皆様ありがとうございます。
そこで、祝100を記念して、何かネタ話を書こうと思います。
何か案がありましたら、コメントによろしくお願いします。
「もしもし、チェルシーですか?聞きたい事があるのですがーーー」
夜にオルコット家の電話を鳴らしたのは、そのオルコット家の当主ーーーセシリア・オルコットだった。
「お嬢様、どうなされました?」
「あの演習の時、何があったのですか?」
彼女のメイドーーーチェルシー・ブランケットは、この質問を予想出来ていた。彼女がそれに疑問を持つことは当たり前のことであり、あの学園に行けば、副担任の教師の言葉で否が応でもそれを知らなければならなくなるからだ。
「ああ、特に何かあった訳ではありません。私はあの方に個人的な事を頼み、あの方がそれを曲がりなりにも実行してくれたーーーまあ、それだけです。」
「その依頼の報酬は何ですか?」
彼女は思わず笑ってしまう。そんな事は考えた事も無かったし、実際にオルコット家と彼女の間には何の取引も無かった。
「ふふっ、何もありませんよ。」
「本当ですの?」
「ええ、私は嘘をつきません。今度あの方と話す事がありましたら、私の連絡先を教えておいてくれませんか?」
「わ、分かりましたわ。信じます。では、伝えておきます。」
その反応に、思わず笑ってしまうチェルシー。
「古王祈という人間は、織斑千冬様といい勝負が出来る程の実力があるという噂を耳にしますわ。」
「ほ、本当ですの!?」
それは、ドイツのお偉いさんとの酒の場で聞き出したことだ。特に根拠があるわけではないが、彼女が
「で、では、そろそろ寝ますわ。」
「ええ、お休みなさいませ。お嬢様。」
電話が切れる。
………ふんふふーん、楽しみですね……一度、お話がしてみたかったのです………
チェルシーは可憐に微笑みながら、彼女の事を思い出す。あの幼い、黒く深い目を持つ少女の事を。
……何を経験すればあの様な目が出来るのでしょうか………
メイド服をパンパンと叩き、鏡の前に立つ。自分の目を見てみるが、そこには何時もの自分しか映ることは無かった。
………楽しみですわ………………
チェルシー・ブランケットは、窓から空を見上げていた。
◆ ◆ ◆
「え?俺がクラス代表?」
「一夏、おめでとう。」
「あ、ありがとう?」
クラス代表は、結局一夏に決まったらしい。クラスの皆はそれを喜んでおり、彼本人との温度差を感じさせた。
「でも、何で俺が?」
「それは、私が辞退したからですわ!」
突然セシリア・オルコットが立ち上がり、大きな声を出す。胸と腰に手を当てており、その姿は彼女が完全に復帰した事を表していた。
……試合終了直後はあんなに凹んでたのに………復帰早すぎだろ………
「初心者の筈の彼が私をあと少しで倒すところまでの実力があるのです。これは、一夏さんがクラス代表に相応しい事を証明しておりますわ!」
(まあ、多分恋の力ですよ。)
………いやいや、何が「一夏さん」だ……ちょろすぎだろ………
「では、クラス代表は織斑という事で異論はないな?」
「はーい!」
「いやー、私達は情報を売れる!織斑君は強くなれる!最後の一粒まで美味しいね!」
………一粒で二度美味しいだろう………
(コーンポタージュの事ですよきっと。)
………あーあるあrねーよ。
オールドキングははぁ、と呆れるように肩を落とし、窓側を向く。箒の横顔が目に入る。それに気づいたのか、彼女はこちらを向き、小首を傾げる。
……さて、これからどうするか………
「次の授業はISの操縦訓練だ。スーツを忘れたものは学校指定の水着を着ろ。」
そう言って織斑先生は出て行った。オールドキングは立ち上がり、耳にイヤホンを付けようとすると、女子共の噂話が聞こえた。
「ねえねえ、あの先生って結局何者なの?」
「ドイツの人なんでしょ?私達と同じ歳で教師やってて、本当に強いのかなー?」
「確かに、名前聞いたことないよね。」
「大したことないんじゃないの?」
彼女はそういう他人からの評価は気にしない人間だ。その為、その噂話は耳元から流れる音楽に遮られ、途中からは聞こえなくなった。が、そこに金髪碧眼の貴族が介入する。
「オールドキングさんは織斑先生といい勝負が出来る程の実力がありましてよ!」
チェルシーから聞いた事だ。
「えっ!?そんな訳ないじゃん〜。」
「そうだよ〜、モンド・グロッソでも圧倒的な千冬様がいい勝負が出来る人なんている訳無いよ。」
「本当ですの!本人に聞いてみますわ。」
近づいてきて、イヤホンのコードを引っ張られる。内部断線とかシャレにならないので、こういう事をするのは本当にやめて欲しい。
「わ、私はセ「どうしたオルコット?」
「オールドキングさんは、織斑先生といい勝負ができまして?」
何処からそんな話を聞いたのか分からないが、まあ間違ってはいない。
……いや、こいつ馴れ馴れしいな………
オルコットはハッとした顔をした後、こちらに頭を下げてくる。
「この前の模擬戦は本当に悪かったと思ってますわ。」
……まあ、口先だけの貴族じゃない……と言う事で、まあ……良しとするか………
彼女は右手を差し出す。オルコットは顔を上げ、それを握り返す。
「で、オールドキングさんは織斑先生といい勝負ができるというのは本当ですの?」
「ああ、まあそれ位なら。」
「「「えええっ!?」」」
「織斑先生といい勝負が出来る人間なんて、この世にいたの!?」
「確かに、織斑先生とオールドキング先生って仲良いよねー。」
「これは薄い本が厚くなりますよ!」
次は鬼教官の操縦訓練だと言うのに、随分と姦しいものだ。完全に大目玉フラグである。
「何をグズグズしている!!遅れた者は外周だ!」
織斑先生が教室に戻ってきて、怒号を飛ばす。一部の生徒がビクッとなり、織斑先生=怖いのイメージが定着しつつあることがわかる。
彼女が授業に出る必要は無いので、取り敢えず廊下に出る。暫く歩くと、この前模擬戦を行った第三アリーナに着いた。
………はぁ、全く何だってんだ……
(直接聞けばいいじゃないですか。)
………お前天才か。
彼女は後ろを振り向く。
「で、尾行とは何の用ですか?先輩?」
「あらあら、バレちゃった。」
そこにいたのは、青い髪を持つ二年生と思われる女生徒だった。
◆ ◆ ◆
このIS学園には、更識楯無という名前の人物がいる。
青いショートヘアとその手に持つ扇子は、彼女のトレードマークだ。
この学園で最強の生徒のみが名乗ることを許される〝生徒会長〟という役職に勤めている彼女は、名実共に最強の生徒だった。その上、彼女はロシア国家代表なのだ。その強さは、肩書きだけでも分かってしまうだろう。
それと同時に、彼女は〝更識家〟の当主である。更識家とは、日本の〝暗部〟と呼ばれる表には出ないような裏工作をする人々に対する、所謂〝対暗部用暗部〟というような組織である。その名は〝裏〟の人間なら知らない者はいない程だ。
そんな彼女が、何故オールドキングを尾行していたのか?
理由は簡単ーーー調べれば調べる程、彼女が怪しくなっていくからだ。
まずはオールドキングという名前の戸籍。その名前の戸籍は昨年に出来たばかりの戸籍で、偽装もされていないところを見ると、「私は裏ルートから戸籍を手に入れました」と言わんばかりの状態で全く手を加えられた痕跡がない。
次に古王祈という名前の戸籍。彼女の経歴は至って平凡だった。そう、彼女が12歳の時までは。
突然にドイツのIS配備特殊部隊ーーーシュヴァルツェ・ハーゼに所属。部隊を襲った軍用ラファール・リヴァイヴ四機を競技用IS単騎で全て撃破。その時に使用した彼女の専用機ーーーオラクルと呼ばれた青い
それに加え、部隊の成長速度だ。三年前までは目にとまることもない部隊だったが、今となっては世界で数えられるほどに強い小隊と化した。そこで教えていたのは、織斑千冬という話だが、これは本人から聞けたので、真実だ。だが、彼女は「二人だから教えるのは楽だった」と言っていた。そのもう一人は、恐らくオールドキングと呼ばれる彼女だろう。ますます訳が分からない。
最後に、監視カメラである。これは入学式数日前まで彼女にすら知らされず、聞いた時は衝撃を受けた。自分より年下の少女が教員を務めるなど、彼女には理解できなかった。
そこで、彼女は監視カメラでオールドキングの動きを観ていたのだ。セシリア・オルコット戦ではシャッターが閉まり、観客はそれを見ることができなかったが、彼女はそれを見ていた。打鉄を装備していたはずの彼女が、敵の装甲に触れた瞬間に、そのISへと姿を変えた事だ。聞いた事もない〝ISのコピー〟というシステムに、彼女は驚愕した。
……流石に怪しすぎるわ………何をするか分からないような人間を放置する程私は優しくないのよ………
「あらあら、バレちゃった。」
更識楯無は、その手に持つ扇子を開き、口元を隠す。その扇子には「不覚」という流麗な文字が浮かんでいた。
「途中からは隠れる気もなかったでしょう?」
その〝途中から〟というのに引っかかりを覚える。一体何時からバレていたのだろうか。
「ふふん、どうかしら。」
「はぁ、んで?用事は何ですか?まさかお茶の誘い?」
どうやら応対すら面倒な様だ。その煽ってくるような態度は彼女を少しイラつかせた。
………何かムカつくわね……でも平常心よ……平常心………
「単刀直入に聞くわ。貴女何者?」
「オールドキングだ。」
即答された。相手も聞きたい事がこれではない事は分かって言っているのだろう。
「そういうふざけた態度はお姉さん良くないと思うな。」
「髪を青く染めてる日本人にそんな事言われても………」
「これは地毛よ!」
彼女は純粋な日本人だが、代々受け継がれているその髪の色は青色だ。これは更識家を表すシンボルでもある。
「先輩、そろそろ帰っていいですか?」
「ダメよ。肝心な事を聞いてないもの。」
「はぁ……何ですか?」
彼女は唾を飲み込み、それを切り出す。
「最終通告よ。貴方は何者?」
場の空気が一変する。
少女は濃緑色の髪を棚引かせ、こちらにニタリと笑いかける。その笑みは狂気を含んでおり、その目には不敵の色があって、彼女の纏う空気は歴戦の戦士のそれだった。
「駆け引きは苦手なんですよ。だからーーー」
「私に勝ったら教えましょう。」
◆ ◆ ◆
『もしもし、こちらデュノア社です。』
「クロエ・クロニクル。社長と交渉。代わって。」
クロエ・クロニクルはデュノア社に電話を掛けていた。理由は勿論、彼女の専用機の為である。
電話応対はそれで察したのか、一言断り、保留の音を鳴らす。
暫くすると、音が途切れて、デュノア社長に代わる。
「もしもし、代わりました。デュノアですが。」
「私。オールドキング、代理人。第三世代機のデータ盗った。送信。」
所々と言うより、ほぼ助詞が無いので、何を言いたいのか分からない。
二人の間に沈黙が漂う。
「えっと、私はオールドキングの代理人です。第三世代機のデータを入手したから送信しますってことかな?」
思わず優しい口調になる。彼も、一応は一児の父親だった事がある。最も、諸事情で子供に会うことは叶わないが。
「そう。」
「……えっと、それは、どの機体のデータかな?」
「ぶるーてぃあーず。」
感情の篭らない口調でとんでもない事を言い出す。
しかし、それをどうやって盗んできたのかが分からない。
「それを……何処で?」
「秘密。送信した、見て。」
社長室のデスクに配置された空間投影型ディスプレイを開く。個人用のパスワードを入力すると、一通のメールが来ていた。ウィルスチェックをし、それを開くと、確かに
「確かに受け取ったよ。確かにこれがあれば作れるけど……本当あんなものを作るの?」
「追加注文、まずはーーー」
◆ ◆ ◆
「ねえねえくーちゃん。」
「何ですか束様。」
くーちゃんと呼ばれた少女は、天災と共に空を見ていた。空は暗く、星々が煌めいていた。
「明日はいっくんのクラス代表を決める模擬戦だね。」
「それがどうしました?」
うーんと唸る天災。
「いっくんはイギリスのゴミには勝てないって思うんだ。」
「そうですか?彼の実力なら、倒せない事は無いと思いますが。」
風が吹き、その銀色の髪が棚引く。
「いや、あのゴミクズが鍛えたところでいっくんは勝てない。だから、もっと強くなって貰わないとね!」
「何をするつもりですか?」
機械的なウサ耳をピコピコと動かす。
「取り敢えず、無人機を送ろっか!」
天災の「いっくん育成計画」は、今始まる。
はい、生徒会長さんですね。
いやー楯無さんはいいキャラですよ。キャラが濃すぎるレベルで。
それと、ブルー・ティアーズのデータをどこで手に入れたがわかりましたか?