ある者、セイシュンを掴むまで SEISHUNTALE! 作:ケガレモ
最高ですねっ!
──モンスターと共に時間を過ごしてきたオレにとって、人間という種族を知る機会は特段多いものではなかった。
歴史上に刻まれた事実として、人間とモンスターという二つの種族は戦争を起こし、それに敗れたモンスターは地下に閉じ込められたということくらいだ。オレは実際にその戦争を見てはいないが、その戦争の傷痕は今の地下世界にまで深く刻まれ、その規模の大きさを物語っている。
昔、地下には綺麗な城下町が広がっていた。人とモンスターが手を取り合い創り上げられ、そしてそれは、人の手によって廃墟へと姿を変えた。旧友と一緒にそこを散策した過去、そんな話を聞いたのを覚えている。
オレは正直、人間はあまり好きではない。自分たちを地下へと閉じ込めた張本人なのだから、そう思うのは特に不思議なことではないだろう。
だが、この世界に迷い込み、ロアにあってからオレは初めて人間を知りたいと思った。たった一週間と短い時間ではあったが、彼女はオレの中の人間の虚像を何度も壊して、新しく実像をくれた。
──人間はモンスターと同じように優しさに溢れた生き物だと。
今のオレに『神楽ルル』の記憶の断片があるのも、そう思った理由の一つなのかもしれない。それでも、この気持ちに嘘はないとオレは心から言える。
──オレはたった一人の妹として、ロアを愛していた。
だからこそ、オレは人間のことを知っていかなければならない。彼女を殺した奴を探し出すために。そして──、
*
先生がルルの前に取り出したのは、何枚かに重なった書類の束。そこにはびっしりと神楽ロアについての記録や調査の内容などが記入されていた。
「⋯⋯まぁ、理解はできる」
──オレがロアを殺した? そんな訳、あってたまるか。
だが、現実とは無情にもそういうモノだ。人が人足り得るのはその不完全さ。己の考えを正しいと思うことは出来ても、それが必ずしも真実だとはどこまでいっても分かることはない。
だからこそ人は疑い、そして間違いを犯すのだろうか。どんなに違うと否定しても、現実はそれを肯定する。ここでルルがどんなに違うと抗議したとしても、意味など欠片も存在し得ない。
だから、今のルルができることは、この怒りにも似た激情を唇に血が滲むほどに噛みしめて、現実を見ることだけなのだ。
「⋯⋯色々思う気持ちはあるだろうけど、今は抑えてくれると嬉しい」
良いとは言えない表情を浮かべるルルを見かけてか、先生は気遣うように優しい言葉を贈る。そのおかげで、ルルは落ち着きを取り戻していく──いや、違うか。そんな善人な彼に迷惑をかけたくなくて、そうせざるを得なかったのだろう。
「悪いな。オイラもまだまだ未熟みたいだ」
「いや、君はすごいよ。もし私が君と同じ立場だったら君みたいに行動を起こすことができなかったかも知れないしさ。⋯⋯それで、書類に記入された内容は全て目を通せたかな?」
「ああ」
先生の問い掛けに、ルルはそう首肯する。彼がルルとの直接的な会話の機会を望んだ理由は、『神楽ルル』の妹であるロアの殺害容疑が掛けられているから──だけではない。むしろ、本題はその先にあった。
──神楽ルルが神楽ロアを害したという物的証拠は不十分であるが、当時刻、もっともその可能性の高い人物と判断されたため、捜査の一環とし、公安局から二名ほど監視をつけることを可決とする。
先生に渡された書類のその内容は、ルルの頭痛の種になり、開花するには充分であった。これは、大分面倒なことになった。監視をつけられてしまえば、今みたいに自由に行動することが難しくなるだろう。
そうなれば、明らかに詰み路線まっしぐらだ。己の無実を証明するために必要なことは、やはり行動だ。それが難しくなるということが、どれほど致命的なことなのか言うまでもない。
「⋯⋯書類に記入されている通り、君はヴァルキューレから厳格な監視を受けることになる」
ルルからの肯定を受け取り、先生はそうして本題を語り出した。
──ヴァルキューレ警察学校。
通称ヴァルキューレは、名の通りここキヴォトスの全域で治安維持を担い、警察官養成を目的とした機関だ。ロアがこの世から消えた日、ルルはそこに通報した。勿論、彼女達が到着してから色んなことを聞かれたが、ルルが話せることはあまり無かった。
その辺の記憶がないから仕方ないと言えばそうなのだが、それを知らないヴァルキューレはルルが何か隠していると思ったのだろう。それが怪しまれた発端の一つなのかも知れない。
「一つ疑問があるんだけどさ⋯⋯こんな重要機密みたいな書類をオイラなんかに見せて大丈夫なのか? だって、オイラはその監視対象なんだろ?」
普通、監視をつけるなんて事があれば、対象である人物には秘密裏に行うのが鉄則だ。なぜなら、監視が付いていると知っていながら怪しまれる行動を取る馬鹿がいるのかという話だからだ。ルルの問い掛けに、先生は「そうだね」と頷き、
「ヴァルキューレの方から許可を取ったのもあるけど、私がお願いして監視をつける話はなくなったからね」
「⋯⋯は?」
理解が追い付かず、一拍遅れて無理解が音に溢れる。書類で読んだ内容と、今の話の内容がまるで繋がっていなかった。ケチャップの話をしていたら、突然量子物理学の話を振られたみたいな気持ちだ。
己の耳の異常を本気で疑うものの、記憶の中にそう告げた先生がはっきりと残っているので「そうなのか」と不承不承に納得するしかない。
とはいえ、予想通りと言えばそうだ。監視をつけないという話で纏まっているのなら書類を見せても問題ない。先生は恐らくルルが今、どのような状況にいるのか分かるように書類を見せたのだろう。
「これは私の身勝手な考えではあるけど、年端も行かない女子高生から青春を奪うのはどうにも度し難く思えてね」
「いやいや、そんな先生みたいなこと急に言われてもな⋯⋯」
神妙な表情の先生に、ルルはほぼ素の口調で突っ込んでしまう。ひとまず深呼吸して、冷静さを取り戻す。そうした理由は、落ち着いて言葉の意味を吟味するためと、このまま彼のペースに乗せられるのは癪だったからだ。
「私、これでも先生なんだけどなぁ。⋯⋯それで話は戻るけど、監視をつけないことにはなったけど、流石に無条件って訳じゃなくてね。私の方から一つ条件を提案して、それであっちは了承してくれたんだ」
「条件って?」
「うん、その条件とはズバリ、君が私の助手になることさ」
腕を突き出してサムズアップする先生。それを一旦スルーしながら、ルルは聞こえた言葉を噛み砕き、
「助手って⋯⋯一体どういうことなんだ? 全く理解できてないけど、助手を探してるんだったら、オイラより適任な奴なんていくらでもいると思うぜ」
「例えいたとして、そういう人達は大体なんらかの組織の管理者だったり、支配者だったりで私の助手なんかしている暇がないんだよね。──それで、なぜ助手なのか、だけどね」
「────」
「君が助手になることで必然的に私と過ごす時間が増える。つまる話、私がヴァルキューレの代わりに監視人の役割を果たすことになるって訳さ。でも、私はずっと君と一緒にいる訳じゃないから、仕事がない時はいつも通り君は日常を過ごせるんだ」
「なるほどな、理屈は通ってる訳か。じゃあ、オイラからもう一つ質問だ、助手にならないって言ったらどうなる?」
先生の話の内容的に、つまりヴァルキューレは被疑者であるルルの監視を四六時中つけないことに了承したことになるが、それは一先ず置いて、もう一つの気になる点について問う。先生は書類を見てからゆっくりと口を開いた。
「んー、そうだね。その場合、書類に書いてある通り、君に監視がつくことになる。まぁ、それとはまた別に、君には色々と不都合なことが起きるだろうね」
助手にならなければ監視がつけられ、他にも不都合がある。もはや、ルルに残った選択肢は一つしかないと言えるだろう。
「⋯⋯助手になる、か」
もっとゆとりのある職に就こうと考えていたルルは、げんなりする。溜め息でも吐きたい気分だが、現実を見なければ前には進めないのだから、仕方ない。選択に悩むルルに、先生は苦笑を小さく顔に刻む。
「悩む気持ちは十分、分かるんだけどね。でもね、これは君にとってチャンスでもあるんだ。私の助手という立場で、君は真犯人を探せばいい。その間なら何か手出しされることはないだろうしさ」
「⋯⋯そうだな。確かにこれは、オイラにとって願ってもないほどに好都合な条件と言えると思う」
俯瞰的に見ずとも、この状況は絶好の機会であることは確かだ。助手になるとさえ言えば、それだけでルルの未来はひとまず安泰となる訳なのだから。──ただ、
「でもよ、どうしてアンタはそこまでオイラのためにそうやって考えて、行動してくれたんだ? そこだけ、どうにも気になってさ」
先生、彼がどうしてそこまでルルのことを想い、考え、行動してくれた理由が分からなかった。彼がルルと初めて会ったのは、ほんのついさっきのことで、それまでに微塵も接点や関係などなく、ルルは彼にとっての赤の他人とすら言えたのに。
──だから、ルルは少し恐怖を感じていた。
人が自ら行動する時、そこにはいつも何かしらの理由──つまり、動機は必ず存在する。その動機というのは大抵、己の利益を守り、更に多くを求める時や、または逆に不利益を被らないようにする時などだ。偽善も、自己満足という利益を得ようしたという動機と言える。
だから、彼がルルを助けようとした動機を知りたかった。赤の他人と言えるルルを助けようとしたその行為に、どんな利益があるのかと、不利益を被らないために必要だった何があるのかと。
どんな意図があっての行為なのか、自分の未来すら決めかねないほど重大な問題、そこに彼は密接に関与した行動をしていたのに、その動機が不明であることが、本当に怖い。──だが、
「え? だって、私は先生だからね。先生は困っている生徒を見かけたら迷いなく手を差し伸べる。当然でしょ?」
ルルの恐怖心の宿る疑念。それに応えた先生の言葉に、嘘偽りの類は一切なく、ただただそこには己の生徒を強く想う気持ちと、明確な意思と、使命というべきそれが、そこには見えた。
「⋯⋯そうか、分かったぜ」
「それは⋯⋯どういう意味?」
本当に分かっていないという様子の先生。その彼を前に、ルルは吐息を深く溢し、それから息を大きく吸い込み、
「なってやるってことだ、アンタの助手にさ」
堂々と、宣言した。正直、まだ決めかねているところはある。彼の言葉に嘘はなく、彼の生徒を想う気持ちも本当だと、特別な目を持つルルには間違いないと分かる。だが、彼という人物を判断するための材料は、それだけでは全く足りず、信じて良いかは分からない。
だが、だからこそルルは、彼の助手になってやろうと思ったのだ。判断材料が足りないのなら、見つけ出せば良い。彼の傍で仕える助手という仕事は、それにまさしくうってつけな職だ。
それに自分で言ったじゃないか、彼の生徒を想う気持ちに、ルルを助けようとしたその動機に、嘘はないと。その想いに応えず
「や、やぁっったぁぁぁ!!──これで仕事が減る!!」
一拍遅れて、店内に響き渡る先生の歓喜の声。最後の一文が引っ掛かるが──気にしないことにしよう。気にしては駄目だ、そんな気がする。
「あとな⋯⋯助手になるって言ったは良いんだ。けど、オイラは先生のことまるで知らないんだ。少しで良いから、説明してくれないか?」
そのルルの要望を聞いた先生は「あーなるほど、確かにね」と納得したように呟いて席を立つ。──それから、
「改めて自己紹介と行こうか。私は先生、連邦生徒会──その直下の組織である連邦捜査部『シャーレ』の顧問だよ」
ポケットから腕章を取り出し、己の右腕に巻いた。青を基調とした生地に、流星の模様とその軌跡に白線が引かれ、中央には何かの建造物のようなシンボルマークが白で描かれている。恐らく、この腕章が彼がその連邦生徒会という組織の一員であることを証明しているのだろう。
「連邦生徒会⋯⋯察するに、キヴォトスの行政を担っている行政機関ってところか」
「そ。正しくは全行政機関だけどね。私の仕事はキヴォトスの至る所にある学園の問題を解決すること。故に、私は自由に学園に関与していい権限を持たされている。監視の件もこの権限を利用した感じかな」
そうして先生の話が終わると同時に、ルルは一つの可能性に気付いた。──いや、気付いてしまった。
「あー⋯⋯何となく分かってきたんだけどさ。先生、もしかしなくても、お前さんってめっちゃ凄い人だったりするか?」
「うん、めっちゃ凄い人だったりする」
見つめ合うルルと、席に座り直した先生。そのしばし守られた沈黙の後、最初に口を開いたのはルルの方だ。
「⋯⋯やはり、敬語で話した方がよろしいでしょうか?」
「やめて!? 大丈夫だからっ!」
これは仕方がないことだった。目上の人に敬語を使うことは、ある意味至極当然と言える。それに、もし不敬罪にでも問われたら、普通に人生が終わってしまいそうだとルルは直感したからだ。
「そう? じゃ、それなら今後もタメ口で話すとするよ。ま、もとよりそのつもりで、敬語で話したのはただの冗談だったんだけどな」
「えぇ⋯⋯まじかよ」
という訳でも何でもなく、ただ敬語で話したらどんな反応するのか気になっただけであった。呆れたような、バツが悪いような、中途半端な表情をしていた先生だが、「こほん」と握り拳に咳払いして表情をすぐに正し、先生としての威厳を再構築して見せる。
「あと最後に、これは私からの忠告だけど」
それから、彼はルルにそう話し始める。
「私は別に、君の味方という訳ではない。私は先生だ。だからこそ、君とヴァルキューレの立場が同じく生徒であるなら、私は公平という立場を取る。もし君が私の前で怪しい行為を取ったなら──」
「ああ、分かってる」
言うまでもないことだ、とルルは彼の言葉を遮る。彼が『先生』であるというのなら、それは当然のことだ。生徒の言葉に耳を傾け、時に手を差し伸べ、間違いを正す『先生』は、全ての生徒に公平な存在でなくてはならない。
だからこそ、対立する生徒のどちらか一方に肩入れすることはできないし、しないのだ。それはちゃんと分かってるつもりだし、そうであって欲しいとルルは思う。それでこそ、ルルが助手になろうと決めた『先生』という人物なのだから。
「それなら大丈夫だね。じゃ、これからよろしく、ルル」
先生はニコリと微笑み、ルルに告げた。それから彼は右腕の腕時計を確認して、
「もう昼飯じゃなくて夕飯の時間になっちゃったね。ラーメン冷めないうちに食べよっか」
彼の言葉に、ルルは目の前にラーメンの入った器が置かれていることに気付く。立ち込める白い湯気には、旨味という旨味が閉じ込められ、その発生源である一品がどれほどのモノであるかを証明していた。
先生の言う通り、冷める前に今すぐ食らいつきたいところだが、一つ気になったことが、ルルがそれを食すのを躊躇わせた。
「⋯⋯大将、これ本当に580円の柴石ラーメンで合ってるんだよな?」
「おうよ。醤油のキレとコクが自慢のうちの看板メニュー、柴石ラーメンであってるぜ。何か、気になることでもあったのかい、ルルちゃん?」
「いや、何と言うかだな。⋯⋯量、多過ぎるんじゃないか?」
とんでもないほどに山盛りに具や麺が積まれたラーメン、そのあまりの存在感にルルは大将がよそう量を間違えたのではないかと疑ったのだ。それから大将は、「なるほどな」とルルが食べない理由が分かって、開いた右手に左拳を落とし、
「先生とルルちゃんの話が、少し聞こちまってな。俺はルルちゃんのこと、まだあんまり知らないが⋯⋯俺は頑張っている子を応援するって決めていてな」
だから、と大将はそこで言葉を区切り、
「これはちょっとした俺からのサービスだと思ってくれ。応援って言っても、これくらいしか俺はやってやれる事はないからな。ほら、早く食っちまってくれ、ウチのラーメンは冷めても美味いが⋯⋯やっぱり、熱々のをお客に食って欲しいからな」
そう言って、大将は古傷の付いた顔ではにかんだ。その明かされた彼の
「──ありがとよ、大将」
それだけ、カウンター越しに立つ彼に告げて、いつもより少しだけ胸を温かく感じながら箸を手に取った。
*
「今日はありがとね。ルル」
「いや、こっちこそありがとな先生。ラーメン最高だったぜ。また奢ってくれよ、期待してるからな」
「うーん、それは約束しかねるかな。それじゃ、またね、ルル」
柴石を後にし、先生に別れの挨拶を告げる。ルルの冗談とも言える本音を聞いて苦笑いを浮かべた先生は、それからルルに手を振って車に乗り込み、帰っていった。
「──さてと」
先生は車で送るとか言ってくれたが、流石に申し訳ない──という感情はないが、今日はこれ以上あの大人と一緒にいたくなかったので、遠慮させてもらった。
単純に怖い。まだルルは先生のことを全然知らないし、疲労で口がまったく回らないため、いつミスを犯すか分かったもんじゃないのだ。
「いい景色だな」
そんなルルは現在、アビドス自治区を歩き回っていた。ぶらぶらと、目的地を持たずゆっくりと。辺りはもう真っ暗で、所々明るいのはまだ機能している街灯があるからだろう。
何となく上がった歩道橋の上で、ルルは立ち止まった。その広大でどこか幻想的な風景に、思わず目を奪われたから。
ここ数日で、本当に色々なことがあった。死んで気付いたらこの世界に来ていて、しかも人間の少女に成り代わっていた。この世界で初めて出会った、たった一人の妹は誰かに殺され、それから頑張ろうと行動し始めた矢先に、スケバンとかいう不良にニ度も絡まれては、その先で入ろうとした店は爆破され、その犯人を追いかけた先で出会った風紀委員長ことヒナを追ってみたら、パンケーキの化け物にエンカウントとして、そして殺されかけた。
「いや、色々あり過ぎの間違いだ。ちょっと運命の女神さん? ここまで壮絶な調整ミスはテヘペロでも許されないレベルだぜ?」
運命の女神さんは比喩の存在でしかない。そんな相手に愚痴ったところで、仕方のないことだ。
「それでも、愚痴の一つくらい言いたくなるよな」
橋の鉄柵に乗りかかり、景色を一望しながら溜め息一つ。それに後一つ、忘れては行けない事がある。ルルは先生の助手になることになった。
このことをポジティブに捉えるなら、ひとまずルルのこの先が安泰となったことを喜ぶべきなのだろうか。話によると、まだ正式に助手になれた訳ではないみたいだが、決定した未来だということに変わりはないだろう。──パァンと音が小さく響く。それはルルが自分の両頬を叩いた音だ。
「⋯⋯あっ、そういえばこの体はオレのじゃなかった」
慌てて両頬を撫でて、腫れがないことを確認し、ルルは安堵の息を吐く。意気込もうとしてした行動を後悔したせいで、少し微妙な感じになってしまったが、それでも覚悟は決まった。
「──頑張るか」
それからルルは周りを見渡した。相変わらず人っ子一人見当たらないが、ルルにとっては好都合な状況だった。
「ショートカット」
そんな呟きが発せられたとの同時に、『決意』した一人の少女は、アビドスから刹那に姿を消したのだった。
ルルさんとホシノさん、戦わせたいって人〜
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ワンッ!(イエス)
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バウッ!(ノー)