カードショップの店員は、主人公だが主人公じゃない   作:SoDate

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第15話,テキスト更新と日常回

 ショップ大会が終わってから一週間ほど経った金曜日。本来なら平日は学校があるが今日は創立記念日で休み、特に誰かと出かける予定も居れていなかったしそれなら朝からバイト先にカードショップに顔を出してデッキの調整でもしようとやってきたのだが入り口には本日休業の文字

 

「今日って定休日じゃなかったよな?」

 

 店長に何か急用でも入って店を閉めているのかとも思ったが一応確認の為に従業員用の入り口の方に向かいドアノブを回すと鍵はかかっていなかったようでガチャリという音を鳴らしながらドアが開いた

 

「店長、いますかー」

 

「はいはーい……って、あれ? 久導くん? 今日って平日だけどサボり?」

 

「創立記念日で休みなだけでサボりじゃないです。それでどうせ一日暇なんで顔出そうと思って……今日は定休日じゃなかったと思うんですけど何か急用でも入ったんですか?」

 

「ううん、本当なら営業日なんだけど今日はほら、久々のテキスト更新の日だから」

 

「そう言えば今日でしたっけ、だから店閉めてたんですね」

 

「そう言う事……せっかく来てくれたし、手伝ってく?」

 

「そうですね、折角なんでそうします」

 

 テキスト更新、基本的には2~3年に一度あるかどうかの特殊な行事。ソウルリンクで使われるカードには特殊なインクが使われていて専用の機器に既存カードを読み込ませることで印刷されているテキストを一度白紙に戻し新しいテキストを改めて印刷しなおすことが出来る。黒板とかホワイトボードに書かれてる文字を一回消して改めて書き直すって感覚に近いかも知れない

 

「そう言えば店長、更新機のレンタルってしてるんですよね」

 

「勿論、じゃなかったらわざわざお店を閉めてまで作業しないって。今はストレージに入ってるカードを種類別に仕分けてた所」

 

「了解です、俺も手伝います」

 

 今日は一日暇だし、バックヤードから店の中に入ってレジカウンターにカバンを置いてから仕訳の途中であろうカード達の所へ行き作業を始めようとしたところで、店長に声をかける

 

「そうだ店長、本日休業の理由書いた張り紙張っておいた方がいいんじゃないですか」

 

「それもそうだね、ちゃちゃっと作っておくから作業お願いしてもいいかな?」

 

「オッケーです」

 

 今の時間は午前10時頃、そこから黙々と作業を続けていると最初は小さかったカードの塔がそこそこの高さになってきた頃、隣の机で作業をしていた店長は一度手を止めて席から立ち上がる

 

「久導くん、そろそろお昼にしよっか」

 

「もうそんな時間ですか」

 

「うん。それでお昼どうしよっか、出前でも頼む?」

 

「いえ、ずっと座って作業してたんで身体ほぐすついでに俺が買ってきますよ。コンビニかファストフードどっちが良いとかあります?」

 

「うーん、拭けば良いとは言え流石に油もの食べた手でカードには触りたくないからコンビニかな」

 

「わかりました。それじゃあおにぎりかお弁当か、適当に見繕って買ってきます」

 

「お願いね」

 

 店長からお昼代を受け取ってから店を出て、近所のコンビニへ向かった

 

 

 

 

 

※※※※※

 

 

 

 

 

 コンビニへ向かう途中、信号で足を止めるついでにスマホを使って公式から発表されている今回の更新についての情報に軽く目を通していると後ろから見知った声が聞こえてくる

 

「あっ、久導くんだ」

 

「ほ、ほんとだ……こんにちは」

 

 声をかけてきたのは長塚さんと相笠さん、学校外で彼女たちに会うのはこれで二度目だった気がする

 

「長塚さんに相笠さん、偶然だね。今日は二人で買い物?」

 

「ううん、今日は蒔苗に新しいデッキ作りを手伝ってもらってるの」

 

「十茉梨ちゃん、赤のデッキは組んだことないって言ってたから……小さい頃に赤のデッキを使ってた事あるから、お手伝いできればって思って」

 

「成る程」

 

 多分相笠さんが組んでるデッキはこの前彼女の手元に渡ったユニットを使ったものだろう

 

「そう言う久導君は今日もアルバイト?」

 

「いや、今日は普通に休みだよ。ただ店に行ったらテキスト更新の日から慌ただしそうでさ、それを手伝ってる」

 

「そ、そうなんだ……」

 

「随分と勤勉と言うかなんというか……と言うか、今日ってテキスト更新の日だっけ」

 

「俺もすっかり忘れてたけどね────っと、信号変わったね」

 

「そうね、久導君はコンビニ?」

 

「うん、俺と店長の分のコンビニを買いに。二人は?」

 

「アタシたちもそんな感じ」

 

 そんな話をしながら三人で並んで歩き始める

 

「そう言えば、今回のテキスト更新ってどんな内容なの? アタシたちまだ確認してなくて」

 

「〘常時〙効果で書かれてる攻撃を防御出来るって文章を〘防御〙って言う短い文章に変えるのと、それと種族項目の追加だって」

 

「種族項目?」

 

「それって、ドラゴンとか人間……みたいな?」

 

「うん、そんな感じ」

 

「短い文章に変えるのは良いと思うけど、種族項目って必要なの?」

 

「公式曰くこれからのカードデザインを見据えてらしいけど……どうなんだろうね」

 

「わ、わたしは良いと思う……よ。どんな種族なのか、見てると楽しいから」

 

「そう言うの好きよね、蒔苗は」

 

「うん、だって楽しいから」

 

 そんな話をしながらコンビニに辿り着き、長塚さんと相笠さんはお弁当を、俺は自分用の弁当だったり片手で食べることのできるおにぎりやサンドイッチを買って会計を済ませ店を出る

 

「それじゃあ、俺は店に戻るね」

 

「あっ、待って久導君」

 

「どうかした?」

 

「休みって言ってたけど、久導君がバイトしてるお店のファイトスペース、少し借りられないか聞いてみて貰えないかしら」

 

「ちょ、ちょっと十茉梨ちゃん……っ!」

 

「ちょっと待って、電話して聞いてみるよ」

 

「ご、ごめんね。久導くん」

 

「気にしないで良いよ、長塚さん」

 

 申し訳なさそうにしている長塚さんに軽く言葉を返してから店の番号を呼び出して電話をかける

 

『もしもし、久導くん? 何かトラブル?』

 

「いえ、トラブルって訳じゃないんですけどコンビニ行く途中にクラスメイトと遇いまして」

 

『ふむふむ、それで?』

 

「ウチのファイトスペースの一角を借りれないかと、どうでしょう」

 

『うーん、知ってると思うけど今は作業中だからなぁ』

 

「ですよね」

 

『いいよ』

 

「いいんですか!?」

 

『うん、ファイトスペースを借りたいって事はファイトしたいって事でしょ? それならウチはウェルカムだよ……いや、むしろ作業中とは言えファイトスペースだけ解放するのはアリじゃない?』

 

「それは……どうなんでしょう」

 

 店が開いてないってなったら他の店に行くか街の公民館とか使いそうなイメージあるけど……と、電話越しの店長の言葉に何とも言えない反応をしていると相笠さんが軽く肩を叩き、電話を渡すようジェスチャーをしてくる

 何を話すのかはわからなかったが一応オッケーのジェスチャーを彼女に返してから電話の向こうで未だぶつぶつと言っている店長に言葉を投げた

 

「店長、クラスメイトの子が少し話したいっぽいんで代わります」

 

『ん? オッケー』

 

 電話を相笠さんに渡すと彼女は短い会話の後で通話終了ボタンを押して俺へ返してきた

 

「ファイトスペース、貸してくれるって」

 

「と、十茉梨ちゃん……何を話してたの?」

 

「別に大したことは言ってないわ、更新作業を手伝う代わりにファイトスペースを借りたいって言っただけ」

 

「「えっ」」

 

「なに、その反応。少しの間とは言えお店の一角を借りようとしてるんだからこの位は当たり前でしょ?」

 

 当然の事を言っているのにどうして驚くのかみたいな表情をしている相笠さんに申し訳なさを覚えつつ長塚さんの方へ目を向ける

 

「長塚さんは、急に決めちゃったけど大丈夫なの?」

 

「う、うん。わたしは大丈夫だけど……ホントにいいの、かな」

 

「まぁ、店長がオーケー出してるなら問題ないと思うよ」

 

「何してるの? 行きましょ?」

 

「えっ、あっ、いつの間に」

 

 俺と長塚さんが軽く話をしている間に相笠さんは俺たちよりも数歩先を歩いてカードショップの方へ向けて歩き始めていた

 

「十茉梨ちゃん、相変わらずだなぁ」

 

「……いつもあんな感じなの?」

 

「う、うん。まぁ……そんな、感じ?」

 

 どうやらいつもこんな感じらしい……まぁ確かに、いつまでもここで話してる訳にはいかないし。こうして話している間にも店長の昼食の時間が遅くなっていくわけだから戻った方が良いか

 

「それじゃ、俺たちもいこっか」

 

「そ、そうだね」

 

 相笠さんの後を追う形で俺と長塚さんもカードショップへ向けて歩き始めた

 

 

 

 

 

※※※※※

 

 

 

 

 

 改めてカードショップへ戻ってきたので裏口から入ろうと思ったがコンビニへ行く前とは違い店の入口が半分だけ開けられていた

 

「店長、戻りました。これ、お弁当とおにぎりです」

 

「おぉ、お帰り久導くん。ありがとー……それで、君の後ろにいるのが件のクラスメイト?」

 

「は、はい……えっと、長塚蒔苗です」

 

「こんにちは、相笠十茉梨です」

 

「長塚ちゃんに相笠ちゃんね、私は白峰唯月。このカードショップの店長だよ、改めてよろしく」

 

 俺からコンビニの袋を受け取り、中に入っているお弁当とおにぎりを吟味しつつ店長は二人に自己紹介を済ませる

 

「それじゃあ早速……と言いたい所だけど、まずはお昼食べよっか」

 

「……そうですね」

 

「コンビニの袋持ってるし二人も何か買ってきたんでしょ、こっち座って一緒に食べましょ?」

 

 せっかくコンビニでお昼を買ってきたんだから食べなきゃ損だ、俺は店長の隣に座って長塚さんと相笠さんの二人はその対面に座り各々買ってきたものを開けて食べ始める

 

「そう言えば、二人はファイトスペース借りたいって言ってたけどデッキの調整?」

 

「はい、蒔苗と一緒に赤のデッキを作ったのでそれの最終調整をしようと」

 

「あれ、でもファイトなら家でも出来るよな」

 

 俺も時々妹に付き合ってもらったり逆に妹のデッキ調整に付き合ったりしてるし

 

「そ、それは……家だとわたしのスイッチが入りづらくて」

 

「もしかして長塚ちゃんってリラックスしすぎると実力発揮しずらいタイプ?」

 

「は、はい……あんまり実感ないんですけど」

 

「蒔苗、家でのファイトだとたまに凡ミスするんで、デッキの調整する時は家以外でするようにしてるんです」

 

「そうだったんだ」

 

「うん。十茉梨ちゃんには申し訳ないって思ってるんだけど……」

 

「まぁプロやってる人の中にもファイト前に特殊なルーチン挟んでる人は案外いるし、長塚ちゃんの家だとスイッチが入りにくいってのもそう言うものの一種なんじゃないかな? 逆にショップとかだとすぐに切り替えは出来るんでしょ?」

 

「は、はい……」

 

「なら問題ないと思うよ。スイッチが入りにくいって事は家でしっかりリラックス出来てるって事だろうし。長塚ちゃんはそれを悪く捉えちゃってるけど逆に言えばメリハリがしっかりあるとも言えるんじゃないかな」

 

「そ、そうなん……ですかね」

 

 なんかしっかりと年長者と言うか……しっかり指導者みたいな助言をしてる店長の姿を見ると少し意外と言うか違和感が凄い、これに関しちゃ俺が基本的にのほほんとした感じの店長を一番見てるって言うのがあるんだろうけど

 

「久導くん、もしかしなくても失礼な事考えてない?」

 

「……いえ、そんなことは」

 

「ホントかなぁ……ま、いいや。ごちそうさま」

 

 会話をしつつ食事をしていたがいつのまにか全員食べ終わっていたようだ。俺も店長が食べ終わる少し前には完食して彼女たちの話をペットボトルのお茶片手に聞いていたし

 その後、大き目の袋にお弁当やおにぎりのごみを入れて一まとめにして俺と店長、そして手伝ってくれることになった長塚さんに相笠さんの四人でテキストの更新作業を始める

 

「わ、わたしテキストの更新って初めてだから緊張します」

 

 長塚さんは店長から渡された作業用の手袋をはめながら緊張とワクワクガ混ざったような表情を見せる

 

「長塚さんってテキスト更新するの初めてなんだっけ?」

 

「は、はい。小さい頃に1回更新はあったんですけどその時はお父さんがやってきてくれて」

 

「蒔苗の家は昔から過保護だしね。その過保護も昔は病気がちだったってからみたいだけど」

 

「おっ、長塚ちゃんと相笠ちゃんは小さい頃から付き合いある感じ?」

 

「い、いえ……十茉梨ちゃんと初めて会ったのは中学生の時なんですけど……昔は病気がちで身体が少し弱くて、学校も休むことが多かったから友達がほとんどいなくて……」

 

「蒔苗の家に初めて行った時、娘が友達連れてきたのが嬉しかったのか凄い喜ばれたしね。ちょっとしたお祝いムードで遊びに行っただけなのに申し訳なく位歓待されたわ」

 

「その節は、本当にごめんなさい」

 

「昔の話だからもう気にしてないわよ……そうだ、次は蒔苗の家に久導君を連れてって見る? 反応気になるし」

 

「話を聞いた感じ、場合によっては命の危険がありそうだからやめておくよ」

 

「久導くんはわたしの家族をなんだと思ってるの!?」

 

 そんな話をしながら作業をする事2時間ほど、元々1日で全て終わらせるわけではなく3日ほどに分けて更新作業を行ってくつもりだったようで今日の分は店長が更新機にかけているもので最後だ

 

「よし、今日の分はこれで終了! 三人とも手伝ってくれてありがとね、予定より少し多めに更新かけられたし明日以降の作業が少し楽になりそうだよ」

 

「気にしないでください、よかったら明日も手伝いに来ましょうか?」

 

「そこまでしなくていいよ。今日と違って明日は久導くんもバイトで来てくれるからね」

 

「そう言う事、それにこういう作業は店員側のやる事だしね」

 

 今回は少しイレギュラーで本来なら俺と店長の二人で進めていくのが正しい形だ。だからこれ以上彼女たちの好意に甘えるのもどうかとも感じている

 

「さてと、今日の作業も終わった事だし。相笠ちゃんに長塚ちゃん、思う存分ファイトスペースを使っていいよ」

 

「ありがとうございます」

 

「あ、ありがとうございます……使わせてもらいます」

 

 店長の言葉を聞いて早速デッキを出した二人がファイトスペースへと向かう────前に店長が二人に声をかけた

 

「二人ともちょっと待った」

 

「?」

 

「どうかしたんですか?」

 

「せっかく手伝ってもらったしファイトスペースの貸出だけじゃどうかと思ってさ。二人の使ってるデッキのテキスト更新にこの機械使っていいよ」

 

「えっ?」

 

「いいんですか?」

 

「もちろん」

 

 使ってるデッキのテキスト更新は基本的に有料だ、小学生以下の子供たちは年齢を考えて無料になっている場合が多いが中学生より上は自分の持っている金銭関係の判断も出来るだろうという事で1回の更新に1000円ほどかかる

 

「店長もそう言ってるし、使わせてもらっていいんじゃないかな」

 

「……そうね、折角好意で言ってくれているのだし、今回は甘えましょうか」

 

「そ、そうだね」

 

 二人はデッキを更新機にセットして待つこと10分ほど、1回の更新を行える最大枚数は100枚。更新機に100枚いれると流石に時間がかかるがデッキ1つ分くらいならそこまで時間もかかることなく終わる

 

「さてと、デッキの更新も終わった事だし早速やりましょうか」

 

「……うん、そうだね」

 

 相笠さんの言葉を聞いた長塚さんの表情が変わる、どうやらスイッチが入ったらしい

 二人はそのままファイトテーブルで向き合うとデッキをシャッフルしデッキからそれぞれ手札を5枚引いて準備を終えた。いよいよファイト開始……相笠さんの作ったデッキがどんなものなのか俺も楽しみだし、しっかり見学させて貰おう




今回の更新内容

1.カードテキストの更新

更新前:〘常時〙このユニットは相手ユニットの攻撃を防御してもよい
↓
更新後:〘防御〙

2.カード項目に種族を追加

≪更新前≫
=====
【天獣 ガル】コスト:1 パワー:1000 ダメージ:1
《能力》
〘登場時〙デッキから”ガルディアス”を1枚まで探し、手札に加える
=====

↓

≪更新後≫
=====
【天獣 ガル】コスト:1 種族:疾駆獣/ビースト 
パワー:1000 ダメージ:1
《能力》
〘登場時〙デッキからコスト6以上の「疾駆獣」を1枚まで探し、手札に加える
=====


【作者より】
 書いているうちに〘速攻〙はシンプルなのに〘防御〙だけ長々と書いてるのはちょっとな……と思い今回更新を実施することにしました
 それに伴い「名称サーチより種族サーチの方がわかりやすいよな」と言う思いもあったので”種族”の項目も追加することに決めました。
 突然の実施になってしまい申し訳ありません
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