カードショップの店員は、主人公だが主人公じゃない   作:どこかのSさん

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何を書こうか迷った結果、こんな感じになりました。ご容赦ください


第2話,転校生、来る // 店員の日常

 あたし、春野遊花! 繋江(つなえ)中学に通ってる中学二年生! 少し前までは何処にでもいる普通の中学生だったけど……実は最近、ソウルリンクってカードゲームを始めたの

 

「遊花ー、そろそろ学校行かなくて大丈夫なのー?」

 

「そろそろ行くー!」

 

 下からお母さんのそんな声が聞こえてきた私は、パジャマから学校の制服に着替えて部屋から飛び出して──行く前に、勉強机の上に置いてあったデッキケースを手に取る

 

「よしっ、今日もよろしくね」

 

 これからもずっと一緒にいるデッキにおはようの挨拶をして、階段を降りてリビングまで向かうとお皿の上にあったトーストを取って玄関まで向かう

 

「遊花! 朝ごはんはゆっくり食べなさい!」

 

「ごめんお母さん! でもことはを待たせちゃってるから、行ってきます!」

 

 慌ただしく玄関を出ていくと、玄関の前で待ってることはの姿が見えた

 

「ごめんことは! お待たせ!」

 

「ううん、私もさっき来たところだったから……それより遊花ちゃん、ちゃんと朝ごはん食べた?」

 

「うむ、ん……んくっ、今食べた!」

 

「トーストだけで大丈夫?」

 

「大丈夫! それより早く学校行こ」

 

「うん、いこっか」

 

 いつもと同じようにことはと二人で通学路を歩き始める

 

「そういえばことは、何のデッキを使うか決めた?」

 

「ううん。まだあんまり決まってなくて」

 

「そっか……そうだ! どうせならあたしの同じ赤デッキ使おうよ!」

 

「うーん、それも良いけど……どうせなら別のデッキ使いたいかな……」

 

「そっかぁ、そうだよね。うーん……じゃあ何色がいいかなぁ」

 

 あたしは今のチャンピオン、神楽 火蓮(かぐら かれん)さんをテレビで見て、その姿がカッコよくて……あの人に憧れて、そして偶然ニクスと出会って、そして今のデッキと出会った……けど

 

「ことはは、何かこうピンと来るものはなかった?」

 

「ないわけじゃないけど……しばらくは遊花ちゃんがやってる所を見てるだけでいいかな」

 

「そっかぁ……けど、ことはがそう言うなら仕方ないか」

 

「そう言えばことは、今日の放課後もあのカードショップに────」

 

「あっ、遊花ちゃん、後ろ!」

 

「へっ────」

 

 ことはのそう言ってすぐに、後ろを振り返ると同じ制服を着た女の子がすぐ目の前まで迫っていた。慌てて避けようとしたけど少しだけ遅かった

 

「きゃっ」

 

「うわっ」

 

 そこまで勢いはなかったけどお互いに避けきらずぶつかった勢いでお互いに尻もちをついて、手に持ってた荷物が道にばら撒かれる

 

「あぁ、やっちゃった!?」

 

「だい、大丈夫!? 遊花ちゃん!」

 

「あ、あたしは……あの、大丈夫ですか?」

 

「えぇ、大丈夫よ。それじゃあアタシは急いでるから」

 

 それだけ言うと、ぶつかったあの人は自分のカバンを拾って学校の方まで歩いて行ってしまった

 

「なんか、クールな人だったね」

 

「そうだね……って遊花ちゃん! 荷物拾わないと!」

 

「あぁ! そうだった!」

 

 散らばった荷物をカバンの中に全部仕舞って、改めて学校に向かおうとしたところで────

 

「──あれ?」

 

「どうかしたの?」

 

「……ない」

 

「えっ?」

 

「デッキ入れてた……カードケースがない!?」

 

「えぇっ!!」

 

 

 

 

 

※※※※※

 

 

 

 

 

 結局、その後すぐに荷物を散らばらせてしまった場所をくまなく探したけれどあたしのカードデッキを見つけられなかった

 

「うぅ……どこいっちゃったの……私のデッキぃ……」

 

「だ、大丈夫……じゃないよね」

 

「私のデッキぃ……」

 

 一体どこに行っちゃったんだろう……私のデッキ

 鬱々とした気持ちを抱えたまま項垂れていると学校のチャイムが鳴った。顔を上げるのも億劫だけど流石に突っ伏した体勢のまま聞くのは流石にマズいから何とか顔を上げて先生の話を聞く

 

「それと最後に一つ、このクラスに転校生がやってきます……入ってきていいわよ」

 

 話さないといけないことを大体話終わったらしい先生はそう言うと教室の扉が開き、今朝あたしとぶつかった女の子が入ってきた

 

「それじゃあ、自己紹介をお願い」

 

「はい、本日よりこのクラスに転校してきました空閑 葵(くが あおい)です。よろしくお願いします」

 

 今朝ぶつかった時とおんなじですらっとしててクールな印象を受ける空閑さんに目を奪われていると、あたしのそんな視線に気づいたらしい彼女もこっちに視線を向け、少しだけ驚いたような表情を浮かべる

 

「空閑さんは転校してきたばかりでわからない事も多いと思うので、なにかあったらみんなが力になってあげてね……それで空閑さんの席だけど────」

 

 先生は席を教えて、彼女がそこに着席した事を確認した後でホームルームは終わりと言って教室から出ていくと、クラスの子たちが一斉に空閑さんの元に集まり、質問攻めにあっていた

 

「空閑さん、すごい質問されてるね」

 

「そうだね……うー、あたしも聞きたいことがあったのにぃ……あれじゃ聞けないよぉ……」

 

 みんなも色々聞きたいことあるだろうから仕方ないけど……ぶつかった時にカードケースを拾ったのか聞きたかったのに

 

「ねぇ」

 

「はへ?」

 

 声をかけられて顔を上げると、さっきまで質問攻めにあったいたはずの空閑さんがあたしたちの近くまで来ていた

 

「く、空閑さん」

 

「少しだけ、時間良い?」

 

「は、はい……」

 

「あの、わたしも一緒に行ってもいいですか?」

 

「えぇ……それじゃあ、ついてきて」

 

 そう言って先に教室を出ていった空閑さんの後をあたしとことはの二人もついていく……あたしたちのある場所から階段を上がって屋上までまっすぐ向かった空閑さんは扉を開けようとしたけど、開かなかった

 

「あら?」

 

「えっと、空閑さん……ウチの学校は屋上入れないよ?」

 

「あら、そうなの……困ったわね」

 

「空閑さん、遊花ちゃんにお話があるならここでも問題ないんじゃないですか?」

 

「……それもそうね、ここなら人も来ないだろうし」

 

 そう言って空閑さんがあたしにカードケースを差し出してくる……カードケース!? 

 

「これ、あたしのカードケースだ!」

 

「えっ? ホント!?」

 

「うん!」

 

「今朝、アタシとぶつかった時に紛れ込んじゃったみたい。無事に渡せてよかったわ」

 

 よかったぁ、あたしのカードデッキ……もう二度と離さないからね

 

「本当にありがとうございます! デッキをなくなっちゃったらって考えると……あたし、どうしようって」

 

「何はともあれ、無事に渡せてよかったわ……それじゃ」

 

「あっ、ちょっと待って」

 

 そう言うと一足先に教室に戻ろうとする空閑さんを咄嗟に呼び止めると、彼女は少しだけ疑問を浮かべた表情をみせながらこっちに振りむく

 

「何かしら」

 

「あの、あたしと……あたしたちと友達になってくれませんか!」

 

「友達? アタシと?」

 

「はい! ことはもいいよね!」

 

「えっ、う、うん」

 

 急にこんな事を言われて少しだけ驚いたまま固まっていた空閑さんだったけど……

 

「ま、まぁ、友達になるのは良いけど……何故急に?」

 

「えーっと……なんとなく?」

 

「なにそれ」

 

「遊花ちゃん……」

 

 隣にいることはから呆れたような顔をされている気もするけど、まぁそれは一旦横に置いておこう

 

「ま、いいわ。一旦その話は後にして……そろそろ授業が始まりそうだし、教室に戻りましょう」

 

「あっ、うん!」

 

「は、はい……」

 

 一足先に教室に戻っていく空閑さんの後を追って。あたしたちも階段を降りて教室に戻っていった

 

 

 

 

 

※※※※※

 

 

 

 

 

 札辻(ふだつじ)高校──俺こと久導 灼の通っている高校の名前で、どこにでもある普通の学校

 これと言った特徴もなく、特別変わったことのない日の放課後、いつものようにバイト先へ向かうためカバンの中に荷物をしまっていると隣の席から声をかけられる

 

「灼、お前も今日バイト?」

 

「ん? あぁ、そうだけど……今日なんかあったか?」

 

「いや、何も用事なかったらどっか遊んで帰ろうぜって思ってさ」

 

「そう言うことか。けどわりぃな、放課後はずっとバイトで埋まりっぱなしだ」

 

「そうか、ならしゃあねぇか……じゃあ暇な時にでも誘ってくれよ」

 

「おう」

 

 そう言ってクラスメイトと別れると、教室から出て昇降口まで向かう。この時間なら駐輪場に自転車を取りに行けばそこまで時間もかからずにバイト先まで行けるな等と考えていると小さい衝撃が身体を襲う

 

「きゃっ」

 

「……ん?」

 

 声のした方を確認すると尻もちをついてる女生徒の姿が目に入る……成る程、さっきの衝突音は俺がこの女生徒とぶつかった音だったのか────

 

「──って、悪い! 大丈夫か!?」

 

「は、はい……」

 

「ホントにすまん、立てるか?」

 

 手を差し伸べて女生徒が立ち上がるのを手伝った後、近くに落ちていた彼女の荷物を拾おうとしたところでカバンの近くに1枚のカードが落ちている事に気付き、それも一緒に拾う

 

「はい、荷物落ちてたよ」

 

「ありがとうございます」

 

「それと、このカードも」

 

「あっ、ワタシのカード……ありがとうございます」

 

「気にしないでいい、元々は俺の不注意が悪いわけだし……っと、そろそろバイトに行かねぇとだ、それじゃあ」

 

「あっ、はい……」

 

 そう言ってあの女生徒と別れて昇降口まで向かう……そういや名前を聞いていなかったけどまぁいいか、さっさと駐輪場に自転車取りに行ってバイト先へ向けて漕いでいると、三人並んでいる女子中学生が目に入った

 事故らないように少しだけ速度を落として、彼女たちの横を通り過ぎようとしたところで

 

「あっ! 久導さんだ!」

 

「ん?」

 

 そう声をかけられて自転車のブレーキをかけて振り返ると、今度は真正面から先ほどの女子中学生の姿を確認できた

 

「あぁ、春野さんに城咲さん……それと、そっちの子は始めましてかな」

 

 深紅に深緑、少し前より増えて濃紺の髪色。見事なまでにカラフルだな。と言うか見事なまでに警戒されてるな、濃紺の髪の子には……とりあえず自己紹介か

 

「初めまして、俺は久導 灼。この先にあるカードショップb-LINEのバイト店員だよ」

 

「……空閑 葵です」

 

「空閑さんね、よろしくね……それで三人とも、これからb-LINEに?」

 

「はい! 空閑さんもソウルリンクをやってるみたいなので、カードショップで対戦しようって事になって」

 

「おぉ、それは嬉しい」

 

 常連客が増えるのはこっちとしても嬉しい事だからね、この子たちが良いならずっとウチの店を贔屓にしてほしい所だが……まぁそれを言うのは別の機会でもいいだろ

 

「俺もこれからバイトだし、一緒に行っても大丈夫?」

 

「あたしは大丈夫だけど、二人はどう?」

 

「わ、わたしも大丈夫です」

 

「……アタシも、まぁいいわ」

 

「だそうです!」

 

「そっか、それなら遠慮なく」

 

 了承も取れたから遠慮なく三人と一緒にb-LINEまで向かう……と言いたいところだけど空閑さんからは若干警戒されてるし、城咲さんにも少し怖がられてるみたいだし三人とは少し離れて歩き始めた所で、春野さんが口を開く

 

「そう言えば久導さん、少し聞きたいことがあるんですけどいいですか?」

 

「いいよ、なにかな」

 

「久導さんって、いつからあのお店でバイトをしてるんですか?」

 

「本格的に始めたのは今年の春からだね、高校に入学してすぐにあの店のバイト募集を見かけて応募して、それでって感じ」

 

「へぇ……って事は高校一年生?」

 

「そうだよ」

 

 俺の言葉に意外そうな表情を浮かべている春野さんと城咲さん。もしかしてそこそこ長いと思われてたのか? 

 なんて事を考えていると、相変わらずの警戒心が伝わってくる空閑さんの方から、何やら視線を感じる

 

「えっと、空閑さん……何か気になる事でもあった?」

 

「いえ、別に大したことではないのですが。その制服……札辻ですよね」

 

「そうだけど、それがどうかした?」

 

「いえ、確か札辻はカードファイト部が強かったと記憶しているので」

 

 札辻って、そんなにファイト部が強かったっけかな

 

「どうかしたんですか?」

 

「いや、ウチのファイト部ってそんな強かったかなと」

 

「知らないんですか」

 

「うん、まぁ……俺はファイト部目当てであの高校入ったわけじゃないからね……正直な話、ファイト部があることも今知った」

 

 ウチの高校、ファイト部何てあったんだな……と言うか俺が普通の高校だと思っていただけで案外ソウルリンクの強豪校だったりするのか? 

 

「……そうなんですね」

 

「もしかして、ファイト部に知り合いでもいた?」

 

「いえ、そう言う訳ではないです」

 

 少し含みを感じるが……まぁそれは横に置いておく。そこら辺を深追いするのは多分俺がすることじゃない

 

「そろそろ店だね。それじゃあ俺はバイトだから、三人ともごゆっくり」

 

「あっ、はい! それじゃあ久導さん、またお店の中で!」

 

 そう言ってくる春野さんと、頭を下げてくる二人と別れる

 俺くらいしか使っていない従業員用の駐輪場に自転車を停め、裏口から店の中に入るとそのまま真っ直ぐ自分のネームプレートが貼ってあるロッカーまで向かう

 

「デッキは……一応持っておくか」

 

 制服の上着とネクタイをハンガーにかけて、エプロンを取り出す次いでにカバンの中からデッキケースを取り出して腰に装着し、準備完了

 従業員用の扉から店の中に出ると、レジ番をしていた店長が俺に気付き声をかけてくる

 

「おぉ少年、いたいけな中学生のナンパは楽しかったかな?」

 

「人聞き悪いですよ、店長。ここまで来る途中に偶然会ったんで一緒に来ただけです」

 

「それを世間一般ではナンパと言うのでは」

 

「言いません……それで店長、今日の仕事ってなんかあります?」

 

「うーん、いつもと変わらずかなぁ」

 

「了解です、それじゃあ店の掃除……と言いたいところですが、今日はお客さんいましたね。裏からパックの在庫持ってきます」

 

「オッケー……それじゃあブースターの2弾と3弾、お願い出来る?」

 

「了解です」

 

 補充用のパックを取りに行く前に、ちらりと店の中に視線を向ける

 これまでは俺と店長のものしかなかった会話が、今は少しだけ増えて賑やかになった。明るい声に控えめな声、そして少し一歩引いたような声……そんな声を聞きながら、今日も今日とて、業務に励むため俺は気合いを入れ直す

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