デュエル・マスターズOverLord(オーバーロード)   作:シグレサメ

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ボルシャック・カイザーを自然文明の技術で輪廻転生させ、また火奈の元に返そうとする儀式。それはレントの手によって、跡形もなく破壊されてしまう。火奈は彼を止めるためデュエマを始め、彼への怒りを納めて、ボルシャック・ハイパードラゴンの力を覚醒させる。最後の瞬間まで、一緒にいるために。


天を衝く、その火花・後

 

夕哉、御白がかぐらと戦った後、ドラン・ゴルギーニはジャシンの住む深淵に訪れたことがあった。

 

「なんだ、貴様何の用だ」

「私達は共通の敵と戦いました、少し話したいことがあります」

ジャシンにドランの配下のメカ・デル・ステラがウィンナーを渡す。ジャシンは「話だけは聞こう」と、ウィンナーをつまみ始めた。

 

「月宮かぐらを、どう思いますか」

「エルボロムを使っていた女か。どうとも思わぬ。力を取り戻せば余にとっては木端も同じであるし…」

「ブレーキがないように思えました、一時期のあなたと同じです」

 

ドランのその言葉にジャシンは言葉と手を止める。

「心のブレーキが無いんです。他人を傷つけるのは、基本的に人間にはリミッターがかかります。そういうのが無く、御白さんや夕哉さんを狙ったように見えたんです」

「ほう」

「昔、私は御白さんの物欲のブレーキを壊してしまったことがあります。その時は、あなたと夕哉さんが止めてくれた。何より、御白さんが止まる気があった」

「だからなんだ、そろそろ本題に入れ」

 

「止まらない害意を持つ相手に対して、私達は、私達の相棒はどうすればいいのでしょうか」

「……貴様が戻らない間に、シイノという女がレントという男と戦っていた。奴は、子供だ。自分がその行動をすることで何が起きるか、知らされていなかった。知る気もなかったのだろうが」

「何というか、嫌な感触でした」

「四天王とやらと言われているが、その内2人は真名月の都合のいい傀儡だ。彼は人を助けろと真名月に言われたら助けるだろうし、殺せと言われたら何の躊躇いもなく殺すだろう」

 

ジャシンとドランの間に、沈黙が流れる。

「会ったばかりの貴方は、夕哉さんのコントロール下にあったものの、警戒の対象でした。実際、貴方は複数回夕哉さんを乗っ取ろうとしていた。貴方は、何が変わったんですか?」

「何も変わっておらぬ、なぜこの流れで余の話になるのだ」

「自分を助けてくれた夕哉さんに、感謝しているんですか?」

「そんなわけが無いだろう。今は真名月という邪魔者がいて、余は力を取り戻して切れていない。これで夕哉を焚き付け乗っ取ったところで、何になる」

 

「………貴方は、知っているはずだ。人を害するしか選択肢がないなんて事は、ジャシンであろうと無いはず」

「光文明の思想に染まり過ぎている。貴様らの文明は悪の存在に厳しいだろう?」

「それ以上に私達は公正を尊ぶ。今は昔の封印するべき敵だと言っている場合では無いと、カイザーが言っていました。……貴方の本音は、今どこにあるんですか」

「……話にならん。帰るがいい」

 

ジャシンはウィンナーを一気に食べ、深淵の中へと帰っていく。ドランはため息をついた後、空になった皿を載せて光文明へと帰っていくのであった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

火奈 5ターン目(マナ残数0)

火奈 シールド0 マナ5

《終炎の龍皇 ボルシャック・ハイパードラゴン》(ハイパーモード)、(以下全てタップ状態)《アシスター・コッピ》×2、《アシステスト・インコッピ》、《ボルシャック・ハイパーヴォルジャアク》(ハイパーモード)、《チャラ・ルピア》、《ボルシャック・アークゼオスNEX》、《ボルシャック・アークゼオス》、《ピース・盾・ルピア》

レント シールド3 マナ8

《超炎怒 アゲブロム》、《閃光の精霊 カンビアーレ》、《DOOOPPLER・マクーレ》×2(内1体アンタップ)

 

 

ボルシャック・カイザーは重い鎧を脱ぎ捨て、ボルシャック・ハイパードラゴンとして力を解放する。相棒の火奈の気持ちと、タップして自分に力を与えてくれたコッピとヴォルジャアク、そしてカンビアーレに動きを止められたクリーチャー達の想いが、彼のもとに流れ込んでくる。

 

「ハイパーモードです!頑張ってください!火奈ちゃん!カイザー!」

 

御白の声援を背中に受けて、火奈は目の前に立つカイザーと目を合わせる。

「行こう、カイザー」

「あぁ、行こう!最後の時まで、火奈の側にい続けよう」

「お前ら、お前ら…!調子づきやがってぇ!」

 

レントの怒りを意に介さず、火奈は攻撃を宣言する。

「ボルシャック・ハイパードラゴンは味方のコスト5以下全てにスピードアタッカーを与える!そしてハイパードラゴンでシールドを攻撃!その時、山札の上をめくって、それがコスト5以下のクリーチャーならバトルゾーンに呼び出すことができる。来て、《チャラ・ルピア》!」

「カンビアーレのブロックで押し返すだけだ!!」

「ハイパーヴォルジャアクの効果で味方の攻撃時に発動する効果は2回発動する!今度はボルシャック・アークゼオス!その登場時効果のアーマード・メクレイドで、《ヴァルキリアス・武者・ムサシ「弐天」》!登場時効果で場の光のカード(5枚)だけドローして、場の火のカードの枚数(9枚)以下のコストを持つ相手のクリーチャーを破壊する!カンビアーレを破壊!」

 

ヴァルキリアスが火奈の方を一瞥した後、カンビアーレに刀を振り翳し、次の瞬間カンビアーレに刀をぶつける。カイザーと同じく味方の力を背に受けて、ヴァルキリアスはカンビアーレを切り裂いた。

「ハイパードラゴンでシールドを攻撃!」

 

レント シールド1

「シールドトリガー!《閃光の守護者 ホーリー》!《罠の超人(トラップ・ジャイアント)》!これで終わりだあ!」

 

罠の超人によりハイパードラゴンに飛んできた植物の蔓を、インコッピが代わりに請け負う。しかしホーリーが放った閃光によって、火奈達のクリーチャーは沈黙した……かに思えた。

 

「ハイパードラゴンはハイパーモードである間、攻撃が終了した後に自分のクリーチャーが5体以上タップしていたら、全てのあたしのクリーチャーをアンタップする!!」

 

カイザーいや、ハイパードラゴンが大きく吠えると、太陽の暖かい熱がクリーチャー達を包み込み、また新たに戦うための力を受け取り進み出す。カンビアーレで止められていたクリーチャー達も全て、その暖かく背中を押してくれる力で復活していた。

 

「お、おい、そんなわけが……!?」

「ハイパードラゴンで再度シールドを攻撃、《クック・撃(スクラン)・ブルッチ》をバトルゾーンに。アークゼオス2体のバトル効果でホーリーとアゲブロムを破壊」

 

アークゼオスがレントのクリーチャー達を殴り潰す。確かに自分達のリーダーを踏み躙られた怒りもあったのだが、カイザーの落ち着きようを見てクリーチャー達は落ち着きを取り戻す。自分を身失わず、怒りを制したハイパードラゴン達と火奈は、もはやレントがどうこうできる相手ではなかった。

 

レント シールド0

「革命0!カンビアーレはシールドから手札に加えられた時に、シールドが0なら出すことができる!相手クリーチャーを全てタップ……!」

「ハイパードラゴンの攻撃終了後、あたしのクリーチャーが5体以上タップしているため味方全てをアンタップする」

 

「な、なんで震えてるんだよ、なんで……!?」

「貴方は知らなかったの?」

 

シイノは、悲しそうにそう言った。彼女は、自分の居場所を潰したうちの1人が、このようなことを言ったことに、やり切れない思いを抱いたのだ。

「それは、あなたたちがわたし達の世界を潰した時にわたしの大事な人達が味わった、『恐怖』」

 

火奈はシイノのその言葉を受けて、レントに最後通告をする。

「カイザーを、皆を、あたしを。悲しませて、怒らせた罰だよ。だから、せめて公輝さんの所に行こう。せめて、最初っからやり直そう」

「嫌だ、来るな、来るなぁ……!!」

「無理だ火奈。完全に恐怖に囚われている」

「……ボルシャック・ハイパードラゴンで、ダイレクトアタック。その時の攻撃時効果2回で、ボルシャック・アークゼオス、ボルシャック・ハイパーヴォルジャアクをバトルゾーンに。アークゼオスのアーマードメクレイドで、《ファイン・撃・ピヨッチ》をバトルゾーンに。ファイアーバードが出たから、今出たアークゼオスでカンビアーレとバトル。破壊するよ」

 

「来るな、なんで俺が、なんで俺が負けるんだよ……!!」

「ハイパードラゴンで、ダイレクトアタック!」

 

ハイパードラゴンが攻撃を入れようとしたところで、エルボロムと1人の少女がレントとハイパードラゴンの間に割り込んだ。

「………」

「月宮、かぐら……」

「貴方にそれをやらせませんわ。そうなると、真名月様が困りますの」

 

エルボロムの陰で、レントはただ震えている。

「もう、使い物になりませんわね。赤坂火奈、また、何処かで会いましょう」

 

そう言って、エルボロムとかぐらはレントを連れて消えていってしまった。レントが持っていたカード達は、《超炎怒 アゲブロム》の1枚だけ消えてそこに残されていた。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

夕哉、飛水、緑と合流し、火奈と御白、シイノは瓦礫を片付けていた。相棒達を呼び出して瓦礫をひっくり返し、残ったものを探していく。

 

「ひな、このカード達どうしよっか」

「残されたまんまなのは可哀想だよね、あたしが貰ってくよ。他に皆欲しいカードある?」

「自然文明のやつは僕欲しいかも!」

「分かった、後で分けよっか」

 

「ファー…。ダメだ、儀式のものの方は殆ど溶けちまってる…」

「とりあえず残ったのは公輝さんと遥風(はるか)さんのところですね、マグマに晒されたもの、そのまま使えるとは思えませんし」

「それにしてもこんな奴によく勝ったな、火奈」

「カイザーが頑張ってたからだよ。あたしはデュエマしただけ」

「俺は火奈から勇気をもらった。だから勝てた」

「でも、これがこんなに跡形もなく消えたら…」

 

夕哉が言った通り、火奈以外の皆にも分かっていた。今からカイザーを輪廻転生の儀式をさせようとしても間に合わないだろう。そのレベルで跡形もなく消え去って、マグマで溶けていってしまった。

 

「火奈ちゃん……」

「カイザー…」

 

御白とドランが残ったものを拾い上げ、火奈とカイザーの方を伺う。辛いから直接顔を見れない。そう言って涙を流しそうになった御白の手を火奈は取った。

「大丈夫だよ御白ちゃん。あたし決めた。最後までカイザーと戦う。そして、またカイザーと巡り合う。両方やるよ。絶対に」

「火奈ちゃん…?」

「あたし、もっと欲張ってみるよ」

 

そう言って火奈はゴルファンタジスタの方に目線を渡す。

「確かに、完全に儀式が行えない以上、クリーチャーとその相棒の繋がりを頼りにするのが一番だ。だが、それはお前の強い精神が必要だ」

「任せて、カイザーが絶対戻って来れるようにする。だからカイザーも、皆も、あたしを信じてくれないかな」

「……俺の相棒は、昔から根拠なく走り出す無鉄砲だったな」

「カイザー、酷くない!?」

 

そう言いながら2人は笑い出す。そのいつかは近いと分かっているが、2人はもう怖がらない。火奈がポコポコとカイザーを叩き、カイザーが満足げに微笑む。ボルシャック・カイザーとして長く戦えはしないだろうが、2人の気持ちはもう決まっていた。

 

「火奈ちゃん。私達も、できる限り助けます」

「火奈、俺にも手伝わせて」「ぼくも!」

「うん、帆鳥先輩達も、かぐらのこともあるからね。あんな未来なんかぶっ飛ばしちゃお!」

 

そんな3人を見て、シイノも頷く。ただ1人、飛水はそれを割り切れていないようだった。

「勿論、手伝わせてくれ。ただ、すぐは無理だ。それだけ」

「大丈夫だよ飛水、これはあたしの我儘だから。でも、準備できたら、来て欲しいな」

「ん」

 

確かに皆の間に流れていた冷たいものは決して拭えない。しかし火奈の気持ちを汲んで、皆確実に前に進もうとし始めていたのだった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

真名月様が、レントくんの前に立っている。真名月様は前に比べてかなり回復したようで、アジトの中なら歩いて、たまにかぐらや俺と練習試合をすることもある程に回復していた。

 

「………レント」

「ハァ…ハァ……。真名月、様ぁ……」

「アゲブロムは、もう要らないな。流狼、あの場所にしまっておけ」

 

そう言われた俺は、アジトの奥深くにある隠し扉を開く。その裏には小さな部屋があり、その奥1枚だけ黒塗りの壁。そしてそこに5つの穴が空いている。その穴の中にはバラバラにされたジャシンの身体が保管されており、その爪を保管していた場所に、アゲブロムのカードをしまった。

 

(本当にグロテスクなんだよねぇ、この場所。脳とかあるけど、フミビロムもいつかはここに来るのかな?)

 

なんて冗談めかしながら、隠し部屋から出る。出ようとする頃には、アゲブロムが今までの世界で集めた怒りが、そのジャシンの爪の中へと流れ込んでいっていた。今までは、バロムの力を使えば1発で世界を手に入れていた。俺たちの相棒はその残った資源を吸い取る役割を持っていた。

 

(……嫌な話だね、真名月様は、この世界を手に入れるために必死なんだ)

 

元の部屋に戻ると、レントくんが十字架に括り付けられ、こちらでもレントが今まで集めた怒りが取り出されていた。

 

「正直、こうなるとは思わなかった」

「真名月様?どうしたんですの?」

 

かぐらが真名月の横で話を聞いていた。彼女は打算的だ。レントを回収してきたと言っていたが、大方レントのことはずっと見ていて、負けるまで放っておいたのだろう。有明さんも何も言っていない。有明さんは、お互いのせいにしないと保険を張っていたのは想像がつく。どの道、レントくんには誰も味方がいなかったのだ。俺自身も、仕事とはいえ怒りを集め続け、怒り狂ったような者に自分から近づきたいとは思わないけど。

 

「バロムの更なる力を手に入れるため、アゲブロム、シンベロム、フミビロム、エルボロムの力を集め、ジャシンの身体を媒介にして感情を注ぎ込む。それを元にバロムを更なるステージへと跳ね上げる。そしてその四天王は、お前達に返還し、新たな力を与える。そのつもりだったが……」

 

「恐怖に縛られた者にアゲブロムを使わせる価値はない」

 

真名月様が手を前に出し、握るポーズを取ると、レントくんから段々とエネルギーが吸い取られていく。レントくんは恐怖に完全に囚われ、呻き声を上げることしかできない。

 

「月の民は、選ばれし民族。そうすることはどうなることか、分かっておるのじゃろう、真名月よ」

「あぁ、苦しむ前に、この世から無くす。恐怖しか無くなった月の民は、どう足掻いても荷物にしかならない」

「残念ですわぁ、レントくん」

 

月の民が月の民と呼ばれる所以、それは、『人の生命力を浴びなければ、自分が滅ぶ運命にある』ということ。真名月様が人から生命力を奪って人を殺した時、生命力を日光のように例え、日光を得なければ輝かない種族、真名月様達を太陽の元では歩けない種族と弾圧した。真名月様は彼らを皆殺しにしたけれど、その恨みを忘れないため、この名前を使い続けている。

 

「なんで……、真名月、さまぁ…!」

「レント、お前は良いやつだった。切り捨てなければならないことに、心が痛む。どうだ、最後に、アゲブロムをまた使おうとは思わないか?」

 

レントくんが、大きく首を縦に振ろうとする。

「アゲブロム!!それがあれば、真名月様にぃ…!俺が凄いと、価値ある存在だとぉ……!」

 

レントくんの動きが、急に止まった。そして、十字架を引き剥がそうと、急に暴れ出した。

「誰だお前ら!?来るな、来るなぁ!!何が悪いんだ、何をしたんだ俺が!?来るな、殴るな、近寄るなぁ!!!俺から離れろ!!!」

 

真名月様が、首を横に振る。おそらくレントくんは、幻を見ているのだろう。どんな幻を見ていたのか、俺たちにはもう知る由もない。だけど1つ確実に言えることは、彼は、もう2度と帰ってこれない場所へと行ってしまったことだろう。

 

「赤坂火奈……!来るな、来るなぁ…!くるなぁぁぁあああ!!!」

 

真名月様が拳を握りしめると、レントくんは、跡形もなく砂となって、この世から消えていった。

 

「レントは、過去に潰された。中途半端な覚悟でアゲブロムを使い、自分自身の心に潰されたのだろう。感情に振り回された結果だ。かぐら、有明、流狼。お前らは気をつけて、俺の配下達を使っていけ」

「分かりましたわ」

「心に刻もう」

「分かりました」

 

残った俺たちの中で、静かな空気が流れる。そして、かぐらさんが何も言わずに出ていった。後から言うことになってしまえば、これが、かぐらさんを止める最後のチャンスだったのだろうか。

 




火奈の!今日のカード紹介!
今日のカードは…《終炎の龍皇 ボルシャック・ハイパードラゴン》!
味方のコスト5以下全てにスピードアタッカーを与えるあたしの切り札だよ。攻撃時に山札の上を見て、コスト5以下なら呼び出せる上に、OVERハイパー化をすればハイパードラゴンの攻撃の後に味方5体がタップしていれば味方全員がアンタップすることができるんだよ!
次回、『俳楽セッション・前』
最後まで、あたしと一緒にいてほしいな。
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