カードショップの店員は、主人公だが主人公じゃない 作:どこかのSさん
遊花たちはショップ大会中ですが、ここから少しだけ別の話を
久々のショップ大会は特に問題もなく進み、今は2回戦が行われている最中だ
「いやー、無事に進んでるみたいで良かったよ」
「ですね。久々に開催するってなった時はどうなる事かと……」
「それは言わないでよ、内心で私も少し焦ってたし」
「そうなんですか?」
「私が祭好きなのは久導くんも知ってるでしょ? そう言う事だよ」
「……ですか」
祭好きってのは初めて知ったんだけど……つまりはまぁそう言う事なのか?
まぁ一旦それは横に置いておくか、俺も何だかんだでこういうイベントは好きな訳だし、初心者だった春野さん達も楽しんでくれてるみたいだし本当に良かった。やっぱり自分の好きなものを好きな人が増えるってのは良いものだ
「さて、そろそろ2回戦も終わりそうなんでアナウンスに────っ?」
行ってきますと言葉を続けようとしたところで、少しくすぐったいような少し不思議な感覚が背中を撫でる
「久導くん? どうかした?」
「あぁ、いえ……なんか少しぞわっとしたというか……少しくすぐったいみたいな感覚が……」
「なにそれ?」
「ホントに何なんでしょうね……けど、少し気になるかも」
「……そっか、それなら久導くん。ここから先は私が担当するから少し出てくる?」
「いいんですか?」
「その分アルバイト代からは引かせてもらうけどね」
背中を撫でた感覚が一体何なのかもまだわかってないのに本当に出てしまっても大丈夫なのだろうか……と言うか、バイト代を引かれるのはシンプルにキツい
「──けど、そうですね。お願いします」
自分の感じたこの感覚を放っておくことも出来ない。そう考えた俺はここから先を店長にお願いして店を出た
※※※※※
一足先に二回戦を突破したアタシは他の人たちのファイトが終わるまで近くのベンチで休憩をしていると、同じくファイトを終えたらしい春野さんがこっちへやってきた
「春野さん、お疲れ」
「うん、空閑さんもお疲れ様」
「その様子だと、無事突破したみたいね」
「うん! 少し危なかったけどなんとか勝てたよ」
「あら、私が一番最後ですか」
「あっ、結音ちゃん! お疲れ様」
「えぇ、春野さん達も……他の参加者の方たちはまだファイト中みたいですし。この間に少し休憩をさせてもらいましょう」
そういった結音さんはアタシの隣に腰をかけると少し辺りをきょろきょろと見回す
「結音さん? どうかしたの?」
「あぁ、いえ、そう言えば兄の姿が見当たらないなと」
「あっ、そう言えば確かに店員さん見当たらないね」
「ファイトが終わる直前に店長さんと何か話しているのは見かけたけど……何かあったのかしら」
「家の事情なら私に何かしらの連絡はする筈……けど連絡がないという事は個人的に何か用事が出来たのだと思いますが」
そう言った結音さんの表情はどこかすぐれない。それはアタシだけじゃなく春野さんも気づくレベルだったようで心配そうに彼女の方へ視線を向けている。アタシたちのそんな様子に気づいたらしい彼女は少し慌てた様子を見せた後で口を開く
「す、すみません変な所を見せてしまって……けど、多分心配しなくても大丈夫だと思います」
「そうなの?」
「えぇ、少しの間帰らなくてもある日ひょっこり帰ってくるのが兄なので」
「……経験があるみたいに言うのね」
「えぇ、実際にそう言う経験がありますから」
「そう言う経験って、もしかして……」
「あまりよそ様に話すような楽しいお話でもないのですが……兄は昔、一週間ほど行方不明になった事があるんです。私は当時小さかったので詳細を覚えていないのですが。ある日突然いなくなりある日突然戻ってきたらしいです」
「そうなんだ……」
アタシたちがその話を聞いたタイミングで、店長さんのアナウンスが入り3回戦の案内が始まった
※※※※※
見せに居る時に感じた不思議な感覚の原因を探る為に一度カードショップを抜けて、自分の直感を頼りに町の中を歩いていると店からそこまで距離の離れていない場所で足元に霧がかかり始めた
「……これは」
霧が少しずつ自分と世界の境目を曖昧にしていく感覚……この現象に覚えがあった俺はデッキケースから1枚のカードを取り出し正面にかざすと身体を覆い隠そうとしていた霧が晴れ、元の街並みを視界に映す
「俺が神隠しに遇った時と同じだな……てことは、あっち側と繋がる場所があるって事だよな」
カードショップで自分が感じた不思議な感覚の正体、それが一度迷い込んだことのある異世界の空気を感じたからだと理解しつつ町の中を歩いていると、異世界の空気と俺の世界を空気が混ざったような不思議な感覚
「誰かいるのかー」
一応声をかけてみたものの案の定返事はない……霧は晴れたがどんな状況なのかを理解できない以上、さっき視界に入った黒い影を追って道なりに歩いていると袋小路に辿り着く
「これは、化かされたって奴か」
「────久導くん?」
そんな言葉を漏らしてから少し後、俺の苗字を呼ぶ声と共に袋小路の丁度死角になっている場所から小さい生き物を抱きかかえた長塚さんと相笠さんが姿を見せる
「長塚さんに相笠さん? なんでこんなところに」
「蒔苗がショップ大会に出るらしいから一緒に向かってたの、アタシは付き添いだけど」
「言われてみれば、名前はあったけど姿は見かけなかったな」
「でしょ? それで向かってる途中で周りが急に霧に包まれて、どうしようかと思ってたらこの生き物と遭遇したわけ」
「……霧の中で遭遇したソイツを長塚さんが抱きかかえてる理由は説明されてないんだけど」
「それは、えっと……なんか懐かれちゃったみたいで……元の場所まで案内してくれるみたいだったんだけど……その────」
長塚さんが言いづらそうに口ごもってるのを見てどうしたのかとも思ったが、抱きかかえられてる生物を見て察した……普通の動物とも絶妙に違う特徴を持ったソイツは全体的に元の姿があってそれをデフォルメしたように見える────シンプルに言うと四足歩行動物の割に手足が短い、と言うかデフォルメされてるけどアレって間違いなくソウルリンクのユニットだよな。当の本人は自分がデフォルメされてる自覚がないのか自信ありげな表情を浮かべているから本当にそうなのか確証はないけどまず間違いないだろう
「あぁ、みなまで言わなくても大丈夫。察したよ」
「そ、そう……?」
「それより、久導くんこそどうしてここに?」
「俺は、虫の知らせがして」
「虫の知らせ……ねぇ」
「まぁそう言う事だから……幸い、どうやって元の場所に戻るかは覚えてるし。案内しようか?」
「えぇ、そうね。お願いするわ」
「お、お願いします……」
霧に包まれて、その霧が晴れたらこの場所に居た……俺の場合はカードが晴らしてくれたって方が適切だし、二人もアレと遭遇した事で完全に霧に飲み込まれずこの空間に辿り着いたんだろう
「それにしても、ホントに何処なのかしらここは」
「ひ、人が全然いないけど……わたしたちの住んでる町ではあるよね?」
「ここは俺たちが住んでる世界とそうじゃない場所の隙間だと思うよ」
「わたしたちの住んでる世界とそうじゃない場所の……隙間?」
「随分と訳知りみたいな顔するわね……けど、それは一旦置いておいて説明をお願いしてもいいかしら?」
「いいよ……えっとね、まずこの説明をする前に、俺たちの住んでる世界とは別にもう一個世界があるって事を念頭に置いて欲しい」
「急に突拍子がなくなったわね」
「そ、それって……異世界って事ですか? ファンタジー小説でよく見る」
相笠さんの言葉もよくわかるし俺も自分で言ってて何言ってんだになるけど今回に関しては目をつぶって欲しい。今巻き込まれてる状況ってのは十分ファンタジーな訳だし、それを説明するなら二人にもある程度ファンタジーに順応してもらわないといけない
「もう一個の世界については長塚さんの認識で合ってるよ。それでこの場所は二つの世界の境目に存在する場所……最も、俺もこの場所に来るのは初めてだけど」
「……世の中、奇妙な事もあるのね」
「世の中、案外奇妙な事であふれてるよ……こっちみたいだね、行こう」
淡い輝きを放つカードの導きを頼りに出口へ向けて三人で歩く
「そう言えば、その動物……動物? はどうするの?」
「へっ? え、えーっと……連れて帰ろう……かな?」
「えっ」
「や、やっぱりダメ……かな」
長塚さんは若干上目遣い気味にこちらへ視線を向けてきているけど……俺たちの世界にあのユニットを連れて帰るのはおススメ出来ない、そもそも隙間の世界にこうして迷いこんだ原因がそのユニットにないとも限らない
「ダメに決まってるでしょ、あなたの家ってペット禁止なのだし」
「えっ? そこ?」
「そこじゃないの?」
「いや、もっとこう根本的な────」
部分で反対すべきじゃないか? と言葉を続けようとしたがフードを深く被った誰かが目の前に現れたことで言葉が詰まる
「あの人も迷い込んだのかしら?」
「ど、どうなんだろう……と、とりあえず話を────」
「ストップ」
目の前の人物に近づこうとした長塚さんを制す、よく見ると彼女に抱えられてるユニットも警戒心を露わにしてる辺り話し合いで解決できる人物ではないようだ
「えーっと、一応聞きますけど迷子ですか?」
「…………」
こちらの問いかけに答えることなく近づこうとしたフードの人物から二人を庇いながら困惑した様子を見せる二人に言葉をかける
「二人とも、悪いけど先に行っててもらえる? 案内は抱えられてるその子にお願い」
「えっ?」
「久導くんはどうするの?」
「ちょっと穏やかな雰囲気じゃなさそうだから……このフードさんと話をしてから向かうよ……それじゃ、お願いね」
抱えられてるデフォルメユニットにそう言葉をかけると、この子も力強い瞳で頷き抱きかかえられながらぐいぐいと向かう方向を彼女たちに伝える
「わわっ、えっと……そ、それじゃあ先に行ってるねっ」
「帰ってきたら詳しく説明してもらうわよ」
「説明できることがあったらね」
そう言ってこの場から離れていく二人を追いかけようとしたフードの腕を掴み動きを止めるとイライラとした雰囲気がこちらまで伝わってきた
「……お前、さっきから何故邪魔をする」
声からして男か……まぁ、そんなことはどうでもいいわ
「それはこっちのセリフだよ……さっきから人の事無視して彼女たちに近づこうとしやがって、ふざけてんのか?」
「あの女どもに興味などない、我らが必要としているのは女の片割れに抱えられていたあのユニットのみ」
「その口ぶりだと、この場所の入り口を開いたのはアンタ……いや、さっき我らつってたからアンタらか、それなら悪いが猶更彼女たちのところに向かわせるわけにゃいかなくなったな」
掴んでいた腕を放り投げる形でフード野郎を無理矢理自分の前に戻す
「ユニットの事を知ってる辺り、アンタも嗜んでんだろ? ソウルリンク……さっさとデッキを出せよ」
「貴様とそんなことをしてる時間はない」
「そっか、わかった────」
普段ならこんな無理矢理な真似はしないが今回は特殊パターンだ……こんな場所の入り口を開く手段を知ってるような連中だ、常識外の力には常識外の力で対応させて貰う
「──
その言葉に世界が応える、俺とフード野郎の周囲に半透明の膜のようなフィールドが展開され、無から古めかしいファイト台が出現する
「! この力は────」
「俺も常識外の知識が少しあってな……無理矢理で悪いが付き合ってもらうぞ」
「……いいだろう」
お互いに取り出したデッキをファイト台に置くと、相手の手元には5枚、俺の手元には4枚のカードが手札としてデッキから振り分けられる
「それじゃあ、レディ────」
「「ファイト」」
久導 灼 VS ????
互いの掛け声と共に、イレギュラーな場所でのファイトが始まった
本編外にキャラクターのデータを投稿するかどうか
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