弟がお姉ちゃんと呼んでくれない   作:狂骨

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転入の時間

 

それから桃花や渚達の班はトラブルにより暗殺は中止。急遽、旅館へと引き返すこととなった。

 

「あ、磯貝くん!」

 

「よう。お前らもやっぱり中止か」

 

声を掛けてきた渚に磯貝が返すと、渚達は残念そうに頷いた。

 

「はは…まぁね…」

 

「せっかく神崎さんと一緒の班になれたってのに…」

 

そう言い元野球部の生徒である杉野もため息をつきながら、茅野と話している神崎へとチラリと目線を配る。

渚達の班も磯貝達と同じく、高校生達とのトラブルに遭遇したが、こちらは殺せんせーが助けたため、全員無事で攫われた茅野と神崎の2人も何もなかった。

 

そんな中で、渚は自信らと同じトラブルに遭遇した磯貝達へと尋ねる。

 

「磯貝君達の班は大丈夫だった?」

 

「あ…あぁ」

 

「まぁ…」

 

それに対して、磯貝と前原は気まずそうに答えるが、それを不思議に思ったカルマが尋ねる。

 

「えらく顔色が悪いじゃん。何があったの?」

 

「いや…俺たちは気絶させられちまったけど、矢田の弟が助けてくれてな」

 

「矢田さんの?」

 

「実はな…」

 

磯貝は頷き、自身ら側で起きた出来事を詳しく話した。それを耳にした渚や茅野達はまるで信じられないかのような表情を浮かべる。

 

「その人が…高校生を全員…!?」

 

「嘘…」

 

そしてその話を聞き驚いた2人はロビーのソファーに俯きながら座る桃花へと目を向ける。その表情は酷く暗く、同じ班の倉橋達が寄り添っていた。

 

「助けてはもらったが…あんな事になったら、必ず理事長に知らされる。どんな罰が降るのか不安らしい」

 

「そっか。いくら守るためとはいえ…大怪我させるほどの暴力沙汰ならどうなるか…下手すれば退学もあり得るし、だから矢田さん落ち込んでるんだね…」

 

「けどよ!悪いのはアイツらだろ!?いきなり襲ってきたんだからよ!」

 

「そりゃそうさ。だが…う〜ん。理事長がどうするか…」

 

渚は納得する一方で、杉野に対して磯貝も同意しながらも、考え込む。

 

一方で、カルマは興味をそそられたのか、顎を撫でながら関心を寄せていた。

 

「なるほど。桃矢くんがねぇ。寧ろよくそんだけで済んだね」

 

「え?どういうことだ?」

 

彼の言葉に不思議に思った磯貝が尋ねるとカルマは答える。

 

「だって桃矢君といえば、椚ヶ丘でも屈指の強豪『総合格闘技部』の部員でしょ?」

 

「総合格闘技部って…あの部活か!?」

 

その名前を耳にした磯貝や他の皆も驚く。

 

椚ヶ丘中学校・高等学校は部活動も盛んであり、全国大会に進んでいる部活動は数多くある。

その中でも屈指の実績と実力を誇るのが設立して間もない『総合格闘技部』である。部員数は4名と少なめだが、全員が全国大会に出場する程のバケモノである。その激しさから入部する生徒は学年に数名程であるものの、強さと実績から全校生徒から注目を集めており、カルマや寺坂といった一部のE組生徒達も興味を持ち、過去に見学していた程だ。

 

「前に開催された関東地区予選のフェザー級部門でダントツのトップだったのが、桃矢君。2年の最後に全国大会に出場せず退部したって聞いたけど。そんな大物とやり合ったら、普通はただじゃ済まない筈だよ」

 

「いや…普通にタダじゃ済んでないけど………そうだったのか…だからあんなに強かったんだな」

 

「でもそんなに強いのになんで退部なんかしたんだろ…」

 

磯貝が納得する一方で、神崎がその事情に対して疑問に思い首を傾げる。

 

 

すると

 

「それ…私の所為なの」

 

「「「「「「!?」」」」」」

 

桃花が声をあげる。それについて渚は不思議に思い尋ねた。

 

「どういうこと?」

 

「私が_____」

 

口元を震わせながら桃花が答えようとした時であった。

 

「ただいま戻りました!お待たせして申し訳ありません!」

 

ロビーの入り口が開き、トラブルの対処に向かっていた殺せんせーが帰ってきた。その触手には何故かもう1人分のトートバッグが背負われている。

殺せんせーの姿を見ると、桃花は話を止め、渚も尋ねる。

 

「殺せんせー!もう終わったの?」

 

「はい!取り敢えず今後の接触禁止と向こう側の監視の強化、並びに該当生徒達の強制帰宅という形で落ち着きました。桃矢君についても理事長と話し合った結果、なんとか退学は免れましてねぇ。無事にお咎めなしです!」

 

「よかった…!」

 

汗を流す殺せんせーからの報告に渚達は一安心し、桃花も胸を撫で下ろす。

 

 

「…ん?」

 

そんな中、前原は何故か殺せんせーが大きめのバッグを持っている事を不思議に思い尋ねた。

 

「あれ?そういえば殺せんせーの持ってる荷物って?」

 

「あ〜これはですね。“彼”のです」

 

「「「「「彼?」」」」」

 

殺せんせーの言葉に皆は首を傾げると、殺せんせーは大きめな図体を横にずらす。

 

すると、そこには1人の少年が立っており、それを見た渚や磯貝達の班は驚愕する。

 

「へ…」

 

渚よりもさらに小柄。クラスの2番目に背の低い岡野と遜色ない。それでも元々、鍛え上げられていたのか、短いながらも逞しい四肢。

 

 

磯貝達にとっては、先程まで一緒にいた。それ以外の者にとっては、全校集会にて桃花を冷笑した女子生徒を殴り飛ばした時以来だ。

 

その男子生徒を見た一同は固まり、桃花も思わず名前を口にしてしまう。

 

「と……桃矢!?」

 

「…」

 

そこに立っていたのは頭に包帯を巻いた桃矢だった。彼女や皆が驚く中、桃矢は軽く会釈した。

 

「どうも」

 

「な…なんでここに!?」

 

 

すると、ロビーのドアが再び開き、入ってきた烏間が代わりに答えた。

 

「彼も“今日から”君らと同じE組に編入することになった」

 

 

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