キヴォトス生徒、スタンド使い概念   作:砂糖多呂鵜

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『先生』が来る! その①

 

 

 Stand[stˈænd スタンド]

動詞:立つ、立っている Stand up.

 

(中略)

 

stand by:(…の)そばに立つ;(…に)味方する。

stand up to A:Aに勇敢に立ち向かう。

 –アクセスアンカー英和辞典(第二版 P1010〜1011)

 

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

 『学園都市(がくえんとし)キヴォトス』。それが、この一つの世界の呼び名である。

 ギリシャ語で『箱舟』を意味するその名前を、一体誰が名付けたのか?いつから呼ばれ始めたのか?それは謎だ。誰もそれを気にしないし、疑問にも思わない。それが当たり前だからだ。

 

 

 

 ともかくその世界には、国一つにも値する影響力を持った学園が、アメリカ合衆国の州のようにいくつも点在していて……

 思春期の『少女』たちは自分が所属する学園を、自分が信じるべき『正義』であり、『』であり、『』だと認識している。

 なぜ『少年』が存在しないのか?それもまた、一つの謎である。

 

 

「……」

 

 その世界の行政を担う『連邦生徒会』が存在する、『D.U地区』。

 生徒会のビルから離れた外郭地区にあるビル、白い部屋に大きな窓のあるオフィスで、一人の男が手紙を読んでいた。

 

 

 

 連邦捜査部の先生へ

 

 こんにちは。私はアビドス高等学校の奥空アヤネと申します。

 

 今回どうしても先生にお願いしたいことがありまして、こうしてお手紙を書きました。

 

 単刀直入に言いますと、今、私たちの学校は追い詰められています。

 

 こうなってしまった『事情』は、かなり複雑ですが……。

 

 どうやら、私たちの学校の校舎が狙われているようです。

 

 今はどうにか食い止めていますが、そろそろ弾薬などの補給が底をついてしまいます……。

 

 このままでは、暴力組織に学校を占領されてしまいそうな状況です。

 

 それで、今回先生にお願いできればと思いました。

 

 先生、どうか私たちの力になっていただきませんか?

 

 

 

 今時珍しい、アナログな手紙の文字には、何か強い意志が感じられた。

 男はその手紙を、元の折り目の通り丁寧に折りたたみ、胸のポケットにしまう。

 

「……アビドス、高等学校」

 

 短く、学校の名前を呟いた。

 冷めたコーヒーを一気に流し込むと、やがて決心したように腰を上げ、座っていた椅子にかかっていたコートを、投げやり気味に羽織った。

 

アロナ、仕事の時間だ。サポートを頼む」

 

『分かりました!すぐに出発しましょうッ!』

 

 その部屋に人影は男一人しかいない。彼の声を追っかけて聞こえた女児__『アロナ』と呼ばれた声は、彼の傍らにあるタブレット端末から聞こえてきた。

 タブレットの画面には、真っ青な海の上に建てられた、今にも崩れそうな学校の教室と、透き通るような水色の髪をした少女が映っている。

 

『気を付けてください先生。アビドスはその昔、かなり大きな自治区でしたが、近年砂漠化の影響で、町はかなり厳しい状況になっているようです……砂漠のド真ん中で遭難する人もいるのだとか!』

 

「ありがとう。そいつは聞けて良かった。『登校中に餓死』なんてしたら、笑い話にもならないからな……」

 

 『先生』と呼ばれた彼は、笑顔でそう返すと準備を進める。

 部屋の空いた窓からは、一筋の青い風が吹き込んでいた。

 

 

 

 

先生(せんせい)』が()る! その①

 

 

 今年も早いもので、もう5月になる。

 ポカポカ陽気で、晴れ晴れとした____みんな同じ気分じゃあないと思うけど____そんな気分で、学校に向かう途中。

 私、『砂狼(すなおおかみ)シロコ』はそれを見た。(苗字がヘン?ん…センスがないね)

 

「…ん…ヘンな鳥」

 

 澄み切った真っ青な空を、11___いや『12羽』の小さな鳥が飛び去って行った。

 それ自体は別に大したことじゃあないのだけれど、問題は鳥の見た目。群れの中の一羽が少し近い距離に来た時に、私のけっこう良い視力がその姿を見た。

 顔はうん、よく見る鳥……ツバメだとかハトだとかの小鳥の形をしてる。目はクリッ、としてた。

 問題は首から下で、まるで剥かれたバナナの皮みたいなのが首についてるし、クジラのしっぽみたいなヒレまでついてる。体はまるでスポーツカーのようにピカピカだし、おまけに翼の模様が、何か英単語のようになっている。読もうとしたら飛び去ったので、詳しくはわからなかったけれど。

 

「もしかして、新種?」

 

 しかもイッパイ!ダーウィンもブッ飛ぶ大発見!

 私はすかさず自転車を止めて、いつも持ち歩いている愛用のドローンを取り出した。何か証拠を残せば、私たちの抱えている『問題』の解決の糸口になるかもしれない……

 

 すぐさまいつも持ち歩いている撮影用のドローンを取り出して、あの鳥たちを追う。

 でも……『奇妙』なのはそこからだった。

 

「……ん、え、あれ…?」

 

 『映っていない

 確かにあの鳥たちの軌跡を追っているのに、撮影している映像には鳥の影など一ピキたりとも映っちゃあいない。私の『視力』はあの鳥たちを捉えていたのに、ドローンのカメラにはただの青空が広がっているだけだ。

 

「いったい、どういう……ッ!?」

 

 そして『第二』の奇妙な出来事は、ほんの数秒目を離した隙に、あの鳥たちがスッカリ姿を消していたこと。

 自転車のギアを上げるように、急にスピードを上げて飛び去ったって訳じゃあない。まるで最初から何もなかったかのように、綺麗サッパリすっきりいなくなってしまったのだ。

 

 目の錯覚……?いや、にしたってあまりにもハッキリしすぎてる。そんな曖昧なものじゃあなかった……。

 

 シャボン玉のように疑問が増えては消えて、増えては消えていく。なんだかヘンな気分になってきた、ドードー巡り、イヤな感じがしちゃう。

 

 

「____すまない、()()()()()()()()?」

 

 

「ッ!?」

 

 『ヘンなこと』ってのは、一度起こると続けて起きるもの____これが三度目の『奇妙』な出来事だった。

 

 

 

 

ドドドドドドド______

 

 

 

 私の目の前に、『男の人』が立っていた。

 

「(ん……大きい…!180以上はある)」

 

 身なりの良い人だった。

 仕立ての良い白地のスーツとコート。ボブカットにスラリとした長身、ルックスもイケメンだ。

 手にはタブレット端末と、簡素な小包を持っていて、両目はばっちり私を見ている。私のおっかなびっくりしてる様子を見てなのか、首をかしげてこう続けた。

 

「何か、()()()()()しまったかな。道に迷ってしまってね。モシモ知っているのなら、道を尋ねたいんだ」

 

「ん……平気。さっきちょっとヘンなことがあって、驚いてただけ」

 

 その人の声に、恐怖は感じなかった。

 初対面ではほんのちょっぴり圧倒されてしまいそうな、堀の深い顔とは裏腹に____多分、外国人さんだと思う。『驚かせて』を『オドカセテ』と言い間違えていた____とても優しくて、知性を感じる暖かい声音だった。

 外国人なんて初めて見た……。そもそも、ココで()()()()()()()()()が珍しいのだけれど。

 

「そうか。それなら良かった。地図を頼りに来たんだけど、どうも地形が少し変わっていたようでね。見たところ君はここに詳しそうだから、少し聞いてみたんだ……そう時間はとらせないよ」

 

「ん、大丈夫。それより、どこに行きたいの?今のここには、行けるところはそう多くない」

 

『アビドス高等学校』に行きたいんだ」

 

「えっ?」

 

 その人が発したその単語に、一瞬気を取られた。

 だってそれは、()()()()()()だったから。

 そしてその人が次に発した言葉は、もっと私を驚かせた。

 

 

「自己紹介が遅れたね____」「俺は連邦捜査部『シャーレ』の顧問」「皆からは『先生』って呼ばれてるから、そう呼んでくれて構わない」

 

「アビドスを訪ねて___」「この街に来た…

 

 

 『シャーレの先生』。

 その呼び名の人のことはウワサで聞いたことがある。最近になって突如現れた、キヴォトスの外の『大人』で……生徒たちの揉め事やいろんな人の頼み事を何でも解決しちゃう、凄い人だと。

 

「シャーレの先生が……『うち』のお客さんだったんだ」

 

「そういう君はもしかして、アビドスの生徒なのか?」

 

 確認、というよりは『確信』を持ったような言い方で尋ねてきた。

 

「ん。私の名前はシロコ。『砂狼(すなおおかみ)シロコ』。名前で呼んでくれて構わない……」「アビドスに行きたいのなら、私が案内してあげる、()()

 

「ありがとう。それなら()()()、君のお言葉に甘えるとしよう」

 

 

 

 後になって思えば……その出会い方は確かに『奇妙』だったけど。

 それは私の、私たちの『眠れる運命』を目覚めさせる出会いであったと断言できる。

 『人の出会い』は『引力』。『引力』とは『運命

 これも今になって……この出会いの()()()()()()()()()()()()が思うことだ。

 それはこの世に溢れる愛のすべてで、万物に平等に流れる『』のように……世界を流れて形作られていくものだと。

 

 これは、私たちの『青春』の物語……()()()()の吹く物語だ。

 

 

 ◆

 

 

「だからさァア~~~!どんなマジックを使ったら『()()()()()()()()()』と『()()()()()()()()』が人間を虎ッころに変えるってのよ~~~!」

 

「『セリカちゃん』落ち着いて!問題文にキレたってどうにもならないでしょ」

 

「うんにゃァアアア~~……」「『国語』は駄目なのよォオ~~、『国語』はァアア~~……」

 

「セリカちゃんだいたいの科目苦手でしょ」

 

「『山月記』ですねえ、私が教えますよ~✑ここの問題はァ……」

 

 砂漠地帯に隣接した地域にその学校____『アビドス高等学校』は存在した。

 子供の学び舎と言うには、その校舎は塗りたくられたように砂で覆われており___入り口はほんの3、4歩いただけでも靴に汚れがこびりつかんばかりであった。

 その校舎の中でも、比較的掃除が行き届いている部屋に、シロコは先生を案内した。

 

「ただいま」

 

「あッ、おかえりシロコ先輩!遅かったじゃあ……え?」

 

 部屋で国語の課題に大苦戦していた、黒髪に猫のような耳が生えた。『セリカ』と呼ばれた生徒が、シロコとその傍に立っていた長身の男の存在に気付いた。

 特に男の存在を目にすると口の動きを止め、その顔が一気に困惑と驚愕に染まる。

 

「し、シロコせんぱい!?だ、誰なのその人!??外国人さん!?」

 

「わあ、シロコちゃんが年上の彼氏を連れてきましたァ♡」

 

「と、年上の彼氏ィ!?だ、駄目ですダメですゥッ!み、認めませんよそんな、ハレンチな!?」

 

「……」

 

 金髪の育ちがよさそうな生徒の言葉を皮切りに、皆口々に騒ぐ。特に眼鏡をかけた耳の長い生徒の反応は顕著で、そのとんがった耳まで真っ赤にして焦りを隠しきれないでいた。まるで熟れたリンゴのようだ。その想像をして、先生はほんのチョッピリ顔をしかめた。彼はリンゴが苦手である。

 確かに男の人が来るのは珍しいし、友達が連れてきたら猶更動揺するだろうが___だからってこんなに混乱するか?シロコは少し困った。

 

「……なかなか、個性的な生徒たちのようだな」

 

「ん。私の友達。___みんな、この人はお客さん」「というか……アヤネが呼んだんじゃあなかったっけ」

 

「え?わ、私ですか?」

 

「『シャーレの先生』。うちに用事があるんだって」

 

「シャーレの……先生!?」

 

 真っ先に冷静を取り戻したのは、一番混乱していた眼鏡の女生徒___()()()と呼ばれた少女だった。

 眼鏡の生徒の疑問に答えるように頷く。先生は一歩前に出ると、コートのポケットに入れた身分証を見せて口を開いた。

 

「連邦捜査部シャーレの顧問だ。どうぞ、よろしく頼む。アビドスのみんな」

 

「……と、いうことは!『支援要請』が受理されたんですねッ!」

 

「ああ。この学園が置かれている()()は理解している………すまなかった。謝って済むことじゃあないが、シャーレの対応が遅れた所為で、君たちに苦難を強いてしまった。せめてもの詫びをさせてくれ」

 

 そう言うと、先生は躊躇いなく頭を下げた。

 迷いのないその態度に、目の前にいたアヤネが困惑の表情を浮かべる。

 

「いえいえそんな、頭を上げてください!でも良かった……これで『弾薬』や『補給品』の援助が受けられます」

 

「この証明書に同意してくれれば、すぐにでも譲渡しよう」

 

 そういうと先生は、持っていたタブレットを操作して___操作の仕方がチョッとぎこちなかった___『物品譲渡証明書』と書かれたファイルを提示した。

 前に立っていたアヤネが受け取り、書面を確認する。

 

「……確認しました。ありがとうございます!」「___あ、『ホシノ先輩』にも教えてあげないと……」

 

「『委員長』なら『いつもの場所』で寝てるんじゃあないの?私、起こしてくる」

 

 セリカはその『ホシノ』なる人物のいる場所に見当がつくのか、伝えるといそいそと教室を出ていった。

 彼女の背中を見送ると、先生はスマホを取り出してどこかへ連絡をかける。やはり、操作はチョッピリぎこちなかった。

 

「___そういえば先生、()()()()()()がまだだった」

 

 シロコが思い出したように言う。

 彼女の言葉に反応して、金髪の生徒が前に出た。

 

「私は二年生の『十六夜ノノミ』っていいます☆」「趣味は『ショッピング』でェ~~~$」「好きな音楽は『リアーナ』と『カネコアヤノ』です♪」あとメロンが好きですねぇ〇

 

 かなり活発な生徒のようだ___スタイルもバツグン。

 彼女に続くようにして、ほかのメンバーの紹介も続いた。

 

 

・アビドス高等学校一年

 奥空アヤネ(15)

 趣味は骨董品集め、家計簿をつけること

 好きな本は『銃・可愛い・青春』、『ストリート・オブ・ヤンキー』シリーズ 

 

・アビドス高等学校一年

 黒見セリカ(15)

 趣味は貯金……らしい

 好きなアニメは『ピンクダークの少年』(特に第四部が好みとのコト)

 

・アビドス高等学校二年

 砂狼シロコ(16)

 趣味はジョギング、ライディング、トレーニング……その他諸々の運動

 好きなものはチキンソテーと、フルーツ味のカロリーバー

 

 

「……あとは今いないホシノ先輩で五人。これが私たちで、今のアビドスの『全生徒』」

 

「ありがとう。改めて、よろしく頼む」

 

「ん。……そういえば、先生の名前を聞いてなかった」

 

「ん?……確かにそうだな。すまない。『俺の名前』は_____」

 

 

ダダダダダダダダァァァァ_______ッ!!

 

 

『ッ!?』

 

 先生が自分の名前を名乗ろうとした瞬間、それを遮るかのように、外から『銃声』が鳴り響く。

 

「今のは、まさか……ッ!」

 

「____ん、ごめん先生」「()()()()()()()()()()()が来たみたい」

 

 

 




 シロコの好きな食べ物とかノノミの好きな音楽とかメロンとかは私の妄言です。イメージに合いそうなのをチョイスした。
『書かれてない』なら好きにやらせてもらうぜ。
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