弟がお姉ちゃんと呼んでくれない   作:狂骨

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端折りすぎたか…?


深まる溝

 

ある日、月が爆発して三日月状になった。

 

そのニュースは全世界に報道され、しばらくはほぼどの番組や放送局でも持ち掛けられる程のビッグニュースとなっていた。

 

 

それから一週間後、エンドのE組と称される3年E組に2つの転換期が訪れた。

 

1つは_____

 

「私が月を破壊した犯人です。来年には地球もやる予定です。皆さんの担任になりましたので、どうぞよろしく」

 

「「「「「「!?」」」」」」

 

______ニュースの的となった月の破壊の実行犯が担任についた事である。

 

そして、更に付き添いのスーツを着用した男性『烏間忠臣』の言葉が続く。

 

「単刀直入に言う。この怪物を君達に殺して欲しい」

 

「「「「「「!?」」」」」」

 

二つ目はその超生物の殺しの依頼即ち“暗殺”である。

 

唐突すぎる展開にE組の皆は理解が追いつかず、目を点にしてしまうのだった。

 

ーーーーーー

ーーーー

ーー

 

その後、同行してきた防衛省の烏間という男が事情を説明するも、あまり飲み込めなかった。

 

因みに、なぜ政府側が秘密裏に殺そうとしないのか?その理由は至ってシンプルである。この超生物が“速すぎる”からだ。最高速度はマッハ20であり、単純なナイフ術では回避されるどころか、眉毛の手入れまでもされてしまうらしい。

 

それほどの生物が本気で逃げてしまえば、打つ手はない。その生物自身もそれを把握しているのか、政府へと条件をつけた。

 

それは『椚ヶ丘中学校3年E組の担任ならばやっても良い』と。

 

 

________いやなんで…!?

 

と全員が考えた筈だ。

 

 

理由は不明ではあるが、このクラス28名が至近距離からこの生物を暗殺できる機会があると理解して政府はこの条件を呑み、E組へと託したのである。

 

ーーーーーーー

 

それからして、授業が始まるが、何故かこの超生物は教える事が上手く、初めは抵抗があった皆も大多数がその授業を受講していった。

 

更に生徒の1人である『茅野カエデ』の提案により、この超生物は殺せない先生に因んで、『殺せんせー』と呼ばれるようになったという。

 

 

暗殺に加えて分かりやすく面白い授業。

 

そんな日々が続いていく中で、クラスの雰囲気は暗いものから、共に切磋琢磨し合う明るい雰囲気へと変化していった。

 

 

 

それは桃矢について悩んでいた桃花も同じだ。

 

暗殺の計画をしたり、それをキッカケで色んな人と交流ができたり、その人の得意な事を知れたり、更に暗殺が失敗したとしてもついでに参加させられた殺せんせーの補修で、不明な箇所を理解できたり、自身の成長に繋がる出来事ばかりであった。

 

そんな日が続いていく事でいつの間にかだんだんとE組での生活が楽しくなり、更に桃矢に向き合うモチベーションも高まってきていた。何度も何度も桃矢に躱されてきて、その度に落ち込んでいたが、今ではそんなのへっちゃらである。

 

ーーーーーーー

 

「さようなら!先生〜!」

 

「ヌルフフさようなら。明日も殺せるといいですねぇ〜♪」

 

放課後になり、桃花は相棒的な存在である『倉橋 陽奈乃』と共に殺せんせーに挨拶すると、帰路についた。

 

「ねぇ桃花ちゃん、テンション高いけど、何かあったの?」

 

「うん!ちょっとね!」

 

倉橋の言葉に頷きながら桃花は頭の中にこのあとの予定を思い浮かべていた。

 

ーーーーーーー

ーーーーー

ーーー

 

その後、帰宅すると桃花はすぐさま料理に取り掛かった。両親は夜遅くに帰ってくる事が多かったために、桃矢のために食事を作る事が多く、故に料理は得意中の得意である。

 

「今日はあの子が大好きな唐揚げにしよ♪」

 

特に桃矢は母親よりも自身の味付けを好んでおり、自身が作った際は大喜びしていた。

 

「さて完成…と。あとは帰ってくるの待つだけ」

 

そして作り終えると、食卓に料理を並べて、桃矢が帰宅するのを待った。

 

 

 

 

 

 

 

 

だが、一向に桃矢が帰ってくる気配は無かった。

 

「遅いなぁ…冷めちゃうじゃん」

 

目の前の料理を見つめながら、桃花はもう少し待つ。それでも桃矢が帰ってくる気配はない。

 

「しょうがない…お風呂入っちゃお」

 

このまま時間を潰しては勿体無いと考えた桃花は、先にお風呂へと入った。

 

○◇○◇○◇

 

「ふぅ…」

 

長めのシャワータイムを終え、そのまま髪を乾かし終えると、食卓へ向かう。

 

 

「……え?」

 

その食卓を見た桃花は固まってしまう。そこには、作っておいた料理が一人分無くなっており、食卓の上に『美味しかったです。ごちそうさまでした』と書かれた置き手紙が置かれていたのだ。

 

「桃矢……!?」

 

それを見た瞬間、桃花はすぐさま階段を駆け上がり、桃矢の部屋へ向かうと、ドアノブに手をかける___

 

 

ガチャ

 

「!?」

 

鍵がかかっていた。自身が風呂に入ってる間に帰ってきていたのだ。

 

そう思った途端に、昼間まであったモチベーションが消え去り、無力感と孤独感が湧き上がると、心臓が締め付けられてしまう。

 

「なんで…」

 

今までは少なくとも、顔は見ていた。だが、今日は話すどころか、姿さえも一度も見ていない。 

 

しかも、向こう側が意図的に避けているかのように感じられた。

 

「そんなに…嫌なの…?お姉ちゃんのこと…」

 

問いかけても、扉の向こうから返事がくることは無い。開けようと思えば開ける事はできるが、その気力さえも湧かない。

 

「…」

 

その後は桃花は一言も喋らず、自分の部屋へ戻り眠りについた。

 

だが、その出来事は、桃花にとって胸に突き刺さる程のショックであったのか、涙が止まる事はなかったという。

 

 

 

そして翌日、やはり桃矢の姿はなく、食卓の上には作った料理や味噌汁、ご飯の一式と昨日洗った洗濯物が干されていた。

 

○◇○◇○◇

 

その日の授業は昨日の事もあってか、全く集中出来なかった。

 

すると

 

「おや?矢田さん、何か浮かない顔をしてますねぇ」

 

「え?」

 

殺せんせーがその様子を不思議に思ったのか、つぶらな目を向けていた。

 

「苦手分野がありましたら、遠慮せず言ってくださいねぇ。放課後、つきっきりでお手伝いしますよ。生活面での困り事でも可ですからねぇ〜!」

 

「…」

 

優しく声を掛けながら心配してくれている。とても嬉しいが、これは家族間の問題だ。自分で何とかしなければならない。

 

「何でもないよ殺せんせー!」

 

「ふむ…」

 

そう言い桃花は笑みを浮かべながら答えたのであった。

 

 

 

 

それから授業が終わり、お昼休みになると、皆が一斉に動き出す。

 

「ニュヤ!?皆さんどうしたんですか!?」

 

殺せんせーが驚いていると、クラス委員である磯貝が答えた。

 

「月一の全校集会ですよ。俺達E組は他のクラスより早く並ばないといけなくて、あの山道を下って先に並ぶためには、昼休みを潰して行かなきゃならないんです」

 

疲労気味に答えた磯貝は前原や岡野と共に教室を出ていった。

 

「ならば私も…」

 

「お前は留守番だ」

 

「ニュヤ!?なぜですか!?私は担任ですよ!?」

 

「お前の存在は国家機密だろうが!?少しは自覚しろ!!」

 

「「「「「ごもっともだ…」」」」」

 

殺せんせーもついていこうとしたが、烏間に止められた事で留守番となり、同時に皆も心の中で同調するのであった。

 

ーーーーーー

ーーーー

ーー

 

その後、本校舎へとようやく着いた皆はヘトヘトになりながらも急いで体育館へと向かい一列に並んだ。

 

彼らが整列して間もなくして、本校舎の生徒達が入ってはくるものの、開口一番が、罵詈雑言とはいかないものの、陰湿な陰口が飛び交った。

 

それは生徒達が増えるにつれて比例するかのように増えていき、教員は注意どころか、まるで同調するかのように笑みを浮かべており、皆の表情は暗くなっていった。

 

 

そんな中で最後尾付近に立っていた矢田は周囲を見渡していた。

 

「(まだ来てない…)」

 

「おい矢田…さっきから何でキョロキョロしてんだよ…!?」

 

「あ…ごめん」

その動作に最後尾の吉田が小声で注意すると矢田はようやく我に帰る。

 

 

すると

 

「うわ、矢田じゃん」

 

「!?」

 

突然と桃花に向けた陰口が聞こえ、それを耳にした桃花が目を向けると、身体を震わせた。

 

そこに立っていたのは数人の女子生徒であり、彼女らはかつて同じ委員会に属していた同級生でもあった。

 

「アイツって確かテストサボってE組行きになったんだっけ?」

 

「そうそう!マジでアホよね〜テストサボるとか」

 

「……」

 

その言葉は本校舎生徒が増えるにつれて次々と増えていく。かつては親しくしていた同級生からこれほどまでの言葉を浴びせられることはキツイとしか言いようがないだろう。

 

 

 

「弟の看病だって?どうせテスト自信ないから____

 

その時であった。

 

 

_______グベラァ!?」

 

「「「「「!?」」」」」

 

最後まで言い終えようとした女子生徒の顔面を何者かが殴り飛ばされた。

 

突然すぎる出来事にE組の皆や、入りかけていた本校舎の生徒達も動きを止めた。

 

「事情も知らない癖に、話すのやめてください」

 

そこに立っていたのは、満面の笑みを浮かべながら拳を握り締める男子生徒であった。

 

「だ…誰だアイツ…!?」

 

「普通に顔面殴りやがったぞ…」

 

前原や菅谷が驚く中、桃花はその姿を見た途端に名前を呟く。

 

「桃矢…」

 

「「「え!?」」」

 

その名前にE組の皆が驚く一方で、女子生徒を殴り飛ばした桃矢はニッコリと笑みを浮かべながら、E組と同じく、唖然としている他クラスの生徒達へ目を向ける。

 

「E組の方が先に並んでるんですから、私達も早く並びましょうよ。手本を見せないと♪」

 

そう言い桃矢は殴り飛ばした女子生徒の髪を掴み上げる形で無理やり立ち上がらせると、列へ引っ張っていったのであった。

 

 

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