デュエル・マスターズOverLord(オーバーロード)   作:シグレサメ

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火奈を立ち直らせるため、飛水と緑の2人と一緒に特訓が始まる。その特訓で火奈は調子を取り戻し、ボルシャックとまた巡り合う為に備え始めた。その頃有明は、いつも通り哀しみの感情を集めていた。


ボクの世界、あなたの世界

 

「悪魔神ドルバロムで、ダイレクトアタック。……もう立ち向かってくるやつはいないのか」

 

真名月は、自身のアジトでマナを集めていた。彼の周りには、沢山の月の民達が、デュエマに敗れて散らばっている。

 

「………」

「真名月様は十分に強いです、もう休んでも……」

「そうか。しかしそれでは足りない。何故世界を乗っ取る際、一気に乗っ取るかお前は分かるか?」

「えっと……。反撃の隙を与えないためですか?」

「半分正解だが、問題は大切なものを失った者の怖さだ。大切なものを失った者は、次はそうはさせまいと、自分を磨き、高め、挑んでくる。ボルシャックが死ぬまでに復活できなかった俺の落ち度だ」

「そんな、真名月様は……」

 

そう言って慰めようとする民を、真名月はバロムに命じて軽く吹き飛ばさせる。

「逆に聞くが、俺がその慰めを聞いて喜ぶと思ってるのか」

「すいません、真名月様……」

「俺たちに時間はない。光屋御白と黒井夕哉を筆頭に、強くなっているはずだ。決着は、近いうちにつける」

 

真名月のその決意に、バロムが1枚のカードを生み出す。何よりバロムは、持ち主がここまでの本気を、失った者のために捧げていることに、どこか喜んでいるようであった。

「《悪夢神 バロム・ナイトメア》、良い名前だ。かぐらとレントの仇を取るのに、これ以上のものはないだろう」

「いつ出発されますか、真名月様!!」

 

「明日だ」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

緑が学校から帰っていると、そこに見覚えのある老人が現れる。彼が座っていたカフェでは1組のカップルが別れ話を切り出しており、誰も口を挟まない悲壮な空気が、場を支配していた。

 

「……有明、さん」

「……顔つきが、変わったな」

「……哀しみを集めてるの」

「うむ。ここにいればシンベロムが哀しみを集めてくれる。簡単な仕事じゃ」

「そんなことないよね」

 

緑はそう切り出した。

「……どういうことじゃ」

「哀しみのある場所に居続けるだけでも、辛いと思うんだ。あくまで、『ボクの常識では』だけど」

「……言うようになったな」

 

有明はデッキを構える。緑はそれに首を振り、有明の目の前の席に座った。

「ボクも聞いてる。せめて、同じ気持ちになるために」

「……そうか。お主の答えはそれか」

「うん。……ボク、一人ぼっちだったんだ」

「………続けると良い」

「本当のお父さんとお母さんは、もうどこにいるかわかんない。クリーチャー世界に飛ばされて、親代わりだったゴルファンタジスタとも、火事で引き離された。そして拾った人は、ボクを利用しようとする人だった」

 

有明は、同情するようにこう言った。

「お主から、哀しみを感じる」

「確かに哀しかった。辛かった。何をしてても、身体から何か大きなものがなくなっているみたいな感じだったよ」

「……そうか」

「でも、哀しみは、それで終わりじゃないと思うんだ」

 

緑は、自分のデッキを広げる。今からデュエマを通して命を狙ってくる相手に対して、余りにも不用心な行為であるが、緑はそれを公開していなかった。

「お父さんとお母さんがいなかったら、ボクはまず生まれてなかった。拾ったあの人がいなければ、ボクは何もできない子供のままだった。ゴルファンタジスタと別れていなければ、ボクはゴルファンタジスタや、仲間の大切さを知らなかった」

「極めて好意的な、若い考え方じゃな」

「それでもいい。ボクはそう思ったんだから」

「……どうしてそう思った」

「デュエマって、楽しいなと思ったんだ。皆と学校に行って、大好きなデュエマをして、公輝さんやゴルファンタジスタと毎日を過ごして。その当たり前の幸せって、どこから来たものなのか、ずっとずっと考えたんだ」

「……そうか」

 

「ぶつかり合うだけの心は決まったようだな」

 

有明は立ち上がり、再度デッキを構える。緑もそれに対して、デッキをケースに入れて構え直す。

 

「誰もいないところに行きましょう」

「……巻き込まれる人間がいるのは、お主の望むところではないか」

「ボクのせいで引き離される人間なんて、二度と見たくありません」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

緑と有明は、路地裏へと向かい、人気のない場所でクリーチャー達を呼び出す。デッキの準備をしながら、クリーチャー達が近くのものを倒し、擬似的な人払いを行う。

 

「多分これで大丈夫だ、緑」

「ありがと。有明さんは、シイノのこと知ってるの?」

「……知っている。黒井夕哉が探しているのだろう、彼に聞くように言われたか」

「うぅん、ボクの気持ちだよ。有明さんと話したいのも、ボクの気持ち」

「欲張りだな」

「そうだよね。ボクもそう思う。けど、欲張らなきゃ。ボク自身をひすいに救ってもらって。ゆうや達に繋がって。それがこうきさん立ち大人まで広がって。次はシイノを助けるんだ」

「………」

 

ゴルファンタジスタがここ数日のことを頭の中で振り返る。

『せめて、ゆうや達の漢字は書けるようになりたいんだ!覚えたいんだよ、ゴルファンタジスタ!』

『でもお前、国語は苦手だろ。数学とかはクリーチャー世界で基礎が身についてたし、こっちにきて1年で平仮名を書ける時点で十分だ。なんで漢字まで……』

『名前って、大事な気がしたんだよ。ひなとカイザーが別れて、そう思ったんだ。別れるつもりはないけれど、いつ離れ離れになってもいいように、できることは全部したい!』

『……お前なりの有明戦への覚悟なんだな。いいぞ、付き合ってやる』

『ありがとう、ゴルファンタジスタ!』

 

有明は緑の言葉を頭の中で噛み砕き、こう返す。

「お主の覚悟は決まったようだな」

「うん。皆を守るため、あなたを、真名月達を止めるんだよ」

「……自然文明の子どもらしい。レントが使う予定だったカードも入れ、こちらも弔い合戦といこう」

 

「「デュエマ、スタート(!)」」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

緑の先行で始まったデュエマ。緑は水自然のジャイアントに火を足すことにより、自分の戦法と妖那の戦法を合体させた新しいデッキを持ち込む。対して有明は、1ターン目から自然のマナをチャージし、先ほどの宣言通り火と自然の混合デッキを使ってくるのは、緑も察していた。

 

「1コスト、《哀樹 コシン》を召喚。登場時能力で山札を捲り、クリーチャー、《ロック・ポロン》であるので手札に加える、ターンエンド」

「ボクのターン!」

 

緑はカードを引き抜き、有明の召喚したクリーチャーに目を向ける。コシンというクリーチャーはまるで幼木のようにフラフラとしており、とてもシールドどころか、クリーチャーを攻撃するかもできない。しかし太陽の方に向けて少しずつ根を伸ばしていく。その姿に、緑はあれがもしシンベロムのパワーになったらと恐怖する。

 

「……2マナで、《キャディ・ビートル》を召喚、ターンエンド!」

「ワシのターン、2マナで《シェル・アルカザール》を召喚。キャディ・ビートルをマナに送る。ターンエンド」

(すぐに対応された……!?)

 

緑は冷や汗を垂らしながら、火のマナをチャージしつつ反撃する。

「ボクのターン!3マナで《アシステスト・シネラリア》を召喚!ジャイアントが居ないからドローはなし!更に1マナで《「燃え燃えズッキュン!」2コスト以下のアルカザールを破壊!」

「面白い。序盤から盤面の取り合いという格好というわけじゃな」

「ターンエンド!」

 

「ワシのターン、《ロック・ポロン》を召喚。更にロック・ポロン、コシンをタップし、ハイパーエナジー発動。ポロンの軽減と合わせて5軽減、《爆翠月 ドリアン》を召喚」

「またマナに送られる…!?」

「いや、送るのはワシのコシンじゃ。そしてロック・ポロンは味方の6以上のコストのクリーチャーが出た時、そいつを相手1枚とバトルさせることができる。

 

「ファー……。リソース伸ばしながらバトルゾーンの主導権を握ってくるかよ…」

「大丈夫だよゴルファンタジスタ、まだなんとかなる」

「ターンエンド。さてどうする」

 

「ボクのターン!5マナで《チアスカーレット アカネ》を召喚!チアスカーレットアカネでロック・ポロンを…!」

「無駄じゃ、ロック・ポロンは攻撃の対象にならない」

 

有明の言った通り、ロック・ポロンは彼を襲おうとするアカネをひらりとかわしてしまう。

「ぐぅ……!絶対に今倒した方がいいのに…!チアスカーレットアカネでドリアンを攻撃!その時革命チェンジ!《超重龍 ゴルファンタジスタ》!」

「ファー!!」

ゴルファンタジスタの登場時能力でマナから《龍后妖精 エリカッチュX》をバトルゾーンに!メクレイド効果は使わず、そのままドリアンを破壊!そしてターン終了時、エリカッチュの効果でマナを1枚墓地に送って、スノーフェアリー・メクレイド5!来て、《チアスペース アカネ》!」

 

墓地に落ちていったドリアンを見ながら、どこか楽しそうに有明は呟く。

「なるほど、バトルゾーンの展開を更に伸ばすように変形させた訳か。面白い」

「本当にわからない、こんなに勝負を楽しむ人が、正々堂々の勝負を好む人が、あんな汚い手段でボク達の世界を奪おうと……」

「……そんなにワシは良いものではない。ただ自分の仕事に、自分の流儀が当てはめられるなら勝手に使っているだけだ。真名月にお前を手段を問わず無力化しろと言われたら、ワシは必ずそうしているだろう」

「真名月が、絶対なの?」

「あぁ、長い年月を生きる月の民において、年齢の差など瑣末なもの。となると必要とされるのは、強さそのものだけになる。バロムを持つ彼は、自然そうなるという訳だ」

「……わかんないよ、間違ってたら、自分が違うと思ったらそう言っちゃいけないの?」

「……言ってはいけないというのも、あるんじゃよ」

 

有明の顔つきが変わる。

「ワシのターン。1マナでコシンの2体目を召喚。登場時効果で《哀しみの夜 シンベロム・カタルシス》を手札に。更に4マナ溜まっているため、G・ゼロ、《空奏力(エアエア)ナイン》を0コストで召喚」

「さっき拾ったシンベロムのコストは11、不味い、7コスト軽減される!」

「4コストでシンベロム・カタルシスを召喚!」

 

シンベロムが更に植物を伸ばし、まさに植物の形をしているだけの化物へと姿を変える。路地裏はシンベロムの蔦で支配され、まさに突如森が出現したかのような様相となる。シンベロムの影響を外に出さないため緑はゴルファンタジスタに命じて蔦を切らせるが、まるで間に合わない。

 

「ロック・ポロンの効果でシンベロムとゴルファンタジスタをバトル」

 

シンベロムがゴルファンタジスタに巨大な身体を叩きつけ、ゴルファンタジスタは路地裏の壁に埋まってしまう。なんとか逃げ出そうとするゴルファンタジスタを蔦が追撃し、ゴルファンタジスタは破壊されてしまう。

 

「ゴルファンタジスタ!!いいの、この力は凄い強い、抑えるクリーチャーがいないと……!」

「分かっているのか心配なのはそっちだ。ワシらは、侵略をしにきた者たちだということを、忘れたのか!ターンエンド、シンベロムの蔦で街が覆われる前に、決着をつけることができるか…?」

「でも、でも!気まぐれでも、ボクのことを生かしてくれた!若い頃を思い出すって言ってた!真名月に言われたこと、やってるだけでいいの!?」

「……ワシに、そんな選択肢は元からない」

 

「あるはずだよ!ボクがここにいるのが、この世界に帰って来れたのが、何よりの証明だから!ボクのターン!エリカッチュの2体目を召喚!チアスペースアカネでシールドを…!」

 

シールドがシンベロムに覆われ、攻撃が通らない。有明の方を見ると、ご明察とばかりに手を叩きながら、

「シンベロムがいる限り、タップしているクリーチャーを攻撃しなければならない。攻撃されないロックポロンはその限りではないがな」

「だったら!チアスペースでナインを攻撃!その時革命チェンジ!超重龍 ゴルファンタジスタ!マナゾーンから2体目のチアスペース!今出たチアスペースでコシンを攻撃!」

 

クリーチャー達の盾が解かれ、蔦の中にシールドが見え隠れする。

「今だよエリカッチュ!Wブレイク!!」

 

有明 シールド3

「シールドトリガー、シェル・アルカザール。マナに遅れる相手クリーチャーがいないため、効果を破棄する。自分も選べるが、今はやる意味が薄いからな」

「でも、クリーチャーが場に出た…!」

「話が早いな。メクレイドで何を探す?」

「……エリカッチュのメクレイドを2回発動!アシステスト・シネラリアと《同期の妖精(シンクロ・フェアリー)》をバトルゾーンに!」

「ゴルファンタジスタの終極宣言狙いか。変わらないことも大事だが…」

「変わってるよ。変えられる。ボクも、有明さんも」

 

緑のその言葉に、有明は圧倒される。彼の何倍も生きている有明は、緑の言葉を軽く一蹴しようとしたが、緑のその圧力に、見逃した際に彼が緑に見出した殺すのが惜しかったということを、今実感している。

「有明さんの本当がどうであろうと、ボクは助けてもらったことを信じる。もしそれに何か別の気持ちがあったとしても。助けてくれたことに変わりはないから」

「………」

「有明さんは、真名月のやってること全部正しいと思ってるの?」

「……それしか、月の民にはないのだ。それ以外に何か方法があるのか?」

「一緒の世界にいれないの?どっちかじゃなくて、どっちも」

 

緑のその言葉に、有明は反論する。そこまでは言われたことがある。そこまでは。

「だが、お主らは、この世界の人間は、我らを拒絶するじゃろう!拒絶の先に待っているのは結局どちらかが残るまで終わらない争い!」

「そうだとしたら、ボクは有明さんの側に着くよ。仲良くなれるまで、一緒にいれるまで。ボクが皆にしてもらったみたいに」

「………ワシのターン!!その言葉はとても重たく、後悔するもの!」

「だとしても!」

 

「アルカザールをタップし、8コストの《爆紅月 ボルカノドン》を6マナで召喚!ヨビニオンを発動し、7コストの《怒りの夜 アゲブロム・バイオレンス》をバトルゾーンに!」

主人を失い、怒りのままに暴れるクリーチャーが、シンベロムの隣で沸々と炎を燃やし始めた。

 

「やべぇぞ緑!大当たり引いてきやがった!」

「大丈夫、まだシールドトリガーがあるから」

「お主らは、デュエマ部は、同じ選択をするのか」

「……わからないけれど、きっとそうだと思う」

 

緑は知らないが、御白も最後は神楽のことを許したことは、その時近くで記録をしていた月の民から有明は聞いている。分かっていたつもりであったが、それを知らない筈の人間に、こうも言い切られてしまっている。

「お主らの絆を切ろうとしたのは、まず1番の失策だったんじゃろうな。アゲブロムでシールドを攻撃、ボルカノドンをアンタップし、スピードアタッカーを付与、更にブレイク数を増やす。更にシンベロムはプレイヤーをアタックしているクリーチャーのパワーをプラス6000し、パワードブレイカーを与える」

「来るぞ緑!」

 

緑 シールド2

アゲブロムの怒りの拳が緑のシールドを直撃する。確かに弔い合戦ではある。その怒りは間違いなくある。ただそれだけではない。そう緑は直感する。

「今からでも、まだ!」

「手段はとうに捨てた!若造に労られるような人生を歩んできたつもりはないわ!!シンベロムで、シールドをWブレイク!」

 

緑 シールド0

シンベロムの後ろのボルカノドンが、動きを止めている。

「シールドトリガー、《サイバー免許皆伝》。ボルカノドンの攻撃と防御を止める」

「……ターンエンド。しかし、お前はシンベロムの要塞を乗り越えることはできない!」

 

気づけばまた有明のシールドは蔦に覆われている。しかし緑はそれに恐怖を覚えることはもうなかった。

「ボクのターン!終極宣言発動、手札は増やさずに、マナを倍の6マナに。マナチャージして、シネラリアで軽減して2マナでシネラリア、更に1マナで3体目のシネラリアをバトルゾーンに」

「残り4マナ。それで何が起きる」

「まず1マナで同期の妖精。そして1マナで《大玉の妖精(ボールロール・フェアリー》を召喚。ボクのコストが違うエレメントが3つあるからバラバラエティ達成。皆マッハファイターになるよ。そして最後に2マナで、《完璧妖精マリニャンX》を召喚。これでボクのスノーフェアリーの数が5体を上回っている限り、有明さんはクリーチャーの登場時効果を使えない」

「お主のスノーフェアリーの数は…!9体!」

 

「このターン出た同期の妖精でシンベロムを攻撃、バトルに負けるけどメガ・ラスト・バーストで《ド浮きの動悸(ドキドキ・スパイラル)!》シンベロムを手札に!」

「シンベロムはマナを3枚戻すことによって場に留まる!」

 

有明 マナ3

「さっきのターン出た同期でシンベロムに攻撃、同じことをするよ」

「マナ3枚を使って堪える。そう簡単に、人は、常識は、変えられない!」

「そんなことない、エリカッチュでアゲブロムを攻撃!その時ゴルファンタジスタと革命チェンジ!効果でマナゾーンから《蒼神龍 トライクラブ・トライショット》!シンベロムを手札に戻して、ゴルファンタジスタでアゲブロムを破壊!」

「……もうマナは、ない」

 

火と樹木達が集まり、お互いに燃料をくべるが如く急激に燃え上がり、そして消える。有明のシールドを守っていた蔦が消えるのを見届けた緑は、ゴルファンタジスタに攻撃を命じる。

「ゴルファンタジスタで、シールドをTブレイク!」

「ファーーー!!」

 

有明 シールド0

「シールドトリガー、ドリアン」

「マリニャンの効果で登場時効果は使えない!エリカッチュで!ダイレクトアタック!!」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

決着がつくと、シンベロムの植物はシュルシュルとカードの中に戻っていく。有明の様子を見ながら、緑は夕哉が欲しがっていた情報を聞く。

 

「シイノはどこにいるの?」

「ワシらのアジトといっても、分からないだろうな。世界を渡る技術を持つワシらが、簡単に見つかる場所に本拠地を置くと思うか?だが、それを言っている時点で、わかるのではないか?」

「何処かで空間を歪めてるってこと?」

「痕跡をゼロにするのは不可能だ、だから何度も拠点を変えている」

「そんなに喋って大丈夫なの?」

「大丈夫だ。何より、もうお主と会うことはない。だから……」

 

そう言った有明は、シンベロムのカードを握らせ、緑を突き飛ばす。緑が顔を上げると、フラヴナグニルが有明の身体を貫いていた。

「真名月がそのことを知れば、こうなるからのぉ」

「……おかしい、おかしいよこんなの!!」

「感情を集めるという時点で、あやつはワシらが絆される可能性も見ていたのだろうな、だからこれで今までに集めたものを手に入れる手筈も整えていたか」

「有明さん!すぐ助けるから!」

「もう手遅れだ。こんなに哀しいことはない。ただ、お主がワシの言葉と向き合ってくれたこと、答えを出してくれたことに、感謝、する……」

 

有明は光の粒になって消えていった。集めていた哀しみを全て手に入れたフラヴナグニルが飛んでいき、緑はそこに座り込む。

「ゴルファンタジスタ。誰が、嬉しいの?こんな争い」

「……アイツの言っていたことはヒントになるはずだ。真名月には近づいていることに変わりねぇ。黒井達に言って、準備していくぞ」

「……うん」

 

緑は、もう泣かない。泣いても、今ある壁が勝手になくなるわけではないのだから。

 




緑の!今日のカード紹介!
今日のカードは…《哀しみの夜 シンベロム・カタルシス》
ハイパーエナジーで11コストで出ることができるクリーチャーで、シンベロムがいる限りクリーチャーを攻撃しなければならない。更にプレイヤーを攻撃する味方クリーチャーにパワープラス6000とパワードブレイカーを与えられるんだ。攻めと守りを両立した、有明さんの切り札なんだ。
次回、『その境を超えた時・前』
シンベロムのカード、大切にするよ。
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