キヴォトス生徒、スタンド使い概念   作:砂糖多呂鵜

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『先生』が来る! その②

「なぁア~~~『古事記』ッてよォ~、知ってるかァあ?」「お話だよ()()()()!」「しかも『神様』の話だ!アタシら人間よりもずうッとタメになることをよォ~、してきたんだぜェ?」

 

「聞いたことはあるわね」「その神様ってのが、ゴキブリみてーにウジャウジャ生まれるんだろ?」

 

「おまッ、ヤな例え方すンなよォ~~~!」「私虫キライなの知ってるだろォ~?」

 

「へェ~!お前モノシリだなァ!」「で、『本題』はそこじゃあねえんだ!」

「そん中によォ~~」「引きこもりの神様が()()()()()()()()()()()って話があんだけどさァ~~~!」

 

 

 

「なんか今の状況とソックリだなァア~~~ッ!?外で騒げばよォオーーーッ!!」

「『引きこもり』は『巣穴』から出るってわけだなァッ!!アタシ()()()()()ッ!!」

 

 

ガババババババババッバババババァッ!!!!!

 

 

 アビドス高校の校舎の外には一様に、ドクロのマークをあしらった『ヘルメット』を被った少女たちが並んでいた。

 手には『SG550自動小銃(アサルトライフル)』を、まるで子供のオモチャのように掲げ、所かまわず鉛玉をブッ放している。

 

「早く出て来いよなァ!窓から顔だけ()()()()()みてーに覗いてねーでよォ~~~ッ!」

 

「降りて戦う根性が『あれば』の話だけどネェ~~~ッ!」「この『()()()()』がッ!!」

 

「今が攻め時だぜおめェーらッ!」「勝ったらあまァ~いジュースとスナック奢ってやるぜッ!」

 

 荒々しい口調とは裏腹に、足並みをそろえた陣形で学校へ突撃を仕掛けてくる。

 アリの行軍のようにこちらへ向かってくる彼女たちを窓から見ていたシロコは、苦々しく歯噛みした。

 

「アイツら、性懲りもなく……ッ!」

 

「『カタカタヘルメット団』ですッ!武装集団の一味!」

 

 シロコはすぐさま、愛用の突撃銃(アサルト・ライフル)ホワイト・ファング】を構えて、応戦の準備を整えた。

 

 

 ガララッ!!

 

 

 その時、教室の扉が勢いよく開かれる!

 

「『ホシノ先輩』を連れて来たわよッ!!」「先輩!冬眠中のカエルみたく寝惚けてないで、起きて準備してッ!!」

 

 来たのはセリカだ。肩にピンクの髪をした、『ホシノ』と呼ばれた少女を下げて、何度も起こそうと叫んだり、身体を揺らしている。

 

「うへェ~~~…」「まだ()()()()()じゃあないよォ……」「休みたいよォ……ほんのチョッとでいいからさァ」

 

 そうぼやきながら、少女は借りてたセリカの肩を降り、青と黄金に光る、オッドアイの両目を開いた。

 その目に、目の前に立っている『大人』の姿を映したとき。

 

ゴゴゴゴゴゴゴ………

 

 ほんの一瞬。瞬きすらも長く感じられるほどの、コンマ0.1秒ほどの、僅かな時間。

 少女の目は、『』を捉えた狩人の目をしていた。名うての侍が、一目見ただけで相対した者の企みを見破ってしまうように。

 少女は、目の前にいる大人の持つ『スゴ味』を、その目でしかと捉えたのだ!

 

「……やぁやあ、初めましてェ~」「『小鳥遊(たかなし)ホシノ』だよ」「よろしくねェ~」

 

 しかし少女はすぐにその目を和らげた。最初に教室に入ってきた時と同じ態度で、先生にゆらゆら手を振る。その態度は或いは、目の前の存在に対する僅かばかりの恐怖に対する防衛反応だったか。

 先生はそんな小さな彼女の、先まで似つかわしくもない鋭い鷹の目をしていた顔を、少しの間黙って見た後、返事を返した。

 

「……俺はシャーレの先生だ。好きなように呼んでくれ。どうか、よろしく頼む」

 

「うへ、どォ~もォ~」「『よろしく()()()()ねェ~」

 

 ホシノが差し出した右手と握手を交わす。

 しかしすぐ、外から鳴り響く銃声がそれをかき消した。

 

「ほら先輩!装備(コレ)持って早く準備してってばさ!」「『私たちの学校』は、()()()()()()のよッ!」

 

 セリカがいの一番に、自分の愛銃『シンシアリティ』を構えて発破を掛けた。彼女の真っ赤な目には、『何者にも容赦せぬ』という強い意志が込められていた。

 

「ふぁあァ~……おちおち昼寝もできないじゃあないかァ~。ヘルメット団のクソッタレぇ」チクショー

 

「行こう。弾や補給品ならもうじき来る……『タマナシ』なんて、いやらしい」

 

「はーいッ!みんなで出撃です☆」「We(ウィー) Are(アー) All(オール) 2gether(トゥゲザー)!」

 

 ホシノ、シロコ、ノノミの三人もまた続くように、自分の装備を手に取って臨戦態勢を整える。その手際はあまりにも鮮やか。トーストにバターを塗るよりも淀みなく、弾丸を装填した。

 先生は、これが彼女たちの『日常』であるという事実を、迷いない目で認識した。

 

「俺は後方でサポートに回る」「……そうだ、戦いになるのなら、今ここで渡しておこう」

 

 そう言うと先生は、手に持っていたケースを机の上に置き、解いていた。……解いている()()()()()()

 ケースの口を開けた、その時。

 

「(え………?)」

 

 

 ジジジジィ…………ッ

 

 

 その時、砂狼シロコの目には一つ、奇妙なものが見えていた。

 ケースの中にもう一つ、別の入れ物が入っているように見えた。そこまではまだいい。

 先生の手がその入れ物に触れた瞬間、基点として、入れ物の外周を覆うようにして何か、『金色に光る線』が走っていたのだ。光るといっても発光しているということではなく、金属質の反射による光である。

 

 

 ガッパァァアアア………

 

 

 するとその線は、がま口財布の口のようにガッポリと開き、入れ物の中身をつまびらかにしようとしていた。

 

「い、一体、何が……っ!?」

 

「シロコ先輩、どうかしたの?」

 

 セリカの平常極まる声で、シロコはハッと周囲を見渡した。

 

「これ!補充の弾薬ですか?」「どう見たって、そのケースよりイッパイ入ってますよね!?」

 

「これだけあれば、一先ずは凌げるだろう。前払いだ」

 

 その場にいた全員、目の前で起きていたことを気にも留めていなかった。

 いや、驚きの顔は浮かべていたが、それはどちらかというと、どう見てもケースの見た目よりも大量に入っていた弾薬の量に対してで、シロコが見ていたものと同じ光景を見ているとは思えない反応であった。

 しかも。

 

「あ、あれ?」

 

 シロコが見ていたはずの金の線など、どこにもありはしなかった。

 ケースの中の入れ物はカーキ色の弾薬入れで、不審な点などどこにも見当たらない。

 

 

 目の…錯覚……? 

 

 今確かに……

 そう、『ジッパー』のようなものが見えたけれど……

 

 ここ最近のヘルメット団とのいざこざで疲れてたのか。シロコはそう自分を無理やり納得させて、先生から渡された弾薬に手を伸ばした。

 念の為弾薬も軽く見てみるが、別に不自然な点はない。品質が良い点を除けば、そこらのコンビニでも売ってるごく一般的な小銃用の銃弾だ。

 

「……うへェ、『大人』って凄いンだねェ~」

 

 ホシノはただ、一言呟くのみだった。

 

 

 

先生(せんせい)』が()る! その②

 

 

 

 

「なんだァ?あいつら全然出てこないじゃあねえかよ」

 

「ヘッ!大方アタシ達へのプレゼントの相談でもしてんだろォーよぉ……アラ、弾切れ」

 

「今のうちにリロードしとけよォー」

 

 ………カラン

 

「ン?何か落としたか………」

 

 その瞬間。

 

 

 ブォアァァァアンッッ!!!

 

 

 

「な、何ィィィイーッ!!!??」

 

 砂煙と白い熱が、ヘルメット団の視界と肉体を襲った。

 

「イースターエッグのプレゼントとでも思ったかしらッ!?残念、『手榴弾』よッ!」

 

 間髪入れず窓を飛び越え、黒見セリカが()()()()に突撃する。

 愛銃『シンシアリティ』の引き金を淀みなく引き、それまでの鬱憤晴らしに鉛弾をぶちまける。

 

『ホシノ、シロコはそのままセリカと合流し、鎮圧。ノノミは俺が合図を出し次第、ガトリングをぶちまけろ。俺はアヤネと共に後方で援護する。生身の俺がいたんじゃあ、戦いに集中できないだろうからな』

 

「はいはい……行くよォ~、シロコちゃん」

 

「ん、了解(ラージャ)

 

 大盾を構えて先方に陣取るホシノの脇を、シロコがその名の通り狼のような早足で駆け抜ける。研ぎ澄ました牙を向けるが如く、愛銃たるホワイト・ファングの鉛玉をズバババッ!とぶちまけた。

 

 

 ____そこからは、圧倒だった。

 

 

 先生の指示の下、アビドスの生徒たちはヘルメット団の反撃に対して的確に対処し、その数を確実に減らしていく。

 

 

「よぉいしょォオ~☆」

 

 

 _____ガダガダガダダダダッ!!

 

 

「うゥ~ん!爽・快ってやつですね☆」

 

 その重量、優に40キロオーバー!

 秒間60発の7.62ミリ弾をぶっ放すガトリング砲を、ノノミは、まるで座椅子だかマットレスだかでも持ち上げるかのような涼しい顔で扱い、校庭一面に、弾丸をぶちまけたッ!

 

 奥深く食い込んだ弾丸が地面の砂を巻き上げ、ヘルメット団員の視界を奪う。

 

「まっ、前が見えねェッ!」「レミっ、マチっ、モカナっ!どこだ、どっちだぁっ!?」

 

 すかさず、前衛の三人(セリカ、シロコ、ホシノ)が距離を詰め、手に持った得物の引き金を引く。

 

 ______ドキャドキャカカカカッ!!

 

「チンピラどもの集まりが私たちに奇襲を仕掛けようだなんて、随分と生意気なんじゃあないの!?」

 

「チクッショーこいつら!」「この間まで床の隅でうろつくコバエみてーな目をしてたクセにッ!!」

 

 セリカの『シンシアリティ』から放たれる、獣の叫びにも似た銃弾の雨。

 怯むヘルメット団たちの隙間を縫うようにして、ホシノが一気に距離を詰める。そしてそのまま、団員達目掛けて折り畳んだ盾を持った左手を振りぬき____

 

 ____グッキャァアッ!!

 

「マハシッ!?」「シャワルマァ」「グボゲ!」

 

「しばらく眠っててねェ~」「ミサイルが降っても起きないくらいに」

 

 ヘルメットのバイザーが粉々に砕け、地面に倒れ伏した団員たちを見下ろしながら、ホシノが緩やかに吐き捨てた。

 お前らに使う弾がもったいないとばかりに、銃は一度も弾かなかった。

 

『シロコ先輩!受け取ってください!』

 

「ん。デリバリー助かる、アヤネ」

 

 対照的なのは砂狼シロコ。

 アヤネのドローンが空から運んできたマガジンを受け取ると、その名が表すように、獲物目掛けて飛び掛かる狼の如く、手にした(ホワイト・ファング)の銃撃を食らわせまくる。

 

「こいつら、強ェ!?」

 

「…ん。嬉しくないけど、誉め言葉なら受け取るね」「はいお返し」

 

「ブベラ!」

 

 倒れ伏したヘルメット団の頭目掛けて、容赦なく5.56ミリ弾をぶっ放すシロコ。

 既に大方の団員たちは倒れるか逃げており、後は雑兵のみ……待ち望んだ補充を受けた上での戦いで、浮足立っていたのは確かである。

 

『シロコ!後ろだッ!!』

 

「っ!?」

 

 通信から先生の声が聞こえた時、既にシロコの背後、至近距離に敵がいた。

 

「テメェッ!よくもモカナを!」

 

「っ、しま……ッ!?」

 

 仲間の名前を呼びながら、全速力でシロコとの距離を詰める団員が一人。

 シロコと団員との距離、既に10メートル!団員の手には、ピンを外さんとしている、庭先で吊るす()()()()()()()()()()()、大量の手りゅう弾!!

 

「あ、あんな数の手りゅう弾!いつの間にッ!!」

 

「アタイは手癖にゃ自信あるのよォオッ!!吹っ飛んじまいなッ!マヌケ!!」

 

 避ける?無傷で? 

 ……否、無理ッ! 

 

 キヴォトス人の肉体は、頑強である。

 銃が暴力の手段として普遍的である背景には、その細い体のどこから来ているのか分からない、鋼鉄の様に頑丈な肉体組織があった。

 

 故に、弾丸程度のダメージなどかすり傷!ビーチサンダルで転んで擦りむいた程度の傷である。

 タンスの角に小指をぶつけたりでもする方が、長く続く分痛いし辛い!

 

 とはいえ、手りゅう弾を近距離で投げ込まれれば、弾丸以上のダメージは必至。ましてや目視で数えるのも億劫な数。ただの喧嘩の傷では済まされない。

 急いで銃を構えるも____

 

「(しまった、リロードが……ッ!)」

 

 調子コイて撃ちまくったのが仇になった!急いでアヤネが届けたカートリッジを取り出すが、間に合わない。そもそも撃ったとて、下手に手りゅう弾に当たれば迎える結末は変わらない。シロコ、けっこう焦っていた!

 最早、迫りくる大爆発を避けられる手立てはなかった。

 

 そう、()()()()()()()()()()

 

 

 

______BLLLLLLLLLOWERアアァァッ!!

 

 

 

 突然、凄まじい『』と『』が、アビドスの校庭を包んだ。

 しかし、それはヘルメット団員が放った手りゅう弾の爆発ではなかった。

 

「何ィイイッ!?手りゅう弾がッ!?」「嘘だろオッ!?こんな時に、『突風』だあアッ!?」

 

 突風だった!

 砂漠地帯のアビドスでは、ままある現象!

 砂漠に吹く風(シロッコ)のように鋭い突風により、団員の手に収まっていた手りゅう弾の群れを繋ぐ紐がすり抜け、遥か彼方へ吹っ飛んでいったッ!

 

「あ、危なかったァ~!」「突風がシロコ先輩をカーブするように吹いてきたので、爆発も来ずに済んだわ……」

 

『あんな沢山の手りゅう弾が、雪玉みたいに吹き飛んでいきます!』

 

 その風の通り道は、ちょうどシロコの正中線上!

 セリカとアヤネが冷や汗を拭いながら、安堵の声を漏らす。

 

 だが、渦中にいたシロコは、一言も喋れなかった。

 今、目の前に映っている光景を目の当たりにしては、仲間の事も敵の事も、すべて頭の中から吹き飛んだ。

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

「何…………こ、れ…………は…ッ!?」

 

 

 ゴゴゴゴゴゴゴ………

 

 

 シロコの身体から、『』が伸びていた。

 反射的に少し前へ上げていた、生身の右腕の関節から、枝分かれするようにして、シロコの物ではない『第三の腕』が伸びていた。

 水面に動く油のように揺れていて、透けて地面の砂が少し見えている。

 

 人の形をしていたが、半透明の中から見える肌の質感は、生き物とも機械とも取れる輝きを持っていた。

 そして、手の甲には扇風機や換気扇のような『風車』が埋め込まれていて………ゆっくりと回転しながら、ほんのりと青白く見える『』を放っていた。

 

「な、なに……ッ!?」

 

 堪らず自分の右腕を振ると、その謎の腕は消え失せた。

 元の通り、身体からは二本の腕が生えているのみである。

 

 シロコの呼吸が、荒くなった。

 目の前であり得ないことが起こる。人生でそのような事態に出くわすことは、避けられない運命である。

 だが、今シロコの目の前で起きた出来事は、その前提を差し引いて尚、『異質』!

 

「何を分かんねえことやってんだッ!」

 

「ッ!」

 

 その時、前方から響いた鋭い声に、シロコの意識は引き戻された。

 手りゅう弾を吹き飛ばされた団員は、懲りずに自分の銃を構え、シロコへ狙いを定めている。

 

「シロコちゃん!」

 

 残党を退治していたホシノの声が、響いたと同時だった!

 

 

 ゴバギャッ!!

 

 

「な……ッ!?」

 

「こ、今度は銃が、勝手にぃ…ッ!?」

 

 団員の手の中にあったアサルトライフルが、叩き割った皿の破片のように、バラバラに壊れた!

 団員は今自分の身に、自分の愛銃に何が起きたのか、サッパリ分からなかった。

 

 だが、シロコは再び、その目でしかと捉えた。

 

 

 さっき伸びていたのと同じ、半透明の風車の腕が!

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「っ、シロコちゃん!」

 

「キャンッ!」

 

 駆け付けたホシノが、愛用のショットガン(Eys Of Horus)を団員の頭へ撃ちこみ、気絶させる。

 倒れる団員には目もくれず、シロコの元へ駆け寄り右手を掴んだ。

 

「ひゃぁあ~危なかったねぇ。シロコちゃん、怪我はない?」

 

 ホシノが駆け寄るが早いか、いつの間にかその人影は、シロコの視界から消失していた。

 喉の器官が、一瞬のうちに凍らされたかのような緊張感と、ハードロックのドラムの如く早鐘を鳴らし続ける心臓の音を聞きながら、シロコは震える声で答えた。

 

「っ……ん、大丈夫。ホシノ、先輩。

 今の、見え…」

 

「それにしても、()()()()()()()()()()()()なんて、ラッキーだったねぇ」

 

「え……?」

 

 ホシノの言葉に、シロコは困惑した。

 どう見ても今、謎の人が銃を殴り飛ばして_____

 

「?うへ、どうしたの、シロコちゃん」

 

「い、いや……」

 

 頭の上で疑問符を浮かべるホシノの姿に、生返事を返すシロコ。

 

 

  _____見えて、無い?  

 

 最早シロコには、何が何だか分からなかった。

 身の毛もよだつようなゾッとした感覚と共に、頬に冷や汗が流れる。

 

 思えば今日の朝から、()()()()ばかりが身の回りに降りかかっていた。

 まあそもそも自分の生い立ちからして、相当『奇妙』ではあるのだが____しかし、単なる幻覚と片づけられる気が、どうにもしなかった。

 再三申す通り、奇妙な感覚だが、これまで起きた出来事全てが、肉体的な実感として、自分の身体に染みこんでいるのを、シロコは理解していた。

 

 

「____チクショーッ、撤退だ!『団長達』に伝えるんだッ!!」「そうだッ!団長達なら、何とかしてくれるハズ!」「みんな逃げるぞ!しっかりしろ!!」「覚えてろよォオ!!」

 

 

 ほどなく、負傷したヘルメット団達は、倒れた仲間を連れて逃げ去っていった。

 口汚いセリフとは裏腹に何とも可愛らしい瞳をバイザーの割れ目から覗かせて、何やら気になることを口走りながら、アビドスから離れていく。

 

「シロコちゃん、お疲れ様です☆」

 

「いやぁ―、何とか勝てましたね」

 

「シロコ先輩大丈夫でした!?」「手りゅう弾の木が向かってきたときはもう駄目かと……!」

 

「うへェ~、アヤネちゃんは優しいなあ」

 

 ノノミ、セリカ、アヤネも合流し、口々にシロコをねぎらう。

 だが、今のシロコの耳には、嬉しいはずの仲間たちの声も、どこか遠いものに感じられた。

 

「?シロコ先輩、どうしたんですか?」

 

「……みんなには、見えて、なかったの?」

 

「へ?……それって、さっき銃が勝手に壊れたやつですか?」「大方、銃の整備を怠ってたんじゃないですか?」ガサツそーだし

 

 セリカが疑問符を浮かべながら、ヘルメット団への侮蔑を込めた口調でそう言う。

 やはり、彼女にも見えていないようだった。

 

 今日は厄日?

 それとも……分からない、分からないィ……! 

 

 私の身体に……何が起こっているの  

 

 その不可解な出来事が、間違いなく、自分の体の内側から発せられていることを、シロコは否応なく直感的に理解した。

 

 

「____みんな、怪我はないか?」

 

 

 その時、校舎から先生がやってきた。

 

「先生!ありがとうございました、先生の支援のおかげです!」

 

「今の俺が出来得る限りのことをしただけだ。改まって礼を言われることじゃあない」「要請は済んだ。明日にでも、本格的に物資が搬入される」

「……シロコ。平気か?」

 

「へっ?」

 

「浮かない顔をしていた。

 さっき、ヘルメット団の一人に狙われていただろう。何か気になる事でもあったのか?」

 

 その先生の目は、どこか複雑だった。

 心配をしているのは、おそらく本心からだろう。そこに薄っぺらい嘘が介入する余地のないほど、声は淀みなく、眼差しもちゃんとシロコを向いている。

 だがその目の中にどこか、何かを見極めているような気配を感じた。

 

「……ん、なんでもない。

 そういえば、先生の名前を聞く途中だった」

 

 高鳴る心臓を無理やり誤魔化すようにして、話を切り替える。

 元々気になっていたから、多少は自然に取り繕えたと思う。

 

「そういえば、そうだな」「人間関係における『信頼』の最初は、お互いの『名前』を知る事……俺としたことが、とんだ不誠実をしでかしたな」

 

 そう言い、キリと姿勢を正す先生。

 その姿に、疑心暗鬼と希望の両方の色を携えて、生徒たちが注目していた。

 

 

「___俺の名は、ブローノ・ブチャラティ

 どうか、よろしく()()()()()

 

 

 最後にまた、日本語を間違えた。

 

 

 

←To Be Continued…
 

 




【STAND NAME】???
【STAND MASTER】砂狼シロコ
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