カードショップの店員は、主人公だが主人公じゃない   作:どこかのSさん

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 少しバタバタしてて投稿が遅れました
 そして誠に勝手ながら、アンケートの投票可能期間はこの話を投稿した翌日の0時(10月11日0時)までとさせていただきます。よろしくお願いします


第4話.カードショップに行こう in 駅前

 久導さんと長塚さんのファイトを見てから数日、あたしたちは店長さんのカードショップ”b-LINE”へ毎日のように通っている

 今日の授業が終わった放課後、あたしはぱぱっと帰りの荷物をまとめると近くの席で帰りの準備をことはの所まで向かう

 

「こーとは、今日もb-LINE行こ?」

 

「あっ、遊花ちゃん。ちょっと待ってて」

 

「わかった、それじゃあたし空閑さんにも声掛けに行ってくるね」

 

「うん、わかった」

 

 ことはを待っている間に空閑さんの事を呼びにいこうとしたところで空閑さんがあたしたちの所まで来た

 

「春野さん、城咲さん。待たせたかしら?」

 

「ううん、全然待ってないよ。むしろあたしの方から声をかけに行こうとしてた所」

 

「わ、わたしもまだ帰りの支度終わってないから……待たせちゃってごめんね」

 

「気にしないで良いわ」

 

 それからすぐにことはも帰りの準備を終わらせてあたしたちは三人で学校からb-LINEに続く道を歩き始める

 

「そう言えば凄かったね、この前の久導さんと長塚さんのファイト」

 

「えぇ、残りライフ1でガルディアスの効果を使ったダメージアップと貫通によるフィニッシュ。最後には運も絡んだのかも知れないけれど、それでも見事な決着だったわ」

 

「……わたしはまだよくわからないけど、何となく凄かったと思う」

 

「あー、あたしもあんな風にファイトしてみたいなぁ」

 

「それなら、まずは初心者を脱しないといけないわね」

 

「うぅー、そうだよねぇ……」

 

 空閑さんに言われて少し億劫になるけどやっぱりそれが第一歩だよねぇ……まだ全然ファイトも出来てないし

 

「やっぱり武者修行とか出るべきなのかな?」

 

「その前に基礎を固めた方がいいと思うわよ」

 

「ゆ、遊花ちゃん……まだ夏休みまでだいぶ期間あるよ?」

 

「そうだよねぇ」

 

 何をするにしても勉強はしないといけないもんなぁ

 

「あぁー。早く夏休みにならないかなぁ」

 

 そんな話をしながら歩いていると気が付けばb-LINEが目と鼻の先まで見えてきた、あたしたちは目を見合わせて入口の前まで向かうとあたしが先に一歩前に出て自動ドアをくぐる

 

「こんにちはー!」

 

「おっ、三人ともいらっしゃい」

 

「こんにちは」

 

「こんにちは、久導さん」

 

 カウンターの中でお店の中を見ていた久導さんがあたしたちに挨拶をすると備え付けてあったパソコンに視線を戻した

 

「何してるんですか?」

 

「あぁ、ちょっとスケジュールの確認をね」

 

「スケジュール?」

 

 久導さん、なにか確認しないといけない予定でもあるのかな……なんて考えてると隣にきた空閑さんが久導さんに話しかける

 

「もしかして、ショップ大会のスケジュール調整ですか?」

 

「おっ、空閑さん正解……そう言うこと」

 

 そう言って久導さんがパソコンの画面を見せてくる、丁度今日から一週間後に赤い丸が表示されてる……この丸のついてる日程が大会をするの日って事だよね

 

「そ、そう言えば、丁度祝日……でしたね」

 

「うん、少しずつだけどお客さんも戻って来てるからね。丁度いいんじゃないかって店長が」

 

「それで、その店長さんは何処に?」

 

「あぁ、店長なら今はバックヤードで────」

 

 久導さんがどこに居るのかを答えようとしてからすぐにガチャリと裏口が開いて店長さんが顔を見せた

 

「おっ、三人娘ちゃん。いらっしゃい」

 

「店長さん、こんにちは」

 

「こんにちは」

 

「こ、こんにちは」

 

「それでどうしたの? ショップ大会の参加なら大歓迎だけど日程は調整中だからもう少しだけ待って欲しいかな」

 

「は、はぁ……」

 

 まぁ、久導さんの言ってた感じまだ日程決まってないんだろうなぁって思ってたけどやっぱそうだったんだ

 

「と、そうだ久導くん」

 

「何ですか?」

 

「申し訳ないんだけど、キミに敵情視察をお願いしてもいいかな」

 

「はい?」

 

「三人娘ちゃんにも、お願いできる?」

 

「「「はい?」」」

 

 

 

 

 

※※※※※

 

 

 

 

 

「三人とも付き合わせちゃってごめんね」

 

 あたしたちの先頭を歩いている久導さんが申し訳なさそうにそう言ってくる

 

「き、気にしないでください! あたしたちも興味あったので」

 

「そ、そうですよ!」

 

「……アタシも、二人と同じです」

 

「そう言ってもらえると……助かるかな」

 

 さて、あたしたちが何故カードショップ”b-LINE”から出て駅へ続く道を歩いているのか……それを簡単に説明すると、店長さんからこの街に新しく出来たカードショップ”R × R(ダブルアール) 札汐矢(しおや)町店”の敵情視察を命じられたからです

 何故わざわざ他のお店の敵情視察に行かなければならないのか店長さんは詳しく教えてくれなかったけど、それはそれとして新しいカードショップに行くのは楽しみかも

 

「そう言えば、これから行くカードショップってどんなところなんですか?」

 

「確か、R×Rでしたっけ……」

 

「うん、カードショップR×R。日本じゃ一番って言われてるカードショップだね」

 

「日本で、一番……」

 

「それってめちゃめちゃ凄いんじゃないですか!?」

 

「そう、めちゃめちゃ凄いんだよ……常連にはならなくても、カードゲームをやってれば一度はお世話なるくらい大きい店だからね」

 

 大きなお店って聞いてはいたけど、そんなに規模の大きいお店だとは思ってなかった

 

「アタシもこの町に来る前はよくお世話になってたわ」

 

「そうなの?」

 

「ええ、アタシは知り合いの影響で小さい頃からソウルリンクをやってるから」

 

「へぇー」

 

 小さい頃からってことは、小学生からとかかな。それと知り合いの影響でって言ってたし……あたしたちって空閑さんのことまだ全然知らないんだなあ

 

「春野さん、どうかした?」

 

「へっ? 別にどうもしてないよ?」

 

「そう、ならいいのだけど……」

 

 もしかして顔に出ちゃってたのかな、ことはからもよく遊花ちゃんはわかりやすいって言われてるから気を付けないと

 そんな風に考えていると、久導さんが立ち止まって、すぐ近くにあるおっきいビルの方を見た

 

「着いたよ、ここがカードショップR×R」

 

「相変わらずの大きさね」

 

 そんなことを言ってた二人だけど、あたしとことはの二人は目の前にそびえる想像以上に高いビルを見て言葉を失っちゃった……ここが、カードショップ? 

 

「それじゃ、入ろうか」

 

「そうですね。春野さん、城咲さん、いきましょう」

 

「は、はい……」

 

「ま、待ってよ三人とも~!」

 

 先にお店の中に入ってしまった三人から一歩遅れて、あたしもビルの中に入っていった

 

 

 

 

 

※※※※※

 

 

 

 

 

 あたしたちがカードショップの中に入ると、広がっていたのは綺麗に整理されたショーケースと、そこに並べられているカードを見ながら何かを話し合ったり、談笑をしたりしているいろんな人たちの姿

 

「すごいね」

 

「そうだね、なんというか……圧巻……」

 

 今まではb-LINEにしか行ったことなかったけど、ほかのカードショップってこんな感じなんだ

 

「それじゃ、これからどうしよっか」

 

「アタシは特に見たい場所もないので……春野さんと城咲さんはどう?」

 

「わ、わたしはソウルリンクをやってないから……遊花ちゃんは?」

 

「えーっと、どうしよっかな」

 

 そうは言ったけど、いっつもカードを買うときはb-LINEで十分だから新しいカードショップに来てもどこを見ればいいのかよくわからないかも

 

「あの、もしかして何かお探しですか?」

 

 そんな声の聞こえた方を向くと、そこに居たのはあたしたちとは違う学校の制服を着た女の子が立ってた

 

「あっ、えっと、ごめんなさい! 邪魔……でしたよね」

 

「ううん、そうじゃないの。ただ、どこから見たらいいのか迷ってるのかなと思って、もしかしてご迷惑だった?」

 

「い、いえ! そんなことないですよ! ね、ことは! 空閑さん! 久導さん!」

 

「そ、そうだね」

 

「そうね、実際にどうするか迷っていたのは事実なのだし」

 

 あたしの言葉にことはと空閑さんも同じ反応をしてくれて、久導さんは何も言わなかったけど頷いてた。そんな様子を見ていたらしい女の子は、少しだけ何か考え込んだ後にいいことを思いついたって表情で手をパンって叩く

 

「そうだ、それなら私が案内しましょうか?」

 

「いいんですか?」

 

「えぇ、ここで会ったのも何かの縁ですから」

 

「ありがとうございます!」

 

 よかったぁ、この人たぶんこのお店の常連さんだよね。そういう人に大きいお店は案内してもらうのが一番だもんね

 

「それじゃ、この子達の案内をお願いします」

 

「あら? あなたは一緒にいらっしゃらないのですか?」

 

「俺はちょっと急ぎで連絡しなきゃいけないこと思い出しちゃって……俺は俺で見てるんで、案内だけしてあげてください」

 

「そうですか、わかりました。それではさっそく────っと言いたいところですが、まずは自己紹介ですね」

 

 そういったこの人は、あたしたちの前に改めて向き直る

 

「私は天ヶ瀬 詩織(あまがせ しおり)碑角(ひかど)中学校の3年生です。改めてみなさん、よろしくお願いいたします」

 

「春野遊花です、よろしくお願いします」

 

「し、城咲ことはです」

 

「空閑澄玲です、よろしくお願いします」

 

「久導灼、札辻高校の1年生です。よろしく」

 

 一人ずつ自己紹介をしていくと、それに合わせて天ヶ瀬さんは一歩近づいて一人ずつ順番に顔を見てくる。久導さんまでその動きを終わらせると頷く

 

「それでは、改めて行きましょう」

 

 

 

 

 

※※※※※

 

 

 

 

 

 連絡があるって言ってた久導さんと別れたあたしたちは一歩先を行く天ヶ瀬さんの後をついてお店の中を1階ずつ見て回る

 ショーケースの場所とか、どこにパックが売っているのかとか、スリーブの場所とかの丁寧な説明を聞きながら移動していると空閑さんが天ヶ瀬さんに話しかけた

 

「天ヶ瀬先輩は、何故このカードショップに通ってるんですか?」

 

「どうしてここにって、そんなに変なことなの?」

 

「変というか……少し不思議なだけ、アタシの記憶が正しければ碑角中学はこの町から少し離れた場所にある学校だから」

 

「そう言われると、確かに不思議かも」

 

 きっと天ヶ瀬さんの住んでる町にだってカードショップはあるはずなのに。空閑さんの言葉を聞いてそんな風に考えたのはことはも同じだったみたいで、あたしの横で不思議そうな顔をしてた

 

「……そうですね、こちらの方が私が私らしくいられるからでしょうか」

 

「自分らしく、いられる?」

 

「えぇ、ここならば不要な事を考えず……ただファイトにのみ、ソウルリンクにのみ目を向けることができる。だから私はここに通っているのです」

 

「……なるほど。失礼なことを聞いてすみませんでした、天ヶ瀬先輩」

 

 いまいちよくわかってないけど、さっきの一言には天ヶ瀬さんの抱えてる重さみたいなのがのっかてる気がした、空閑さんもそれがわかったみたいで頭を下げると天ヶ瀬さんは柔らかく笑って首を横に振る

 

「気にしないでください、私は私の事情をほんの少しだけ話しただけですから……それと、先輩は不要です。ここにいるのはただの中学生で、ただのカードファイターですから」

 

「……わかりました、天ヶ瀬さん」

 

「はい。それじゃあ案内を続けましょうか」

 

 そういうと天ヶ瀬さんはあたしたちの一歩前を歩き始める。それに続く形であたしたちもついて行ってを繰り返して大体20分くらいで案内は終わって1階まで戻ると、ショーケースを見てた久導さんがあたしたちに気づく

 

「戻ってきたね、みんなどうだった?」

 

「その、なんというか……すごかったです!」

 

「色んなものがいっぱいあって、少し目が回っちゃいました」

 

「そっか、空閑さんは?」

 

「そうですね、少し懐かしい気持ちになりました」

 

 あたしたちがそれぞれの感想を伝えると久導さんは納得したようにう頷いて、天ヶ瀬さんの方に向き直る

 

「天ヶ瀬さん、今日はありがとうね」

 

「気にしないでください、私も楽しかったので」

 

「それでもさ、任せっきりにしちゃったから」

 

 そういった久導さんは手に持っていた紙袋から袋に入った1枚のカード? を取り出して天ヶ瀬さんに差し出す

 

「これ、お礼と言っては何だけど受け取ってもらえるとありがたいかな」

 

「そんな、私が好きでやったことなのに……」

 

「気にしないでよ、それに……この(カード)は君に使ってほしいんじゃないかって思ってさ」

 

 久導さんがそういうと、天ヶ瀬さんはおずおずとそれを受け取ると、袋からカードを取り出した

 

「! これは……」

 

「よしっと。少し暗くなってきたし、俺たちも帰ろうか」

 

「えっ、は、はい……」

 

 あまりにも突拍子なくそういった久導さんに少し驚きの目を向けてしまうけど、この人はそれを気にする様子もなく入口の方へ向けて歩いて行こうとする

 

「あの! どうして私にこれを……」

 

「それを選んだのは、本当にただの勘だよ……はい! それじゃ引率役からの号令です、そろそろ暗くなってくるし帰りますよー」

 

 そういうと久導さんは再び入口の方へと歩いて行ってしまった

 

「あの、今日はありがとうございました!」

 

「ありがとうございました」

 

「あ、ありがとうございました……し、失礼しますっ」

 

 あたしたちも頭を下げて久導さんの後を追いかけた

 追いついた時にはもう、いつもと変わらない久導さんがいて、いつもと変わらないはずなのに……あたしにはそのいつもと変わらないこの人の事が少しだけ不気味で、近くを歩いている筈なのに、どうしようもなく遠い場所をを歩いているように見えてしまった

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