デュエル・マスターズOverLord(オーバーロード)   作:シグレサメ

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ボルシャック・カイザーの不調。帆鳥達の戦い。山積みとなった問題の中、火奈はかなり焦っていた。夕哉はジャシンと話して自分の心づもりを決めて、生形 唯人を助け出すのだった。


夢の奔流、流れ落ちたもの

火奈が家に帰ってご飯を食べて風呂から上がった頃、メッセージアプリに夕哉からの連絡が来ていた。

 

「夕哉、どしたの?」

「カイザーを救う方法、もう少し広く探せないかなって」

「どういうこと?」

「太陽から分離する方法って聞いて、伝説が残ってる火文明にしかないと思ってたけど、それ以外の文明にも方法はあるんじゃないかって」

「例えば?」

「闇文明のアビスラッシュとか。ジャシンは魂が無いとできないって言ってたけど」

「それは、キツそうだね」

「本命は、ゴルファンタジスタがやってる生命の回転の方」

「それって」

「うん、輪廻転生の考え方がそのまま火文明のクリーチャーにも当てはまるなら、ボルシャックを一度休ませて再度呼び出すって言う方法が取れるかもって」

「分かった、カイザーと緑に聞いてみる」

「うん、お願い。俺もやること立て込んでて」

 

メッセージアプリを閉じた火奈は、安息のため息をもらす。ここまで1日、あちらの世界では2日が経過したが、殆どそれらしい記述はなかった。太陽と一体化した英雄の話はあっても、分離する話など無かったかのように、その記述は見当たらなかった。

「正直、わがままだと思ってた。受け入れなきゃいけないと思ってた」

 

カイザーも一緒に探していたが、今はカードの中でゆっくりと眠っている、自分より沢山の本を読んでおり、疲れたのだろう。

「友達が現実を諦めないでくれてるのに、あたしが諦める道理はないよね」

 

そう言って緑に連絡をかけると、緑からすぐにメールが帰ってきた。

「ゴルファンタジスタの力が役に立つなら喜んでだよ」

「うん、お願い。カイザーを助けられる方法は、多い方が良いから」

「生命の回転の儀式は、色々と準備が大変らしいんだ」

「何が必要なの?」

「クリーチャーの強い肉体と、その術を行える者、そしてクリーチャーや人間の強い気持ち」

「強い、気持ち」

「明日詳しいことを話すよ、もしかしたら火文明の記述に近いものがあって、それを応用できるかもしれないし」

「うん、お願い」

 

火奈はゆっくりと深呼吸して、自分の息を整える。

「ふぅ…」

 

実感があとから湧いてくる。どうにかなりそうという実感が、疲れた身体に気持ちだけでも安心を与えてくれる。

「いやいや、本番は明日!今日はちゃんと寝ないと!」

 

そうは言いつつも、心が軽くなるのを火奈は感じていた。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

自然文明で待ち合わせをした火奈と緑は、ゴルファンタジスタのゴルフハウスで落ち合った。ボルシャック・カイザーは休ませるためにカードに残して、ゴルファンタジスタの待つゴルフコースへと向かう。

 

「ゴルファンタジスタ、りんねてんせいってどうやったの?」

「生命の回転ってやつだな。昔Prayersと戦った時に緑に言ったように、かなりの無茶を前提にしたものだ。火奈、覚悟はいいな?」

「うん、元からそのつもりだよ」

「分かった、理屈を説明する」

 

ゴルファンタジスタは地面に指で絵を描き始める。

「俺様がやったことは、生命の輪廻、いわゆる現世に戻ってくるために大量のエネルギーを溜めて緑の元に早く戻るためのものだ」

「じゃあ、今から大量のエネルギーを貯めるの?」

「その通りだ火奈、今回は現世でエネルギーを集める余力もあるから、単独の力じゃなくてクリーチャー達の力を集めて現世に早く戻る手段が使える」

「ハイパーモード!だよね!」

 

緑がそう言うともう一度ゴルファンタジスタは大きく頷く。

「クリーチャーから力を貰うハイパーモードはそれの最たるものだ。それを俺の力で応用すれば、一度寿命を使い切ってもすぐに戻って来れる。それが俺たちにできる最善だ」

「そっか、またすぐに会えるんだ…!」

 

火奈は手元のボルシャック・カイザーに思わず力が入る。他の皆も心配してくれていたのだ。解決策を考えていてくれたのだ。更にゴルファンタジスタはニコリと笑った後、「まだあるんだぜ!」と木蔭にいた者を呼び出す。

「シイノちゃん!?」

「うん、わたしも夕哉に言われて手伝いたいと思った。わたし達の世界にあった水晶マナは、マナの力を効率的に使う手法。これなら更に解決する確率は上がると思う」

「本当!?ありがとうシイノちゃん!!」

 

気分が上がって火奈はシイノに抱きついた。当のシイノは突然抱きつかれて困惑していたが、それを見ていた緑が「それはとっても嬉しいってことだよ」と付け加えたことで、シイノもそれを受け入れた。火奈はしばらくして落ち着いたようで、シイノに礼を言ってから言葉をこぼす。

「そっか、あたし、焦ってたんだ…」

「大丈夫だよ火奈、皆大変な時はお互い様だよ。僕もゴルファンタジスタがいなかった時、沢山皆に助けてもらったんだから。お互い様だよ」

「そっか、お互い様だね」

 

そのやり取りを見ていたゴルファンタジスタは、火奈達に細かい手筈を伝える。

「決行は1日後、こっちの世界でいう2日後だ。それまでにカイザーを復活させるための祭壇を火文明に設置する。そこに火のマナを溜めて、カイザーに流し込む。これで行けるはずだ。後火奈、後で何より必要なものを渡す」

「分かった、よろしくね、ゴルファンタジスタ。カイザーも大丈夫?」

「大丈夫だ、皆、ありがとう」

 

そう言って皆は別れ、ゴルファンタジスタ達は火文明に準備しに行った。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

儀式当日、火奈と緑、シイノだけでなく夕哉、御白、飛水も集合し、火文明のカイザーの拠点の近くで、万全の状態で儀式は行われることになった。

 

「それぞれ4方向から守って、シイノは火奈と一緒に儀式。これで段取りは大丈夫?」

「うん、夕哉達も忙しいのにありがとね」

「大丈夫です!友達のピンチに何もしないなんてできませんよ!」

「その、なんだ。貰いっぱなしも気分悪いからな」

「ひすい、ツンデレ?」

「どこで覚えたその言葉!?」

「うーんと、学校の本!」

「緑は最近『らのべ』ってやつにハマってるからな!」

「絵が時々無いとまだ読めないけどね」

「いや、緑が本とかを読んでることを喜べばいいのか、変な知識を得てるのを悲しめばいいのか…」

「まぁまぁ!とりあえず準備に取り掛かりましょう!」

 

そう言って5人はそれぞれ配置に着く。祭壇への階段を登っていく火奈は、同行するシイノに声をかけた。

「ねぇシイノちゃん!もしかしてさっき、居心地悪かった?

「仕方ない。わたしは貴方と一緒にいることは許されないから」

「許されないって…?」

「あなた達と別の世界の出身のわたしは、長いこといれば元の世界とは因果が、歴史が変わっていってしまう。わたしは異物。夕哉のお婆さまや夕花はいることを許可してくれてるけど、正直、複雑」

 

シイノがそう言うのを見て、火奈は彼女の左手を繋ぐ。

「あたしはカイザーとは別の世界に住んでるけど、友達、相棒だよ」

「うん。あなたたちは出会うべきだった。COMPLEX達の厄災を退けたら、あとは好きなように過ごせばよかった。なのに月の民の介入のせいでそれは無くなった。わたしが来たのも、最善だったとわたしが思えない」

「……シイノちゃん」

「だからせめて、わたしができる限りもうずれないようにする。それがこの世界に来たけじめだから」

「そんなことないよ」

「え?」

「あたしにとってはデュエマとの出会いも、カイザーとも、デュエマ部の皆とも、シイノちゃんとも!予想してなかった素敵な出会いだと思う。出会いなんて誰もどう出会うかなんて知らないんだから、勝手に出会うべき出会わないべきなんて、決めないで」

「………」

「あたしは中学の先輩と高校で再会したけど、それは決して素敵なものじゃなかったと思う。でも後悔してない。したくない。だからシイノちゃんも、そんなこと言わないで」

「……分かっ、た…」

 

シイノは戸惑いながらも、火奈の握った手を握り返す。

(なんで、皆優しくしてくれるんだろう。わたしはどこまで行ってもこの世界にはいちゃいけない異物なのに。どうして…)

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

緑とゴルファンタジスタは、祭壇の南側を守っていた。4隅の階段の一番下で守っていた2人は、お互い他愛もない話をしながら見回りをしていた。

 

「誰も来ないね」

「まぁ、来ないなら良いんだけどな」

「うん……」

 

カイザーの不調を看破してきたのは、月の民の支配下にある愛澤帆鳥である。それを鑑みるなら月の民はこちらの戦力ダウン、最低でもカイザーの戦線離脱のために襲撃してきてもおかしく無いと言う話となり、4人で見張ることになったのだった。

 

「ねぇゴルファンタジスタ」

「なんだ?」

「ゴルファンタジスタは、りんねてんせいする時怖くなかったの?」

「まぁ、失敗したら記憶は無くなるからな、怖くないわけないだろ。緑のことを思い出せなくなったら、俺が命を燃やした意味はなくなる」

「うん……」

「火奈に渡したもの、それはカイザーのことを思い出すための何かだ。輪廻転生までは成功するが、戻ってくる際にピンフラッグが無ければ、どこに戻れば良いのかわからなくなる。結局一番大事なのは、元鞘に戻るための絆ってわけだ」

「そうじゃろうな。そんな不確かな方法に頼るあたり、本当にボルシャック・カイザーは長く無いと見えるのう」

 

突然の声に緑とゴルファンタジスタが当たりを見回すと、土の中からメキメキと植物が地面を割って這い出てくる。

「シンベロム……!」

「じゃあ、ありあけ!!」

 

植物はあっという間に祭壇の近くに巻きつき、植物のようなクリーチャー、シンベロムと、それを従える月の民有明が、緑達の前に現れる。いや、取り囲んだと言う方が正しかった。

「久しぶりじゃの、守木緑」

「……もう会いたくなかったのに」

「そんなことを言うな。こちらも戦うつもりはない。ボルシャック・カイザーのカードを渡せば、ワシらも引き下がろう」

「その問答、意味あんのか?」

「…ふむ、何故こんなことを言うのかも分からんとは。悲しいのお」

「どういうこと?」

 

シンベロムの植物が気付けば緑達の真後ろにまで展開されている。逃げ場はもう無くなっている。

「ボルシャック・カイザーが火文明のクリーチャーであり、火文明で輪廻転生の儀式を行った時点で、お主らの負けは決まっていたのじゃよ」

 

緑の後ろ、祭壇の中心で大きな爆発が起きる。

「レントの持つアゲブロムは、自分の怒りを炎に変える力を持つ。その力を使えば、決めた場所に噴火を起こすことも不可能ではない」

「嘘、そんな…!?」

「直接叩かれることも考えるべきじゃったな。更に言うならば予め地中を這わせていたこの植物は、お主らの仲間達も取り囲んでいる。かぐらに言われたものだが、あやつ、いつの間にこんな手の込んだ事ができるようになったんじゃのう」

「増援もさせないってことかよ…!」

「お主がデュエマでシンベロムを止められるなら、間に合うかもしれんな」

「……ゴルファンタジスタ!!」

「おうよ!!」

「悲しみが伝わってきたぞ、やり場のない、誰も悪くない敗北。こんな行き場のない悲しみは中々無いからのぉ。さて、今回は本気で行くとしよう」

「絶対に、許さないから!!」

 

「「デュエマ、スタート(!)」」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

有明の先行で始まったデュエマ。有明はデッキを自然文明に光文明を加え、シールドトリガーをかなり入れたデッキで緑を待ち受ける。緑は水自然のいつものジャイアントデッキであるが、ハイパーモードを持つクリーチャーを入れる事でかなりのアレンジが施されていた。

 

「《虹彩奪取(レインボーダッシュ) ケラサイト》を2マナで召喚」

「《キャディ・ビートル》を2マナで召喚!」

「ケラサイトの1マナ軽減を入れて、2マナで《森翠月 モスキート》を召喚、ケラサイトをタップしてモスキートをハイパーモードに。モスキートのマッハファイターでキャディビートルを攻撃して、攻撃時能力で1枚マナ加速させてもらおう」

「キャディは破壊された時の効果でマナに!」

「ターンエンドじゃな」

 

簡単にコスト踏み倒し対策で出したキャディ・ビートルを除去され、緑の頬に冷や汗が伝う。

(前より強くなってる…!でも!)

「僕のターン!4マナで《ルナコバルト アサギ》を召喚!山札の上から2枚を見てマナゾーンと手札に1枚ずつ振り分ける!ターンエンド!」

「成程、良い動きじゃの」

 

有明はそのプレイに拍手する。緑は肩透かしを食らった気分になるが、気を取り直して有明に向き合う。

「正直、有明さんはすごく性格の悪い人には見えないんだ。基本的にあなたは戦いに積極的じゃない。でも沢山酷いことをする。なんで!?」

「ふむ。それは難しいが、簡単な質問じゃの」

「どういう…!?」

「例えば日本にお主は生まれたから、コメを食べるわけじゃな」

「うん、今日もこうきさんと食べてきた」

「うむ、じゃが国が変われば、パンを食べたり、イモを食べたりするのが普通な人間もおる。それと同じじゃよ」

 

有明はデッキの上に手を置き、ドローの体制に入る。

「世界を渡り、そこにあるものを奪い尽くすこと。『それが常識である世界に生まれてきた以上、そこから逃れる術はないんじゃよ。』ワシのターン、手札から4マナで《超哀樹(ハイパーあいじゅ) シンベロム》を召喚、登場時能力で山札の上から2枚を見てマナと手札に振り分ける」

 

有明 シールド6

「再度ケラサイトをタップし、モスキートをハイパー化。そのままシールドを攻撃させてもらうぞ。その時の効果でまたマナを1枚増やす」

 

緑 シールド3

「シールドトリガー!呪文、《輝跡の大地(アース・ウインド・アンド・パット)》!マナゾーンから《超重龍(ブラックホール・イン・ワン ゴルファンタジスタ》をバトルゾーンに出して、シンベロムとバトル!さらにゴルファンタジスタの効果でマナゾーンから《チアスペース アカネ》をバトルゾーンに!」

「ほお」

「ファーーー!!」

 

ゴルファンタジスタが持てる力を全て持ってシンベロムにゴルフクラブを叩きつける。シンベロムにクリーンヒットを入れたものの、シンベロムはいつも通り悲しげな顔をしながら不気味に沈んでいくだけだった。

「やっぱり気味悪いやつだな…。緑、行くぞ!」

「うん、アカネの効果で手札とマナを増やして、処理終了!」

「ふむ、ターンエンドじゃな」

 

「僕のターン、ゴルファンタジスタの終極宣言で手札とマナを倍に!」

「マナが8マナになるか。厄介じゃの」

そう言いながらも、有明は何処か真意を見せない。ゴルファンタジスタにはそれも不気味に見えたが、今は緑の判断を信じることにした。

 

(マナゾーンにあるカード、《法理の使徒サンアーマ》。相手クリーチャーを全てタップする効果をまたシールドトリガーで、さっきのシンベロムの効果でマナに埋まったカード。一度戦った相手だし、ゴルファンタジスタのブロック貫通効果も知ってるから、シールドに埋めたのもこのカードと思うのが普通だよね。だったら《同期の妖精》とかを並べるのも微妙かな)

「ルナコバルト アサギの効果で、マナゾーンから種族:超化獣を1ターンに1回召喚できる、《森翠月 アカネ》を5マナでバトルゾーンに!効果でモスキートをマナゾーンに!更に2マナで《竹刀の超人(ケンドー・ジャイアント)》を召喚!そしてG0!ジャイアントが場に4枚以上いるので、アカネの上に《終の怒流牙 ドルゲユキムラ》を召喚!」

「ふむ、どう攻撃する?」

「まずは竹刀の超人でケラサイトと相討ち!」

「そこまでは定石通りじゃの」

「おい、なんでこんなに余裕こいてんだあいつ…?」

「分からない…。でも、場は全部除去してサンアーマ1枚じゃ返せなくなってる、大丈夫の筈…!」

 

緑が一気に展開しきることに成功し、トドメを刺す事ができる打点を作れているのに、有明は余裕を崩さない。ゴルファンタジスタと共に不審に思うものの、緑は攻撃を続けることにした。

「ドルゲユキムラでシールドをTブレイク!」

 

有明 シールド3

「ふむ、トリガーなし」

「仕込んだシールドを狙う!ゴルファンタジスタでシールドをTブレイク!!」

「ファーーーーー!!!」

 

有明 シールド0

「その割り方になると思っていたぞ」

「え…!?」

「シールドトリガー、《光開の精霊サイフォゲート》」

「サンアーマじゃない!?」

「手札から光のブロッカーをバトルゾーンに出す。出すのは、お主が割ったシールドから手に入れた、超哀樹 シンベロム」

「嘘、そんなわけ…!?」

 

「常識、定石にとらわれたのじゃな。ブロック無視を持つゴルファンタジスタで圧力をかけ、前もって除去をすれば、逆転されることはないとな。シンベロムで山札上2枚をシールドとマナに振り分ける。さぁ、どうする」

 

有明 シールド1

「アサギでシールドをブレイク!」

「ふむ、割り切りの判断か。偉いのう」

 

有明 シールド0

「シールドトリガーなしじゃな」

「はぁ、はぁ……!ターン、エンド!」

 

緑は完全に動揺している。自分が正しいと思っていたことをひっくり返され、ゴルファンタジスタの呼びかけすら届いていない。

「早い話、調子に乗っていたんじゃのう。自分が絶対的に正しいと思い、それを押し付けた。お主ら全員、多かれ少なかれそのきらいはあるからのう。まぁ、若いからには仕方ないのじゃが」

(不味い、緑が大一番の読み合いに負けた!シンベロムはハイパー化するとTブレイカーになるし、逆にトドメに王手がかかる!)

 

「ワシのターン。《若き大長老 アプル》を2マナで召喚。それをタップしてシンベロムをハイパーモードに。更にシンベロムの3対目をバトルゾーンに出してマナとシールドに振り分ける。…ふむ。事前に予告しておくが、このシールドの中身は、サンアーマじゃ」

「………!」

 

「黒井夕哉も光屋御白も青海飛水も、今ワシの部下が時間を稼いでいるじゃろうな。そして気づく。今まで自分たちがどれだけ偶々上手くいっていたのかを。そして赤坂火奈には叩きつけられる。自分達に都合よく回ると思っていた罰を」

「させない!絶対に…!」

「シンベロムでシールドを攻撃、その時、シンベロムのハイパーモード時の効果を発動、効果でマナからシールドトリガーを持つクリーチャー、《粛清者ゴットハルト》をバトルゾーンに。その効果でシンベロムとアプルをアンタップする」

 

緑 シールド0

「シールドトリガー!《ド浮きの動悸(ドキドキ・スパイラル)》!シンベロムを、手札に…!まだ、まだ……!!」

「ふむ、決着のようじゃな」

「緑!!」

「サイフォゲートで、ダイレクトアタック」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

緑の目の前で、サイフォゲートの盾は止まっていた。有明が攻撃を止めさせ、クリーチャー達がカードに戻っていく。

 

「な、んで…!?」

「気が変わった。最後の最後まで足掻こうとするのは、どうもワシの若い頃を思い出す。話に聞くに黒井夕哉達もそうなのだろう?殺すのが惜しいと感じてしまったのじゃ」

「………」

 

有明が手を一度振ると、辺りに育っていた植物達はズズズと引き上げていく。シンベロムがカードの中に戻ったのを確認すると、有明は緑の隣に座った。

 

「真名月がバロムを手に入れてからというもの、シンベロム達の配下を与えられたワシらは、強大な力の代償にその世界に住むものの感情を奪い、沢山のマナを吸い取ることでしか生きられなくなった」

「それが、世界を渡り歩く理由かよ…」

 

ゴルファンタジスタが緑を庇うように有明に向き合う。そんな彼を見て有明は、どこか嬉しそうに話を続ける。

「それしか、なかったからのぉ。知っての通り、ワシとシンベロムは哀しみの担当。奪われた者、残された者の哀しみを吸い取り、ワシらはこの世界までたどり着いた。それでしか生きられないんじゃよ、ワシらは」

「………」

「レントは怒りでしか生きられない。流浪は楽しみでしか生きられない。そういうものなんじゃよ。それが、ワシらの常識なんじゃよ」

 

「喋りすぎたかの」と残しながら、緑を残して立ち上がる。

「最後に一つ、何故、途中で哀しみが消えたか聞いてもいいか?」

「……哀しんでる場合じゃ、無いと思ったから」

「そうか」

 

そう言って全て終わったとばかりに、シンベロムに乗って有明は何処かへ去っていってしまった。

「ゴルファンタジスタ」

「……おう、行くぞ、緑。泣いてる場合じゃない」

 

そう言って緑とゴルファンタジスタは祭壇の階段を登っていく。有明が帰ったということは、全て終わってしまったということなのだろう。想像もしたくない現実が待っているかもしれない。しかしそんな哀しみを堪えて、緑は階段を1段ずつ登っていくのだった。

 




緑の!今日のカード紹介!
今日のカードは…《超哀樹 シンベロム》!
出た時に山札の上から2枚をマナとシールドに振り分ける中型クリーチャーで、これだけでもかなり強力なクリーチャーなんだ。しかもハイパーモードになればTブレイカーになって、攻撃時にマナからシールドトリガーを持つクリーチャーを呼び出せる。ゴットハルトで連続攻撃したり、サイフォゲートで更に展開したり。凄い器用に戦えるクリーチャーだよ。
次回、『天を衝く、その火花・前』
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