カードショップの店員は、主人公だが主人公じゃない   作:SoDate

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ファイトは次回です


第13話,戻ってきたら次は決勝戦

 世界を覆っていた霧が晴れ、見知った街並みに戻っ後、俺は長塚さん、相笠さんの二人と合流してさっきまでファイトをしていたフードの男に話を……聞こうと思ったのだが知らない間に姿を消していた

 

「久導くん、大丈夫だった?」

 

「問題なし……と言っても、少し法外染みた方法を使ったからだけど」

 

「……一体何をしたわけ?」

 

「そこは、まぁ気にしなくていいよ」

 

【ゼロ・アグニス】を始めとした〘EXTRA〙の効果を持っているユニットは俺の持ってる5体。赤・青・緑・白・黒の5属性を司る存在であり個々の存在は強力……ではあるが彼らを使う時は普段から心がけてる楽しいファイトではなく手段を選ばずに勝ちを掴みに行く時。今回は状況が状況だったから力を借りけど彼らの力は借りず、自分の力だけで勝利を掴みたい

 

「そう言えば、二人と一緒に居たあの子は?」

 

「あの子なら……」

 

「ここに居るわよ」

 

 そう言って相笠さんが見せてきたのは一枚のカード。まさか────

 

「さっきまで一緒に居たユニットがカードになった?」

 

「えぇ、あの場所からここに戻ってくるのと同時にね。それに何故か抱えてた蒔苗じゃなくてアタシの手元に来たし」

 

「きっとあの子はわたしじゃなくて十茉梨ちゃんが良かったんじゃないかな?」

 

「でも、アタシ赤のデッキなんて使わないわよ?」

 

「……ひとまずウチの店に行こうか。ここで話しててもだろうし」

 

 いつまでも立ったまま話をするわけにもいかないし……と言う訳でここから移動して絶賛ショップ大会中のカードショップ”b-LINE”へ向けて移動を開始する

 

 

 

 

 

※※※※※

 

 

 

 

 

 場所が結構近かったって事もありそこまで時間もかからずに店まで戻るとどうやら丁度準決勝も終盤と言ったタイミングのようだ……対戦カードは1番テーブルが空閑さんと常連客の大学生。2番テーブルが結音と────あの人か

 

「あっ! 店員さん!」

 

 丁度番が終わってたらしい春野さんは戻ってきた俺に気づくと足早にこちらへ近づいてきた

 

「どこに行ってたんですか?」

 

「あぁ、えっと……ちょっと用事がね」

 

「結音ちゃん、心配してましたよ? せめて連絡くらい入れておかないと」

 

「えっ、あぁ、うん……ごめん。あとで謝っとく」

 

 結音に心配をかけてたのは少し想定外だ……と言うか、そこまで心配する事でもないだろうに

 

「そうしてください────って? あっ! 長塚さん、お久しぶりです! それでお隣の方は────」

 

「うん、久しぶり。えっとね、隣はわたしのお友達の十茉梨ちゃん」

 

「相笠十茉梨よ、よろしく……えっと……」

 

「春野遊花です!」

 

「よろしく、春野さん」

 

 気づけば二人と挨拶を済ませたらしい

 

「そう言えば春野さん、結果はどうだった?」

 

「あー、えっと……準々決勝までは勝てたんですけど……そこまででした」

 

「……そっか、残念だったね」

 

「はい。けど、まだまだめげませんよ! 目指せプロ!」

 

「春野さん、プロを目指していたの?」

 

「あっ、はい! あたしがソウルリンクを始めたのってテレビで見た神楽火蓮さんの対戦がきっかけで、あの人みたいになりたいなって……でも、今は少し違っててどちらかと言えばあの人と対戦してみたい……みたいな?」

 

「少し釈然としない感じ?」

 

「えっと、はい……」

 

「へぇ……けどまぁ、釈然としなくてやりたい事が決まってるならいいんじゃないかしら。目標を定めたのならそれに向かって進むだけだもの」

 

 そんな話をしていると準決勝を行っていたテーブルからファイト終わりの挨拶が聞こえてくる。話を耳に入れつつファイトテーブルの方に視線を向けると1番は空閑さんの勝ち、2番は結音の負けっぽいな

 

「そうだ、戻ってきたわけだし店長に伝えてバイト戻るよ」

 

「バイト、抜けてたの?」

 

「うん、今回は少し引っかかってるのを店長に看破されて抜ける許可くれたから……その分迷惑かけちゃったけど」

 

「そ、そうなんだ……」

 

「そう言う訳で、俺はバイトの方に戻るけど二人はゆっくりしてって」

 

 二人にそう伝えて春野さんに軽く手を振ってから店長の所に向かおうとしたところで惜しくも準決勝敗退となってしまった結音とバッタリ遭遇する

 

「あっ、おにぃじゃん。用事はもういいの?」

 

「おう、もう片付いた……お前の方は残念だったみたいだな」

 

「そりゃもう完敗って感じ……てか盤面見てないのによくわかったね」

 

「伊達に何年もお前の兄貴をやってる訳だからな。少ししか見れなかったとは言えお前の表情とかカードを動かす手で多少は理解できる」

 

「なにそれ……流石にちょっとキモいかも?」

 

「うっせ……それよりも、やっぱ悔しいか」

 

「……そりゃあね、我が終生のライバル共々同じ相手に負けたわけだし」

 

 春野さんもあの人と戦って負けたわけか……まぁ、仕方ないかって気もする

 

「でも、楽しかったよ」

 

「……そうか、それなら上等だ」

 

 負けても悔しいは当たり前だ、大小問わずどんな些細な事でも負ければ悔しいし勝てば嬉しい

 特にカードゲームはデッキを操作したり、目的のカードを手札に加えたりと自分のプレイングも重要だが状況を動かすのに一番欠かせないのは運だ。どれだけ上手くプレイをした所で運によっては負ける時は負ける。だから正直な話、負けを飲み込むなんてことは俺だって得意じゃない……けど、そのうえでも”楽しかった”と思えるのが、大事なんだと思う

 

「結音、今日はバイト終わるまで待ってろ」

 

「いいけど、どしたん急に?」

 

「なに、久々にお前とガチでやりたくなっただけよ」

 

「へぇ、おにぃがそう言うなんて珍しいじゃん。おっけ了解」

 

「それと、帰りがけにアイス奢ってやる」

 

「マジ? やったぜ」

 

 ちょうど妹と会話を終えてから店長の所へ向かうと、さっきの一部始終を見てたらしくにやにやとした表情を俺へと向けてくる

 

「……なんですか?」

 

「べっつにー、仲良いな兄妹と思ってさ」

 

「普通ですよ、この位……それじゃ、こっから戻ります」

 

「りょうかーい。と言っても進行はこのまま私がやっちゃうから久導くんはレジ番お願いしても良い?」

 

「わかりました」

 

「それじゃ、よろしくねー」

 

 そう言った後、店長は決勝戦の進行をするためにテーブルの方へ向かっていった

 

 

 

 

 

※※※※※

 

 

 

 

 

 久導さんと一緒にお店に来た長塚さんとそのお友達の相笠さんと話をしていると、準決勝の終わった結音ちゃんがあたしたちの所に戻ってきた

 

「結音ちゃん! お疲れさま、残念だったね……」

 

「はい、あと一歩及ばずでした……ところで、そちらの方々は?」

 

「あっ、えっとね。この人たちはね、久導さんのお友達!」

 

「兄さんの……成る程。はじめまして、久導結音と申します。久導灼の妹です」

 

「長塚、蒔苗です……久導君とは、えっと、仲良くさせていただいて……ます?」

 

「何で疑問形なのよ。アタシは相笠十茉梨。よろしくね、妹さん」

 

「結音と呼んでいただいて大丈夫ですよ」

 

「そう・それじゃ結音さんって呼ぶことにするわ」

 

「わ、わたしは結音ちゃんで……」

 

 なんだろう、いつも通り話してる筈なのに結音ちゃんから少しピリピリした空気を感じるというか……うーん、なんだろう

 なんて言えばいいのかわからない空気を感じてると店長さんのアナウンスと一緒に澄玲ちゃんと、あたしと結音ちゃんを倒した人────白峰朔夜(しらみねさくや)さんがファイトテーブルで向かい合う

 

「決勝戦、始まるみたいですね」

 

「そうだね。よし! 澄玲ちゃーん! 頑張れー!」

 

 今のあたしにできるのは澄玲ちゃんを応援すること、目いっぱい応援するぞ! 

 

 

 

 

 

※※※※※

 

 

 

 

 

 観戦席から飛んできた友人の応援に少し気恥ずかしさを感じつつ、自分のデッキをシャッフルする

 

「応援されているねぇ」

 

 ファイト前の準備を整えているとふと、そんな声が対戦相手から聞こえてきた

 

「はい、友人なので」

 

「ふむ、そうか。それは良い、何事も仲良きことが一番だからね」

 

「……何が言いたいんですか?」

 

「ワタシはただ思った事を口にしただけだよ?」

 

 目の前の人────光の辺り方によっては灰色にも見えるけど白い髪をなびかせ、前髪の隙間から赤茶色の瞳を覗かせる。誰かの面影を感じさせる女性はあっけらかんとした様子で答える

 

「ワタシは人付き合いが好きだが、何分こんな感じだからねぇ……広く浅くの人間関係を構築するつもりがいつの間にか狭く浅くの人間関係が出来上がっていた」

 

「狭く浅く……」

 

「有り体に言えば友人がほとんどいないのさ、ボッチと言う奴だね」

 

「…………」

 

 急にそんなことを言われても、正直反応に困る

 

「おや、これは困らせてしまったようだ……それじゃあ、準備もそこそこに始めるとしようか」

 

「……はい」

 

「それじゃあまずは自己紹介を、ワタシは白峰朔夜。お手柔らかに頼むよ?」

 

「空閑澄玲です、よろしくお願いします」

 

 彼女の名前を聞いて、誰の面影を感じたのかピンときた

 

「始める前に一つ質問をしてもいいですか?」

 

「どうぞ」

 

「貴方、もしかしてこの店の店長の親族……なんですか?」

 

「如何にも。ワタシはこの店の長、白峰唯月の妹さ……そして、君たちの一つ上の先輩でもある」

 

「そうだったんですか?」

 

「あぁ、君たちは知らないだろうがワタシは君たちを何度か学校内で見かけた事がある」

 

 ぱっと見だと目立ちそうな先輩で、上級生のいる階にも何度か行ったことはある……それなのに見たことがないというのはどういう事だろう

 

「少し余計な思考を挟ませてしまったようだね」

 

「……いえ、そんなことは────」

 

「あるとも、少なくともワタシはそう感じた。それは君にとっても、ワタシにとっても余計であり、害でしかない。そろそろ始めようか」

 

「そうですね」

 

 何処かつかみどころがない人で、少し自分のペースを掴みきれてない部分もあるけれど今それは関係ない。デッキからカードを5枚引き、ライフをセット。お互いに準備を整えると店長さんが声を上げる

 

「それでは、これより決勝戦を始めます。レディ────―」

 

「「────ファイト」」

 

 アタシが今やることは、最善を尽くして勝利を掴むこと

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