デュエル・マスターズOverLord(オーバーロード) 作:シグレサメ
夢も現実も乗り越えて
「そのハイパーモードという力、私達に使い方を教えてくれないか?」
ジャシンとジャブラッドが4文明連合に呼び出され、ドランからこのように言われたのだった。
「…教えると思うか?何より何故だ、貴様らはそれ抜きにも十分強いだろう」
「我と私はジャシンのハイパーモードの力を見て、更に強くするために必要であるということが結論づけられました」
「カクメイジンの演算がどうであろうと、余が貴様に協力しないことには変わりない」
「ファー!それは想定済みだ!運んできてくれ!」
ジャシンのその言葉を受けて、クリーチャーの皆は予想していたようにある準備を進める。奥からカオスマントラが現れ、クロッシュ(食べ物の皿に隠す金属の覆い)を取る。その中にはジャシンとジャブラッドの好物、タコさんウィンナーと唐揚げが鎮座していた。
「き、貴様らぁぁぁあああ!」
「そんな今から倒されるラスボスみたいなこと言わないでくださいよ、食べるための条件は、お分かりですよね?」
「月の民は正直倒せたと思えないと言ったのはジャシンだ、『備えれば 憂いはないさ ハイパー化』だね」
「ジャブラァ♪ジャブラァ♪」
ジャブラッドはもう唐揚げに飛び込み美味しそうに食べている。それを横からカオスマントラが凄く悪い顔で撫でている。
「貴様ら、闇文明より闇文明らしいことしよって…」
「まぁ私達メカは闇文明持ちもいますし」
「ジャブラッド、帰るぞ」
「ジャビラァ?」
「………ハァ、できるようになるとは約束できんぞ」
「感謝します、ジャシン」
「これは前払いですから気にしないで食べてください」
ジャシンがウィンナーの元に向かうのを横目で見ながら、先ほどから喋らないボルシャックをゴルファンタジスタは心配していた。
「どうしたボルシャック?普段より静かじゃないか?」
「いや…。大したことないんだ」
「その分だとさっきドランとかに聞かれてそうだな、余計な世話だったか?」
「いや、有難い。それでも」
「……お前、残された時間が少ないんじゃないか?」
「………」
「緑を俺様の元から離そうとしてた時の俺様の状態。そっけないって、どうしてもそういうのは態度に出るって緑が教えてくれたんだ」
「……火奈には、まだ言わないでくれ」
「…分かったよ、ハイパーモードの力、覚えるのか?」
「あぁ、少しでも力を使える期間は長い方がいい」
「そうか、じゃあお互い頑張ろうな」
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その頃、皇龍高校では夕哉達5人が集まって昼食を取っていた。基本的にはデュエマだったりの話をする集まりであったが、今日に限ってはシイノについての話になっている。シイノが夕哉の家に居候して2週間、少しずつ文化のギャップを埋めているのであった。
「じゃあ、シイノさんは今は家で色々お勉強中なんですね」
「うん。おばあちゃんかなり気合い入っててさ、元から元気な人なんだけどさらに元気になっててびっくりした」
「それで、シイノについてなんか話があるって言ってたよな」
「うん、今度の日曜日、シイノが夕花とショッピングモールにチャレンジするんだ」
「シイノちゃんそこまでできるようになったんだ!ん?待って、夕哉は一緒に行かないの?」
「そうなんだけど、俺は朝陽に紹介された短期バイトに入るんだよね」
夕哉が残念そうに言うと、話の流れを読んだ飛水が代わりに喋る。
「つまり、この中の誰かに行ってほしいってことか?」
「うん、月の民があれ以来目撃されないとはいえ、シイノと夕花だけじゃ不安だから。何よりシイノがこの世界に残ってる理由は、月の民を倒すためだからね」
「でも、しいの強いんでしょ?要らなくない?」
緑の言葉に、夕哉は苦笑いしながら答える。
「そうなんだけどね…。なんか、どうにも全部を話したくないみたいだし、まだ俺の知らないシイノがいるんだ。月の民も前と同じ手を使ってバラバラにとは考えにくいし。だから…」
「念の為、だね。でもボクは公輝さんと一緒に行くところがあるんだ」
「え、どこ?」
「勉強を頑張ったご褒美に、大きなゴルフ場に連れて行ってもらうんだ。そこならゴルファンタジスタも呼び出せるからって」
「うん!!」
緑に加え、飛水と火奈も用事があるようだった。
「あたしその日部活…。でも、後半くらいには合流できるかな」
「俺、その日ネットで会う約束した人いるんだよな、だからパス」
「「ネットで、約束…?」」
「おう、ネット上で最近仲良くなってな。音楽の話で意気投合して、今度一緒に音楽ショップ行くって話になったんだ」
「飛水、気をつけてね…」
「まぁ怖い人はいるわな。最大限気をつけるわ」
必然、4人の目線は御白に集まる。
「……いや、空いてますけど…」
「御白?ダメだった?」
(なんていうか、苦手意識があるんですよね。夕哉くんの家に居候したり、夕哉くんが私のことが好きとか言ったり…。なんていうか、一緒に喋ったら心がグラグラしそうで…)
「いえ、大丈夫なのですが…。ちょっと苦手というか、悪い人じゃ、ないと思うんですけど…」
「しいのは悪い人じゃないよ。ボクと同じで、別の世界に来て普通だったり、常識みたいなことを押し付けられたりすると困っちゃうだけで、ボク達を助けたい、仲良くしたいって気持ちは同じだと思う」
意外にも緑からの言葉に、御白は驚く。別の世界からやってきた。そういうところで、彼はシイノに親近感を感じていたのだろう。
「……やっぱり、ボクもゴルフじゃなくてそっち行くよ。公輝さんとゴルファンタジスタには謝らなきゃだけど、話してたらボクもしいのと仲良くしたくなってきたんだ」
「そうですか、緑くんと2人なら少し大丈夫な気がします。私もチャレンジ、ですね」
そう言って御白と緑が週末の予定を決めて、夕哉は一安心する。
「夕哉、バイト頑張ってな」
「うん、月の民対策は保険だけど、シイノのために皆ありがとね」
「あ、そうだ!もう一つ!帆鳥(ほとり)ちゃんのこと!」
火奈が突然大声をあげて、皆の注目がそこに集まる。
「公輝さんにお願いしてたけど、やっぱり他の友達4人が見つからないみたいで…」
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月宮かぐらは、臣下にベッドを運ばせ月の民の今の拠点へと移動してきた。そのベッドでないと眠れないというかぐらのため、世界を超える際もそのベッドを愛用し、何度も引っ越してきた臣下にとっては大した作業ではなかった。
「黒井夕哉、光屋御白…」
かぐらはあの敗戦を思い出す。完全に途中まで盤面を掌握していた。彼らには攻撃できない御白の使用人をデュエマに参加させ、彼に自分のリソースエンジンを担当させた。しかし彼女は土壇場で逆転の札を引かれて負けてしまった。その日以来ずっとこの敗戦が彼女の中をグルグルと回っていたのだった。
「かぐら、入るぞ」
「真名月(まなつき)様!もう大丈夫なんですの!?」
「いや、完全回復にはもう1ヶ月は必要だろうな」
真名月は酷く消耗していた。歴史、記憶の改変に失敗し、いわゆる世界から追い出される形となった真名月は、バロムの力を借りなければ世界から自分が消滅するほどのダメージを受けていた。今は動かないことにより、バロム共々どうにか身体を治していたのだった。
「なんで、真名月様…!」
「ジャシンを記憶から消す儀式の際に、ジャシンの身体が儀式の副産物として残った。そこにはバロムの力が残っており、いわばジャシンとバロムの力が混ざった状態となっている」
「それが、どうしたんですの…?」
「これを流狼(るろう)に解析させているが、それまでの間お前達には待機を命じる」
「待機…!?真名月様、あいつらが憎くないんですの!?」
「憎いさ。しかしそいつらに負かされたのも事実。次を逃さないように、俺は準備期間に入らなきゃいけない。それまでにかぐら達を消耗させるわけにもいかない」
「………!!」
かぐらは目で真名月に不服を訴える。正直彼が来た時点でもう一度黒井夕哉と光屋御白に手を下すチャンスが貰えると思っていたのだ。真逆とあれば不服が態度に出てしまうだろう。
「分かってくれ。奴らは情報を漏らさなければ俺たちの陰に回復まで怯えることになる。質の良い回復、準備になるのは間違いなくこちらだ。俺たちに、世界を奪い取れないなどという失敗は許されない、分かってくれ」
「………分かりましたわ、私(わたくし)は出ませんの」
そう言いながらかぐらは実働隊の権限を使い、真名月も知らない4人の少女に自分の恨みを託す。黒井夕哉と光屋御白、ひいてはシイノと他のデュエマ部。彼女の常勝という常識を崩したことへの恨みは、命令を下した4人の少女にも、相棒のエルボロムにも新たな影響を与え始めていた。
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夕哉達5人が帰宅のため外に出ると、見覚えのある朱色の髪の少女が待ち構えていた。
「帆鳥先輩!?」
「火奈、前はありがとう」
「愛澤先輩、明日から復帰のはずじゃ」
「そうなん、だけどね」
帆鳥は公輝達警察からの聴取も終わり、明日から学校に復帰する手筈となっていた。その為火奈は帆鳥から彼女の友人である他の4人の事を聞き、探そうとしていたのだった。
「まぁ、直接本人に会えたなら早いな」
「ねぇ帆鳥先輩!他の人たちは…!」
「……ごめんね」
そう帆鳥が言うと火奈達の前をクリーチャーが立ちはだかる。
「帆鳥先輩!?」
「ひな、確かにあいさわ先輩は元に戻ったって…!」
「ごめん、火奈ちゃん。あたし、皆を人質に取られちゃった。月宮かぐらのために、”あたしのために”、あたしは火奈ちゃんを倒さないといけない」
「そうだよ帆鳥。私達は、月宮さんのために…」
そう言って帆鳥の影からもう一人、動物のぬいぐるみが鞄にたくさんついた少女が顔を出す。
「私は好木 夢兎(このき めう)。帆鳥ちゃんの親友だよ」
「親友って…帆鳥先輩が困ってるのわからないんですか!?」
その火奈の言葉に、夢兎は何を言っているのだと言うように言葉を返す。
「分かんないよ。私達はかぐらさんにクリーチャーの力を貰って、かぐらさんの言う新しい世界に連れてってもらうために頑張ってるんだ、ね、帆鳥ちゃん」
「これ、月宮かぐらさんに洗脳されてます…!」
「……どれだけ人を踏み躙るんだ、あの人…!」
御白と夕哉は直接対峙した月宮かぐらの名前を聞いて怒りを露わにする。帆鳥は申し訳なさそうに、火奈に語りかける。
「だから、あたしは大丈夫だから。もう、気にしないで」
そう言い切る前に、夢兎が帆鳥に何かを貼り付ける。それを貼り付けられた帆鳥は、何かに動かされるように、「フフ、フフフ」と笑いを漏らし始めた。
「あれ、じいやと同じ症状です!人を喜びの感情に浸けて、自分の支配下にする月宮かぐらさんとエルボロムの能力!デュエマで倒すしか穏便に助ける方法は…!」
「帆鳥先輩はあたしに呼びかけてくれた。だから、あたしがやるよ」
御白がそう言い切る前に、火奈が一歩前に進む。
「頑張れー帆鳥ー。あ、不意打ちは良くないんじゃない?」
ひらりと後ろから首を伸ばしたカクメイジンの頭をかわした夢兎に、飛水は思わず舌打ちを漏らす。
「こりゃ全員クリーチャー使いだな、真名月探す前に仕事ができちまった…!」
「そんな野蛮な人達にはとっとと退散するに限るね。帆鳥、終わったら待ってるよ」
「夕哉、光屋。俺は公輝さんに連絡する。2人はこんなところで真のデュエルせざるを得ない以上、人払い頼む」
「分かった」「分かりました!」
そんな風にどこかへ行ってしまった夢兎を見て、緑は
「どうしてあんな風に、月の民は人を変えちゃうの…?ボク達の記憶を奪って、めうさん達のことを操って…!」
と、納得できないという意思を漏らしていた。
「帆鳥さん!」
「アハ、アハハ!火奈、ちゃん…!」
「「デュエマ、スタート!」」
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火奈の先行で始まったデュエマ。前通り火と光のバクテラスのデッキを使う火奈に対して、帆鳥は火、光、闇の混合の《ファイアー・バード》のデッキを使用している。
「あたしのターン、2マナで《マジシャン・ルピア》を召喚、登場時効果で《龍后凰翔クイーン・ルピア》を捨てて、ファイアーバードを捨てたので2枚ドロー、フフッ!ターンエンド!」
「あたしのターン!呪文、《決闘者・チャージャー》!山札の上から3枚を見て、ボルシャックと名前がつくカード、《ボルシャック・ヴォルジャアク》と《竜王神 ボルシャック・バクテラス》を手札に加える!ターンエンド!」
貼り付けたような笑顔の中、帆鳥は全てを諦めたように、ターンを始めた。
「あたしのターン、フヒヒッ!3マナで《ハッター・ルピア》を召喚!マジシャンルピアをタップしてハッタールピアをハイパーモードに!」
「超化獣!?」
「ハッタールピアはハイパーモード時にスピードアタッカー!ハッタールピアで攻撃する時、ファイアー・バード・メクレイド5を行う!効果で山札から《ポッピ・冠(クラウン)・ラッキー》をバトルゾーンに!ハハハッ!これを返せる!?」
「頑張れー!ひなー!!」
(ハッター・ルピアはマナゾーン枚数以上のコストを持つクリーチャーが出た時破壊する効果を持ってる!ここでシールドトリガーを引かないと、きつい…!)
火奈 シールド4
「シールドトリガー!《爆殺!! 覇悪怒楽苦》、コスト合計が8になるように相手クリーチャー、要するに全てのクリーチャーを破壊!」
「冠ラッキーはエスケープ能力でシールドを回収して生き残る。ターンエンド」
帆鳥 シールド4
「あたしのターン!5マナで《ドラゴンズ・サイン》!ヴォルジャアクをバトルゾーンに!クリーチャーが出た時シールドを1枚追加!」
火奈 シールド5
ヴォルジャアクが空を飛び回り帆鳥を威圧するが、火奈は何か違和感をヴォルジャアクに感じた。
「ねぇ、どうしたのヴォルジャアク?」
「気にしないでくれ。カイザーの力を、太陽の力を、使うのだろう」
「……うん、カイザー、何かまずいの?」
「そんなことはない、ただ、少し調子が悪いだけだ」
「お願い、ここで使わなきゃ、帆鳥先輩を助けられない」
火奈はボルシャック・バクテラスのカードを高く掲げて、ヴォルジャアクをタップする。
「革命チェンジ!ボルシャック・ヴォルジャアクが攻撃する時、竜王神 ボルシャック・バクテラスへ!」
太陽の化身、バクテラスが現れるが、少しだけ、ほんの少しだけ、火奈にはその暖かさが弱まったように思える。気のせいではないのだろう。火奈は思わず心配を口にする。
「カイザー!?大丈夫なの!?」
「大丈夫だ、デュエルを続けよう」
それ以上の追求を許さないカイザーの態度に煮え切らない気持ちを得ながらも、火奈はターンを進める。
「バクテラスの登場時能力!山札の上から4枚を見て、バクテラスではないアーマード、《ボルシャック・ガラワルド》、《アシスター・コッピ》、《ボルシャック・ヴォルジャアク》をバトルゾーンに!ガラワルドの効果で冠ラッキーとバトルして、ヴォルジャアクでシールドを追加!」
火奈 シールド6
帆鳥 シールド3
「エスケープでシールドを回収、確かに、冠ラッキーは山札と手札からの行動を止められない、すり抜けられた」
「行っけーー!Tブレイク!」
その時、ずっと暇があれば笑っていた帆鳥の電源が切れて、帆鳥本人の人格が現れる。
「ごめんね火奈ちゃん。あたし、実は洗脳なんてされてないんだ。もう良いんだよ。あたしは、貴方と手を繋げなくなった。繋いだら、あたしの一番大事なものを守れなくなる」
「先輩、何を…!?」
「あたし、ここにくる前夢兎ちゃんに見せられたの。月宮かぐらが忠誠を誓う人、真名月とバロムの力。あれがもし100%の力を使ったら、もし目覚めてしまったら、火奈ちゃん達は跡形もなく消えてなくなると思う」
「先輩、何を見たんですか…!?」
「……皇龍市が、丸ごと無くなるようなところ」
とんでもない言葉に、火奈は言葉を失う。そんなことがあり得るのだろうか、クリーチャーの力の強大さは自分も知っているつもりだが、そんなことがありうるのだろうか。
「先輩、そんなわけ、ないじゃないですか!そんなこと、あたし達が、絶対に止めます!」
「無理だよ、あなたたちが束になってかかっても戦える相手じゃない、きっと誰も信じてくれないけど、あたしは夢兎達を守るために、こっちにいなきゃいけないと思ったよ」
「そんなこと、言わずに…!」
「後悔する選択はしたくないの。もし信じられない、信じたくないことが起こったとして、貴方は耐えて前に進めるの?現に貴方の相棒も、もう長くは持たないんじゃないの?」
「………え?」
帆鳥 シールド0
「Gストライク、《ハンプティ・ルピア》。ヴォルジャアクの動きを止める。さらにシールドトリガー、《アリスの突撃インタビュー》。手札から《アリス・ルピア》を捨てて、そのコスト(8)以下のガラワルドを破壊。そしてファイアー・バードが墓地に捨てられたから、墓地からコスト5以下のファイアーバード、龍后凰翔クイーン・ルピアをバトルゾーンに。この子はブロッカーだよ」
「……ターン、エンド。さっきの言葉、どういう意味ですか」
まるで不思議の国の姫のような立ち振る舞いのそのファイアーバードを従えて、帆鳥は涙を流しながら言葉を重ねる。
「他の4人もこれを見せられたんだと思う。正直、皆が折れた理由が、そこには詰まってる。人は薙ぎ払われ、クリーチャー達が倒れ、大地は消え去る。そこには何も残らない。それがバロムの本当の力」
「……なんで、カイザーが長くないなんて」
「分かってるんでしょう?カイザーが、さっきから必死で横に立っているところ」
「……カイザー!」
カイザーは、振り絞るように言葉を出す。
「バクテラスの、太陽の力は、有限らしい。COMPLEXとの戦いにバロムの記憶を奪う力、それでかなりの消耗をさせられていた」
「あの未来には沢山のクリーチャーが倒れていた、そのドラゴンも、その一人」
「そんなの!そんなの…!」
「ごめんね、火奈。あたしは現実を見るよ。少しでも大事な人を助けられる、そんな選択を選ぶよ」
火奈はその予言をどうしても信じられない。しかしカイザー本人が、自分は長くないと言い出したのだ、そんな現実に、今にも押しつぶされそうになってしまう。
「あたしのターン、アリスの突撃インタビューを4マナで唱える。《雷炎翔鎧バルピアレスク》を捨てて、アシスターコッピを破壊」
「クリーチャーが出たので、シールドを追加!」
火奈 シールド7
「バルピアレスクでシールドを攻撃、攻撃時に手札からファイアーバード、《アリス・ルピア》をバトルゾーンに。アリスルピアの登場時効果で《ヤット・パウル》、《ハッター・ルピア》、《ハンプティ・ルピア》をバトルゾーンに、ハンプティの登場時効果で火奈のボルシャック・ヴォルジャアクを墓地に送り、その捨てたのと同じコストの場のヴォルジャアクを破壊」
「ヴォルジャアクの破壊効果は、使いません」
火奈 シールド6
「シールドトリガー、無しです…!」
「バルピアレスクは攻撃終了後、ファイアーバードを5体破壊できる、冠ラッキー、アリス、ヤット、クイーン、ハンプティを破壊。クイーンは代わりにアリスを破壊して、私は追加ターンを獲得する」
「追加ターン…!?でもシールドはまだあるよ!ひな、頑張れー!」
緑の応援虚しく、火奈は押し込まれていく。
「クイーンルピアでシールドをWブレイク」
火奈 シールド4
「シールドトリガー!《光鎧龍 ホーリーグレイス》!相手クリーチャーを全てタップ!更にバクテラスの効果でブロッカーを得…!」
そう言い切る前に、ハッター・ルピアがホーリーグレイスに突撃して、破壊してしまう。
「マナ枚数より大きいクリーチャーを出したからハッターで破壊。ターンエンドして、次もあたしのターン」
帆鳥は淡々とカードをプレイしていく。
「5マナでクイーンルピアの2体目を召喚、クイーンルピアでWブレイク」
火奈 シールド2
「シールドトリガー、無しです…!」
「もう1体のクイーンルピアでシールドを攻撃、その時タップしてるクイーンを破壊して、ファイアーバードメクレイド8。2体目のハンプティ・ルピアで、そっちの手札からバクテラスを捨てて、場のバクテラスを破壊」
「カイザー!!」
「火奈、すまない…!隠していたことも、お前とずっと一緒に居れないことも……!」
「カイザー!カイザー!!」
破壊されたバクテラスを尻目に、クイーンルピアはシールドへ攻撃を加える。
火奈 シールド0
「シールドトリガー、無し…」
「バルピアレスクでダイレクトアタック」
そう言ってバルピアレスクが放った一撃は、火奈のすぐ横を掠めていく。
「あたしは、助かるために、友達を助けるためにここにいる。間違っても、火奈ちゃんや、関係ない人を倒すためじゃない。許してとも言わないよ。ただの逃避でしかないのも分かってる。ただ、まだ私の前に立ち塞がるなら、次は覚悟して」
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そう言って合流してきた夢兎と一緒に、帆鳥は何処かへ行ってしまった。夕哉達がすぐ近くに戻ってきていたが、緑から話を聞き、とても声をかけられる状態ではなかった。
「ねぇカイザー!カイザー!!」
「……確かにダメージはあったが、クリーチャーはゲーム上で一度破壊された程度では死なない。契約クリーチャーなら尚更だ。だが、少しずつ、太陽がいつしか水素を使い果たしていくように、俺にも限界が近い」
「そんな……」
「どうする、火奈。元から俺の居ない火文明は、ヴォルジャアク達に任せるつもりだ。後の憂いは火奈、お前だけだ」
カイザーは勤めて元気そうに火奈に語りかける。
「お前は普通の人間だ、契約を止めて、夢を叶えるために走る道もある。それでお前は…」
いや、カイザーはこの後火奈が言うことは分かっていたのだ。だからこそ、契約するのを彼女にしようと思ったのだから。
「……途中で契約をやめたりしないよ、カイザー。あたしはカイザーを太陽から分離する方法を調べる。諦めなくて良い理由を考える。帆鳥先輩達も絶対助ける!現実なんて見てたら、あたしが憧れてるヒーロー、あたしが本当に欲しいものに絶対届かない!!」
「……そう、だよな。ジャシン、この通りだ。お前のOVERハイパー化を教えてくれ」
ジャシンは怪訝そうにその問いに答える。
「何故教えねばならん」
「太陽の力を分離する方法を調べる最中、全く危険がないと言ったら嘘になるだろう、その為に他のクリーチャーの力を借りて自分のものにするものは、今とても都合がいい。火奈を守れるのは、契約したクリーチャーだけなのだから」
「……フン」
ジャシンはある本を取り出して、カードの中のカイザーに放り投げた。
「これは真名月のところにあったクリーチャーを生贄にする方法の本だ。余はこれを元にハイパーモードを覚えた。エルボロム達も同じだろう。貴様らもこれの応用でクリーチャーのエネルギーを少し借りればハイパーモードを使えるようになるだろう。しかし、本当にそんな夢物語に挑戦するつもりか?」
「…あぁ、火奈が信じてくれるなら、俺はどこまでだって炎を燃やせる」
「……勝手にしろ。ドランゴルギーニ達も必要なのだろう、その写しをレター=ジェンゲガーに用意させている、後で取りに来い」
そう言ったジャシンを見ながら、火奈はカイザーを助け、カイザーは火奈を守り、2人で帆鳥達を倒す決意を固めるのであった。
火奈の!今日のカード紹介!
今日のカードは…《竜后王翔 クイーン・ルピア》!
5コストのアーマード・ファイアー・バードで、攻撃時に味方1体を破壊してファイアーバードメクレイド8ができる。そこからバルピアレスクやアリスルピアに繋げれば、更なる爆発的展開が相手を襲うんだ。
次回、『その決意は誰のもの』
カイザー、絶対に助ける方法を見つけるから。