デュエル・マスターズOverLord(オーバーロード) 作:シグレサメ
飛水 シールド5 マナ4《文藍月 Drache Der'Zen》(ハイパーモード)、《アシスター・Mogi林檎》、(以下タップ状態)《芸魔王将 カクメイジン》、《AQ Vibrato》、《ボン・キゴマイム》
姫芽 シールド1 マナ3(《ファイナル・ストップ》効果で呪文詠唱禁止)
《龍后麗姫マーシャル・プリンセス》、《キール・ロワイヤル》、《ブラック・トルネード》、《マーシャル・プリンス》、《海姫龍 ライベルモット・ビターズ》
「どうした?Mogi林檎をカラクリバーシに革命チェンジさせたところで、マーシャル・プリンセスがブロックすれば終わりだ。水なら攻撃も防御も出来なくなる効果もあるが、選ばなければそれも中々厳しいだろう?」
演劇の男役のように声を張る姫芽と、彼女が作り出す劇団、クリーチャー達に飛水は圧倒されるが、手札にある1枚のカードに視線を落とし、再度向き直った。
「確かにな。でもアイツに愛澤先輩もアンタも正気に戻すよう言われてるんだ、多少の無茶はしてやる!Mogi林檎でシールドを攻撃!その時、《芸魔隠狐 カラクリバーシ》に革命チェンジ!登場時効果で1ドローして、3コストの呪文、《ダウンフォース・サーキュラー》を唱えさせてもらう!」
「光文明の呪文だと!?」
「あぁ、この呪文は次の自分ターンのはじめまで、俺のクリーチャーが場を離れなくなる呪文。もうこのターン革命チェンジをしないし、次のターンのタップキルを止めるなら、これほど撃ちたい呪文もないよな」
「成程、良いじゃないか!こういうデュエマをやりたかったんだ!」
姫芽 シールド0
「マーシャルプリンスの効果で付与したシールドトリガー!龍后麗姫 マーシャル・プリンセス!2枚盾を追加して1枚ブレイクする!ブレイク効果で《エメラルド・クーラー》をバトルゾーンに、登場時効果で1枚引かせてもらう」
「まぁ、キールロワイヤルで中身確認して変えなかったシールドなんだから、これくらいのしっぺ返しはあるよな。ターンエンド」
「良いプレイだ。やはり、君はこのようなデュエマに慣れている。何故だ?」
「慣れたくもなかったけど、数こなしたらな」
「もっと自信を持つべきだ。デュエマも演劇も同じ。まずは試さなければ何も始まらないからな」
「デュエマも、演劇も…」
『そうやって勝手に自己解決した気になっていたら、いざやってみたくなったとき、どうしようもなく後悔するってことだ』
飛水はそう言われて、先程独楽に言われたことを思い出していた。
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月宮かぐらは、デュエマをやっている場所から少し離れた場所から、飛水と姫芽のデュエマを見ていた。
「何をやっているんですの?相手を讃えてエンターテイナー気取り…」
「別に悪いことではないと思うよ」
そこに、フミビロムに乗って独楽、流狼が現れる。
「なんですの?真名月様に言うおつもりですの?」
「最初はそのつもりだったけど辞めたよ。君はそのリスク込みで始めたんだろう?」
「そうですわ。黒井夕哉と光屋御白、彼らが大事にするもの全てを、真名月様の手を煩わせることなく消し去りますの」
「本音は違う。前に見た君が黒井夕哉達を見る目は、憎悪以外の何者でもなかった。このままじゃ、君は喜びを集められなくなる」
「関係ありませんわ。この憎悪が晴れる時、極上の喜びを得られるんですわよ?」
「……そうだね。きっとそうだ」
そう言って流狼はかぐらから離れようとする。それを今度はかぐらが呼び止めた。
「そっちこそ、変なんじゃないですの?このデュエマ、歌浦が勝つこと以外に価値はない。正直、デュエマという手段を取ることも、契約したクリーチャー同士の戦いでは、人間界で力を出し切れず、拮抗し、効率が悪いからですわ。それを態々細事まで見に行くのも、大概変なことですわ」
「……その些細に、何かが宿っている。現実、俺たちは本気じゃないとはいえ、俺はシイノに、君は黒井夕哉と光屋御白に敗れた。俺はそれを調べなきゃいけないと思う。それだけだ」
そう言って、再びフミビロムに乗って去っていった。
「私(わたくし)が負けたことに変わりはない…?何を馬鹿なことを!今各地から喜びを集めているエルボロムの力があれば、必ず……!」
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「僕のターン。3マナで《ダイキリ》を召喚。クリーチャーが出た時または呪文を唱えた時、カードを1枚引ける。これをタップしてキール・ロワイヤルをハイパーモードに。そしてキール・ロワイヤルでシールドを攻撃!」
キールロワイヤルは力を集め、水の玉を3個浮かせた。
「攻撃時、スプラッシュ・クイーン・メクレイド5を行う、来い!《マーシャル・クイーン》!ブラック・トルネードの上に進化!」
「来たか、スプラッシュ・クイーンの親玉…!」
「手札3枚をシールドに置き、3枚手札に。そしてその中のシールドトリガー、ブラック・トルネード、マーシャル・プリンス、《カシス・ソーダ》をバトルゾーンに!」
(手札から1枚シールドに仕込んだ…?)
「ボンキゴの効果で合計4枚引かせてもらう!本来はこれでマーシャルプリンセスの効果で選ばれなくなった進化クリーチャーでフィニッシュってわけか…!」
「しかし、君の離れないボン・キゴマイムの効果で攻撃はできない。ブラックトルネードの上にライベルモットを乗せるが、効果を発動しない。しかしブラックトルネードの効果でDracheのブロックを止める!このままキールロワイヤルでシールドを攻撃!」
飛水 シールド3
「墓地に呪文が2枚あるためシールドトリガー!《氷柱と炎孤の決断(パーフェクト・コールドフレイム)》!選べるライベルモットとマーシャル・プリンセス1体を攻撃も防御も出来なくする!」
「しかしまだ攻撃は終わっていない!召喚酔いしていないマーシャル・プリンスでシールドを攻撃!」
飛水 シールド2
「キッツイな…トリガーなし」
「これで終わりだ!マーシャル・プリンセスでシールドをWブレイク!」
「ここで引けなきゃ終わり…!だが!」
飛水 シールド0
「久しぶりに力貸してくれ!シールドトリガー!《AQ NETWORK》!こいつはシビルカウント3、水文明3枚でブロッカーを得て、更に出た時に呪文を唱えられる。これで手札から唱える呪文はボンキゴの呪文側、《 ♪やせ蛙 ラッキーナンバー ここにあり》!これで3コストを宣言し、3コストのクリーチャーの攻撃、今攻撃できるのだとブラック・トルネードの攻撃を止める!」
「選ばれない戦法への対抗策か、しかし…」
「あぁ、エメラルド・クーラーの攻撃時にブラック・トルネードに革命チェンジされたら、俺の負けだ。だが、できることはする。そうでなきゃ失礼になるからな」
「あぁ、ダウンフォース・サーキュラーでクリーチャーを退かせなくしてボンキゴマイムを最大限使いこなし、更に特殊な2段階防御のシールドトリガーまでデッキに仕込んでいた。私の想定を優に超える良いデッキだ」
「だけど、あんたの引き一つで負けるくらいには追い詰められた」
「逆だ。僕の引きがなければ勝てないところまで僕を追い詰めたわけだ」
姫芽は初めて役が関係ない眩い笑顔を見せた。そんな不意打ちに飛水は思わず顔を背けた。
「あ、ありがとうございます……」
「僕の答えは……ターンエンド。君のターンだ」
観客からどよめきが起きる。この2ターンの間に、凄まじい攻防があり、お互いにその技量を認め合った。これこそが、姫芽がやりたかったお互いを立てるデュエマなのだろう。しかし飛水は、彼女を正気に戻すため勝たなければならない。
(マーシャル・プリンスが選ばれない状態でもう1体出てる。スプラッシュ・クイーンがシールドトリガーになってるし、カクメイジンはプリンス、マーシャル・プリンセス、カシス・ソーダにブロックされる。正直あのブロッカーを超えるなら、攻撃を通すために文藍月Dracheで倍加したラッキーナンバーここにありを唱えるのは必須。なら…)
「……もう一回賭ける」
「成程、フィナーレというわけか」
「あぁ、俺のデュエマはいつもそうなんだよな。強いやつに対して、非合理だったりなプレイをしなきゃいけない」
「悪いことではない。それだけ成長しているのだ、変わっているのだ」
「…そうっすね。ありがとうございます、歌浦先輩!」
飛水がマナゾーンにチャージしたカードは、《ダウンフォース・サーキュラー》。
「4マナで呪文、《ファイナル・ストップ》!1枚ドローして呪文を止める!」
「スプラッシュ・クイーントリガーを止めないのか?そこまで引けばクリーチャーシールドトリガーを対策する《単騎連射 マグナム》を引いているだろう」
「そっちは、ずっと裏をかいてきた!今回も選ばれなくなったマーシャル・プリンスというデコイを利用して、クリーチャーのシールドトリガーを警戒させてるんじゃないかって!Vibratoをタップして、再度Dracheをハイパー化!Dracheで攻撃する時、手札から♪やせ蛙 ラッキーナンバー ここにあり!Dracheの効果で倍加して、3コストと5コストの動きを止める!」
Dracheがギターをかき鳴らし、姫芽のシールドに攻撃が直撃する。
姫芽 シールド0
「シールドトリガー、《カシス・パイン》。ブロッカーだ」
「でも呪文側は」
「あぁ、ご名答。相手クリーチャーを全てタップするシールドトリガー呪文。見事君は2択を読み勝ったわけだ」
「……ありがとうございます、カラクリバーシでダイレクトアタック!」
「カシスパインでブロック!」
「カクメイジンで、ダイレクトアタック!」
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2人がデュエマを終わらせると、周りの人々は口々に称賛の言葉と拍手を送る。そして姫芽は、ぷつりと電源が切れたようにその場に座り込んだ。それを飛水は介抱し、近くのベンチで休ませた。
「夕哉が言ってたみたいに、あとは公輝さん任せだよな。屋上に上がる際に呼んだからそろそろだよな…」
「青海飛水」
「なんすか」
「また、デュエマをしたい。デュエマというのは演劇一筋でやってきて初めて知ったが、こんなにも胸踊るものだとは知らなかった。また、僕とデュエマしてくれ」
「……分かりました、また元気になったら」
(素でもこんな感じの人だったんだな)
姫芽を公輝たちに引き取ってもらい、飛水はどこかにいるはずの『独楽さん』を探し始めた。
「すいません、青いコート着たこんな感じの人探してるんですけど…」
「あぁ、さっき下に降りていくのを見たよ。凄く楽しそうにしてたから、印象に残ってたんだ」
「ありがとうございます!」
飛水はショッピングモールを駆け下りながら、思案を巡らせていた。
(なんで急にいなくなったんだ?デュエマに興味なかったとしても、連絡なしでいなくなるような人じゃない)
そう思いながら1階に降りると、見覚えのある背中をすぐに見つけた。いや、彼もそこから離れられなかったのだ。
「独楽さん」
「やぁトビウオくん。凄かったね」
「デュエマ、見てくれたんですか」
「うん、あっちが乗せてくれたのもあるけど、こんなに人前でパフォーマンスできるなら、音楽でも、そうでなくても、君は夢を叶えられる」
「なんで急にいなくなったんですか!?」
「それは、俺が……」
そこまで言って、流狼は言葉に詰まった。言ったら、言ってしまったら、トビウオとの、飛水との楽しかった1日がなかったことになる。しかし、自分は真名月の部下。そしてかぐらたちを通して自分のことがいつ飛水に知れるか分からない。その思いが、彼をこんな中途半端な位置に留まらせていたのだ。
「君は、迷いながらでも前に進める。『君の友達たちも同様だろう』。それを伝えておいてくれないか」
「何言ってるんですか独楽さん、まるで話が見えてこない…!」
「俺は、君が思っているような人間じゃない」
流狼は、涙を流しながらデッキを、あのカードを取り出した。
「《超楽識(ハイパーがくしき) フミビロム》。これが俺の相棒で、自分を証明するものだ。ここまで言えば、君ならわかるだろう?」
「月の民、だったん、ですか…!?」
「……今日のことは何かの間違いだったんだ。世界を壊すものと、守るもの。バロムに仕える者と、ジャシンやボルシャックを中心に団結する者。それらの相棒達が、ここで一緒にいていいわけがない」
流狼は振り絞るように言う。自分でもここまで思い入れができていたなんて思わなかった。それほどまでに、昔はただ、滅ぼしてきた世界の楽しい文化をなぞるだけだったということに、今、自分は沢山の本当に楽しいことに出会っていると感じるのだった。
「だから、時間を空けよう。次会うときは、少なくとも俺は、覚悟ができたときだ。分かっていてくれ」
「待ってくださいよ!」
そう言ってそのままフミビロムと共に飛び去ろうとする流狼を、飛水は呼び止める。
「正直、月の民は話が通じないと思っていた。少なくとも赤坂のことを好き勝手罵って傷つけたレントに関しては、一生許さないと思う。だけど、今日一緒に色んなことして、話を聞いて、『独楽さん』がそんなに悪い人には見えなかった!」
「………」
「だから、次会うときは、俺も覚悟を決めます。愛澤先輩たちを助けるのは、赤坂の気持ちに付き合うだけだと思ってた。でも今なら分かる。音楽で仲良くなった、楽しい時間を共有したことには変わりない。今度会うとき、それを俺はぶつけます」
「……そう、楽しみにしてるよ」
そう言って今度こそ、流狼は飛んでいった。
「カクメイジン、Drache。俺らしくもねぇかな」
「今日、飛水は凄く楽しそうでした。それは嘘ではないのでしょう」
「敵であることに変わりはないが、楽しんだことにも変わりはない。俺たちが出す結論ではないだろう」
メイとジンが、そのように言った。飛水の結論がどうなるかは分からないが、それに付き合うと言う意味だろう。
「俳句楽 交わる川は まだ流れ」
「Drache…?」
「音楽の趣味は、一緒だった。飛水の曲を、良いと言ってくれた。レントのような悪い前例もあるが、もし何かあっても、俺達がカバーする。何より、君の夢を肯定してくれた人だ。それを、俺は大事にしたいな」
Dracheがそう言ってくれた。相棒達が自分の考えを肯定してくれている。結論を出す日はそう遠くないだろうが、飛水はそれまで、今日のことに向き合うようにしようと、家でギターを取り出しながら思い返すのであった。
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流狼が拠点に戻ると、かぐらが激情に駆られていた。
「愛澤帆鳥!好木夢兎(このき めう)!どうしてこんなにも上手くいかないんですのよ!?早く、早く黒井夕哉達をぉ!」
「大丈夫ですかぐらさん!私達が、光屋御白を倒します!」
「どうしたんだ、かぐら。まだ3人も残っているんだ。変に怒り狂う事ほど損なこともないだろう?」
そうやってかぐらを嗜めるが、かぐらの怒りは収まらない。流狼が帆鳥の方を見ると、彼女達を必死に耐えているようだった。
「夢兎。本当に、私達の道は正しいの…?」
「大丈夫だよ帆鳥、貴方は赤坂火奈に一度勝った。有明さんも勝ったじゃん。私達なら、大丈夫…」
(本当に正しいと思って前に進むことは難しいことだ。今の俺ですら、それができていないんだから…)
全てを誤魔化すように肩を寄せ合う2人を、流狼は黙って見ることしかできなかった。真名月は、まだ万全の状態にはならないようだった。
飛水の!今日のカード紹介!
今日のカードは…《文藍月 Drache Der'Zen》!
ハイパーモード前はパワー6000のブロッカーで、攻撃時に水のコスト5以下の呪文を唱えられる。ハイパーモードになると手札から唱えた呪文をもう一度唱える、つまりあらゆる手札からの呪文が2発になるんだ。取り回しも良くなって、かなり強くなった相棒だ。
次回、『雪解け、その日まで』