もしかしてなくても→クラナド
感動した。もう死ぬしかない(確信)
「こんにちは、私はイギリス国家代表の「
「イギリスにようこそ、これから一週間よろしく。
「こちらこそよろしくお願いします。」
差し出された手を握り返す。
(結局来ちゃいましたね。)
………仕方がない……ドイツの国家代表に別の仕事が入ったんだ。ほぼ命令みたいなものだからな……はぁ………
彼女は自称大将に連れられ、現在行くつもりのなかったイギリスに来ている。空港から降り立った後、ロンドンのよくわからない館につれてかれ、合同軍事演習という名の上層部の交流会ということにようやく気付いて後悔しているところだ。
……お茶会には出た事無いしな……礼儀、マナー等がなっていない自分にとっては苦痛だ……そもそも食事に礼儀も何も存在するのかねぇ?
(貴族()の嗜みですよ、我慢しましょう。)
……これだから貴族は嫌いなんだ………口先だけの屑どもが………
彼女は思いとは裏腹に、女性に対し小さく笑みを向ける。
「では、食事会に案内するわ。」
二人は女性に連れられ、大きな食堂のような所に連れてかれた。大きな円卓の机が幾つも置いてあり、それぞれに代表候補生用、国家代表用等、割り振るためのネームプレートが付いている。
「君は国家代表兼代表候補生の代わりだから「ちょっと待ってください。」
「どうしたの?」
そんな話は聞いていない。それは聞いていた理由と違っていた。
………まさか…………
「嵌めたんですか?」
「うん、君の方がニュース性あるし。欧州の軍関係の人なら君の事を知らない人はいないと思うよ?」
やっぱりかと彼女は落胆した。よくよく考えればわかることだ。国家代表が合同軍事演習の日にそれより大事な予定が入っているわけがない。
……まあ、接待だと思って我慢するとしようか…………
「わかりました。で、何処に座れば?」
「年齢的な問題で代表候補生の席でよろしく〜。」
言われるがままに代表候補生の席に向かうと、既に先客がいた。金髪碧眼の少女で、その服装は見るからに貴族のものだった。ちなみに彼女は軍服だ。殆ど着ていないため、未だにパリッとしている。
「隣を失礼する。」
一言断り座ると、
その少女がこちらを見ている。
仲間にしますか?
はい
いいえ◀︎
……貴族なんて仲間にしてどうす「どうして私に挨拶をしませんの!?」
理由はわからないが、突然机を叩き、立ち上がる。
……思ったより礼儀を知らない相手で助かった………
「それはすまない。私の名は「古王祈さんですわね。他の代表候補生の名前は覚えておりますわ。しかし、他国の人間とはどうしてこうも礼儀をブツブツーーー」
代表候補生ではないのだが、後礼儀を知らないのはお前だろ、と思ったが口には出さなかった。
「で、貴女の名前は?」
「わたしの名前を知らないとおっしゃいますの!?このオルコット家の当主を!?」
「え?ウォルコット?」
ウォルコットという性は彼女が彼だった時にいたリンクスの名字だ。名をリリウム・ウォルコットと言い、確か貴族だった。虐殺する彼女ら二人に敵対した五人の内の一人である。
「 オ ル コ ッ ト ですわ!!セシリア・オルコットです!」
「ああ、すまない。」
ウォルコットではなくオルコットだったそうだ。似ていて分かり難い。
「そういえば明日の訓練の予定ってどうなってるんだ?」
「まあ!代表候補生として恥ずかしくありませんの!?」
「いや、私は「私は庶民にも優しいので教えてあげないこともないですわ!」
超にもう一つ超がつくほどの上から目線だ。既に角度が九十度を優に超えているレベルである。
(貴族ってのはどうしてこうなってしまうんですかね?)
……貴族〝だから〟だろ、嫌いだが仕方がない………
「じゃあ、教えて貰ってもいいか?」
「明日は……えっと、ドイツとイギリスは合同で海上訓練ですから、北海上の人工島に建てられた基地ですわね。まあ、海上は私が最も得意とする場所の一つでしてよ!」
……最も得意なのに複数あるのかよ………このクロワッサンが……
そこに一人の女性が現れる。
「お嬢様、他の方に失礼をしてはいけませんわ。」
「チェルシー、どうしてここに?」
「鍵を渡しに参りましたわ。…えっと、ドイツの代表候補生さんですわね?チェルシー・ブランケットです。以後お見知り置きを。」
そう言ってチェルシー・ブランケットと名乗った女性は優雅にスカートを持ち上げる。服装がメイド服なので、彼女に支えているのかもしれない。
……ちっ………イライラする………
「ああ、よろしく。もう私は帰るよ。じゃ、明日はよろしくな。」
そう言って彼女は割り当てられた部屋に向かって行った。
◆ ◆ ◆
彼女が部屋でゴロゴロとしていると、突然扉がコンコンと叩かれた。
「チェルシー・ブランケットでございます。入れて頂けませんでしょうか?」
断る理由もないので扉を開ける。部屋の中は部隊の寮部屋とは違い、ホテルのような落ち着かなさがあった。彼女を中に入れ、椅子に座らせる。
「単刀直入に申し上げます。明日の訓練の時、お嬢様側について頂けませんか?」
「いや、意味がわからない。」
言葉通り意味がわからない。お嬢様側も何も、人工島で行われるのはドイツとイギリスの合同軍事演習だ。最も、全ての国が同じ基地に揃うのは最後の日だけで、それ以外は二国ずつペアを組んで別々の基地で訓練するらしいが。
「実は、お嬢様はオルコット家の次期当主なのです。オルコット家というのは、ヨーロッパ圏でも有数の名家なのです。」
「あの歳でか?」
「はい。お嬢様は幼い頃に両親が亡くなられて……それで、遺産を守るために懸命に努力していたのです。」
どうやら態度とは裏腹に、相当な努力家だったらしい。あの年で代表候補生となれば血の滲む様な訓練をしなければならないだろう。
「それでお嬢様は、家の遺産を守るために、代表候補生になる予定なのです。」
「なる予定?」
引っかかる言葉だ。まるで今は代表候補生でないような口ぶりだ。
「はい、代表候補生と同じ扱いなだけで、厳密には代表候補生ではありません。正式には明後日のAM9:00に契約が成立します。」
「で、それとお嬢様側とやらにつくのは関係があるのか?」
「はい、先ほどお話した通り、オルコット家は名の知れた家です。そのため、その遺産を狙う者や、対抗する家も少なくないのです。」
彼女は自分なりに理解した。つまり、明日の訓練中に第三者に襲われるかもしれない。だから守って欲しいというわけか。
………勝手な奴だ……いや、そんな事起き得ないんじゃないのか?
よく考えれば訓練は合同軍事演習だ。他にも人がいるし、例え第三者が攻め入ってきても大勢のISの前には歯が立たないだろう。
……どれ程の敵を想像しているんだ?このメイドは……ちっ………
「で、予想される敵の数は何体だ?」
突然押し黙る。チェルシーは俯いてしまった。
「……体です。」
「すまない、もう一回言ってもらえるか?」
「十二体です。」
「は?」
思わず呆けた声を出す。そんな大組織がどこにあるのか。
「敵は誰なんだ?」
「イギリスの代表と代表候補生全員です。」
今度こそ彼女は理解した。つまり、人工島の中の人間は全員グルの可能性があるということだ。海上という場所を使い、見つけられないように墜落させるつもりなのだろう。まだ代表候補生はあの貴族に決まっていない。書類の偽装をしてしまえば彼女は事故などで死んだ事になり、その金は別の場所に流れていくだろう。それにしても、十二とは実に多い。ドイツですら九機から一つ増えて十機になったばかりだ。十機もあれば戦争が出来ると言われているISだ。それより多いとは悪夢でしかない。
「私を殺す気か?十二対一など。」
「いえ、そんなこと……」
彼女は自称大将の言葉に気付く。
………まさか……最初からそのつもりでいたのか………だからドイツの軍人は私だけなのか…………まあ、私の様な不透明な存在は軍部としても消したいところだろう……成功しても、失敗してもうまいという訳か…………
「悪いが断らせて頂く、まだ死にたくないもんでな。それに、貴族は嫌いだ。馬鹿らしい。」
「そ、そんな!?お願い致します!」
チェルシーが頭を下げる。だが、彼女には関係がないし、そもそも協力したところで何のメリットもない。何より、死ぬ確率が高い。
……まあ、全員が競技用のISという面で考えると……いや、それでも絶望的だな………
「頭を下げられても困る。受けられないものは受けられない。」
「そんな………貴方様の実力は存じております!軍用IS相手に三対一で勝利するほどだと!」
声に絶望の懇願の色が混じる。そもそもこの訓練に参加しなければよかったのではないか、と思ったが、家とあの貴族の願望の関係上、参加しないわけにはならなかったのだろう。
「出てってくれ、第一メリットがない事などやりたくない。私は寝る。」
「ま、待って下さい!」
チェルシーを無理矢理追い出そうとするが、こちらの服を掴んで抵抗する。その白く非力な手を引き剥がし、扉の外に押し出す。
「帰れ、二度と私の目の前に出てくるな。」
勢いよく扉を閉める。扉が何度も叩かれ、懇願する様な声が聞こえる。
(いいのですか?)
……ああ、助ける理由などない。死に腐れ、貴族が………
(まあ、私には関係ないので。後の判断はオールドキングさんに任せます。)
……ちっ……………貴族が……助けてもらうのが当たり前だと思い込みやがって…………屑が…………
扉を開け、そこに座り込んでいるメイドを見下ろす。
「明日お前は基地に来るな、わかったなら帰れ。」
「そ、それじゃあ!」バタン
再び扉を閉める。
………助けるつもりなどもとよりない………落ちた名家の遺産……しゃぶり尽くさせてもらうぞ………
「もしもし、ああ、私だーーーー」
◆ ◆ ◆
「全員整列!」
その場にいる十三人の代表候補生が目の前の国家代表ーーー
「お前、ISスーツは?」
「私のISには必要ありません。」
彼女は周りを見やる。
……ここの全員が敵かよ………本当に金に忠実だな………こいつらは………
「では、訓練を始める。二人組を作るぞ。古王祈は私と組む。」
「わかりました。」
それぞれが二人組を作り、七つの組ができる。オルコットは別の代表候補生と組んでいるようだ。
……ドイツは私だけとは………怪しすぎるとは思わんのかね…………
「では、訓練機を装備しろ。」
専用機持ちの彼女はShiningーーーオラクルを展開する。すると、
「ーーー
……ほお、あの高負荷スタビライザーを付けて戦場に赴くか……自殺行為だな………しかし
彼女はラインアイ越しに目の前のISを見やる。
……〝青〟〝幻影〟〝瞬間〟……どれも当てはまらない様な言葉だ……
「では、射撃訓練をする。……しっかり避けてね?」
両手のライフルから大きな弾丸が打ち出される。その射線は彼女の動きを捉えておりーーー
「っ!?」
「ふふっ、本番はここからよ。」
たった二発の弾丸は彼女の行動を大きく減らす。彼女は多彩な回避行動でそれを避けようとするが、弾が装甲を掠める。
……強い…………勝てる見込みは………無いな…………
(まあ、その機体では……ですよね?)
………まあな……じゃあ、反撃開始だ。
彼女はリニアガンを展開し、不意打ちで相手を吹き飛ばし、ミサイルを打ち込む。
「………どういうつもり?」
「ああ、すいません。交代制だと思いまして。」
ニヤニヤと笑いながら答える。それを見る彼女の目は冷え切っていた。
「では、エネルギー補給をして来なさい。その間に模擬戦の準備をしておくわ。」
……罠か?まあいい…………
「はい、わかりました。」
エネルギー補給所のある人工島に降り立ち、接地する。
「来たわね。a1!やるわよ!」
「合点承知!」
ラファール・リヴァイヴを装備した代表候補生二人がこちらに突っ込んでくる。
………馬鹿な奴らだ……ふん………あの貴族……ちっ……仕方ねえな………
ーーー彼女の口から歌が紡がれた。
◆ ◆ ◆
セシリア・オルコットは古王祈を憎んでいた。自分のメイドーーーチェルシー・ブランケットが彼女の部屋に行った後、泣いて帰って来たからだ。
……許しませんわ……あの蛮族………
歯からギリっと音が鳴る。そんな彼女を見かねた別の代表候補生が声をかける。
「大丈夫?」
「ええ、大丈夫ですわ。始めましょうか。」
ラファール・リヴァイヴを装備し、相手に銃撃戦を持ち込もうとするが、相手は逃げるように遠くに引いていく。
「くっ、卑怯ですわ!」
すると突然止まり、その両手の銃を下ろす。
「どう……しましたの?」
「ふっふっふっ……アンタ気付かないわけ?本当にバカね。」
「なっ!?私を馬鹿にしますの!?」
「周りを見てみなさいよ。」
言われた通りに周りを見渡すと、そこは人工島から離れ、周りに何もない海の上にいた。
「こ……こは………?」
「騙されたのよ、皆にね。」
彼女はニヤニヤと笑みを浮かべる。
「よくも……この私を………」
ワナワナと震える。すると、ハイパーセンサーが三機の機影をとらえた。
「なっ!!!四対一!?そんな……」
「まるで【断頭台への行進】ね。」
断頭台への行進とは、フランスの作曲者エクトル・ベルリオーズが作った最初の交響曲の第四章のこと。彼ーーーベルリオーズは夢の中で愛していた彼女を殺し、死刑を宣告され、断頭台へ引かれていく。行列は行進曲にあわせて前進し、その行進曲は時に暗く荒々しく、時に華やかに厳かになる。その中で鈍く重い足音に切れ目なく続くより騒々しい轟音。ついに、固定観念が再び一瞬現われるが、それはあたかも最後の愛の思いのように死の一撃によって遮られる。
オルコットを〝彼〟、親を〝彼女〟と例えているのだろう。その断頭台の刃は〝遺産〟だ。彼女の守りたかったものにより殺されるという事を表している。
「終わりよ。」
四人がオルコットに向けて集中砲火をしてーーー
「ふう……間に合ったね!」
「ああ、隊長から言われたんだ。来るしかなかっただろう。」
そこには、六人の黒兎の姿があった。
ほら、次はあいつがね?
来週は忘年会かぁ………