ある者、セイシュンを掴むまで SEISHUNTALE!   作:ケガレモ

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デカグラマトン3章に、臨戦アリス、ケイ実装!!

最高ですねっ!


『君に最初の選択肢を』

 

──モンスターと共に時間を過ごしてきたオレにとって、人間という種族を知る機会は特段多いものではなかった。

 

歴史上に刻まれた事実として、人間とモンスターという二つの種族は戦争を起こし、それに敗れたモンスターは地下に閉じ込められたということくらいだ。

オレは実際にその戦争を見ていないが、その傷痕は地下にまで深く刻まれ、その規模の大きさを物語っている。

 

昔、地下には綺麗な城下町が広がっていた。人とモンスターが手を取り合い創り上げられ、そしてそれは、人の手によって廃墟へと姿を変えた。旧友と一緒にそこを散策した過去、そんな話を聞いたのを覚えている。

 

オレは正直、人間はあまり好きではない。自分たちを地下へと閉じ込めた張本人なのだから、そう思うのは特に不思議なことではないだろう。

だが、この世界に来てロアにあってから、オレは初めて人間を知りたいと思った。たった一週間と短い時間ではあったが、彼女はオレの中の人間の虚像を何度も壊して、そして新しく実像をくれた。

 

──人間は、モンスターと同じように優しさに溢れた生き物だと。

 

今のオレに神楽ルルの記憶があるのも、そう思った理由の一つなのかもしれない。それでもこの気持ちに嘘はないと、オレは心から言える。

 

──オレは、たった一人の妹としてロアを愛していた、と。

 

だからこそ、オレは人間のことを知っていかなければならない。彼女を殺した奴を探し出すために。そして──、

 

 

*

 

 

先生がルルの前に取り出したのは何枚かに重なった薄い書類の束。そこにはびっしりと神楽ロアについての記録や調査の内容などが記入されていた。

 

「まぁ、理解はできるよな」

 

──オレがロアを殺した? そんな訳、あってたまるか。

 

だが、現実とは無情にもそういうモノだ。人が人足り得るのはその不完全さ。己の考えを正しいと思うことは出来ても、それが必ずしも真実だとはどこまでいっても分かることはない。

 

だからこそ人は疑い、そして間違いを犯すのだろうか。どんなに違うと否定しても、現実はそれを肯定する。ここでルルがどんなに違うと抗議したとしても、意味など欠片も存在し得ない。

だから今のルルができることは、この怒りにも似た激情を唇に血が滲むほどに噛みしめて、現実を見ることだけなのだ。

 

──そして問題は、

 

「⋯⋯神楽ルルによる神楽ロアを害したという物的証拠は不十分であるが、当時刻、もっともその可能性の高い人物と判断されたため、調査の一環とし、公安局から二名ほど監視をつけることを可決とする、か」

 

これは大分面倒なことになった。監視をつけられてしまえば、今みたいに自由に行動することが難しくなるだろう。

そうなれば、明らかに詰み路線まっしぐらだ。己の無実を証明するために必要なことは、やはり行動だ。それが難しくなるということが、どれほど致命的なことなのか言うまでもない。

 

「⋯⋯色々思う気持ちはあるだろうけど、今は抑えてくれると嬉しい」

 

良いとは言えない表情を浮かべるルルを見かけてか、先生は気遣うように優しい言葉を贈る。それを見て、ルルは落ち着きを取り戻していく。いや、少し違うか。そんな善人な彼に迷惑をかけたくなくて、そうせざるを得なかったのだろう。

 

「悪いね。オイラもまだまだ未熟みたいだ」

 

「いや、君はすごいよ。もし私が君と同じ立場だったら君みたいに行動を起こすことができなかったかも知れないし」

 

咳払いをした後、先生はまた表情を堅く誠実なものへと変える。

 

「書類に書いてある通り、君はヴァルキューレから厳格な監視を受けることになる」

 

──ヴァルキューレ警察学校。

 

通称ヴァルキューレは、名の通りここキヴォトスの全域で治安維持を担い、警察官養成を目的とした機関だ。ロアがこの世から消えた日、ルルはそこに通報した。勿論、彼女達が到着してから色んなことを聞かれたが、ルルが話せることはあまり無かった。

 

その辺の記憶がないから仕方ないと言えばそうなのだが、それを知らないヴァルキューレはルルが何か隠していると思ったのだろう。それが怪しまれた発端の一つなのかも知れない。

 

「一個疑問があんだが⋯⋯こんな重要機密みたいな書類をオイラなんかに見せて大丈夫なのか? だって、オイラはその監視対象だし」

 

普通、監視をつけるなんて事があれば、対象である人物には秘密裏に行うのが鉄則だ。なぜなら、監視が付いていると知っていながら怪しまれる行動を取る馬鹿がいるのかという話だからだ。

ルルの問い掛けに、先生は「そうだね」と頷き、

 

「ヴァルキューレの方から許可を取ったのもあるけど、私がお願いして監視の件はなくなったからね」

 

「は?」

 

理解が追い付かず、一拍遅れて無理解が音に溢れる。これに関しては、本当に「は?」だ。一つ前の文と、今の文がまるで繋がっていない。ケチャップの話をしていたら、突然数学の話を振られたみたいな気持ちが今のルルを埋め尽くしている。

 

己の耳の異常を本気で疑うものの、記憶の中にそれを告げた先生がはっきりと残っているので「そうなのか」と不承不承に納得するしかない。

とはいえ、予想通りと言えばそうだ。監視をつけないという話で纏まっているのなら書類を見せても問題ない。先生は恐らくルルが今、どのような状況にいるのか分かるように書類を見せたのだろう。

 

「これは私の身勝手な考えではあるけどさ、年端も行かない女子高生から青春を奪うのはどうにも度し難く思えてさ」

 

「え? いやいや、そんな先生みたいなこと急に言われてもな⋯⋯」

 

神妙な表情で言う先生に、ルルはほぼ素の口調で突っ込んでしまう。ひとまず深呼吸して、冷静さを取り戻す。それをした理由は、落ち着いて言葉の意味を吟味するためと、このまま彼のペースに乗せられるのは何か癪だったからだ。

 

「うーん。私、これでも先生なんだけどなぁ⋯⋯」

 

と、大人は小さく呟いて、再び話を続ける。

 

「まぁ、とはいえ、流石に無条件って訳じゃなくてさ。私の方から一つ条件を提案して、それであっちは了承してくれたんだよ」

 

「条件って?」

 

そう短く問い返すと、先生は「うん」と小さく頷く。

 

「その条件はズバリ、君が私の助手になることだよ」

 

腕を突き出し、ルルにサムズアップする先生。そんな彼を一旦スルーしながら、ルルは聞こえた言葉を噛み砕き、咀嚼(そしゃく)し、呑み込み、そしてやっぱり意味が分からず、微妙な表情を浮かべた。

 

「助手って⋯⋯一体どういうことだ? 全く以て理解できないが、助手を探しているのならオイラより適任な奴なんて、いくらでもいると思うぜ?」

 

「例えいたとして、そういう人達は大体なんらかの組織の管理者だったり、支配者だったりで私の助手なんかしている暇がないんだよ。君が知っている人ならユウカとか⋯⋯あとはヒナとかが例に挙がるのかな。──まぁ、それは今回の件には関係ないんだけど」

 

それで、と先生は息を継ぎ、

 

「なぜ助手なのか、だけどね。君が助手になることで必然的に私と過ごす時間が増える。つまる話、私がヴァルキューレの代わりに監視人の役割を果たすことになるって訳。でも、私はずっと君と一緒という訳じゃないから、仕事がないときはいつも通り君は日常を過ごせるんだ」

 

「理屈は通ってる訳だな。──オイラから一つ質問だ、助手にならないと言ったらどうなるんだ?」

 

途中で入った含みのある言葉に気になりはするが、訊くほどではないとルルは忘れる事にして、もう一つの気になる点について問う。それに、先生は書類を見てからゆっくりと口を開いた。

 

「んー、そうだね。その場合、書類に書いてある通り、君に監視がつくことになるね。まぁ、それとはまた別に、君には色々と不都合なことが起きるだろうね」

 

助手にならなければ監視がつけられ、他にも不都合がある。もはや、ルルに残った選択肢は一つしかないと言えるだろう。

 

「⋯⋯助手になる、か」

 

もっとゆったりとした職に就こうと考えていたルルは、げんなりする。盛大に溜め息でも吐きたい気分だが、現実を見なければ前には進めないのだから、仕方ない。

選択に悩むルルに、先生は苦笑を小さく顔に刻む。

 

「まぁ、悩む気持ちは十分分かるけどね。でも、これは君にとってチャンスでもあるんだ。私の助手という立場で、君は真犯人を探せばいい。その間なら何か手出しされることはないだろうし」

 

「うーむ。これはオイラにとって願ってもないほどに好都合な条件ではあるんだよな」

 

俯瞰的に見ずとも、この状況は絶好の機会であることは確かだ。助手になるとさえ言えば、それだけでルルの未来はひとまず安泰となる訳なのだから。──ただ、

 

「でもよ、どうしてアンタはそこまでオイラのために考えてくれたんだ?」

 

先生──彼がどうしてそこまでルルのことを想い、考え、行動してくれた理由が分からなかった。彼がルルと初めて会ったのは、ほんのついさっきのことで、それまでに微塵も接点や関係などなく、ルルは彼にとっての赤の他人とすら言えたのに。

 

──だから、ルルは少し恐怖を感じていた。

 

人が自ら行動するとき、そこにはいつも何かしらの理由──つまるところの動機は必ず存在する。その動機というのは大抵、己の利益を守り、更に多くを求めるときや、または逆に不利益を被らないようにするときなどだ。偽善も、自己満足という利益を得ようしたという動機と言えるだろう。

 

だから、彼がルルを助けようとしたその動機を知りたかった。赤の他人と言えるルルを助けようとしたその行為に、どんな利益があるのかと、不利益を被らないために必要だった何があるのかと──。

 

どんな意図があっての行為なのか、自分のこれからの未来すら決めかねないほど重大な問題──そこに彼は密接に関与した行動をしているのに、その動機が不明であることは、分からないということは、本当に怖い。──だが、

 

「え? だって、私は先生だからね。先生は困っている生徒を見かけたら迷いなく手を差し伸べる。当然でしょ?」

 

そのルルの恐怖心の宿る疑念。それに応えた先生の言葉に、嘘偽りの類は一切なく、ただただそこには己の生徒を強く想う気持ちと、明確な意思と、使命というべきそれが、そこには見えた。

 

「⋯⋯そうか、分かったぜ」

 

「それは、どういう意味?」

 

本当に分かっていないという様子の先生。そんな彼を前に、ルルは吐息を深く溢し、それから息を大きく吸い込み、

 

「なってやるってことだよ、アンタの助手にさ」

 

堂々と、宣言した。正直、まだ決めかねているところはある。彼の言葉に嘘はなく、彼の生徒を想う気持ちも本当だと、特別な目を持つルルには間違いないと分かる。 

だが、彼という人物を判断するための材料は、それだけでは全く足りず、信じていいかは分からない。

 

だが、だからこそルルは、彼の助手になってやろうと思った。判断材料が足りないのなら、見つけ出せば良い。彼の傍で仕える助手という仕事は、それにまさしくうってつけな職だ。

 

それに、自分で言ったじゃないか、彼──先生の生徒を想う気持ちに、ルルを助けようとしたその動機に、嘘はないと。その想いに応えず、(ないがし)ろにすることは、ルルの忌み嫌う『怠惰』な行いだ。

 

「や、やぁっったぁぁぁ!!──これで仕事が減る!!」

 

一拍遅れて、店内に響き渡る先生の歓喜の声。最後の一文が引っ掛かるが⋯⋯気にしないことにしよう。気にしては駄目だ。そんな気がする。

 

「とりあいず言ったは良いが、オイラは先生のことがまるで分からないんだ。少しでいいから説明して欲しい」

 

それを聞いた先生は「あーなるほど、確かにね」と納得したように告げ、席を立ちポケットから腕章を取り出し、

 

「改めて自己紹介と行こうか。私は先生、連邦生徒会、その直下の組織である連邦捜査部『シャーレ』の顧問だよ」

 

先生の右腕へと巻かれた。青に流星の白線、そして中央に白い何かの建造物のようなシンボルマークがそこに描かれている。多分、この腕章が彼がその一員であることを証明しているのだろう。

 

「連邦⋯⋯察するに、キヴォトスの行政を担っている機関って感じか」

 

「そそ。正しくは全行政だけどね。私の仕事はキヴォトスの至る所にある学園の問題を解決すること。故に、私は自由に学園に関与していい権限を持たされている。監視の件もこの権限を利用した感じかな」

 

先生の話が終わると同時に、ルルは一つの可能性に気付いた。

──いや、気付いてしまった。

 

「あー、何となく分かってきたんだけどさ。もしかして、お前さんってめっちゃすごい人だったりする?」

 

「うん、めっちゃすごい人だったりする」

 

見つめ合うルルと先生。そのしばし守られた沈黙の後、最初に口を開いたのはルルであった。

 

「⋯⋯やはり、敬語で話した方がよろしいでしょうか?」

 

「やめて!? 大丈夫だからっ!」

 

これは、仕方がないことだった。目上の人に敬語を使うことは、ある意味至極当然と言える。それに、もし不敬罪にでも問われたら、普通に人生が終わってしまいそうだと、ルルは直感したからだ。

 

「そっか。じゃ、それなら今後もタメ口で話すとするよ。──ま、もとよりそのつもりで、敬語で話したのはただのおふざけだったんだけどな」

 

「えぇ⋯⋯まじかよ」

 

という訳でも何でもなく、ただ敬語で話したらどんな反応するのか気になっただけであった。

呆れたような、バツが悪いような、何とも中途半端な表情をしていた先生だが、「こほん」と握り拳に咳払いして表情をすぐに正し、先生としての威厳を再構築して見せた。

 

「あと最後に、これは私からの忠告だけど」

 

それから、席に戻った先生はそう話し始める。

 

「私は別に、君の味方という訳ではない。私は先生だ。だからこそ、君とヴァルキューレの立場が同じく生徒であるなら、私は公平という立場を取る。もし君が私の前で怪しい行為を取ったなら──」

 

「ああ、分かってるさ」

 

言うまでもないことだ、とルルは彼の言葉を遮る。彼が先生であるというのなら、それは当然のことだ。生徒の言葉に耳を傾け、それに応える。肯定で返すか、それとも否定で返すかは、自分のような一個人の理解に及ぶ範疇ではないだろう。

 

ただ、その判断には彼の優しさが込めれられているのだとルルは分かる。ならば、彼の期待に応えて見せようではないか。それが難しいことだと、分かっているとしても。

 

「それなら大丈夫だね。じゃ、これからよろしく、ルル」

 

先生はニコリと微笑み、ルルに告げた。

 

「もう昼飯じゃなくて夕飯の時間になっちゃったね。ラーメン冷めないうちに食べよっか」

 

それを聞いて、ルルは目の前にラーメンの入った器が置かれていることに気付く。立ち込める湯気には旨味という旨味が閉じ込められ、その発生源である一品がどれほどのモノであるかを証明していた。──だが、一つ気になったことが、それを食すのを躊躇わせた。

 

「⋯⋯大将、これ本当に580円の柴石ラーメンであってんだよな?」

 

「おうよ。醤油のキレとコクが自慢のうちの看板メニュー、柴石ラーメンであってるぜ。何か、気になることでもあったのかい、ルルちゃん?」

 

「いや、何と言うかだな。⋯⋯量、多過ぎるんじゃないか?」

 

目の前に置かれた、とんでもないほどに山盛りに具や麺が積まれたラーメン──それに、ルルは大将がよそう量を間違えたのではないかと思った。それから、疑問を飛ばされた大将は、「なるほどな」とルルが静かに驚愕している理由が分かり、開いた右手に左拳を落とし、

 

「先生とルルちゃんの話が、少し聞こちまってな。俺はルルちゃんのこと、まだあまり知らないが⋯⋯俺は頑張っている子を応援するって決めていてな」

 

だから、と大将はそこで言葉を区切り、

 

「これはちょっとした俺からのサービスだと思ってくれ。応援って言っても、これくらいしか俺はやってやれる事はないからな。──ほら、早く食っちまってくれ。うちのラーメンは冷めても美味いが⋯⋯やっぱり、熱々のを食って欲しいからな」

 

そう言って、大将はルルにはにかんだ笑顔を浮かべた。その明かされた彼の(いき)な気遣いに、ルルは一瞬目を見開き、それから一度目を伏せて、

 

「──ありがとよ、大将」

 

それだけ、カウンター越しに立つ彼に告げて、いつもより少しだけ胸を温かく感じながら箸を手に取った。

 

 

*

 

 

「今日はありがとね。ルル」

 

「いや、こっちこそありがとな先生。ラーメン最高だったぜ。また奢ってくれよ、期待してるから」

 

「うーん、それは約束しかねるかな。それじゃ、またね、ルル」

 

柴石を後にし、先生に別れの挨拶を告げる。ルルの冗談とも言える本音を聞いて苦笑いを浮かべた先生は、それからルルに手を振って車に乗り込み、帰っていった。

 

「──さてと」

 

先生は車で送るとか言ってくれたが、流石に申し訳ない。という感情はないが、今日はこれ以上あの大人と一緒にいたくなかったので、遠慮させてもらった。

単純に怖い。まだルルは先生のことを全然知らないし、疲労で口がまったく回らないため、いつミスを犯すか分かったもんじゃないのだ。

 

そんなルルは現在、アビドス自治区を歩き回っていた。ぶらぶらと、目的地を持たずゆっくりと。

 

「いい景色だな」

 

辺りはもう真っ暗で、所々明るいのはまだ機能している街灯があるからだろう。何となく上がった歩道橋の上で、ルルは立ち止まった。その広大でどこか幻想的な風景に、思わず目を奪われたから。

 

ここ数日で、本当に色々なことがあった。死んで気付いたらこの世界に来ていて、しかも人間の少女に成り代わっていた。この世界で初めて出会った、たった一人の妹は誰かに殺され、それから頑張ろうと行動し始めた矢先に、スケバンとかいう不良にニ度も絡まれては、その先で入ろうとした店は爆破され、その犯人を追いかけた先で出会った風紀委員長ことヒナを追ってみたら、パンケーキの化け物にエンカウントとして、そして殺されかけた。

 

「いや、色々あり過ぎの間違いだな。ちょっと運命の女神さん? ここまで壮絶な調整ミスはテヘペロでも許されないレベルだぜ?」 

 

運命の女神さんは比喩の存在でしかない。そんな相手に愚痴ったところで、仕方のないことだ。

 

「それでも、愚痴の一つくらい言いたくなるよな」

 

橋の鉄柵に乗りかかり、景色を一望しながら溜め息一つ。それに後一つ、忘れては行けない事がある。 ルルは先生の助手になることになった。これをポジティブに捉えるなら、ひとまずルルのこの先が安泰となったことを喜ぶべきなのだろうか。

話によると、まだ正式に助手になれた訳ではないみたいだが、決定した未来だということに変わりはないだろう。

 

「────」

 

パァンと音が小さく響く。それはルルが自分の両頬を叩いた音だ。

 

「⋯⋯あっ、そういえばこの体はオレのじゃなかったな」

 

と、後悔したせいで少し微妙な感じになってしまったが、それでも覚悟は決まった。

 

「──頑張るか」

 

それから、ルルは周りを見渡した。相変わらず人っ子一人見当たらないが、それはルルにとっては好都合だった。

 

「『ショートカット』」

 

そんな呟きが発せられたとの同時に、彼女の姿はアビドスから消えた。

 

 




サンズさんはルルさんに、この身体を奪ってしまったことに罪悪感を抱いてしまっているので、それらは行動にも関与してきます。
サンズさんの善性が滲みでてんねぇ。

ルルさんとホシノさん、戦わせたいって人〜

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