カードショップの店員は、主人公だが主人公じゃない 作:どこかのSさん
「ねぇ、また……会える?」
「わかんない、でも……きっとまた会えるよ。すっごく離れた場所に居ても、俺たちは繋がってるって気がするから」
懐かしい夢を見た
小学生の頃、神隠しにあった時の夢。夏休みのとある日、友達と遊ぶために出かけた俺は夏の暑さにやられて気が付けば見知らぬ場所で目を覚まし……一人の女の子に出会った
俺にとっては長いようで短かった半年の冒険譚、この世界にとっては一週間の奇怪な行方不明事件。彼女と別れ、あちら側の世界で使っていた不思議なデッキと共にこの世界に戻ってきた
俺は気が付くと玄関の前に居て、少しだけやつれた両親に死ぬほど心配され、泣かれ……今までどこに居たのかと死ぬほど怒られたっけ
「……朝、か」
懐かしさと多少のセンチメンタルが混ざったお世辞にも良いとは言えない目覚めを迎えた俺は、立ち上がり机の上に置かれていたデッキケースを開き中から1枚のカードを取り出す
「俺は、元気にやってるよ」
誰に伝えるわけでも、彼女に伝わるわけでもないのに一言だけ呟いたところで部屋のドアがノックされ扉が開く
「兄さん、朝だよー……ってなんだ起きてんじゃん」
「珍しく目覚めが悪くてな」
「おー出た出た、兄さんって目覚めよくないと大体そのデッキ見てるよねー。そういう
「癖言うな……それより着替えるから出てってくれないか」
「えー、別に妹の前だし気にする必要なくない?」
「気にするわ、ほれさっさと出た出た」
適当そうな妹を部屋から追い出してドアを閉め、軽く息を吐いてからハンガーにかけていた制服を手にとった
※※※※※
朝のそんな一幕から時間が経った昼頃。午前中の授業をひと段落し、今日の昼食はどうしようかと考えつつ少し離れた席の友人を昼食に誘いに行く
「
「ん? おう、教科書とか仕舞っちまうから少し待っててくれ」
「別に急がんでもいいぞ、まだどこで何食うか決めてねぇし」
そうは言ったが先ほどよりも急ぎ気味で机の上を片付けた我が友人────
「よしお待たせ、そんでどうする? 学食?」
「まだ迷い中、とりあえず学食無理そうだったら購買でなんか買って食うか」
「りょーかい」
二人で教室を出てとりあえず学食を目指して歩き始める
「そういや泰晴、最近は部活どんな感じよ」
「んー、結構いい感じ? そういうお前はどうなのよ、バイトの方は」
「なんだかんだ楽しくやってるよ」
「ホントか?」
「嘘つく理由ないだろ」
「……それもそうだな」
口ではそう言っておくが、まぁ泰晴がそこら辺を少し心配してる理由もわからなくはない……こいつとは神隠しにあう前からの友達だし、神隠しにあった後も少し悶着があってその時も俺を気にかけてくれていた
そんな話をしながら学食までやってきたが案の定、人がそこそこ居て座るのは難しそうだ
「やっぱ混んでたけど……どうする?」
「そうだな。今日は購買にするか」
そういって俺たちは食堂を後にしようとしたのとタイミングで、近くに居た女子生徒も同じタイミングで食堂の中に向かおうとしたようで、ぶつかりそうになる寸前で何とか避ける
「おっと、すまん」
「い、いえ……こちらこそ……って、あれ? 久導くん?」
「えっ……ってああ、長塚さんか。少し前以来だな」
「は、はい。お久しぶりです」
この前ショップでファイトをして以来の長塚さんとの再会で、軽い挨拶をしていると隣に居た泰晴が俺の方をじっと見ていた
「……なんだよ」
「いや別に、灼にも春が来たのかと思ってさ」
「そんなんじゃねぇよ、ただ少し前に色々あってファイトしただけ」
「ほー……えっと、確か長塚さん? って言ってたっけ。オレは三浦泰晴、灼の友達な、よろしく」
「な、長塚蒔苗です……よろしくお願いします。それで、お二人はこれからお昼、ですか?」
「うん。学食か購買、どっちにするか」
「そ、そうなんですか」
と、長塚さんは手を顎に当てて何かを考えるような素振りを見せた後、顔を上げて俺たちの方を見る
「あの、よろしければわたしたちと……お昼、ご一緒しませんか?」
「おっ、いいの? それなら是非────」
「ちょっと待った。私たちって事はもしかして長塚さんの友達も一緒?」
泰晴に一旦待ったをかけて、長塚さんに聞いてみる
「はい、そうですけど……何か、問題ありましたか?」
「いや、そう言う訳じゃなくて……友達に了承はとらなくても大丈夫なのかと思って」
「……あっ」
俺の言葉を聞いた長塚さんは、はっとした表情を見せる……どうやらそこまで頭が回っていなかったらしい。油のきれたネジのようにギギギっと顔を動かした彼女は、少し申し訳なさそうな表情を見せた後、口を開く
「と、とりあえず、聞いてみるので……付いてきて、ください」
「お、おう……」
「わ、わかった」
※※※※※
彼女の後をついて学食の中を歩き、やってきたのは壁際の座席。長塚さんの視線の先には漆色のロングヘアをした女子生徒が目を閉じて座っている……彼女、どっかで見たことある気がする
「十茉梨ちゃん、お待たせ」
「……別に待っていないわ。それで、後ろの二人は?」
「えっと、久導灼くんと三浦泰晴くん。食堂の入口で偶然会って、困ってるみたいだったから一緒にどうですかって誘ったの」
「成る程。蒔苗のお節介……ってわけじゃないんでしょ。どういう関係なの?」
「久導くんが話してた少し前にわたしを助けてくれた人で、三浦くんがそのお友達だよ……それで
「……えぇ、良いわよ。いつまで立っててもアレだし、早く座れば?」
「そうだね。ほら、二人もどうぞ」
長塚さんに促されつつ、俺たちも席に着こう……かと思ったけど先に自分たちの飯を買いに向かった方がいいか
「その前に俺らは飯を買ってくるよ、長塚さんと……えっと……」
「十茉梨よ、
「それじゃ相笠さんで。二人の分も一緒に買ってくるけど、何にする?」
「そんな、悪いですよっ」
「いいよ、俺らは同席させてもらうわけだし。泰晴もいいよな?」
「おう、むしろ灼が言い出さなかったら俺から言い出してたし」
長いことやってるけど、どうやら考えは同じだったらしい。遠慮している長塚さんをよそに相笠さんの方は少しだけ考えた後に俺たちに視線を向けられる
「じゃあ、オムライスをお願い」
「と、十茉梨ちゃんっ」
「蒔苗は気にしすぎよ、それにアタシは他人の好意には素直に甘えることにしてるの……勿論、下心がないものに限りだけどね」
あっけらかんとそう言った相笠さんの言葉を聞いた後、むむむっとした様子で考えてからバッと顔を上げる
「……お蕎麦でお願いします。天ぷらそば」
「了解、オムライスと天ぷらそばね。行くぞ泰晴」
「おうよ」
二人分のオーダーも聞いたし、泰晴と一緒に食券を買いに来た道を戻り。二人に頼まれたオムライスと天ぷらそばの食券、そして俺はA定食、泰晴はかつ丼の食券を選んでから列に並ぶ
そこそこ待つかと思ったが案外スムーズに進み、食堂のおばちゃんから注文の品を受け取って二人の待っている席まで戻る
「お待たせ、二人とも」
「お待たせー」
「あ、ありがとうございます」
「お待たせと言われるほど待ってないわ」
お盆を先にテーブルの上に置いてから、俺が相笠さんの座っている側、泰晴が長塚さんの座っている側に座る
「代金は後でお支払いしますね。十茉梨ちゃんもそれでいいよね?」
「えぇ、食べ終わったらきっちりと支払わせてもらうわ」
「別に俺らはおごっちまってもいいよな? 灼」
「そうだな……けど、そこら辺は二人もきっちりさせときたいんだろ」
「そういう事よ。それよりも早くいただきましょう」
そう言われて俺たちは揃って手を合わせ、いただきますと言ってからそれぞれ昼食を食べ始めた
「……そういえば、灼と長塚さんは訳あってファイトしたって言ってたけど、何があったんだ?」
「ホント、別に大したことじゃないんだが……長塚さん、話しても大丈夫?」
「は、はい。大丈夫です」
「そっか。それなら話すけど、少し前に廊下で彼女とぶつかってさ、落とした荷物拾うのを手伝ったんだよ……それだけ」
そう言うと泰晴は少しの間、間抜けな表情を浮かべた後で今度は嘘だろといった表情に変わる
「そ、そんだけ?」
「そんだけ、それでその場で感謝の言葉は受け取ったんだけど、改めて伝えたかったみたいでさ、俺が落とした荷物の中に紛れてたカードに一瞬反応したって情報を頼りにここら辺のカードショップにローラーかけて俺のバイト先を突き止めて、感謝がてら常連の子たちとファイトしたんだよ」
「……嘘だろ?」
「マジだよ」
まるで信じられないといった表情の泰晴だが、隣に座ってる長塚さんが少々申し訳なさそうな表情をしていることに気づき、今度は驚愕と関心が入り混じった表情に変化した
「なんつーか、凄まじいな」
「だな」
「その意見には、アタシも全面的に同意するわ」
「と、十茉梨ちゃんまで……わたし、そんなに驚かれるようなことしたでしょうか?」
長塚さんの言葉に俺たち三人は一斉に頷く、すると彼女は何とも言えない表情を浮かべながらそばをすすり始める
「……本当に、この子の行動力は変わらないわね」
「ん? 変わらないってことは相笠さんもそれ系のエピソードをお持ちで?」
「アタシは……まぁ、少し悩んでいた時期があってね。その時に蒔苗に励まされたのよ」
「あぁ、そんな感じですか」
相笠さんの言葉に若干の含みを感じたのは、泰晴も同じだったようでそれ以上深く踏み込まずにかつ丼を一口食べる。これ以上、何か聞かれないと思ったらしい相笠さんもオムライスを再び食べ始めようとしたところで、俺の方へわずかに視線を向けてきた
「……そういえば、久導君はカードショップでバイトをしているんだったわね」
「ん? えぇ、まぁ」
「カードショップの場所、教えてもらえるかしら。暇なときに顔を出させてもらうから」
「そ、それがありがたいんすけど……どうして急に?」
唐突なことに少しフリーズしそうになるが、何とか思考を動かして返事をすると、相笠さんは今までの様子を特に崩すことなく言葉を投げ返してくる
「いつもとは違うカードショップを使いたいときもあるから、万が一の避難所として場所を聞いておこうと思って」
「避難所て……」
「十茉梨ちゃん……」
「アタシ、何か変なことを言ったかしら」
「まぁ……カードショップを万が一の避難所指定するのは十分変っすね」
「……そう」
先ほどと変わらず表情は崩していないものの、心なしかさっきよりも少し落ち込んだような表情をしている気がする……けどまぁ、さっきの言葉のおかげで変に張ってた気が緩んだ
「何かメモれるものってあります? 住所書いとくので」
「あっ、わたしメモ帳持ってます……どうぞ」
「ありがと」
長塚さんから受け取ったメモ帳とボールペンを使ってバイト先の住所を書くと、彼女に差し出す
「避難所と言わず、贔屓にしてくれると有難いかな……売上的に」
「……考えておくわ」
会話も一段落ついたタイミングで時計を確認すると、ちょうど昼休みも残り半分といったタイミング。次の授業の準備もしないといけないし……ささっと残りも食べきないと時間なくなりそうだ
「……ふぅ、ごちそうさん」
「相変わらず食い終わるの早いな、泰晴」
「まぁな……お前もさっさと食い切らないと時間なくなんぞ」
「わぁってるよ」
「久導くんと三浦くんって、なんというか……長い付き合いって雰囲気ありますよね……三浦くんとは今日会ったばっかりだから正しいかわかんないですけど」
「いや、長塚さんの言ってること正解だよ、灼とは……いつぐらいからの付き合いだっけ?」
長塚さんの言葉に返事をした泰晴が俺らがいつ頃からの長さかを言おうとして……忘れてやがった。俺も答えようとしたが生憎とちょうど食い物を口の中に入れたタイミング、少しだけ待ってくれとジェスチャーをしてからしっかりと口の中のものを飲み込む
「……大体5、6年の付き合いになるな」
「そんなに長いんですか?」
「小学生の頃からの付き合いだもんなー」
「だな、ここまでくると普通に腐れ縁だろ」
ほへーと言った表情を浮かべている長塚さんは置いといて、俺と泰晴の二人は苦笑いにも似た表情を浮かべる……そういや、中学上がってすぐの頃は俺と泰晴にもう一人も含めて三人でいることが多かったのに気づけばあんま話さなくなってたな
「……ま、人付き合いなんてそんなもんか」
「なんか言ったか?」
「いいや、改めて付き合いの長さを振り返ってた」
それだけ言うと、俺は残っている昼食を片付けるために食事を再開した
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