デュエル・マスターズOverLord(オーバーロード)   作:シグレサメ

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シイノの肩の荷が降り、ついに真名月のアジトも発見される。火奈を除いた五人は絶対に真名月を倒すことを誓い、ついに突入する日がやってくるのであった…。


真名月包囲戦・前

「ここが、月の民のアジト…!」

「通学路での裏道にあったなんて。気づかなかったのが少し恥ずかしいです」

「仕方ないよ、2人とも。よし行くよ、ゴルファンタジスタ!」

「ファー!!!」

 

夕哉達の会議から3日後。夕哉、御白、飛水が並び、通学路の近くにあった取り壊し予定の廃墟を見ている。

 

「記憶を消された際に、この建物も作ってたんだ。道理で今まで怪しまれなかったわけだ」

「うん、記憶を消すのは攻めでもあり、月の民達を隠す守りでもあったんだね」

 

飛水と夕哉がそう話している横で、有明から聞いた方法で緑とゴルファンタジスタが扉を開く呪文を唱えながら、自然のマナを注ぎ込む。そうしていると少しずつ廃墟の風景が歪んでいき、本当の姿を表し始める。

「ここ。わたしが連れて行かれた場所」

 

シイノがそう言い、緑が夕哉達に合図を出す。中から現れたのは、3階建ての綺麗な西洋風の屋敷であった。

「皆、行ってくる!」

「気をつけて、ゆうや!」

 

そう言って緑はゴルファンタジスタと協力し、中から出る人々を逃さないように蔓を張っていく。シンベロムから学んだ技術であった。それを見ながら夕哉、御白、飛水の3人は、アジトの中へと向かっていくのだった。

 

「公輝、さん」

 

シイノが現場に来ていた公輝に切り出す。

「真名月は残忍。追い詰められたら、多分手段は選ばないと思う。その時は……」

「シイノさんが想像しているようなことはほぼ起きない、起こさないようにする。と言っても黒井くん達のことを信じるしかないわけだけど」

「………」

「司法で裁けるなら、それが一番だと思うよ。本来子供が請け負うようなことじゃない」

 

公輝はそう言いながら、祈るようにアジトの方に手を合わせた。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「《シックル=シーク》でシールドを破壊!」

 

月の民 シールド0

「シールドトリガー!《粛清者 ゴットハルト》!《邪魂の王道 ジャシン帝》、《霊淵 アガルーム=プルーフをタップ!」

「それならそのまま押し通れる!《邪魂龍 ジャビビルブラッド》で、ダイレクトアタック!!」

 

軽い爆発と共に、ジャビビルが月の民の1人を壁に吹っ飛ばす。しかしそのまま矢継ぎ早に別の月の民が現れ、夕哉はまたもクリーチャーに阻まれる。

 

「ぐっ…!やるしかないか!」

「夕哉くん、大丈夫ですか!?《楯教の求道者 ザゼ・ゼーン》でダイレクトアタック!!」

「まだだ!こいつらを絶対真名月様のところに通すな!!」

 

夕哉と御白は、10〜20人単位の月の民に、1秒でも長く前に行かせまいと連戦を強いられていた。一人一人はかぐら達四天王に遠く及ばないが、こう固まられてはまともに前に進むこともできない。

 

「《霊淵 アガルーム・プルーフ》をシックルでハイパー化!墓地を合計4枚増やす!御白、出来る限りシールドを割られないように動いて、体力を温存しなきゃ!」

「そうですね、長時間のデュエマならいくらて付き合えますが、クリーチャーを実際に使ったものは流石に別です、ブロッカー多めで立ち回りましょう!」

「俺たちはともかく、飛水は大丈夫かな…?」

「分かりません、でも前に進んでくれてると願うしかありません!」

「……そうだね。行くよ、3マナでジャシン帝!」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

夕哉と御白が苦戦している間に、飛水はアジトの奥に転がり込んでいた。理屈は単純で、アジトに入ってすぐに月の民に囲まれた際に夕哉と御白がすぐにジャシンとゴルドランを呼び出し、大きな騒ぎにした。それによってできた混乱に乗じて、飛水はアジトの奥へと侵入した。警戒されていると見た夕哉と御白が、飛水を早めに潜入させたのだ。

「……もう誰もいないよな。……守るべき仲間が前線に出ている間、真名月は何をしてるんだ?」

 

そう言って飛水は階段を上がる。2階に入ると居住エリアでありそうだった。人々の少ない私物や食料が少し離れたところに幾つかのグループになって置かれている。

 

「居住スペース狭いな…。余程バロムと真名月の立場が強かったらしい」

 

そう言いながら飛水は3階に上がろうとする。そこで聞き覚えのある声、流狼が飛水を呼び止めた。

 

「……トビウオくん!……いや、飛水くん」

「……なんで来たんすか、流狼さん」

「ここが俺の家だからね。家は守らないといけない」

 

飛水は無言でデッキを取り出す。それを見て流狼は違うと、手を横に振った。

「俺たちの家はここだった。でも真名月には違ったみたいだ」

「どういうことっすか」

「真名月のやろうとしていることは、バロムの魔誕だ」

「魔誕?それって前に言ってた…」

「あぁ、ジャシンの肉体から取り出した5つのパーツ、眼、脳、爪、尾、心臓の5つ。これを集めて闇のマナを更に溜め込むことで、バロムが更なる力を手に入れられると突き止めたらしい」

「なんでそれを俺に…?」

「その魔誕の先にあるものは、バロムを使った世界の境界線の破壊だ。そうすれば真名月は好きなタイミングで好きな世界に行き、好きなだけ資源を得ることができる」

「……話が見えないっす。それを言う理由が…」

「その為に必要な最後のパーツは、大量の人命だ。でもそれをやったら目立ちすぎる。月の民はもっと人がいたんだ。ここに来るまでに、人が嫌に少なかっただろう?」

 

飛水は冷静さを失い、思わず声を荒げる。

「な……!?月の民は世界を乗っ取って、そこで住むためにバロムの力を使ってるんだろ!?そんなの、目的と手段が逆転してるじゃねぇか!?」

「あぁ、逆転している。真名月はもう正気じゃないよ」

「じゃあ、夕哉や御白達と下で戦ってる連中は!」

「あぁ、残った数少ない民達だ。真名月に消されない為に、自分は役に立つと証明する為に、皆死に物狂いで止めてるよ」

「……なんなんだよ、本当に……!」

「君たちを倒す為にバロムの力を更に引き出そうとしてから、少しずつおかしくなっていっているんだ、だから…」

 

そこまで言った時、流狼の更に後ろから足音が聞こえてくる。カツン、カツンと靴音を鳴らしながら歩み寄るその姿は、まるで死神のようであり、飛水は少しずつ下がらざるを得ない。

 

「青海飛水。黒井夕哉がここまで送り込めたというわけか。まぁ、戦うまでもないな」

「……流石にねぇだろ、月の民のリーダーとして…!」

(暴走やクリーチャーに乗っ取られてるとかじゃねぇ、ちゃんと正気でこれをやってる!どういうことだ…!?)

「流狼。俺達はもうかぐらも、有明も、レントも失った。その意味がわかるか?」

「……生半可な力では、彼らには勝てない。ですか、真名月様」

「あぁ、クリーチャーや人間同士の絆だかなんだか知らないが、俺はそれにずっと阻まれてきた。本来ひとまとめにならないものをひとまとめにする力。そんなのがあったら、俺達の世界はもっと楽に暮らせてたかもな」

 

ジリジリと真名月が距離を詰めてくる。

「俺はもう、ぽっかり穴が空いているんだ。ふとした時、穴に風が吹き込んで、寒風に凍えてる。これ以上、失うわけにはいかない。このままじゃ黒井夕哉達に全員追い出されて負けだ。これ以上失えない、わかるな?」

「分かりませんよ、残ったものに対して、残った月の民に対して!あんな仕打ちをして!」

「自分から失った方が、まだ諦めがつきそうだからな。これ以上失う前に、俺が全部片付ける。その為のバロムの力だ」

「そんなの詭弁だろ!最初に奪おうとしてきたのはお前らなのには変わりないだろ……!?」

「お前らが直接手を下さなくても、俺達の仲間が失われた事実は変わらない」

 

そう言って飛水への距離を詰める真名月の間に、流狼が割って入る。

「真名月様。何か、おかしいです。民は恐怖しきり、自分が生き残る為に鉄砲玉のようになって真名月様に消されないようにしています」

「俺は変わらない。バロムの力を使って、残った民を救う。黒井夕哉を、ジャシン達を倒すこの力を持って」

「……飛水、逃げてくれ。真名月は、俺が倒すしかない」

「そんな、俺だって戦って…!」

「いいから!俺は、今残っている月の民だけでも守る!」

 

そう言って流狼はフミビロムを呼び出し、真名月の前に立ち塞がらせる。フミビロムが大きく鎌を一回転させて風圧を起こす。それを見た飛水は、走って下の階に降りていき、風圧が収まる頃には、飛水は下の階へと辿り着いていた。

 

「デュエマ、スタート」

「……始めるか」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

真名月の先行で始まったデュエマは、真名月は闇自然のマナ加速によるバロムの召喚を、流狼は強力な水のクリーチャー達を使ったハイパーエナジーの発動を目指し、流狼の3ターン目が訪れる。

 

真名月 シールド5 マナ5 墓地2

《死神信徒 バーロウ・ビリーバー》

流狼 シールド5 マナ2

《バブル・ボール》、《ツイン・シックス》

 

「俺のターン!バブル、シックスをタップして4マナ軽減!シックスの6コスト以上を軽減する効果で合計5マナ軽減!《爆藍月 スケルハンター》!」

 

水がそのまま機械として体を宿したようなクリーチャーが、真名月に立ち塞がる。それを見て真名月は一瞬ぴくりと眉をしかめた。

「スケルハンターの出た時能力、バブル・ボールのタップ時能力、ツイン・シックスの6コスト以上を使った時の能力で、合計4枚ドロー、ターンエンド」

(真名月様のデッキはある程度見てきた。基本は進化クリーチャーを使った攻撃。バロムを出されても巻き返せるように手札を整えながら、出たターン攻撃できなくするスケルハンターを出すのはかなり堪えるはずだ)

 

2人の間に、緊張が走る。

「俺のターン、《魔令嬢バロメアレディ》を5マナで召喚」

バロメアレディと名のつく妖艶な女性のクリーチャーが現れる。しかし流狼を一番支配した考えは、このクリーチャーを自由にさせると不味いという一種の第六感であった。

 

「出た時《フェアリー・Re:ライフ》と《悪魔神 ドルバロム》を、墓地からマナゾーンへ。本来マッハファイターでバロメアレディは攻撃することができるが、それもできない。ターンエンドだ」

「俺のターン、3マナで《パシフィック・ヒーロー》を召喚!ジャストダイバーで選ばれず攻撃されなくして、場にいるクリーチャーを全てタップ!1マナで《楽しみの夜 フミビロム・パラダイス》を召喚!」

「……流狼も、強くなったようだな」

 

以前よりも大量の本を抱えて、知識の王と言っても過言ではない状態になっているフミビロム。そのままの勢いで流狼は攻勢を続ける。

「パシフィック・ヒーローのバラバラエティ3で、このターン出たフミビロムを選ばれず、攻撃されなくする。更にバブル、ツインの効果で2ドロー。フミビロム自身の登場時効果で3枚ドローし2枚捨てる、捨てるのはパシフィック・ヒーローと、《♪ハイパーで ハイクがますます ハイクラス》を捨てる」

 

そうすると捨てたカードを持ってフミビロムが泡状のエネルギーを作り、真名月のクリーチャーに投げつける。

「フミビロムがいる限り、手札を捨てたらそれと同じコストのクリーチャーを、手札に戻すことになる。今捨てたのは3と5コスト。バーロウ・ビリーバーとバロメアレディは手札行きだ。ターンエンド」

 

真名月は感心したようにこう返す。

「成程。確かに俺のマナは次で8。場にいるクリーチャーに進化されて全滅する可能性を考えて進化元になり得るカードを手札に戻したというわけか」

「真名月様、いい加減目を覚ましてください!」

「それは無理だ。もうお前はあの世界に馴染んでしまった。お前はもう、この世界を支配したい、自分のものにしたいと思わないんだろう?」

「……自分のものにしなくても、良いと思いました。これ以上の犠牲なんて!」

「……それでは月の民の長は務まらなかった。それだけだ。俺のターン」

 

真名月がカードを引き抜く。一瞬キラリと薄暗く見えた光を見て、流狼は2度目の嫌な予感がよぎるのであった。

 

「3マナでバーロウビリーバー。マナゾーン、墓地、山札下に3枚のカードを振り分ける。更に5マナでバロメアレディを召喚。これによりマナを墓地から増やす。ターンエンドだ」

「俺のターン!」

(流石に10マナまでマナを伸ばせば、デッキの核、特に中心にしてるシールドトリガーが見えてくる。多色(レインボー)のカードなら尚更だ。マナゾーンのカード、《魔城の死神エルガイザ/「ようこそ、我が魔城へ」》、呪文側は相手クリーチャーをタップしてシールドを増やす1ターンを稼ぎ出すシールドトリガー。このままマナを伸ばし続ければスケルハンターで攻撃を止めていてもいずれ進化元と進化先を一度に揃えられる。今決め切るしかない!)

 

思案する流狼を見ながら、真名月は愛おしそうに語る。

「そうだ、お前のそれが、全てを分析し本質に辿り着くその力。何故最後に残ったお前すらも、俺から離れていく」

「真名月様は…。真名月様は!そんなことを言わなかった!ドロー!」

 

流狼がカードを勢いよく引き抜き、タップしていたクリーチャー達が一気にアンタップする。

「1マナで《水面護り ハコフ》、4マナで《奇天烈 シャッフ》を召喚!パシフィック・ヒーローで選ばれず攻撃されなくして、シャッフは登場時に数字を宣言し、そのコストのクリーチャーの攻撃と呪文を止める!俺が宣言するのは7だ!」

「ほう。流石だ」

 

シャッフがカードを展開し、シールドに7という数字のカードを貼り付ける。そうするとシールドがビリビリと電流が走り始め、その数字のコストの呪文を止める。

「フミビロム・パラダイスでシールドを攻撃!その時に登場時と同じくカードを3枚引いて2枚捨て、♪ハイパーで ハイクがますます ハイクラスと、《響乱の不死帝(スリル・オア・ライブ)ブルース》を捨てる、それと同コストのバロメアレディ、バーロウビリーバーを手札に戻す!」

「バロムの弱点も見抜かれているか」

「真名月様のデュエマは誰よりも見てきている!だからこそ、摘める芽は全て摘む!Tブレイク!」

フミビロムが巨大になった魔導書を思いっきりシールドにぶち当て、真名月のシールドを破壊する。

 

真名月 シールド2

「シールドトリガー、『ようこそ、我が魔城へ』。だがこのカードは」

「シャッフで詠唱を禁止されている!スケルハンターで残りのシールドをブレイク!」

 

真名月 シールド0

「シールドトリガー無しだ」

「まだ打点は足りている!真名月様、ここで止める!パシフィック・ヒーローでダイレクトアタック!」

 

そう言ってパシフィック・ヒーローが真名月に槍を突き立てようとした……その瞬間だった。

「……お前は結局、あの青海飛水という人間に絆されただけだろう。そこに月の民としての誇りも、理由も、何も」

「真名月、様……!?違う、俺は残った月の民だけでも守る為に!」

「あぁ、残れば俺も大切にする。それで何も良いだろう」

「そんなことを言い続けたら、いずれ邪魔になった時にまた切り捨てる!そんな人間を俺は他の世界で見てきた!パシフィック・ヒーロー!早く真名月様にトドメを!!」

 

パシフィック・ヒーローが再度槍を突き立てようとした時、パシフィック・ヒーローの身体は突然バラバラとなり、チリとなって消えた。

「……な……んで……!?」

 

「《悪夢神 バロム・ナイトメア》。ワルドバロム魔誕の為の器だ」

 

空を見上げると、自分の知っているようでまるで違う、自分たちが信仰すべき悪魔神の姿が、冷たく流狼を見つめているのであった。

 




飛水の、今日のカード紹介!
今日のカードは…《楽しみの夜 フミビロム・パラダイス》
出た時と攻撃時に3ドロー2枚捨てを行い、手札を捨てるたびにそれと同じコストのクリーチャーを手札に戻すクリーチャー。とにかく時間を稼ぐのに向いていて、自分はジャストダイバーのTブレイカー。稼いだ時間で一気にトドメを刺しにいけるクリーチャーだな。
次回、『真名月包囲戦・後』
この嫌な胸騒ぎ、何も起きねぇといいけど……。
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