「せいじょのおはなし」「エルミナの日記」『救世の聖女と奉仕の少女』   作:白夜(つくも よる)

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ハーメルン初投稿です。対戦よろしくお願いします。

誤字脱字等、報告していただけると大変助かります。

追記
1話の話全体を1章として、キリの良いところで分割しました。
これで読みやすくなったかな。



第1章「せいじょのはじまり」「3月4日」『』
「」「」1話『少女の日常』


 

 

むかしむかし、まだのそらのいろがもっとすんでいたころ──

 

 とあるくにに、ひとりのしょうじょがいました。

 

 しょうじょはぎんのかみをゆらし、ひとみにつきのようなひかりをやどしていました。

 けがをしたひとにてをのばせば、いたみがうすれ、こころがあたたかくなると、みんながいいました。

 

 ひとびとはそのしょうじょを「せいじょ」とよび、かみさまのつかいとしてたいせつにしました。

 

 あるひ、もりのはずれのほこらに、ちいさなようせいがふわりとあらわれました。

 

 ようせいはとてもちいさく、けれどおおきなめをして、しずかにしょうじょをみつめていました。

 

「あなたを、まもりにきたの」

 

 そういったそのこえは、かぜのようにやさしく、はのこすれるおとのようにはかなかったのです。

 

 せいじょはうなずき、ふたりはならんであるきはじめました。

 

 

絵本「せいじょのおはなし」より

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

  3月4日

 

 神様に言われて向かった祠で、私は彼女に出会った。

 言葉はなかったけれど、彼女は最初からすべてを知っていたように、そこにいた。

 

 サーミア。彼女の名だ。

 年のわりに背が低く、どこにでもいそうな田舎の少女だった。

 けれど、ただの少女には見えなかった。

 彼女の瞳は澄んでいて、何かを見通すようにまっすぐだったと思う。

 

 夢で聞いたと、あの子は言った。

 あなたに仕えるために、ここにいる、とも。

 

 疑ったわけじゃないけれど、それが演技でないことは、すぐにわかった。

 振り返ってみると、どうしてそう思ったのかは言葉にできない。

 とにかく、そう感じさせる何かがあったのだろう。

 

 私は、まだ「聖女」と呼ばれることに戸惑いしか感じていなかった。

 人々の目も重く、神聖魔法の力も制御しきれていなかった。

 なのに彼女は迷いなく、私の手を取り、共に歩こうとした。

 

 その小さな手のぬくもりと、屈託のない笑顔は不思議と私の心を落ち着かせた。

 祠の静けさの中で、外の世界のざわめきや将来へ不安が、すっと遠のいていくように思えた。

 だから私はこれからも、彼女を信じて共に歩いていきたい。

 彼女は私に足りないものを、彼女は補ってくれた。

 ならば今度は私が彼女の足りないものを補う番だろう。

 この日記もその第一歩として、私が生きている間、ずっと書き続けようと思う。

 

 

書簡「エルミナの日記」より

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 王都から数日の距離にある静かな農村。石造りの家々はどれも年季が入り、土の香りが風に乗って漂うこの地では、朝の鐘が鳴る前から人々は畑に出る。豊かとは言えないが、誰もが穏やかに季節を繰り返していた。

 

 サーミアの家もまた、例に漏れず小さな農家だ。父は陽が昇る前から畑に出て、母は鶏小屋の掃除をしながらパンを焼いていた。十歳のサーミアは、家の仕事がひと段落すると、村の年寄りのもとへ薬草茶を運んだり、小さな子どもたちの世話を買って出たりしていた。

 

「おばあちゃん、今日は腰、どう?」

 

 いつものように腰を曲げた老婆のもとを訪ねると、サーミアは軽く笑って声をかけた。所々間延びした声が聞き心地のよさを醸し出している。老婆は手を止め、柔らかな目で彼女を見る。

 

「今日は少し楽になったよ。サーミアのお茶のおかげかねえ」

 

「ふふ、それならよかった。もうすぐ春だし、また畑に行きたいでしょ?」

 

「そうだねえ。でも、無理はできんからね。ほら、サーミアこそ、自分の手もいたわりなさいよ」

 

「わたしは平気。動くの、好きだから」

 

 そう言って、サーミアは笑顔を浮かべた。誰に対しても変わらぬ優しさを見せる彼女に、村の大人たちは口には出さなかったが、内心では「どこか変わった子だ」と感じつつも、密かに敬意を抱いていた。

 

 

 

 この村の夜はとても暗いが、月の明かりと毎晩小さな村に一つだけある祠にともる灯りだけがこの村を照らしていた。そこで一日を終えた村人たちは、簡素な祈りを捧げてから眠りにつく。ザリオス神の名は、村の子供ですら知っている。火や水、作物の実りが神の恵みであると教えられ、その祠に日々感謝を捧げることが、自然と生活の一部となっていた。

 

 サーミアも例外ではなく、両親と共に松明の灯りを頼りに祠に向かったある日だった。その日は月が静かに輝く晩だった。祠の周りの草が風に揺れ、鈴のような音を立てている。灯明に手を合わせたサーミアは、ゆっくりと目を閉じて祈る。

 

(どうか、村のみんなが、明日も無事でありますように)

 

 それは、彼女が毎日欠かさず祈る言葉だった。

 

 しばらくして、空を見上げた。星々があまりにも澄んでいて、言葉を失いそうになる。彼女はふと、自分の中に芽生えた小さな不思議を思い出した。

 

 最近、時折胸がざわつくことがある。理由もなく、何か大きなものに見られているような感覚。声ではない、けれど確かに何かが語りかけてくるような……そんな曖昧な気配を、彼女は数日前から感じ始めていた。

 

(お父さん、お母さん……なんでもないって、言ってるけど……)

 

 ぽつりとつぶやいて、サーミアは頬に触れた風を受け止めた。それはまるで、どこか遠くから彼女を呼ぶ、誰かの手のようにやさしかった。




実は1章段階で半年かかってるので、完結が激遅になることは火を見るより明らかなのですが、1年か、2年以内に完結できるように頑張りたいです。

感想、評価どしどししていただけると作者が喜びます。どうぞよろしくお願いします。
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