大体レベル70くらいの新米冒険者! 作:松脂松明
洞窟の奥深くで息を吐く。じめっとした空気に血の臭いが混ざって、最悪の空気だ。現在、俺たち“
「とりあえず最後まで空気があって良かったな」
「良かないわよ。火の魔法に制限がかかって、やりづらい事この上ないわ」
なんでもモノが燃えるには空気を消費するらしい。そのため、ミュゼは枷をはめられた状態で依頼に参加している。それでも単なる魔力の塊である〈マジックアロー〉でかなり貢献していたが。
「お宝もないけど、巣くっていた敵は全部倒したから、調査が入れるようになるね」
「なにか掘れるといいですわね」
こうした単なる洞窟の探索は、鉱床探しを兼ねている。古代文明時代の坑道であることが稀にあるからだ。だが、世の中そんなに上手くいかないはず。人の手が入っていた様子は欠片も見当たらない。
三級任務らしい点といえば難易度が高いところだけ。深く入り込んだら死ぬ洞窟だったり、単純に魔物の数が多かったりするだけだ。そこを見極めて侵入不可なら埋めてしまう。ここは奥底まで来れる時点で有望な場所になるわけだ。何もないと思うけど。
鎖を振って血を落とす。俺たちが生存可能と言うことは魔物もそうだということで、大量の魔物がいた。【師匠】の鉄鎖術は特殊なのだろう。狭い場所でも使える技が多い。結果、俺が先頭で敵を打ちのめし、後方からミュゼがサポートする形になった。もう少し広ければ、マルグリットも前線に出れて、効率も上がるだろう。
「うちはこうなると戦士過多だねぇ。僕が出る余地が無い」
「方針を発する人間が安全だと、こっちも安心できる。そういう意味で言うと一番キツいのがアランだ。腕前は向上させ続けなければならないが、軽々に前に出てもいけない。どうしても前に出たいときは俺が中衛に回るよ」
「こう言ってはなんですが、人の出入りが無いチームで良かったですわね。リーダーの資質を問われずに済みます」
アランは手持ち無沙汰なのが精神的に辛いようだ。見方によっては仲間だけ働かせているようにも思えるからな。ただ俺たちからすると、そうでなくては困るのだ。責任感があることにも通じるから。
アランは剣技に才能があるし、魔法にも理解がある。俺たちは手足に過ぎない。最悪、アランさえ生き残れば“
「アランぐらい天才肌の人間もいないから、あとはどんと構えて置けばいいのよ。この際チーム外の発言は無視無視」
“
いわゆる自分ならもっと上手くやれた、という手合いが多いのだ。ミュゼとマルグリットは魔法があるので言われることは少ないが、肉体を使う俺やアランに対してだ。俺は知らんが、このチームはアランのカリスマによって成り立っているのだ。なので感想は、無責任な他所の連中がよく言う、となる。
「まぁ何か言ってきたら喧嘩は買わないとな」
表向き冒険者同士の戦闘は禁止されているが、何分荒っぽい商売である。命を奪わない程度なら黙認されることも少なくない。この辺は支部の空気によるそうで、マスターが威厳のあるウィッカのようなところでは全く起こらなかったりする。
ちなみにこのザリオンは黙殺型である。鍛冶師自体血の気が多いので、喧嘩がありふれているためだ。
「“水蓮”との合同任務まで、あと二、三件回るか? ハズレばかりで経験が足りないだろう」
「そうだけどね。イサオ、君の体力で考えちゃいけないよ。休みが必要だし……“水蓮”との連携を確かめる場も必要だろう」
これが“
現に鍵開けだとか、トラップの解除ができる人材がいない。強いて言えば俺が離れた場所から無理やりぶち壊して終わらせるくらいだ。
「その辺は俺が覚えないと。遺跡に宝箱とか本当にあるのかな、という疑問はあるが……」
「そのあたり、“水蓮”は器用そうよね。戦闘力は私たちに比べて劣るでしょうけど。あんた一人で勝てるんじゃない?」
「エディットが何をするか分らんからなぁ。よーいドンじゃなくて良ければやりようもあるが」
「冗談で言ったんだけど、本気でできるのね……」
「その辺は宿で話しても良いから、そろそろ出ようか」
アランの一言で俺たちは陽の光を求めて動き出した。やっぱりアランがいないと駄目だな。まとまりが無さすぎる。
地上に戻って依頼達成の報告をする。それはいいのだが、こういった場所の探索では報告書を書かなければならない。俺には向いてない作業だ。意外にもミュゼも苦手だったりする。彼女は読むのは良いが興味がない事柄を覚えていない。結果として最も書き慣れているマルグリットをアランが補佐する形で進行する。
「それでもイサオは読み書きもできるし、冒険者にしては学がある方だと思うよ。世間知らずも大分解消されてきたし」
「まぁ書いてるのは図だけどな。世間に関して言えば街ごとに違って、かえってよく分からなくなってきたぞ」
俺に文章を膨らませる才能などない。が、先頭に立っていたので洞窟の地図を作る。山で鍛えられた方向感覚により形だけは合っているはず。それが芸術的でなくともだ。
ちなみに今回探索した洞窟は、賊が拠点にしてもなんなので、埋めることが後日決まった。報酬を払った人だけが馬鹿を見る形式だが、一発当てようという依頼人以外は冒険者組合が依頼人だったりする。こんなのでも本来三級任務なので、下手な四級の仕事より報酬が多い。よって俺たちにはどうでもいいことだった。
「と、いうわけで“水蓮”と鍛錬の日になりました」
「まぁ、そうなるわな。俺も鉄鎖術使うやつなんて初めて見たから助かる」
後日、
「お前らよく鎖が当たらないことを信じて前に突っ込めるよな。普通は味方だろうと、危ないやつ扱いしそうだが」
「そこは付き合いの長さですわね。当たっても死にはしないというのもありますけれども」
「指先ぐらいに細かく扱えないと鎖使いなんて名乗れないぞ。というか、俺はイーから罠について教わりたかったんだが」
「……ダウジングを教えてくれるなら」
互いに学ぶことが多い。唯一エディットだけがマイペースに本を読んでいる。まぁそこはミュゼに任せよう。あの二人相性いいみたいだし。
午前中の戦士組は陣形などを話し合い、俺の鎖が飛ぶ中で動く実験などをした。マルグリットは神官セスから使える魔法についてすり合わせていた。マルグリットが親しくしているとなんとなくムカついたあたり、俺は心が狭い。
その分、午後は元猟師であったイーから典型的な罠の仕組みと解除方法を教わった。俺は山での生活で罠猟はしていなかったためだ。試しにこれらの罠にダウジングしてみたが、悪意も生命力もないので反応しなかった。だが、鎖に伝わる微妙な違和感を覚えたので良しとしよう。イーも俺からダウジングの方法を教わったが、習得に苦労していた。こちらは逆に曖昧なものを感じ取る技術だからなぁ。
それからも二度ほど連携訓練を行い、ついに“水蓮”との合同任務まであとわずかとなった。
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