ロクでなし魔術講師と禁忌教典とサイキッカー 作:ケバブ・スキー
僕の名は斉木楠雄、超能力者だ。
(なんだこいつ……、厨二病か?)
そう思っている人もいるかもしれないが、僕は紛れもない超能力者だ。
(あ、そっかそういうことか……。そうだよね、超能力者だよね……。)
僕のことを可哀想だと思って寄り添ってきても、僕が超能力者であることは揺るぎない事実だ。
(いいから、さっさと話進めろやタコ)
うん。なるほど。ありがとう。ずいぶんと威勢がいいね。
どうだい君、空に飛んでみたくないか?今なら海の藻屑を体験できるお得なセットプランもあるよ。
──────という冗談はさておき、君は超能力についてどう思う?
例えば、言葉を交わすことなく心で他人と意思疎通できるテレパシー。
例えば、念じただけで物体をうごしたりできるサイコキネシス。
例えば、裏返したカードや、壁の向こうなどを覗くことができる透視。
他にも、予知、テレポート、千里眼、空中浮遊……挙げればきりがない。
世界の法則から逸脱するこんな力を、君は欲しいだろうか。
これらの力を全て持つ超能力者である僕が、ここで断言しよう。
超能力なんてない方がいい───と。
あった方が便利?とんでもない。
僕はこの力を持ってしまったがゆえに、数え切れないほどの苦労を背負ってきた。
一例をあげよう。
前述のテレパシー、他人の心の声が聞けるこの力はオン/オフが存在しない。
よって四六時中、他人の心の声が僕の頭に流れ込んでくる。
そしてこの力の範囲は幼少期でこそ狭かったものの、今では僕の半径100メートル程度にいる人の声が響き渡っているのだ。
聞こえてくるのは大抵、聞きたくもない他人の本音だ。
今の話で、少しは僕の苦労を想像できただろうか。
え?まだわからない?
OK、快適な空の旅に案内しよう。
次にこの世界について説明しておこう。
魔術と科学が共に発展した世界ルヴァフォース。
この世界では魔術は日常に溶け込み、存在して当たり前のものとしている。
(なんだ、じゃあ超能力者もいるか)
そんなことはない。
この世界における魔術と僕の超能力は、根本的に無関係──少なくとも現状の僕の見解ではそう結論づけている。
魔術理論に沿った再現性も、学問としての体系もない。
そして何より、超能力者と確認できる人間は僕以外に一人もいない。
近しい能力を持つ者ならいるが、それはあくまで魔術の延長線上にあるものだった。
とにかく、超能力者は現状僕だけだと言っておこう。
だから僕は、自分が超能力者であることを徹底的に隠して生活している。
もしバレたらどうなるかは──語るまでもないだろう。
次に、僕が通う学院についても触れておこう。
この世界で最先端の魔術を学べる学舎──アルザーノ帝国魔術学院。
僕は今、その学院の一生徒として日々を過ごしている。
この学院に入学を決めた理由は幾つかある。
第一の目的は、超能力と魔術の関係を突き止めるためだったが、今となってはそれも無関係だとほぼ結論づけてしまっている。
とはいえ、超能力が万が一バレてしまいそうでも誤魔化せる可能性がある環境、それだけでも、この場所に身を置く理由としては申し分ないだろう。
通う上での立地もまあ悪くない。
学院は国内でも名が知られており、通っているだけで目立つのが難点だが、まあ、それは仕方ない。
とにかく望むのは、目立たない平穏な日常。
それこそが僕のささやかな願いだった。
──だが、入ってみればその願いがどれほど無謀だったか思い知らされる。
この学院で巻き起こる数々のΨ難によって……。