それにしても、ISの設定って曖昧でよくわからないです。
…………次の話はどうします?
オールドキングは無慈悲な殺人狂ではない。ただ、殺すなら愉しんだ方がいいと割り切れる人間なのだ。その為、今回も目の前の少女を助けるべきか悩んだ。助ける義理はないが、もしかしたらボーデヴィッヒの関係者と思うと確かに助けるべきなのかもしれない。僅か数秒でこれだけの事を考え、検討した結果、取り敢えず助ける。害があるなら殺すという判断になり、その裸の少女を抱えながら高速で基地を出た。
が、切り裂かれたシャッターをくぐると目の前には純白のISの姿があった。見たところ、武装は両手の日本刀だけの様に思える。
………なんだこいつは?
(生体反応が感じられません、恐らく無人機です。)
無人機という単語を耳にした瞬間、彼女は既に攻撃を開始していた。ISは女性にしか扱えない。それは全ての具象の中で、「人間の女」のみが使えるという意味だ。つまり、このISは現段階の最高技術を使っても作れないだろう。つまり、この世界の
………私を殺しに来たか………タイミングが悪いが、まあいい!
左手を突き出し、その青く短い剣身を当てにかかる。右手は少女を抱えているため、無理な動きはできない。その為、その直線的な動きは簡単に躱される。
(残り20秒です。目的地を
待機しているはずの場所が青い四角で表示される。10秒もあれば行ける距離だ。
………どうやってそこに向かう?予備電源が入れば自動で警報がなるだろう。どうする?
彼女の脳裏に一つの案が浮かぶ。成功確率は低いが、右腕に抱えた少女の問題もあり、それしか方法がなかった。
…………一か八か……………
「うおおお!!Shining!!!」
オラクルに変化し、リニアガンをチャージしながら左腕に取り付けられた月光を起動する。リニアライフルを捨て、
………無人機というのが仇になったな。AIを鍛えて出直してこい………
リニアガンを放ち、その衝撃でエレベーターにぶつかり、硬直する。その隙を見逃さずに離脱し、オラクルのまま戦線を離脱する。
(残り10秒、間に合いますね。)
「こちら古王祈、未確認ISを確認した。戦闘を開始する。」
『こちらでは確認できてなーーーい、今確認した!戦闘を開始してくれ!』
通信機器を切り、オラクルを起動する。
………さて、戦闘開始だ………
◆ ◆ ◆
軍部に緊張が走る中、古王祈
周りの連中も安堵していた。勿論、彼とは別の理由で。
「今回は本当に良かった。これで一安心だ。」
その中の一人が言う。これは、彼女が助かって良かったではなく、自分達が責任を取らずに済んで良かったという事なのだろう。
しかし、数分後に再び連絡が入る。今度はメッセージだ。
そこにはーーー
劣勢だ、救援を頼む。
それは、彼女の辞書には書いていないはずの言葉だった。
◆ ◆ ◆
彼女は三つの理由で苦戦していた。自分が使っている機体がオラクルだということ。それとーーー
………ちっ、スペックが高すぎる!!
完成された第三世代機で尚且つ軍用となれば競技用のラファール・リヴァイヴ程度のスペックでは歯が立たない。彼女の腕前を持ってしても、それを全て埋めることなど不可能だ。
………リザさえ使えれば……………
オラクルに取り付けられたブースター数では
そして、一番問題なのは最後だ。この無人機は高度な学習機能を持ち、最初はそこまでではなかったものの、現在ではその機体を生かすように動いている。しかも、人間特有の〝恐れ〟が存在しない。非常に厄介な相手であった。
(残りシールドエネルギー、30%を切りました。)
……分かっている!くそっ!
その右手にはリニアライフルはない。先程置いてきてしまったからだ。
彼女はミサイルを打ち、逃げた方向に追い打ちをかけるように戦っていたが、学習した相手は両手の日本刀でミサイルを全て切り落としてしまう。月光が当てられるタイミングが無かった。
………考えろ……どうすればいい?
「くっ、おおおおお!!!」
月光を起動し、こちらも
このままだと斬られてしまうので下向きに
………そもそもあれは何だ?何のためにあれが存在する?
大きなブースターに両手の日本刀、機体の背部に位置する花びらのような
………何故無人機なのに人が乗る場所が設計されている?
(オールドキングさん!集中してください!!)
……分かってらぁ!
突然月光以外の全ての武器をパージする。こっちの不利なのに、武器を減らすのは正気の沙汰じゃない。
………落ち着け……最初に相手のシールドエネルギーは削ってある……後一発入れれば削り切れるはずだ……………
左手を前に突き出し、月光の切っ先を目の前の敵に向ける。それと同時に純白のISは突撃し、左手の日本刀を振り抜く。その青く銀色光る剣身を右腕で滑らせ、懐に入る。
「おらぁ!」
左腕を大きく突き出す。すると、敵機の右腕が人間ではあり得ない方向に曲がり、その一撃を防ぐ。
「何でもありかよ!この人形が!!」
出力で負け、吹き飛ばされるがすぐに態勢を立て直す。青い光が地面に刺さり、爆発を起こす。
………何だ!?
(………ガス管があったようです。月光の熱で引火したみたいですね。)
ガス爆発程度でダメージはないが、煙で周りが見えない。非常にまずい展開になった。
(………IS反応、後ろです!)
迷わず前方に
「あぁ?速すぎるんだよ!」
月光を振りながら地面に足を突き刺し、転びそうなところで再び
「………ってえ……………デタラメな野郎だ、勝てる気がしない。」
(一応軍部に連絡を入れておきましたが、多分救援は来ません。承知しておいて下さい。)
降りかかる斬撃を躱しながら彼女は強く歯軋りをする。その一撃一撃は先程より速く、鋭いものになっており、自分が長くは持たないことがわかってしまう。
再び懐に入り、屈みながら右足を狙う。それが読まれていたのか、関節部分から小型の実態ブレードのようなものが飛び出て、再びその一撃が防がれ、二機は距離を離す。
一瞬の静寂を、彼女の声が切る。
「………いや、案外いけるなもしれんぞ?ーーーーってのは?」
(……名案ですね。試さない訳にはいきません。)
そしてーーー
彼女はISを解除した。
◆ ◆ ◆
彼女が任務を遂行しているその時間に、突然黒ウサギ隊に連絡が入った。回線は軍部のもので、只事ではないことが分かる。
「こちらシュヴァルツェ・ハーゼ。どうしました?」
『古王祈大佐が救援を要請している。すぐに駆けつけてくれ。』
「わ、分かりました!皆!行くよ!」
「聞いたか!全員出撃準備!」
フランティスカは回線を切りながら、仲間に声をかける。クラリッサが反応し、皆に出撃準備をさせる。しかし、あの隊長が救援を要請した事など今まで無かった。というより、そんな事はあり得ないと思い込んでいた。それだけでも、敵の強さは計り知れない事が分かる。
……隊長……頑張って!!
六人は即座にISを展開し、指定された座標に向かう。言葉にこそ出していないが、全員が張り詰めるように緊張していた。それと同時に、隊長の事を案じていた。
何時もは速いと感じられるISの速度も、今までは永遠の様に感じられた。
『目的座標、近いぞ。戦闘準備をしろ!』
クラリッサから号令が入る。それに合わせて全員が武装を準備し、フォーメーションに着く。
『ハイパーセンサー、捉えました………あれは!?』
そして、ヴァネッサが見たものとはーーー
◆ ◆ ◆
(敵勢力の診断、ISデータ認証中ーーー該当データ無しと判断されました。機動予測不能。有効な機体運用方法を検索中ーーー検索結果は0件です。敗率99.9%と判断されました。)
純白のISーー白椿は無人機だ。それ故に高度なAIを積んである。
AIの話をする前に、一つ前置きが必要だ。篠ノ之束を含め、この世界のほぼ全ての人間がISにはISでないと勝てないと思っているだろう。白騎士事件を筆頭に、ISの強さは様々な方面で証明されている。つまり、ISを作る時には基本的に対IS用の装備が必要になる。ISの戦闘相手はISだからだ。
話を戻すと、この超高度な学習機能を持つAIも所詮は
この機体の最大の強みにして最大の弱み。それは、この超高度な学習機能である。数分という短さで驚異の成長を見せるそれはまさに天災の業である。だが、よくよく考えればおかしいのだ。
たった数分で彼女を超えられる程の機体制御能力を無人で生み出せるなら、世界は既に天災の手の中だ。というより、既存のISが全て過去の遺物になるだろう。
そして、その異常な成長速度から、彼女はその〝違和感〟に気付いた。そして、確信に至ったのは右足を狙った一撃をガードされたことである。まるでそれを知っていたかのような鮮やかなガードだった。それで彼女は確信した。
………このAI、ISデータとその人間の動きを記録し、次の挙動を予測しているんじゃないか?
それを思った瞬間、パズルの最後のピースがはまったような気がした。行動は速く、直ぐにISを解除し、パワーアシストのみに設定した。
ゆらりゆらりと一歩ずつ進んでいく。
敵は動かない。
一歩進む。
敵は動かない。
一歩進む。
敵は動かない。
大きく地面を蹴り飛ばし、敵IS目の前に着地する。が、敵は動かない。
………やはり、こちらがISを装備してないとなるとまるっきり何をしていいか分からない馬鹿だな。
右手でその黒い人形を掴み、引っ張る。流石に逃げないとまずいと思ったのか、両手の刀をあてずっぽうに振り回す。
………狙いのつかない剣など恐れる必要もない、折れろ。
左手で剣身を掴み、横向きに力を入れて圧し折る。刀というものはとても切れ味が良いが、横向きの力に滅法弱い。
ペキッという音とともに刀が落ち、その腕を掴んで、それを軸にして思い切り引っ張る。軋むような音とともに人形が引っ張られていき、胸から胴体にかけてが引き剥がれる。
すると、ラインアイが力を失い、真っ黒に染まる。両腕は力なく垂れ下がり、完全に機能が停止したことが分かる。
………最初は不味い展開だったが、蓋を開けてみれば所詮天災程度だったな。
(まあ、ご無事でなによりで『隊長!!大丈夫ですか!?』
ヴァネッサから通信が入る。上を見上げると、黒ウサギ隊の六人がこちらに向かって来ていた。
『ああ、大丈夫だ。』
と言いながら小声でShiningと言い、月光のみを部分展開して白いISを切り刻む。こんなものが世間に出回ったらたまったものではない。
風切り音とともに六人が降りてくる。
「………なんか心配して損した気分です。」
「えっ?」
「本当ですね、緊張していたこちらがバカみたいです。」
「ええっ?」
どうやら心配してくれていたらしい。というより、救援が来たということはあの男が手を回してくれたのだろう。彼に感謝をしながら、オラクルを解除。徒歩であの草の茂みに向かう。
「どこに行くんですか?」
「ちょっと拾い物をしてな。」
10分ほど歩くと、その場所にはまだ眠っている裸の少女がいた。その少女を背負い、六人の方に振り返る。
「その子は誰なの?」
「ああ?分からん、この施設にいたから保護した。」
「何処と無くボーデヴィッヒ少佐に似てますね。」
クラリッサがグヘヘと笑う。マジでやばいよこの人。
………まあ、作戦成功か?
(………及第点ですね。)
………おっと、こりゃあ手厳しい………
彼女は不気味に笑いながら、軍部へ戻って行った。
はい、簡単に終わりました。
いやぁ、無人機ってよくわからないですね。
次の次くらいにはIS学園に行けるかな?
いけるよな?