デュエル・マスターズOverLord(オーバーロード)   作:シグレサメ

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御白とドランの協力で《金天使(ゴルドエンジェル) ゴルドラン・ゴルギーニ》が覚醒。かぐらとの最終決戦を制し、かぐらは最後に本当の喜びを知りながら消えていった。その頃火奈達は、また別のことを始めようとしていて…。


走れ、その日まで

 

御白がゴルドラン・ゴルギーニを覚醒させた翌日。火奈は、飛水と緑に呼ばれてカードショップ、DM stationへと来ていた。

 

「飛水、何?」

「まぁ概ね分かってるだろ、勉強だ」

 

火奈に届いた段ボールのは、様々な文明のカードが入っていた。飛水と緑がかけあって、自分の私物や知り合いから要らないカードを集めてきたのだ。まだなぜ呼ばれたのかを知らない火奈に、飛水はこう話す。

 

「正直、夕哉と光屋に任せっぱなしになってるってのが俺たちの見解だ」

「うん。足手纏いとは言わないけど、このままだとマズイって思ったんだ」

「強力なジャシンとアビス達を使える夕哉と、歴と経験値が強すぎる光屋。しかもかぐらを倒して、ドランも進化したらしい。このままだとこいつらに任せっきりになる」

「確かに。あの2人は凄い強いけど…。飛水だって強いじゃん。緑も……。しかも、あたしにはもう関係ない話……」

「強くなんかないよ、僕は月の民の有明に負けたんだ。正直、あの人の気まぐれがなかったら、僕はここにいない」

「俺もだ。カクメイジンもDracheも強いが、俺自身が生かしきれてない。できる限り様々な戦法を試したい」

「それは分かったけど、あたしが参加する理由にはならないんじゃ」

 

少し意外なことに緑が、それに反論する。

「ボク、ゴルファンタジスタとまた会う前のことも立派な経験だと思ってる。やってたことは良くないことだけどね。だから、その日に向けて今からでも特訓しない?って話なんだ」

「強制はしない。でも、これを先に行ったらお前は来ないと思ったからこの手をとった、それは謝る」

「まぁ、あたしはそう言われたら来なかった気がする」

「だから今決めてほしい。特訓に入ってもらうか、そのまま帰ってもらうか」

 

火奈は悩む。正確には答えは決まっていたが、それを言う最後の踏ん切りがつかなかった。

「ゆうやに聞いたんだけど、やっぱり普段からデュエマしてるんだって。またカイザーと会えた日にブランクで動けないなんてことには、ボクはならないでほしいなって思う」

「……緑、カイザーが帰ってくるって信じてるんだ」

「うん。ボクもゴルファンタジスタとまた会えたんだもん、火奈だけまた会えないだなんて寂しすぎるよ」

「……そうだね、特訓やるよ!ここて逃げたら、カイザーに笑われちゃう!」

 

それを聞いた飛水は手を一度叩いて、笑顔でこう言った。

「よし決まりだ。週一で集まって、デッキを入れ替えながらデュエマをする。何も掛かってないデュエマだから、無理にパートナーになるクリーチャーをデッキに入れなくてもいい。とにかく必要そうなものを拾っていく感じで」

「相棒使っちゃダメなの?」

「使っちゃダメとは言ってない。でも同じ戦法ばかりだとそれに対策が寄っちまうし、何より楽しくない。あいつらが勉強もデュエマも楽しんでるのは、お互いに色々飽きないように、それでいて色々なことを得られるように工夫してるからだ。まぁ光屋の方は意識してねぇだろうけど」

「だからこんなにカードを…」

「火奈はデッキビルド力も上げてもらう。カイザーが帰ってきた時、迎えに行くデッキが弱かったら嫌だろ?」

「だね!やる気出てきた!」

 

火奈の瞳に、炎が灯る。陸上以外で久しぶりに見る元気な火奈に、飛水と緑は自分たちも元気をもらっていた。

 

「デッキ組むから待ってて!やってみる!」

「とりあえずはアレンジを加えるところからやってみるか、この12枚に自分の好きなカードを入れてデッキにしてみるところからだな」

「……飛水さ、結構心配してくれてたの?」

 

火奈がイタズラっぽく微笑むと、飛水は顔を逸らして、

「まぁ、戦力ダウンは否めなかったからな。事情を知ってるやつに抜けられたら、困る」

「……そっか!じゃあ2人のデュエマ見ながら考えるね」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「正直、驚きの連続だ。まずただの商品だと思っていたクリーチャーが現実にいて、御白がそれの相棒だなんて」

 

夕哉と御白は、いつも通り教師と生徒の関係としてその時間を過ごしていた。しかしそこにはゴルドラン、そして白都までいるのだった。

 

「お兄様。私達まだ勉強中なんですけど……」

「御白さん、御白さんのお兄さんにずっと見られてて少し恥ずかしいです…」

「申し訳ない。……あなたが、御白をずっと守っていたんですね」

 

御白をずっと守っていたと言う言葉に、思わずゴルドランは自分の胸に手を置く。自分が守れなかったものもあるが、どうにか守れたものもあるのだと、複雑だが少し報われたような気持ちになるのだった。

 

「白都さん」

 

練習問題を解いている御白を少し放置して良いと思った夕哉は、白都に話しかけた。

「どうしたんだ?君にも沢山助けられた。君がいるから御白は今この成績で済んでいるし、何より今ここにいる」

「こちらこそです。俺も御白、さん、には沢山助けられましたし、自分の成績もかなり上がりましたから」

「そういえば夕哉くん私に教えていつ勉強してるんですか?」

「家に帰ったらすぐと寝る前。基本はそんな感じかな」

「一生追いつける気がしませーん……」

 

そんな御白に笑顔で返す夕哉を、白都は不思議そうに見ていた。そして部屋の隅に夕哉を誘導し、小声で話しかける。

「何より、御白がここまで心を開いているのが驚きだ。名前で呼ぶのも許されているんだろう?そこまで行ったのは君が初めてだ」

「そう、なんですね」

「あぁ、御白の交友関係は中々上手くいかなくてな……グスッ」

(多分家のことも御白の性格のこともあったけど、白都さんも少なからず関係あったんだろうな……)

(正直、この男なら御白を任せても大丈夫なんだろうな……)

 

白都は2人には言えないことを噛み締め、御白の元に夕哉を連れて戻る。

「俺は立場上、諌めることしか言えない。父さんと母さんはそれ以上に強敵だからな。俺は信じざるを得ないことが沢山あったのもあるからな。こっちのことをそう知らないお父様達か病院から帰ってきたら、面倒なことになるのは目に見えてる」

「でも、クリーチャー見せれば……」

「それでなんとかなればいいが。どちらかと言うとお父様達が見てるのは、『御白がどうするか』だと思う。俺でギリギリセーフ、みたいな感じだったから、クリーチャーをただ見せてどうこうとはならんだろう」

「私が、どうするか……」

「宿題と思って考えといてくれ、当日は1人だが、それまでは俺も時間が空いていたら相談に乗る」

「ありがとうございます!」

「あ、ありがとうございます、お兄様!」

 

そう言い残して出て行った白都に、御白は思わずこう漏らした。

「なんか、別人みたいです……」

「多分お互いに全然知らなかったんじゃないかな。御白とクリーチャーのこと、白都さんとその本当の考え方のこと」

「ですね……。正直、運が良かった気がします。そんなことになるとは、前は思いもしなかったので」

「……そっか。俺も手伝えるだけ手伝うよ」

「まずは私のお勉強をお願いします、お父様達に何もついてきてないただの目標を語っても、絶対に納得していただけないと思うので!」

「そっか、頑張ろう御白!」

「はい!」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「《赤い稲妻(サバイバル・スター) テスタ・ロッサ》を2マナで召喚!」

「《伝説演者 カメヲロォル》を2マナで召喚するよ!」

 

先行の火奈が作ったのは火、光、水の《「正義星帝」(スティルジャスティス・ティルジエンド) <鬼羅.Star>》のデッキ。最初くらい元々使っていた文明の方がいいだろうと飛水が気を使い、鬼羅.Star、《T・T・T(ザ・トリプル・スリー)、《エヴォ・ルピア》を固定枠としてデッキを組んだのだ。

 

対して後攻の緑は得意の自然文明を使わず、火と水の《勝利龍装 クラッシュ覇道(ヘッド)》と《“必駆”蛮触礼亞(ビッグバン・フレア)》を主軸としたデッキを組んだ。お互いの足りない経験値を埋めるためのデュエマとなっていたが、2ターン目からバチバチの展開となり、ギャラリーもポツポツと集まってきている。

 

「3マナ!《T・T・T》!3つのモードから、今回は3枚ドローを選択!……なんか、こんなに手札が重いの初めてかも」

「んなスマホより重いの持てない系女子とかじゃねえんだから」

「まあね。テスタ・ロッサでシールドを攻撃!」

 

緑 シールド4

「シールドトリガー!《終末の時計(ラグナロク) ザ・クロック》!」

「いきなりシールドトリガー!?」

「いや、ボクの貴重な1ターン稼げるシールドトリガーが1枚無くなっちゃった」

「テスタロッサのパワーはバトル中4000。緑の場にいるのは両方3000だから殴り返しはされねぇけど、場に2体はまぁこええな」

 

「ボクのターン!カメヲロォルの効果で追加ドロー!ひなも引いて!」

「ドロー!」

「3マナで《迫撃兵ショウマ》を召喚!コスト3以下のテスタ・ロッサを破壊!」

「バトルで勝てても普通に破壊されたらキツイよね……」

「ターンエンド……」

「ちょい待ち。普段のデッキだったら待つだろうが、カメヲロォルはともかくクロックは捨て気味に使っていい、結局ウルトラセイバーとか同期の妖精は使わないデッキだから、シールドトリガーにはいつか向きあわねぇと」

「うーん……。ひすいの言うとおりかも。普段中々やらない動きだから、頭になかったよ」

 

そう言われた緑は少し考え、クロックでの攻撃を宣言する。

 

火奈 シールド4

「トリガーなし」

「カメヲロォルは残したいかな。ターンエンド」

 

「あたしのターン!4マナで《エヴォ・ルピア》を召喚!登場時効果で1枚引いて、手札からコスト5以下の《「正義星帝」 <鬼羅.Star>》に進化!」

「来た!そっちの切り札!」

「鬼羅.Starの効果の出た時効果で1枚引いて4以下、エヴォルピアをバトルゾーンに!同じように鬼羅.Starの2枚目をバトルゾーンに!これ、手札増やしたお陰でできる戦法だよね!」

「だな、更に2体目の効果も使える」

「2体目の効果でテスタロッサの2対目を召喚!鬼羅.Starでシールドを攻撃!その時も同じ効果が発動!《ボン・キゴマイム》をバトルゾーンに!」

 

緑 シールド2

「えっと、テスタロッサで召喚以外の行動で墓地送り、ボンキゴマイムでクリーチャーは出たターン攻撃できない……」

「トリガーもないのキツイな」

「鬼羅.Starでシールドに攻撃!その時1枚引いて、手札から《その子供、可憐につき》をバトルゾーンに!」

「挙げ句の果てにスピードアタッカー、マッハファイター、進化クリーチャーをタップインさせる可憐につきまで出したか。しかも火奈の4以下のクリーチャーはスピードアタッカーか」

「こんなにじわじわ追い詰めてるの初めてかも、面白いね!」

「ボク逆にあれ引かないと絶対返せないんだけど……」

 

緑 シールド0

緑は祈りながらペラリとカードを捲る。中にいたのは、緑が一番欲しかったカード。

「来た!シールドトリガー、《B.F.F. (ズッとも) モーメント》!出た時にカードを1枚引いて、その枚数(8枚)以下のコストのクリーチャーを全て手札に!」

「あたしのクリーチャー全部吹っ飛んだんだけど!?鬼羅.Starはスター進化の効果で進化元のエヴォルピアを残せるけど……!」

「えへへ、手札がいっぱい増えるデッキだから入れてみたんだ!これでボクを妨害するクリーチャーもいない!」

「だよね……ターンエンド!」

 

「ボクのターン!呪文、《“必駆”蛮触礼亞》!手札を1枚捨てて3コストで唱えるよ!そして10コストの《勝利龍装 クラッシュ覇道》をバトルゾーンに!更に呪文の効果でエヴォルピアとバトル!」

「破壊される!」

「クラッシュ覇道でシールドに攻撃!」

 

火奈 シールド2

「あたしにも来た!シールドトリガー、《ジャスティス・フォース》!手札からコスト4以下のクリーチャー、エヴォルピアをバトルゾーンへ!」

「成程、相手ターン中のカウンターで入れたんだな」

「うん、エヴォルピアを鬼羅.Starに進化!登場時効果で1枚引いてテスタロッサをバトルゾーンに!これで2回目の触礼亜覇道は使えないよ!しかも鬼羅.Starの効果で4以下のクリーチャーにブロッカーを与えられる!」

 

完全に防御線を構築した火奈に、緑は一度立ち止まる選択をする。

「クロック達で攻撃するのも駄目か…。クラッシュ覇道は“必駆”蛮触礼亞の効果でターン終了時破壊されるけど、クラッシュ覇道はタップして破壊されたら追加ターンを獲得するんだ」

「それ厄介だよね……」

 

「ボクのターン!ドロー!……これかも!場にあるクリーチャーの数だけ軽減!6コスト減らして2コストで《ボルシャック・ガラワルド》を召喚!効果でテスタロッサとバトルして、勝ったので1枚ドロー!」

「嘘!?」

「さっき鬼羅.Starでクロックを破壊しなかったのがモロに出たな…。よりによって3マナ余っちまった」

「あれ逆に怖くなるじゃん、2枚目のクロック!!」

 

「3マナでさっきと同じように触礼亜覇道!クラッシュ覇道は鬼羅Starとバトル!」

「やられるよ」

「クラッシュ覇道でシールドを攻撃!」

「来て来て来て来て………!」

「変なの来ないで………!」

 

火奈 シールド0

「シールドトリガー、《ド浮きの動悸(ドキドキ・スパイラル)》。1枚引いてクラッシュ覇道を、手札に」

「ガラワルドで、ダイレクトアタックだよ!!」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「「対戦、ありがとうございました!」」

 

2人がデュエマを終えると、一進一退の先の読めないデュエマに観客達が拍手をする。緑はまだ照れくさそうにしていたが、火奈はサービス良く、普段通りの笑顔で返していた。それに気づいた飛水が、火奈に言った。

 

「で、どうだ?だいぶ笑顔が見えてたが」

「なんか、だいぶ気分がスッキリした。また戻って来てもらうにはあたしの心が大事なんだから、あたしはそれまであたしらしくいるよ」

 

そう言ったあと、緑と飛水にだけ伝わる声でこう付け足す。

「クリーチャーと一緒に戦えなくても、あたしはあたしのできることをやる。2人の良い練習相手になって、カイザーが帰って来たら追い抜き返してあげるから」

「……おっけ、楽しみにしてるわ」

「ひな、完全復活だね!」

 

火奈は、今日一番の笑顔で緑の言葉に答えた。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

流狼は、あの時間によって一部倒壊したショッピングモールを、クリーチャー騒ぎがどうなったのかを見に来ていた。クリーチャー騒ぎは概ね収まりかけていたが、かぐらが派手にエルボロムで暴れたため、再度その話が人々の噂のタネとなっている。そのため第一の事件の発生地点でもあるここに、人が集まっている。

 

更に言うならば真名月の今考えていることも、それを加速どころか、それが世界の渦中になりかねないほどのものである。真名月は、この世界をこの上なく派手かつ確実で、公平な方法で手に入れようとしている。

 

フミビロムと、気ままにこの世界の文化を楽しむことができる期間は、そう残ってはいない。必ず彼と、決着をつけなければならないだろう。

 

「かぐらさんまでいなくなった。真名月様は、何を見ているのだろう」

 

不安は尽きない。真名月のこと、月の民のこと、自分自身の今後のこと、そして何より、青海飛水への答えのこと。スマートフォンを立ち上げ、流狼は思案する。

 

「さて、これは、どちらのものになるのかな」

 

スマートフォンの電源を消し、流狼はショッピングモールから立ち去る。フミビロムのカードを握りしめ、流狼は人混みの中へと消えていった。




飛水の!今日のカード紹介!
今日のカードは…《勝利龍装 クラッシュ覇道》!
軽減能力でターン終了時に破壊される代わりに8マナで呼び出せるWブレイカーだ。スピードアタッカーを持ってターン終了時にタップして破壊されると、なんと破格の追加ターンを獲得する。使い手の考え方次第で、幾らでも使い道が見つかりそうな凄い切り札だな。
次回、『ボクの世界、あなたの世界』
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