ある者、セイシュンを掴むまで SEISHUNTALE! 作:ケガレモ
『サンズ、君にお願いしたいことがある』
相変わらずその声は重圧的で、でもどこか優しさを感じさせる。顔は、白い道化を思わせる特徴的な仮面に覆われ、その表情を伺うことはできない。
『なんだ? また実験体になんのはごめんだぜ』
『ハハッ、残念だがそうではないよ? ただ、大切なことだ』
何となく真剣な表情になった気がする、彼もオレも。そうせざるを得ない雰囲気で、勝手にそうなっていた。右手に持っていたフラスコをテーブルに置き、体の正面を彼に向き直し、息を詰め、次の言葉を待つ。
『君にもうすぐ兄弟と呼べる存在が誕生する。君一人で大切にしてやって欲しい。そしてもう一つ、私の後任の話だ。時間は⋯⋯まぁ、かかるだろうな。王も随分と悩んでおられる。だから、もし後任がここにきたら気遣ってやってくれ。それと──』
『待ってくれ! それじゃあまるで、アンタがここから消えるみたいに言うじゃないか!?』
話を続けようとする彼に、オレは声を荒げて制止を要求する。兄弟、後任、一体どういうことだ。これからも一緒に実験をしたり、ジョークを言い合ったりできなくなるということなのか。それなら絶対に嫌だ。アンタはオレを助けてくれた、たった一人の恩人なのだから。
『安心してくれ、サンズ。私も消えるとは言ってないさ、必ず帰ってくる。ただ、今回の実験は極低確率に私が消える恐れがある。だから万が一にだ』
『そんな実験しなくて良いだろ、死ぬ可能性がある? そんなの冗談じゃない』
『サンズ』
『──っ』
それ以上、言っても無駄だとそう気付いた。初めて見えた仮面の下には、確固たる『決意』を固めた瞳が、オレをまっすぐと射抜いていた。そこには有無を言わさぬ何かをその視線に、『サンズ』というたったの三文字に、ずっしりと込められていた。
『みんなに地上の景色を見せるんだ。そのためにもこの実験は絶対に必要なのさ。優秀な君なら分かるはずさ、サンズ。──私は準備を始めるよ』
ニコリと笑う彼、そのいつもの笑顔にオレは言葉を失った。そして、安堵してしまった。それは駄目だと頭では分かっているのに。
『⋯⋯クソったれ』
段々と遠くなる彼の足音に、オレは拳を握りしめた。握りしめることしかできなかったから。
*
「⋯⋯まだ、生きてる」
目覚めの最初に、言葉に漏れ出た感情は安堵。ちゃんと意識ははっきりしていて、感覚はこの身体に大したダメージがないという情報をルルに伝えていた。──本当に良かった。人命を救おうとした行動ではあったが、この身体はルルのモノではなく、『神楽ルル』のモノなのだ。
ルルはこの身体を元の持ち主に無傷で返すと誓った。だから、もし一生消えない傷ができていたり、あろうことか死んでしまえば、ルルはどうすることもできなくなっていた。
「────」
目線の先には、白く綺麗な天井が位置している。後頭部には枕の柔らかな感覚があって、首から下も毛布の重量感のあるモフモフとした感触が再度、睡眠へとルルを誘惑している。
とはいったものの、目は覚めきっていて、寝ろと言われたら「無理」と返すレベルなのだが。
「起きた?」
「──っ!? あっ、ああ」
突然声を掛けられ、誰か分からない相手にルルは反射的に返事を返す。ゆっくりと上体を起こして、ルルは周りを見渡す。清潔感のある部屋には、医療関係の道具やいくつかベットが置かれている。どうやら気絶したルルは、保健室かそれに近い役割を果たす部屋に運ばれ、ベットの上で安置されていたらしい。
そしてルルの覚醒に気付き、声をかけたのは伸ばした白髪に紫紺の瞳が印象的な少女──ヒナであったと見て分かった。すぐ傍にある椅子に座る彼女に、ルルは質問する。
「まず、最初に聞くんだけど⋯⋯ヒナはここでオイラが起きるまで待っててくれたってことで合ってる?」
「ええ、そうね。その認識で合ってる」
「⋯⋯そっか。ありがとな、ヒナ」
目を伏せて、ルルは感謝を口にする。きっと彼女がここにルルを運んできてくれたのだろう。例え、この予想が間違っていたとしても、ヒナはルルが起きるまで側にいてくれていた。それだけで感謝の念は尽きない。
「いいえ、感謝を述べるのはこっちよ。もしあなたがいなかったら、もっと被害が増えていたと思うし⋯⋯それに、あの化け物の爆発からみんなを助けたのはあなたなんでしょ? どんな方法を使ったのかまでは分からなかったけどね」
すると、ヒナの表情に確かな微笑みが生まれた。どうやら、彼女はルルが『重力魔法』を使ったのが分かっていたらしい。一応バレないようにしていたつもりだったのだが、流石は風紀委員長と言うべきなのか、その洞察力ある観察眼は一級品みたいだ。
まぁ、そうは言ったが風紀委員の一人にも『重力魔法』は使ってるし、ルルが突然気絶したことや様々な状況を鑑みれば、妥当な推測ではあるのだが。
「あの化け物の対処、風紀委員会を代表して貴方に感謝する」
押し黙るルルに、ヒナは頭を深々と下げた。それに驚いて目を見張ったルルは、焦らず呼吸を整えて言葉を紡ぐ。
「頭を上げてくれ。オイラ、別に自分がしたいことをしたまでだからさ」
ヒナの声から本当に感謝しているのだと感じ取れる。だからこそ、なんというかむず痒い気持ちが湧いてくる。面と向かってこう、感謝されるのは久しぶりでどこか照れ臭いのだ。
「それはそうと、ヒナの方は大丈夫なのか?」
「何のこと?」
照れ臭さを言葉の裏に隠すように、ルルはヒナに心配の言葉を掛ける。頭を上げてそう疑問に首を傾けたヒナに、ルルは何て言うか考えるように「あー」と喉を震わし、
「いや、何つーかな。あんな事が起きて後始末とか、色々大変なんじゃないかなって」
「ああ、それに関しては安心して欲しい。もうそろそろあの残骸の処理も終わるし、すぐに復旧にむけて動きが入るから」
「おお、それは凄いな」
縦横七メートルほどもあった、あの得体の知れないパンケーキみたいな化け物。その命の灯火が終える瞬間、謎の大爆発を起こし、周囲一帯に紫色の体液と肉をグチャグチャにばら撒いたというのが、ルルが気絶する前の最後の記憶だ。
時計を見ると午後六時、ルルがミレニアムを出たのが正午だったので、今日あった出来事を諸々計算すると、寝ていた時間は恐らく三、四時間程度だろうか。その事実に、もはや感嘆するしかない。なぜならたった数時間にも拘らず、あの規模の残骸の処理が終了間際だと言うのだから。
「まぁ、あそこまでのことは珍しいけど、ゲヘナでは日常茶飯事だから」
「⋯⋯それ、マジで言ってるの?」
感嘆して拍手をしていたルルだが、そのヒナの衝撃発言に手の動きは驚愕して停止した。彼女の落ち着いた口調と、真面目そうな顔から嘘でないとは思う。だが、その事実があまりにも衝撃過ぎて思わず口は走っていた。
気絶する前の数時間でスケバンに絡まれ、目の前で店を爆破され、最後と来たらパンケーキの化け物に殺されかける。──治安が悪いどころの話ではない。これから先、ルルが自らゲヘナ学園に行こうと思うことはまずないだろう。
「本当よ。それとあなたの身体についてだけど、特に問題はないみたい。もう退院して大丈夫だって、救急医学部からそう言伝を貰ってる」
「そっか。じゃ、オイラは腹が減ってるからどこかで済ませてくるとするよ」
神秘を回復させるのに必要なのは、充分な休養と食事。あと、単純に腹が減っているのもまた事実だ。朝から何も食わず、その上あんなに動いたんだ。何か食べたいと思うのは生物として必然で、当然のことだ。
半身の姿勢からベットを押し、起き上がろうとするルルを手を前に出して制し、ヒナは「その前に」と切り出す。
「先生が外で待っているから、先に行ってあげて。話したいことがあるみたいだから」
「先生ってあの、風紀委員を指示してた大人のことか?」
「そうよ、じゃあ後はよろしく。あなたに聞きたいことはまだ色々あるけど⋯⋯今日は無理ね。私はアコを待たせてるから行くわね」
そう端的に告げると、ヒナは病室から出ていった。その様子を遠目に眺めてから、ルルはさっき聞こえた言葉に思考を働かせる。
「先生、か⋯⋯」
この世界で初めて見た人間の男性。黒髪黒目という、この世界では珍しい配色が彼の特徴と言え、漂う優しい雰囲気がその柔らかな表情と、声から感じ取れる。だが、どこか焦っているようにも見える人だった。
「ま、会ってみないことには、分かるもんも分からないよな」
ベットの下に綺麗に並べられていた靴を履き直す。ルルの愛用する靴は体重をかけるだけでスッと履ける便利な代物で「履く」という動作の手間という手間を排除したそれは、面倒臭がりなルルにとって神アイテムと言える。
「よし」
*
「やっほ、こんにちは。名前は、ルルで間違いないかな?」
ルルが寝ていた部屋──保健室の前に、その大人は鎮座していた。長い時間待たせていたのだろうと、申し訳ない気持ちもあるが、出待ちドッキリは心臓に悪いのでやめて欲しいという気持ちの方が大きかった。
というか、何で部屋の中で待たなかったのか謎でしかないが、聞こうとは思えない。なぜだが、下らない理由な気がしたから。
「そうだよ。オイラは神楽ルル、気軽にルルって呼んでくれ」
自己紹介を返し、ルルは改めて目の前の大人の姿を見てみる。スマートに白を基調としたスーツを着こなし、右手には大切そうにタブレットを抱え込んでいる。整った相好からは若さを感じ、不真面目さと誠実さが同席してるような不思議な人物だ。
「オッケー。了解だよ、ルル」
「へぇ、初対面からいきなり呼び捨てするなんて⋯⋯アンタ、見掛けによらず大胆なんだな」
「君が今、気軽にルルって呼んでくれって言ったんだよ!?」
ルルの物言いに、当然の突っ込みをいれる彼。しかし、ルルはその彼の仰天する反応を見て、気にする素振りもなく「うん、そうだな」と同意し、
「でも、許可されていたとはいえ、初対面でいきなり呼び捨てにするってのは大胆に変わりない。──そうは思わない?」
「まぁ、そうかも⋯⋯?」
ルルのペースに呑まれ、納得しかける目の前の大人。その首を傾けた初対面の彼の様子に、ルルは本来なら一番最初に確認すべきことを思い出した。
「あっ、そうだ。まだアンタの名前を確認してなかったな、先生で合ってるの?」
「⋯⋯あっうん、私が先生だよ。それでさ、取り敢えず場所を変えない? ここで話すようなことじゃなくてさ」
直前までルルの理論に納得して良いのか悩んでいたのか、少し反応が遅れたものの、目の前の大人──先生は直ぐに笑顔を浮かべた。その彼の提案に、ルルは少しだけ心配そうに眉を寄せる。
「大丈夫なのか? ここを放置して」
「そこは安心して欲しい。もうすぐ有能な私の代役が来るから」
「そっか」
ニコっと表情を明るくして、先生から言葉が返る。それが少し前に見たアコの態度と真逆だったもので、思わずルルはちょっぴり感動してしまう。
「あっ、そうだ。お昼ごはん食べてなかったらさ、一緒に食べ行かない? そこで話そうよ、食事代は私が受け持つから」
「おお、良いねぇ。是非ともお願いするよ」
保健室に居たルルの話が聞こえていたのか、先生は自然な感じに食事へと誘う。先生が食事代を受け持ってくれるのは本当に助かる。現在所持金五百円のルルにとって奢って貰えることが、どれほどありがたいことなのか、言うまでもないことだ。
「じゃあ、ついてきて」
その一言を告げ、先生はその長い足で歩みを始める。
「オッケー、先生。⋯⋯おや?」
最高な気分となっていたルルは、先生の後を追いかけようとして、道路の側にある排水溝に今にも落ちそうな『何か』が目に付いた。
「これは⋯⋯」
近付き、その場所に視線を落とす。そこにあったは、拳半分くらいのサイズの青い石だった。菱形のような形で結晶にも見えるそれは、まるで宝石が如く鮮やかな輝きを放っている。それは思わず一瞬、ルルが見惚れてしまうほどに綺麗であった。
「どうしたのルル? 何か気になることでもあった?」
しゃがみ込んで一点を見つめるルルに、先生は不思議そうな顔をする。ルルはその綺麗な宝石をポケットにしまい、立ち上がる。
「まぁ、そんな感じだな。──早く行こうぜ、腹減ってんだ」
「そう? 分かった」
促される先生は、ルルの様子を怪訝に思いつつも素直に了承した。再び進み出す先生の背を見て、ルルはゆっくりと次の一歩を踏み出した。
*
吹き抜ける風が心地良い。視線はずっと変えていないはずなのに、景色は倍速の映像を見ているかのように一瞬で切り替わっていくのが面白い。これが、今まさに乗っている『車』という乗り物への感想だ。
車という物は素晴らしい。簡単な操作さえ覚えてしまえば誰だって扱うことができる。この広い世界で、高速移動できる乗り物の重要性は言わずもがな。交通の利便化というのは、革命に値するものだ。
運転主でないときに限るが、座っているだけで気付いたら目的地に着くってのは楽でいい。適度の車体の揺れが睡眠欲を刺激するのもまた良い。勿論、現在この車両を運転しているのは先生だ。
「そういや、アンタは先生、つまり教師なんだろ? なら、敬語で話した方が良いか?」
学園に入った今のルルの立場は『生徒』であるため、良く分からないが『先生』とかいう立場にいて、まだ若く見えるが、年上であろう大人に敬語を使うのは自然だ。
「やめて」
「お、おお⋯⋯随分ガチトーンだな」
笑みが一瞬にして消失し、真顔で告げる先生にルルはほぼ素でビクッとしてしまう。しかし、それもまた一瞬のことだ。直ぐにその動揺は、ルルのすまし顔の下に隠される。
「最初から敬語だったならまだしも、タメ口から敬語になるのは距離感じちゃって、なんかこう悲しくなっちゃうから」
「⋯⋯なら、今度ともタメ口で話させて貰うぜ」
──この先生、思ったより愉快な性格してるな。
彼に敬語を使用してはいけない訳が何だか子供っぽく、ルルは内心でそう呟く。勿論、ルルの中では悪い意味ではない。むしろ逆だ。個人的にはこの大人の性格はこれまでの経験上、関わっていて中々に面白い部類であるため、ルルの彼に対する興味と評価はこの際に結構上がっている。
「うん、お願い。あと私も質問良いかな?」
「良いぜ、オイラに答えられることなら何でも答えてやるよ」
「オッケー、じゃあ質問ね。君って瞬間移動できるよね?」
「え? 何言ってんだ、先生。瞬間移動なんてできる訳ない」
こちらも負けじと、ルルは先生の質問に真顔で答える。何に負けるのかは分からないが、負けるのは良くない。
「え!? いや、瞬動法〜とか言ってたけど、あれは絶対瞬間移動してたって!?」
荒ぶる口調で抗議する先生に、ルルは知らん顔だ。能力を隠す理由は前述の通りだが、能力を明かすなら完璧なタイミングで能力を使い、自然な流れで真実を間接的に伝えるのがルルの望む展開だ。だからこそ、ここは誤魔化す選択肢しかない。
「オイラは最短距離を最適な方法で高速移動した、それが瞬間移動してるように見えたってことは、そんだけオイラの技術が凄かったってだけだ」
「はああぁぁぁ。⋯⋯うん、まぁ良いよ。時期に分かることだろうし」
変なことを言うなよといったルルの表情に、先生はこれでもかというほどのクソデカ溜め息を吐き散らし、仕方なく運転に集中力を注ぎ始めた。それは良いが、先生の『時期に分かることだろうし』という発言は気になるところだ。
「着いたよ」
「⋯⋯こりゃまた、面白い場所だな」
それから数分後、車両を停止して先生は車から降りる。それを見て、ルルもシートベルトを外し助手席から立ち、新天地へと足をつけた。それから着いた場所を見渡しながら、ルルはそう簡単に感想を漏らした。
「ここは、アビドス自治区。元々は賑わってた場所だったんだけど、今はこの通り人も減って廃れて来てる」
舗装された地面に、たくさんの建物が威圧感を放ちながら立ち並び、奥には大きい商店街やビルの側面に取り付けられた大きなスクリーンなどが見える。しかし、綺麗に見える建造物にも損傷があるもの、植物が張っているものもちらほら。
文明と科学の発展を感じる『the都会』って雰囲気は感じつつも、先生の言う通り人通りは少なく、代わりに頬をかすめて通りゆくのは鬱陶しい砂を含んだ風のみ。ゴーストタウンとまではギリ行かないが、その様子はどこか不気味さすら感じる。
「アビドスだっけ。見た感じ、前は結構発展してたみたいだけど、どうして今の状況になったんだ?」
「昔のアビドスは今で言う、キヴォトス三大学園にも並ぶ大規模な学園だったんだけど⋯⋯ある日を境に突然砂嵐が勃発するようになってね、そのせいでアビドスはとてつもない被害を受けた。それでも復興させようと残った人達は色々手を尽くしているけど⋯⋯今はまだ難しいみたいだね」
「⋯⋯色々あるんだな」
どこか悲しげに目を伏せた先生に、ルルは無常感に包まれる。どんな栄光もいつかは衰えてしまう──。盛者必衰の理を忘れている訳ではなかったが、実際にこの目で見て、それを再確認させられたように感じた。
「それから、はい! こちらが濃厚と⋯⋯ンッんンッ゙!! ここがアビドスの隠れた名店! 柴石ラーメンだよ」
「⋯⋯もう一度言ってくれないか?」
わざとらし過ぎる先生の凄まじい咳払いに、ルルは疑念に眉間に
「え? 何も言ってないよ。多分幻聴じゃない?」
「⋯⋯そうか、分かったよ」
とぼける先生にルルは直ぐに追及を諦めて──いや
そんな彼が両手を向けた先に、その店は聳え立っていた。ビル街に囲まれたその場所にひっそりと、そして目立つように
「大将、今やってますか?」
暖簾を上げ、上半分が硝子張りの木製の引き戸を引いて、先生は中にいるであろう人物にそう声を掛ける。
「おお、先生か。らっしゃい、今日は一人か?」
扉の硝子からルルは中を覗き、そこで見えたのは犬の獣人だった。暖色で統一された店内には、無駄な調度品などは置かれておらず、庶民的な良さがある。その広い店内のカウンターの奥で、彼はテキパキと作業をしている。
その作業というのは麺の湯切りのことだ。その動作は、初心者でも分かるほどに洗練されていて、まだ店内に入っていないというのに、その香ばしい匂いはルルの腹の虫を目覚めさせるには充分であった。
「いえ、今日はもう一人いるんですよ」
「どうもこんにちは。オイラは神楽ルル、気軽にルルって呼んでくれ」
店主に返事して店に入った先生。彼に続いて店に入ったルルは、片目を閉じて気さくに挨拶する。そのルルの口上に店主──大将と先生に呼ばれた獣人は片眉を上げ、人好きの良い笑みを浮かべる。
「おっ、そうかい? それなら、ルルちゃんと呼ぶことにするよ。──これはまた、良い客を呼んでくれたな、先生?」
「ははは、そうですね。ルルは良い子で、可愛いですし」
「まだ会って数回しか話してないのに、よくそこまではっきりと言えるな。⋯⋯まぁ、オイラが──神楽ルルが絶世の美少女なのは間違いないから、可愛いってのは当然の評価だけどな」
ルルを躊躇いなく褒めた先生に、ルルもまた恥ずかしげもなく自身の容姿に絶対的な自信を持って高評価する。『神楽ルル』は誰が何と言おうと美少女のため『可愛い』という評価は肯定する。が、『良い子』というルルの性格──つまり中身についての評価はとてもそうは思えないため、発言内容から除外した。
「何で言い直してるのか分からないけど⋯⋯確かに君はバチクソに可愛いのは確かだね」
「いやぁ、そんな褒められたらオイラ照れちゃう。それはそうと、可愛いの副詞、バチクソで合ってんのか?」
「良いんじゃない? 何となく意味は伝わるし」
「まぁ⋯⋯確かに。今の御時世、副詞も多様性を尊重すべきだしな」
「そうそう。言葉だって自由にファッションする権利くらいあるよね」
「⋯⋯取り敢えず、席に座ったらどうなんだ?」
途中から会話から除け者になっていた大将は、そう口を出す。彼の提案に「確かにそうですね」と先生はカウンター席に座り、ルルも隣の席に座った。それから大将は、先生とルルの座ったテーブルに水が入ったコップと使い捨てのおしぼりをそれぞれ置いてくれた。
この世界の飲食店には本当に驚いてばかりである。こうして出されるお冷やおしぼりなどの細かいサービス精神もそうだが、料理の味や品質なども最高であるため、この世界に来てからは食べることが楽しくて仕方ない。
だから、手に取ったメニュー表に書かれているトッピングなども全て希望したいところなのだが、奢ってもらう以上できるだけ安いものを頼むのが筋というモノだ。そのため、オススメの580円の柴石ラーメンをノートッピングで頼む他、選択肢はなかった。
「さて、話ってのは一体何だ?」
水を一口飲んでから、向き直ったルルは彼にそう問い掛ける。
「じゃあ、いきなりぶっこむけど良い?」
「良いよ。単刀直入って、言いたいことが良く伝わるし、何より時間を有効活用できるしな」
「⋯⋯了解」
ルルの許可を受け取った先生は目を伏せ、それからゆっくりと深呼吸し、真剣な面持ちでルルをその黒瞳の中央に捉え、
「君、神楽ルルは神楽ロアを害した可能性の高い人物であるため、ヴァルキューレで殺害容疑が掛けられているよ」
そう、告げたのだった。
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『ある者、セイシュンを掴むまで』サンズ能力&技設定。
NO.1 ガスターブラスター(通称ブラスター、ガスブラ)
高威力!低コスト!そして初見殺し!
神秘(体力)を消費することで、認知できる範囲内で任意の三次元的空間内で出現させることができる。ドラゴンの頭蓋骨のような見た目で、口のあたりから極太のレーザー状の光を放ち、当たればダメージとなる。
威力はだいたい大型対空戦車砲弾一発分程度(弱く調整することもできる)。パンケーキの化け物との戦いの実験により神秘に限り、通常の2倍ほどのエネルギーを込めることができることが判明。それによって上昇する火力は凄まじいものになる。
攻撃を行ったブラスターは塵となり消える。また任意のタイミングで消すこともできる。(その場合撃たなかった分の神秘は返ってくる)
一言話。撃たれる瞬間は悪魔に睨まれたような恐怖を味わうらしい。(匿名─スケバン最高さん。蛸足パンケーキラブさん。以上二名のインタビュー曰く)
NO,2 ???
NO,3 ショートカット(通称近道)
誰もが夢見る瞬間移動!
神秘(体力)を消費することで任意の場所に好きな物体を瞬間移動させることができる。移動させる距離、移動させるものの質量によって消費されるエネルギーの量は変化する。
また瞬間移動させるさいは、ある程度向きなどをかえることができ、本編では縄を結ぶ際に手を加えられた。瞬間移動させられる範囲は一度行ったことがある場所や、目視できる範囲に限る。
一言話。使うと、くっそ疲れる。
NO,4 重力魔法
人をピンポン玉にできる魔法!
神秘(体力)を消費することで、物体にかかっている重力の向きや量を操作できる。物体の質量、変化させる量によって消費されるエネルギーの量は変化する。重力魔法を受けている対象は体に沿うように青いオーラが纏わる。視覚的認知できていない物体を操作することはできない。
一言話。重力を減らして、月と同じくらいにすればムーンウォーカーごっことかできるかもな。
まぁ、こう説明してはいますが、実際のところ重力ってのは、空間の歪みによって物体が引き寄せられるように見える現象のことを指すので、重力魔法は「物体にかかる重力を操作する」って言うよりかは、「空間の歪み具合をある程度自由に調整する」って感じです。
NO,5 ???
NO,6 ???
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ルルさんとホシノさん、戦わせたいって人〜
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ワンッ!(イエス)
-
バウッ!(ノー)