大体レベル70くらいの新米冒険者!   作:松脂松明

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遺跡攻略後

 無事に遺跡攻略を成し遂げた俺たちは、盗掘を防ぐために大半が居残り、ジェイとセスが報告へと向かった。二人曰く大物退治に参加できなかったのでこれくらいは……ということらしい。あんな一歩間違えれば死ぬような相手と、戦闘しなくて済んだことを喜べばいいのに、と思う。結果としてジェイ以外は無傷で戦闘を終えたわけだが、無傷か戦闘不能かの二択だけだった気がする。

 なんでも探索者たちに占有権があるのは攻略中に見つけたものだけらしい。その後の発掘で出た代物などは国のモノとなるそうな。船や設備などの持ち運べないものは査定額が支払われるとも聞いた。よって、中ではエディットたちが今も何かないか探している。俺たち“不運(バッドラック)”は遺跡の前を占拠中だ。

 

 

「あー、大仕事の後は気だるいな。落差が激しすぎて、脳みそが変になる」

「あんたは元々、どうかしてるでしょ」

「違いない。携帯食料食うかなー、街の食堂まで待つかなー」

「しかし、冒険者になった後で神官らしい仕事をすることになるとは思いませんでしたわ。アンデッドや呪い……これが上位冒険者の世界なのですわね」

「まぁ特に金にはならんが。吸魂の宝石二つとも教会で封印するんだろ?」

「当然でしょう。片方に至ってはあの邪悪な死霊術士の魂が入っているんですから」

 

 

 確かにな。あの変人が入った石など欲しくはない。ただ、おとぎ話の勇者が神官や聖女を連れている理由が分かった。ああいったケースに対応できないからだ。うちはマルグリットが加入してくれて良かった。重要度が急上昇である。

 ただ特殊な武器ならそれも覆せる。俺の鎖も祈りや回復などには使えないが、非実体の敵を拘束、攻撃することができた。

 

 

「やっぱり、勇者は特別な剣が無いとな。こういう依頼があったら、アラン用に探そう」

「まぁ物語に出てくるのもあるけど、模造品なら教会が高額で売ってるわよ」

「マジで?」

「あれは模造品ではなく、聖銀製の武具なのですが……ただでさえ貴重な聖銀に更なる改良を加えた代物ですから、アレが適正価格ですわ」

「普通の銀製の武器でもある程度は効果があるとかも聞くね。いや、銀なんて鉄より柔らかいから使えないけど」

 

 

 いざという時のために銀製のナイフを持っている冒険者も多いらしい。ただ下位冒険者が、自我を持つレベルの悪霊やアンデッドに遭ったらその時点で逃げる他ないとも。苦労する世界だねぇ。

 

 

「由緒ある武器も【師匠】なら持ってそうだが、今となっては連絡手段も無い……くれるかどうかも怪しいが」

「聖銀の武具もわたくしのお師匠様なら多少は融通が利くかもしれませんが……高価なのは変わらなそうですわ……」

 

 

 マルグリットの師匠は野心があったと聞いたからな。格安で売ってくれることはあるまい。

 そんなことを駄弁っていると、遺跡の扉が開いてエディットたちが戻ってきた。

 

 

「おー、なんか収穫あった?」

「研究記録を要約してきたのと、イーが宝箱を見つけた」

「宝箱って本当にあるの!?」

 

 

 そりゃおとぎ話には付き物だが、そんなコテコテの代物が実在するとは思っていなかった。中が気になるところだ。やはり昔の金貨が詰まっていたㇼするのか? それは無いか。イーが持ってきている。

 

 

「何で宝箱ごと持ってきてるんだ?」

「……瘴気や毒を散布する罠があったら、逃げ場がない。少し離れたところで開けてくる」

 

 

 そう言ってイーは離れた林の中へと入って行った。ついて行きたかったが、要らぬ心配をかけるわけにはいかない。彼女は誰も巻き込まないよう一人になったのだから。

 心配している時間は短かった。イーはすぐに宝箱を担いで戻ってきた。

 

 

「……お待たせ」

「おー! 中身は……古びた剣と衣服?」

「ああ、なるほど。宝箱って要は私物入れなんだ。わざわざ後世に残したいものって、そうそうないモノだから……でも魔法使いが剣?」

「この剣……曇っていますけれど聖銀で造られていますわね。恐らくアンデッドが予想外の行動を取ったりするのを防ぐために、自身で対処方法として持っていたのでは?」

 

 

 噂をすれば影。聖銀の話をしていたら聖銀が出て来た。あの祭壇など、わずかに位置がズレるだけで敵対的な魂が出てきたりもするのだから、当然か。だが、魔法使いであった親玉は結局使うことなく死蔵されたのだろう。衣服は……アンデッド化した後は裸だったからな。わざわざ着替える必要はない。それでも若干清潔感が無いように感じるが。

 

 

「うーん。惜しいけど所有権はイーが持ってるからな。アランが使う物はまたの機会になるか」

「……欲しいの?」

「折角だからアランに勇者の証が欲しいと話していたところだったんだよ。色々あってアランは勇者見習いなわけだ。そうなると物語的に特別な剣が必要になるってわけだ。これなら丁度いい長さだしな」

「……うーん」

 

 

 イーがエディットと小声で話し始めた。いやイーはいつも小声だが、内緒話という意味でだ。エディットも本を読まずに耳を傾けていた。しばらくすると、イーはこちらに向き直った。

 

 

「……安く売っても良いよ。使う人いないし」

「おお! でもジェイは大剣使いとはいえ、剣士ではあるわけだろ? いいのか?」

「セスはああ見えて優秀。短時間なら光の力を他者に付与できる。時間はかかるから即座にとはいかないけれど」

「マルグリットはできる?」

「できませんわ。自分ではなく他者に、となるとある種のセンスが必要になりますの。それは感覚的な話で訓練を続けても得られるかどうかは賭けですわね」

 

 

 マルグリットがあっさりと認めたあたり、本当に神官セスの方が稀なのだろう。それにマルグリットも暗に自分自身にはできると言っている。聖銀の剣をアランが手に入れれば、見栄え的な話でなくチーム全員が魔法的な存在への対処方法を手に入れることになる。これはチャンスだ。

 

 

「アラン」

「まぁ僕が決めないといけないよね。一応だけど金額はいくらぐらいかな?」

「……金額は報酬の十分の一。ただし、今回の評価査定を六対四で私たちの功績を高く申告して欲しい」

「マルグリット、相場的にはどうかな?」

「修繕費がかかっても破格だと思いますわ。ただの聖銀の剣ではない気もしますし……しかし評価を?」

「私たちは巨大骸骨戦に二人しか参加していない。このままだと同じ六対四でも評価は私たちが不利になる」

「止めさしたのエディットなのに?」

「魔法使いの世界は狭いから。簡潔に報告すると組合には軽く見られる」

 

 

 そこで俺たちがエディットがいなければ勝てませんでした。と言えばいいわけだ。事実だし、証言することに問題は無い。それにしても合同任務もチーム毎に査定するとか、組合も案外ケチ……いや、それは前から分かっていたことだ。それにそうしなければ、おんぶにだっこだったチームが、高く評価されたりと問題も出てくるわけだ。

 

 

「よし。ジェイが許してくれるなら、それでお願いするよ」

「おおっ、アランが珍しくリーダー権限を使った!」

「いや、前に出ず目立てとか無茶を言っていたのはイサオじゃないか。これなら非実体の敵を倒せるから、僕も活躍の場が増えるからね。それに……魔族にも良く効くかもしれないし」

「そうなの?」

「場合によるとしか言えない。魔族相手は“不運(バッドラック)”の方が多いから分かると思うけど、魔族は個体ごとに種族が違うと言っていいぐらいだから」

 

 

 確かにそうだ。形状だけでなく思想も含めてだ。アランの手前口には出さないが、人を殺していない魔族もいた。魔族とは何かと聞かれて、詳細に説明できるやつはいないのではないだろうか。

 

 その後。戻ってきたジェイも同意し、聖剣(仮)も我々のものになった。アランが見つけた宝石で十分の一がかなり高くなったりしたアクシデントはあったが、聖銀の剣は無事手入れを受けて返って来たのだった。




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