよりドズル、例の件でここに来たんじゃないのか?」
ギレンからの問い掛けにドズルはハッとなりギレンの方を向く。
「ああっ!そうだった。来る前に送った資料にあった通り、まだ学生の身ではあるが、彼をMS計画に参加させてもいいかな?」
ドズルがギレンに頼んだ事は特待生となったシンを
「お前が送って来た資料には目を通してある。いいだろ。そのジョウジ・シンを完成したばかりのザクⅠの専務パイロットとする。ただし機密は守れ」
「りょっ!了解であります!」
ドズルはビシッと姿勢を整え、ギレンに向かって敬礼をした。
■
一方、涙を流し一人で公王庁を飛び出したソフィアは公王庁から少し離れた浅い小川の野原で体育座りで俯き悲しみに暮れていた。
「どうして・・・どうして誰も、私の気持ちを理解してくれないの?・・・兵士なんて嫌よ。人を殺すなんて嫌!友達が死んで行くのはもっと嫌よ‼」
悲しみから来る気持ちで独り言を言うソフィア。すると、そこに何故か士官学校に居るはずのジオンの男子士官学生服を着こなしたシンがソフィアの後ろからゆっくりと現れる。
そして悲しむソフィアに笑顔で近づき、声を掛けた。
「どうしたの君?何か悲しい事でもあったのか?」
ソフィアの右隣に座ったシンからの問い掛けにソフィアは一瞬、驚いたが、今は悲しみの方が増さっていた為、ソフィアは自暴自棄の様な眼差しと表情でシンに向かって口を開いた。
「実は私の家族が・・・」
そう言ってソフィアはシンに向かって公王庁の謁見室で起こった事を話した。無論、自分がザビ家の人間である事を伏せた状態で。
全てを聞いた一言も発さなかったシンは笑顔でソフィアに寄り添った。
「そっか・・・辛かったね。でも大丈夫だよ。もし君がよければ、俺が君の友達になってあげるよ」
シンからの申し出にソフィアは少し驚く。
「いいの⁉もし私の家族を知ったら、どうせ貴方も私の肩書が目当てに・・・」
ソフィアの急な否定的な姿にシンは少し厳しい表情となって彼女に向かって言う。
「そんな事は関係ない!例え君がどんな一家の生まれでも‼それでも俺は普通に君と友達になりたいんだ!」
厳しくも純粋な気持ちから来るシンの言葉にソフィアはハッとなり、彼の眼差しを見て理解する。透き通る様な透明な泉の様に何処までも深く、だが暗くはない。明るく迷いのない意志を感じる目をしていた。
(ああ、この人の気持ちは、意志は本物なんだ。この人なら本当に私と友達になりたいんだ)
ソフィアが自身の心の中で語る。そして再び涙を流す。だが、それは悲しみから来た涙ではなく、嬉しさから来た涙であった。
そしてソフィアは涙を流しながら笑顔でシンに向かって頷く。
「ごめんなさい。でも・・・ありがとう。私の友達になってくれて」
そんな彼女の姿にシンは優しい笑顔で指で優しくソフィアの頬を流れる涙を拭き取った。
「いいんだよ。それじゃ改めて、俺の名前はシン、ジョウジ・シンだ」
「私の名前はソフィア、ソフィア・ルルって言うの。よろしくねジョウジ君」
「シンでいいよ。それと君もいらないよ。俺も君の事をソフィアって呼ぶけど、いいかな?」
「ええ、いいわよシン」
二人は笑顔でお互いの自己紹介をした後に笑顔で握手をするのであった。するとシンは左腕に着けているゼンマイ式の腕時計の時刻を見て、ハッとなる。
「おっと!そろそろ行かないと。用事があったんだ。メアドだけでも交換しよう」
そう言いてシンはスマホ型の携帯通信機を取り出すが、ソフィアは困惑する。ザビ家の令嬢であるがゆえに成人になるまでは携帯など持った事がないからである。
「ごっ!ごめんなさい‼携帯、持っていない。私、ジオンで有名な女学院の寮に住んでいるの。だから学院の決まりで生徒は卒業まで携帯持っちゃダメなの」
少しタジタジしながら説明するソフィアの姿にシンは納得する。
「ああっ!ローゼルシア国立女学院高等学校に在学しているのか。じゃあメアドじゃなくて文通にしよう」
そう言ってシアは胸元のポケットからメモ帳を取り出し、士官学校の住所と部屋番号を書き、それをソフィアに渡した。
「これが俺の住所だ」
「ありがとう。じゃ私もね」
笑顔でメモを受け取ったソフィアはシンからメモ帳を借りて自身の住所を書き、それをシンへと渡した。
そして二人は立ち上がるとお互いにお別れを言って、シンは駆け足で公王庁へと向かった。一方のソフィアは見えなくなるまでシンの背中を見つめた。そして感じ取る。純粋な友達が出来た喜びと同時に何か別な気持ちが沸き上がっていた。