デュエル・マスターズOverLord(オーバーロード) 作:シグレサメ
「友達を守れる力。これがあれば、貴方とその友達は助かることができますの」
かぐらから渡されたそのデッキは、あたしと夢兎たちを助けるためのデッキ。かぐらの笑みが、今でも脳裏にこびりついている。
「帆鳥。最近あなた辛そうよ?大丈夫、友達とうまくやれてる?」
お母さんから言われたことは嘘じゃない。いつから、友達が呪いになっちゃったんだろう。大好きな皆を守るために、あんな奴の言うことを聞かなきゃいけないんだろう。もう、今となってはわからない。
いつか、夢兎に出した問題。あたしは、空っぽなんだ。なんとなく夢を見て、なんとなく大きくなって。なんとなく、大人になっていって。そうなるのが嫌で、何か自分の中で残したくて。それに夢兎たちを巻き込んでしまった。あたしは最低だ。あたしは、友達のためと言って、そのまま……。
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「あたしのターン」
(突撃インタビューはシロフェシーに止められてる。確実に1打点かわされるか、ハンプティにマナを使わせされるだけでも苦しい。まぁハンプティは手札にないけど)
「ねぇ、こんなに綺麗に対策、練習してきたんだ。なんで?」
「…愛澤先輩が辛そうだったから、なんて言えたら良いんですけどね。本当はあたしの目標のため。誰かのヒーローになりたいな、なんていう気持ちがあったから。皆と会って、それがなんとなしの目標じゃなくなったから、です」
「でも、ボルシャック・カイザーの力は、前に戦った時よりも弱まってる。武装を引っ張り出してパワーアップを図ったみたいだけど、ボルシャック・バクテラスのような力は感じない。もし力が無くなったとしたら、あなたは何もできなくなる」
ボルシャック・カイザーが反論する。
「しかし、俺がいなかった時も火奈は光屋御白を助けた。それが無ければ火奈と出会うこともなかった。元から彼女は、俺を預かる資格はあったのだろう」
「認め合ってるんだ」
「離れたくないのは本当ですけどね」
「………。ねぇ、貴方は友達が負担に感じたことはある?」
(あたし、何を言って……!?)
帆鳥の口から思わず出た言葉。そんなこと本当は思っていないと夢兎の方を見るが、夢兎は本当は分かっていたかのように、安心したような笑みと共に、想像していなかった言葉を返してくる。
「良いよ、帆鳥。ここに居ない皆も、帆鳥の本音は知りたいと思う」
「あんなに友達を大事にしてたのに、ですか?」
火奈の戸惑いを受け止めて、帆鳥は話し出した。
「あたし、最近わかったんだ。皆のことはただ利用してただけなんだって。友達がいれば、自分が少し楽になる。友達を助けられたら、自分を少しはいてもいいと思える。そんな利己的な理由だよ。あたしが夢兎達に話しかけた理由なんて」
「それは、分かるって言えないけど、寄り添えるかもしれません。家族や友達がいなかったら、寂しい、辛いのは当たり前で…」
「ありがとうね。でも、あたしはそんな……」
「じゃあ、ずっとウチらのご機嫌取りしてたってわけ?」
聞き覚えのある声に帆鳥が振り向くと、そこには緑に連れられて大隅 妖那(おおすみ あやな)が、怒りながら近づいてきた。
「ごめん、妖那…。あたし、こんな人間なんだ。幻滅したでしょ?」
「勝手に決めんな!!」
妖那が帆鳥の1発頬を打った。その後、自分の頬を自分で打ち直す。
「あんなに一緒にいるのにお互いにぜんっぜん知らなかった!これからはお互いに大事にしよう!これで終わりじゃないの!?」
「……え…!?」
「あたしも、全然自分のこと見れてなかった。そこの守木くんに教えられたよ、取り繕ってばっかりじゃいずれ限界が来るってこと。帆鳥も、ウチ達の前じゃ力抜けない?」
帆鳥は、妖那から無意識に逃げの姿勢を取っていた。妖那から踵を返して逃げようとした時、予想だにしなかった人影が、生形 唯人(いがた いと)と歌浦 姫芽(うたうら ひめ)が、近くに来ていた。
「私、1人で勝手に帆鳥はこう考えてるって考えて、勝手に行動に移して……ごめんなさい!」
「僕も、自分のこと、自分の演劇ばかり見ていた。君はもっと沢山のものを見ていたのにね」
「やめてよ、唯人、姫芽……。こんなあたしを、許さないでよ…」
遅れて夕哉と飛水がかけつける。夕哉と飛水に連絡をかけたが、何故2人までいるのかと、御白が訳を尋ねる。
「完全になんとなくだ。結局リーダーが折れなかったら、この話は終わらねぇだろ?」
「そう思ってここに来る間に公輝さん達に頼み込んだんだよ、2人で頼んだけど、やっぱり大変だった」
「そうですよ、本当によく……!」
そう話していると、公輝本人が現れ、夕哉と飛水の肩を叩く。
「ただ悪いことをしたから捕まえて、お互い話すチャンスも無しっていうのは、余りにも残酷だと思ったんだ。まぁ、後で怒られるのは俺だよ。だから大丈夫」
「……ありがとうございます!」
「皆には助けてもらってばかりだからね。何かお返しはしたかったんだ。2人とも反省していたし、大丈夫だと思うよ。だから、気にせずにね」
帆鳥のところに、夢兎が走り込んでくる。
「大丈夫。もし貴方が自分を許せなかったとしても、貴方が私達にしてくれたこと、何度でも言って聞かせる!帆鳥は、もう私達全員のヒーローだよ!!」
「皆、気づかなくて、ごめん……。押し付けて、皆に無理させて、ごめんなさい……」
カイザーと火奈は、その様子を見て安堵していた。
「デュエマをしないで、お互いに傷つけあわないで済むなら、それが一番だよね、カイザー」
「……そうだな」
そして、泣き出した帆鳥を4人が慰めている様子を、ショッピングモールの奥から流狼が見ていた。
「……かぐらが仕込んでいた、いわばバックアップか。……どうしてこうも、悪意って言うのは物事を台無しにするんだろうね」
《龍后王翔 クイーン・ルピア》のカードが、1人でに動き出す。クイーン・ルピアのカードと目が合ったかと思うと、帆鳥は他の4人を人間ではあり得ない力で吹き飛ばし、クリーチャーの力を使って、ショッピングモールを巻き込みながら攻撃をし始めた。
「あの子達に持たせたのは、僕たちが記憶を奪って征服した、他の世界のクリーチャー達。その中でも特に強い者たちだ。特にあのクイーン・ルピアは誇り高いクリーチャーで、もし自由になれるチャンスが来たとなったら、絶対にそのチャンスを逃さないだろう。はぁ、それすらもかぐらに先回りされていたのか。有明の真似をするんじゃないけれど、悲しい、虚しいとしか言いようがないよね」
そう言って流狼はショッピングモールから脱出する。しかし同じように夕哉達まで、簡単にそうできるわけではなかった。
「あれ、クリーチャーに乗っ取られる時の……!ドランさん、エン・ゲルスさん、お願いします!お客さんを抱えて外に出してあげてください!」
「タイミング最悪すぎる……!ジャブラッド!建物を支えて!」
「クリーチャー出しまくってる時に言うのもなんだが、これ一般人にバレないのか!?カクメイジン!光屋のクリーチャーに着いてルート取りしてやってくれ!Drache!人を少し操ってでもいいから、避難誘導を頼む!!歌浦先輩達!今は無理です、早く外に行きましょう!」
「俺も避難誘導に行く、Drache Der'Zenくん、案内してくれ!」
「ゴルファンタジスタ!建物をゴルフボールで穴を埋めて治すとかできないの!?」
「ファー!無茶言うな!支えるので精一杯だ!」
「ジャシン!火奈を助けて!!」
夕哉にそう言われて気怠そうにジャシンが火奈のところに向かおうとするが、ボルシャック・カイザーの視線を受けてその動きを止める。
「ジャシン…!?」
「……奴は、カイザーは、少しでも誰かが助かる方を選ぶようだ。何より、何があろうとも『あの少女は』助けるだろうな。夕哉よ、お前は助けられる人間を助けるのではないのか?」
「ーーー!ジャシン!ジャビビルブラッドと一緒に建物の倒壊を止めて!」
「フン」
倒壊する建物の中で、火奈はその元凶を止めるために向き合う。
「貴方も、寂しかったんだ」
「折角の自由となるチャンスなのだ、妾(わらわ)を邪魔するな……!」
「乗っ取ってる愛澤先輩を返して!」
火奈 シールド3 マナ4
《鎧機天 シロフェシー》、(以下タップ状態)《終炎の龍皇 ボルシャック・ハイパードラゴン》、《チャラ・ルピア》、《ボルシャック・ハイパーアークゼオス》、《アシステスト・インコッピ》、《ボルシャック・ハイパーヴォルジャアク》(ハイパー化)
帆鳥 シールド3 マナ4
《龍后王翔 クイーン・ルピア》、《ハンプティ・ルピア》、《ピース・盾(パリィ)・ルピア》
バラバラと落ちる建物の欠片を、ドラゴン達が炎や自身の武装で叩き割り、ファイアーバード達が身を挺して守り、火奈とカイザーのために道を開ける。
「5マナで《雷炎翔鎧 バルピアレスク》を召喚。バルピアレスクでボルシャック・ハイパードラゴンを攻撃、その時《アリス・ルピア》を踏み倒し、山札上から《マジシャン・ルピア》、《ハッター・ルピア》、《アシステスト・インコッピ》をバトルゾーンに!そしてアリスルピアの効果でこれらのクリーチャーにスピードアタッカーを与える!」
「シロフェシーでブロック!」
「バルピアレスクはバトル中破壊されない。更にバルピアレスクは攻撃終了後、ファイアーバードを5体破壊してEXターンを獲得する。ハンプティ、マジシャン、ピース、クイーン、インコッピを破壊。クイーンは破壊をハンプティに肩代わりさせ、インコッピらピースの代わりに破壊される」
(来た、EXターン戦法…!)
「ハッター・ルピアでシールドを攻撃」
火奈 シールド2
「シールドトリガー!《爆殺!! 覇悪怒楽苦(ハードラック)》!コスト合計が8になるようにバルピアレスクとハッタールピアを破壊!」
(攻撃済みだとしても、EXターンを取るバルピアレスクと、マナ数以上のコストを出したら破壊されるハッター・ルピアは放置できない!)
「クイーン・ルピアで攻撃、アリス・ルピアを破壊し、ファイアーバードメクレイド8を発動。……《ヤット・パウル》を召喚し、登場時効果でシールドを1枚回収」
「火、奈……!」
「愛澤先輩!まだ意識残ってる!!絶対に助けますから!!」
帆鳥 シールド2
火奈 シールド0
「まだ、終わってない!シールドトリガー!《イカリノアブラニ火ヲツケロ》!!」
「あれは、月の民のカード……!」
「あんなに酷いことされたんだから、これくらいしてくれなきゃ嘘でしょ!!効果でコスト6以下のクリーチャー、《ボルシャック・アークゼオスNEX》をバトルゾーンに出して、ピース・盾・ルピアとバトル!更に、バトル終了後にマナゾーンの枚数よりコストが大きいクリーチャーが出たなら、そのクリーチャーを破壊する!」
(動ける打点が潰された…!)
「アークゼオスNEXの離れた時効果で、シールドを1枚追加!」
火奈 シールド1
「泣いても笑っても、これで最後!」
「……妾のターン。呪文ロックはまだ解除されないか。2体目のハンプティ・ルピアを召喚。貴方の手札のアークゼオスNEXを捨て、場のボルシャック・ハイパードラゴンを破壊」
「カイザー!!」
「大丈夫だ!デッキ内にまだ私はいる!!」
「うん!絶対にまた引く!!」
(イカリノアブラとアークゼオスNEXを使った防御にはもう頼れない…!だとしたら逆転できるカードは…)
「クイーンルピアでシールドを攻撃。ハンプティ・ルピアを破壊してファイアーバードメクレイド8。バルピアレスクをバトルゾーンに」
火奈 シールド0
「来て、来て、来て……」
「妾を自由にするために!そこを退け!ただの人間よ!!」
「うん。あたしはただの人間。カイザーに運良く会えて、誰かを助けられる夢を見せてもらえて、こんなに楽しいデュエマで、沢山の友達に会えて……。だから…」
「退くのだ!ニンゲンよ!!」
「あたしは夢に、向かい続ける!シールドトリガー、《極閃呪文「バリスパーク」》!!相手クリーチャーを全てタップ!
「あり得ない!こんなに大量にシールドトリガーを踏むなんて…!」
「あたしもこんなに引けると思わなかった。多分、色んな人の気持ちを背負えたからだと思う。負けたくなくて沢山バルピアレスクやクイーンルピアを対策できるカードを入れたって言ったらそこまでだけど…」
火奈は少し置いて、クイーンルピアと、帆鳥のためにこう言った。
「でも愛澤先輩と、クイーンルピア、貴方のために言うよ。自分のためだけでも、人のためだけでも、きっと何処かで無理が出る。人と競って、自分を磨いて。難しいけど、それができたら、きっとそれは呪いじゃなくて力になってくれると、あたしは思います」
「そんなの、ただの詭弁だ!それができていなかったから!妾はバロムに支配されたとでも言うのか!?」
そう言って帆鳥の身体を使い火奈に直接襲いかかろうとした時、身体の動きが止まる。
「もしそれが本質であってもなくても。あたし達は現実に負けて、火奈達が現実に向かって立ち続けていた。それだけだよ」
「ーーー!……ターン、エンドだ」
「あたしのターン!……来て、相棒!ドロー!!」
火奈が引いてきたカードと目を合わせる。そこに描かれていた名前は、《終炎の龍皇 ボルシャック・ハイパードラゴン》。
「行くよ、チャラルピアとインコッピの力を借りて、2マナでボルシャック・ハイパードラゴンを召喚!ハイパーアークゼオスと、インコッピをタップしてハイパードラゴンをハイパーモードに!」
力を溜め、自分の太陽の力を使わないようにしていた鎧を解き放ち、ボルシャック・ハイパードラゴンは空を飛び回る。崩れ落ちる建物を支え、瓦礫を拳で砕き、そのままシールドへと向かっていく。
「ハイパードラゴンの効果で山札を捲る!バリスパークだったので墓地へ!シールドをWブレイク!」
帆鳥 シールド0
「シールドトリガー、《ピース・盾・ルピア》。相手クリーチャーを全てタップ。だが、妾の負けか」
「ハイパードラゴンの攻撃終了後、味方が5体以上タップしているので再度アンタップ!ハイパードラゴンで攻撃!捲って、《飛ぶ革命 ヴァル・ボルシャック》!ハイパードラゴンをアンタップ!」
「ピース・盾・ルピアでブロック!」
「ハイパードラゴンで、ダイレクトアタック!!」
そう言って決闘に決着をつけようとする時、耐えきれなくなった上の階がまとめて崩落してきた。火奈はクリーチャーをカードに戻し、帆鳥の元に向かっていく。
「……カイザー!!」
「あぁ、いつかは力を使い切ることになる、別れる時が来る!それが今だっただけだ。さぁ火奈!最後の命令をしてくれ!!」
「カイザー!あたしが帆鳥先輩を助けられるように、最後まであたし達を守って!」
ボルシャック・ハイパードラゴンは、更なる炎を持って、降りかかる瓦礫の山を燃やし、火奈と彼女に抱えられた帆鳥に辿り着く前に溶かし尽くす。降りかかる火の粉は、1つとして彼女には落とさなかった。彼女らが出た時、ショッピングモールは全体とは言わずとも、3割程度は上から下まで倒壊し、3階建てであったことすら伺えない。そんな中、カイザーと火奈は、なんとか帆鳥を救い出すことに成功したのだった。
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「建物が突然倒れて、死者0人ってどう言うことだ…?」
「なぁ、なんかでかい化け物が現れたって!?」
「モールから出てきた人がそう言ってたって。助けてくれたらしいんだが、それを見たのも1人や2人じゃないって言ってた」
火奈以外の夕哉達4人は、警察が集まった中で公輝のお陰で後ろに通され、テントの中で休んでいた。
「じゃあ、シイノさん……」
「うん、かぐらに連れてかれた。ごめん、俺が間に合わなくて」
「ゆうやは悪くないよ。悪いのは攫っちゃう方」
「にしたって、真名月がかぐらに剣を刺したんだろ?どういうことだ?」
「感情を集められなくなったって言ってた。完全に推測だけど、レントも同じような状況じゃないかな。火奈に追い詰められてた時、怒りなんて感じられなかった」
「感情を集められなくなったら、真名月に何か酷いことされてしまうんですね……。恐ろしいです……」
「つーか、完全に人を駒として見てないと出来ない考え方だよな、それ。クイーンルピアが暴走した件といい、もっと細心の注意を払わねえと」
「僕、月の民とまた会うの怖いな……」
気持ちが下がる4人の中に、久しぶりに公輝のサポートにやってきた彼女が口を挟んだ。
「でも、貴方達は誰も一般人を死なせなかったじゃないですか」
「遥風(はるか)さん!?」
「風音の件が少し落ち着いたから、漸く君たちのサポートに戻れると言われたんです」
COMPLEXとその能力を使った大規模テロを起こした須谷風音(すたに かぜね)。その姉である遥風も、その時間の後片付けが落ち着き、ようやく戻ってこれたのだった。
「御白さんは知ってると思いますけど、風音はしっかり反省してて、ちゃんとCOMPLEXに取り憑かれた後遺症も治ってきてます。まぁ、今言うことではないかもしれませんね」
「うぅん。少しでもいい知らせが聞きたかったから。ありがとうはるかさん」
「そうですか…。今回の件は、引き分けという形になるのでしょうか。シイノさんは攫われてしまいましたが、愛澤帆鳥さん達を助けて、誰も犠牲者を出しませんでした。貴方達は、間違い無く最善を尽くしました。最善は、尽くしたんです」
「でも……」
御白は、そう言って言葉を添えた。
「今ここに火奈ちゃんがいません。火奈ちゃんは今、最後の時間を過ごしてるから」
「……そうですね。別のクリーチャーと契約することも提案する予定ですが、おそらくそれも断られてしまうでしょうね」
「宝物なんだよ。相棒って。代わりなんてないんだよ。僕も、ゴルファンタジスタ以外の相棒なんて考えられない」
緑の言葉を受けて、夕哉達は肩を落とす。守ったものは大きいが、失ったものも大きい。しかし、前に進むしか、また月の民と向き合うしかない以上、いずれその時はやってくるのだった。
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「光文明で、天文学の本を読んだんだ」
カイザーの身体は、光に包まれていっている。少しずつ増える光の粒子は、間違いなく最後の時を迎えているのだと火奈に実感させる。もう、何も文句は言わない。覚悟は決めた。避けられないなら、それを受け入れ、前に進むしかないのだから。
「太陽というものは、最後を迎えると温度が下がって白色矮星となり、やがて黒色矮星となり、終わっていく。自分の中でも、そのイメージがあるのだ。だが、クリーチャー達の太陽として、クリーチャー達の、火奈の近くで燃やし尽くしたことを、誇りに思うとしよう」
火奈は一度目を腕で擦った後、いつも通りの笑顔を浮かべてこう言った。
「カイザー知ってる?あたしも最近本をたくさん読んだ時知ったんだけど、ある程度大きい恒星は、超新星爆発をして、また新しい星の材料になるの!カイザーならまた帰ってこれるに決まってるし、あたしはカイザーのこと絶対に忘れないし、誰よりも強くカイザーのこと考えてるから、絶対帰ってこれるよ!!」
火奈の笑顔に、カイザーもつられて笑顔となる。
「そうか、そうだな。そうなるな!そうやって光っていれば、いずれ火奈が俺のことを見つけてくれる!それまで、何年でも、何千年でも光っているとしよう!」
「あたしも、光ってるカイザー見つけたら、どれだけ熱くても会いにいくから!」
2人は手を繋ぎ、近くのベンチに座った。体の大きさも、ドラゴンと人間という種族も、何もかも違うが、今この瞬間、ずっとこの瞬間が続いてほしいと、2人は切に願ったのだった。
火奈の手から、熱が消える。
「……カイザー」
火奈の手元に残ったのは、黒ずんだ1枚の、《轟炎の竜皇 ボルシャック・カイザー》。
「また会えるから。その時まで、あたし待ってるから」
火奈はそう言って、黒ずんだカードをスリーブの中に入れる。仲間が言ってくれたように、想いがクリーチャーと人間を結びつける日を願って。
次回、『黄金色の明日を探して』