感想とかくれたら嬉しいなーって
あの件は、「オルコット家襲撃事件」として世間で大きな反響を及んだ。家の対抗勢力が、国家代表を通してヨーロッパ圏で名の高い「オルコット家」を合同軍事演習という公の場で襲撃したという事件だ。名家が襲撃されたのもそうだが、一番の話題になったのは突如現れた所属不明機が、ドイツ、イギリス両国の競技用IS18機と軍用IS1機を落としたという件だ。その上、落とされたのは代表候補生と国家代表で、全世界を震撼させた。
『人工島内の監視カメラがその機体を捉えていました。それではどうぞ。』
テレビに黒く先鋭的な
そして、監視カメラの所為なのか、そのISがワザとやっているのかは分からないが、ノイズが混じった機械音声が鳴り響く。
『私は思想家だ。全てを破壊することができる……篠ノ之束、お前を殺す。必ずだ。』
その黒いISは左手の銃のようなものを上げると同時に、何かが壊れる音がして映像が止まる。
『このように、このISは謎の声明を残していきました。これはどういう意味なのでしょうか。』
『はい。このISは明確な意思として、篠ノ之束博士を殺すと明言しています。映像から見るとーーー』
テレビの中の専門家が、色々と考察を重ねていく。その黒いISはテレビ、新聞、雑誌などのメディアを掻っ攫い、ほぼ全ての記事にそれが載った。その圧倒的過ぎる強さを例えた言葉として、記事の一つにこんな文字が一面を飾った。
「
椅子に腰掛けてテレビを見ている少女の名前は、
リモコンを手に取り、テレビがぷつんと消える。部屋を出て指令室に向かうと、廊下にフランティスカ・ダブロフスキーが立ちはだかっていた。
「隊長、話があります。部屋に来て下さい。」
02と書かれたプレートの貼られた扉をくぐり、部屋に入る。中にはもこもこのクッションやぬいぐるみ、加湿器などが置いてあり、とても女の子らしい部屋だった。ただ、あまり整理整頓がされていないのが玉に瑕だ。
彼女がソファに腰掛けると、フランティスカがオレンジジュースを持ってくる。それを一口飲むと、突然本題を切り出された。
「あのIS、隊長ですか?」
「ふっ、何のことだか。」
ニヤニヤと笑いながら返す。思っていたのとは違い、フランティスカの顔は怒っているという感じではなかった。
(多分、戦闘中フランティスカさんに話しかけたからですよ。)
実際、彼女は何時もの訓練中の様に、戦闘時に話しかけてしまった。
(油断は大敵だ……特に所属不明機なんてのはな。だろう?ですって、面白い事を言いますね……ぷふっ……)
……煩いな………水没させるぞ……
「……まあいいです。いつかは話して下さいね……っと……あった!……隊長、これをどうぞ。」
椅子から立ち上がり、沢山のぬいぐるみが入った箱(ぬいぐるみボックスと書かれている)を漁り始め、布切れの様な物を取り出し、彼女の前に出す。
「……なんだこれは?」
「隊長専用の腕章です。」
銃と弾倉持った黒ウサギと赤色で
ウサギには銀色の首輪が付けられており、銃はショットガンに変えられていた。そして、部隊の名前ではなく彼女の昔の名ーーーオールドキングがドイツ語で書かれていた。
「
「織斑教官とラウラから聞きました。隊長は自分の事を〝オールドキング〟と呼んでいると。」
彼女の髪と同じ色で書かれたその文字を見つめ、ニヤリと笑い、目の前のプロンド色の髪の少女を見つめる。
「ありがとう、大事に使わせてもらう。」
首輪に触れ、青いウィンドウが目の前に現れる。そこから青いスキャン光が腕章を透過し、「NO DATA」となっているエンブレムにそれが設定される。ウィンドウの背景が黒ウサギのそれに変化した。
「今日から私は古王祈ではない……私の名はーーー」
ごくりと唾を飲む。
「ーーーオールドキング。篠ノ之束を殺す者の名前だ、覚えておけ。」
彼女は踵を返し、自室へと戻っていった。
◆ ◆ ◆
あれから大体一年が経った。黒ウサギ隊は二人の鬼と悪魔によってヨーロッパ圏レベルで最強の部隊と化し、その戦闘方法や、躊躇ない動きを皮肉られ、他国から〝死を運ぶ黒ウサギ〟などと呼ばれた。
全員がワイヤーガンを使った連携行動を完璧にマスターし、オラクルを使用した隊長相手に勝率五割という驚異の数字を叩き出した。
今は、全員で食事を取っている。
「来月で教官がいなくなっちゃいますね。」
「どうする?」
「何かプレゼントするってのは?」
「でも喜ばないんじゃない?」
「日本のアニメの「却下だ。」
「隊長、何かありますか?」
全員がこちらを見る。
……首輪付き、何かいい案はあるか?
(はい、プリュンヒルデは重度のブラコンと聞きます。つまり、ーーーーとかはどうでしょう?)
……それは名案だ。
「クラリッサとラウラ、出番だ。今すぐに日本へ行ってこい。責任は私が取る。」
「隊長、ありがとうございます!」
「えっ、私も?」
かくして二人は日本に行くことになったのだ。
◆ ◆ ◆
「少佐、見てください!これが日本ですよ!」
「……そうだな。」
日本についてからクラリッサは興奮しっぱなしだ。一週間の滞在のうち、半分以上が秋葉原になっているのはきっと書類の間違いだろう。
兎に角彼女らはまず、織斑弟に接触をしなければならないのだ。
「では、新幹線ですよ!そういえば日本人はテニスボールで電車のドアを止める風習があるらしいですよ!」
「う、うん。そうだな。」
二人は新幹線に乗り、織斑弟の家に向かっていったのであった。
「付きました……長かったですね。そういえば日本というのは曲がり角を曲がるとパンを加えた美少女がーーー」
「……うん…………」
紙に書かれた住所を目指していると、その曲がり角の多さに迷ってしまった。
「こんなに曲がり角があるなんて………流石日本です!」
ただの住宅街だ等とは言えない。そのまま彷徨っていると、地元の人を見つけた。
「あの三人組に聞いてみたらどうだ?」
ラウラが指差す方向には、男二人と女一人という組み合わせがいた。学生カバンを持っており、地元民ということがわかる。
「すいません、ちょっと道を聞いてもいいですか?」
「何ですか?」
「おい、めっちゃ美人さんじゃん!どうする一夏!?」
「いいい一夏!!見た目に惑わされちゃダメよ!」
何かと騒がしい三人組だ。学生テンションというやつなのか。ラウラがムスッとしている。
「この家に行きたいんですが。」
住所の書かれた紙を渡す。
「えっと……これ俺の家じゃん!」
「嘘!?やったな!!もうこれ結婚みたいなものじゃん!!」
「あんた私に内緒でこんな人と付き合ってたの!?どんな関係なのよ!!」
「ち、違うって!!誤解だ!!」
ギャーギャーと騒いでいるのが嫌だったのか、ラウラがどんどん不機嫌な顔になっていく。それに気づいたのか、三人は突然静かになる。
「で、家に何の用ですか?」
「織斑千冬の弟に用があります。」
といって写真を取り出す。その写真はどう考えても目の前の彼だが、日本人の顔に慣れていない彼女らはそれがわからない。
「ああ、これは俺です。どうしましたか?」
「実はーーー」
耳元に口を近づけ、事情を説明する。三人組の一人が顔を真っ赤にして怒っているが、気にしない。
「わかりました。で、俺はどうすればいいんですか?」
「では、これを読んでください。」
用意していたカンペを出す。
「えっ…でも「お願い致します。」
斜角90度で頭を下げる。クラリッサは先程「ジャパニーズドゲザは哲学なんですよ!」って言っていた。どう考えても間違いである。
「わ……分かりました。」
「では、これです。」
録音機をONにする。
「ーーーーー。」
「次にこれです。」
「ーーーーー。」
「最後にこれです。」
「ーーーーー。……って!なんてこと言わせるんですか!」
「そ、そうよ!あんた達何するつもりよ!」
もう音声は録れたから帰ってもいいのだが、どうやら取り巻きの一人がご不満のようだ。
「では、この名前をこの子の名前に変えて言ってみてください。」
「
「一夏が……好き……一夏が……きゅう………」
「
その言葉を聞くと、
クラリッサが録音機をOFFにする。
「帰りますか?」
「………帰るぞ。」
二人は三人を放置し、ホテルに向かったのであった。この時ラウラは仕事を終えたつもりになっていたが、本当の地獄はここからであった。
秋葉原での数日
「見てください!あれが月に変わってお仕置きするアレですよ!」
「そうだな。」
「見てくださいあのフィギュア!可愛い可愛い!!」
「……おう。」
「少佐!これ着てみてください!絶対似合いますよ!」
「いや、ちょ待「ほらほらー!」
「あ!あれは限定のフィギュア!!並ばないと売り切れちゃいますよ!」
「…………」
「諦めたらそこで試合終了ですよ!」
「せやな。」
「ペロッ、これは!!」
「おっ、そうだな。」
「もう何も怖くない!」
「私ってほんとバカ………」
「……もう、ゴールしてもいいよね?」
「何のだよ。」
「逃げちゃダメだ逃げちゃダメだ逃げちゃダ「お、落ち着け!」
「癖になってんだ、音殺して歩くの。」
「(もう何でもいいや)」
という事があり、ラウラが秋葉原の荒波に揉まれてきたそうだ。一方のクラリッサはとても幸せそうな顔をしている。
「いやー!楽しかったですね。」
「………そうだな。」
「次に乗る飛行機はーーー」
「ああ、うん……………」
◆ ◆ ◆
「織斑先生!感謝の印です!」
と言われて渡されたその目覚まし時計を見やる。明日は日本に帰る日だ。ここで教官をやる事は最初は不本意だったが、今ではとてもいい思い出になった。
………古王祈………オールドキングか………
彼女はニヤリと笑う。プリュンヒルデと呼ばれた彼女を相手に、あれ程真面に戦っていられるのは彼女位だろう。それ程の実力なのだ。
………あの年で………本当に強い…………
織斑千冬は殺人狂ではないが、戦闘狂ではある。戦いの中に自分を見出し、それを楽しんでいた。オールドキングと似た人種なのである。
………それよりも、目覚ましか………
この目覚まし時計は録音した音で起こしてくれるらしい。よくあるアレである。
……このメモリはなんだ?
一緒に渡されたメモリをパソコンに刺し、ファイルを確認する。四つの音声ファイルが入っており、大きさ的にも映像は無いようだ。
一番上のをクリックする。
『千冬姉、今日もお仕事お疲れ様。』
「いよっしゃぁぁぁぁぁ!!!」
思わずバク転する。次のファイルを開く。
『おはよう、千冬姉。』
「よし!よぉぉぉし!!」
壁を殴りつける。壁に穴が開き、タンスが倒れる。次のをクリックする。
『千冬姉、大好きだよ。』
「私もう死んでもいいかもしれない。」
最後のを期待し、クリックする。
『
無言でパソコンを閉じ、国際電話で電話をかける。
『はいもしも「一夏、
『え?いや、俺の「そやつが私を倒せるというなら許してやろう。そう伝えておけ!」
受話器を叩きつけるように切る。
……ふふふ……この音声を入れたということは、命を覚悟しているのだな?
指を鳴らす。その姿は悪役のそれだ。
この後、オールドキング以外の全員がヴァルハラに送られたらしい。
ヴァルハラは戦士が死んだ後に送られる場所です。つまりどういうことだってばよ。
あれ?全然時間進んでない………