デュエル・マスターズOverLord(オーバーロード)   作:シグレサメ

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流狼を殺し、アジトごと吹っ飛ばして魔誕を完成させようとする真名月。ジャシンは飛水を庇い回復を待つ中、御白が代わりに戦いを始めることになるが、真名月は既にワルドバロムのカードを手中に収め、あとはもう召喚のためのマナを揃えるだけであった。


金の天使と虹の悪魔

 

突如現れた光が五芒星を作り上げ、月の民のアジトの跡を中心として光がどんどん強まっていく。

 

「緑、飛水をお願い!」

「分かったけど、夕哉はどうするの!?」

「まだ中に普通の人がいる、じっとしていられない、戻って……」

「駄目、地面から出てる光にマナが混じり始めてる。しばらくしたら普通の人間じゃなくても出入りできなくなる」

 

シイノはそう言っても、夕哉がそのまま黙る性格でないことは分かっていた。それでも注意せざるを得なかったのだった。

「それに御白は強いけど、どっちかというと努力型だから、ぶっつけ本番に弱いし……。いやでも、信頼してないってわけじゃなくて……」

「分かってる、夕哉。心配なのは同じ。方法はある。空から光の柱の中にいる人たちを助けよう」

 

夕哉にはそれをできる手段がない。シイノのレディオ・ローゼスは確か浮遊することができたが、人を乗せられるほど大きな翼を持つクリーチャーは夕哉の元にはまだ帰ってきていない。

 

「夕哉よ、あの光に手を突っ込め。余はまた戦えないが、闇のマナだけを抽出し、余が深淵で眠るヤツを引き摺り出す」

「ジャシン?」

「力が奪われた時、「ヤツ」は闇のマナのバックアップとして深淵で休んでいた。今この量のマナがあるなら、それを無理やり起こすことも造作もないだろう。何より、魔誕に大量のマナが必要なのは今の状況から自明。少しでもマナを奪い取るぞ」

「待って、生身の人間にマナを触らせるのは、危険」

「あぁ、だから光の柱の奥に入れないわけだからな。だが、黒井夕哉がその条件を聞いて止めるような人間だと思うか?」

「シイノ、助けられる人を先に助けて!ジャシンが負担をある程度肩代わりしてくれるなら、俺は大丈夫なはず!」

「ーーー!!分かった、行ってくる」

 

シイノはそう言ってレディオ・ローゼスを呼び出し、10mはある光の柱を飛び越えていった。

 

それを見送った夕哉はデッキケースからジャシンのカードを取り出す。そして一度深呼吸をした後、両手を光の柱に突っ込んだ。

「さぁやるよジャシン!帰ってきて、ジャガイスト!!」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

光の柱の中で、御白と真名月が戦っている。先行の御白は3ターン目までにクリーチャーをテンポよく並べ、真名月はいつも通りマナ加速で次に備える。しかし真名月のマナゾーンには、前とは違い光、水、火も含めた5色が、大量にチャージされ始めていた。

 

御白 シールド6 マナ3

《Re:奪取(リスタートダッシュ) アクロアイト》、《ゴールド・フラウム》、《星姫機 シリエス》

真名月 シールド5 マナ3

 

「俺のターン。《邪心臓の魔法陣》を設置する。このタマシード、魔法陣が5つ揃った時、魔誕は完成する」

真名月がそう言った瞬間、御白の背後、五芒星の一辺が一際強く光り輝く。

 

「これを完成させてはいけない、そういうことですね…!」

「邪心臓の魔法陣の登場時効果が残っている。手札から《邪尾の魔法陣》を捨てて3枚ドロー、更に《フェアリー・Re:ライフ》を捨てる。ターンエンド」

 

「私のターン、《シェケダン・ドメチアーレ》をアクロアイトで軽減して4マナで召喚!出た時に場にいる光のカードの数(4枚)だけドローします!更にシリエスの効果で、メカが出た時に更に1枚ドロー!ターンエンドです!」

 

「俺のターン。来い、《邪脳の魔法陣》。使った時山札上3枚を墓地に送り、墓地からコスト4以下のクリーチャーでないカードを使用する。それで出すのは《邪尾の魔法陣》。出た時カードを1枚引き、手札またはマナからコスト3以下のコマンドを使用する。来い、《邪眼の魔法陣》。効果で山札の上を捲り、それをマナゾーンに置く、ターンエンド」

 

光の柱が一気に三辺、輝きが強くなっていく。

 

(一瞬でマナが6マナ、バトルゾーンの魔法陣は4枚!ですが、相手がバロムならこちらも対策はあります!)

「私のターン!まずは《星姫機 マリハダル》を2マナで召喚!呪文、《神楯と天門と正義の決断(パーフェクト・ライト)》!これは場にいるクリーチャーの数(4枚)だけ軽減される7コストの呪文!よってこのカードは2マナで唱えます!来てください!《楯教の求道者 ザゼ・ゼーン》、《超天使(ハイパーエンジェル) ゴルドラン・ゴルギーニ》!!》

 

1体の天使と機械の鎧が五芒星の中を大きく揺らす。そしてゴルドランは真名月の方を指差し、こう言い放つ。

「上に立つものでありながら支えるもの達を否定していくその身勝手さ!世界を鑑みず自分のためだけに力を振り回すその横暴さ!私が必ず止めて見せる!」

 

「……成程、場から離れなくなる効果を持つクリーチャーであるゴルドラン、ザゼ・ゼーンは、バロムの天敵といえるな。俺には中々思いつかない利用法だ。どこで覚えた?」

真名月はゴルドランの言うことも意に介さず、御白に問いを投げかける。

「利用法って…!そんな言い方、一緒に戦ってくれているクリーチャー達に何とも思わないんですか!?」

「どこまで行ってもバロムは利用するべき神でしか無い、彼の意思など見たことがないからな。どのように信仰させ、どのように使うか。それが無ければどんなクリーチャーもただの宝の持ち腐れだ」

「それがあなたの本性ですか…!そんな風に!かぐらさんを切り捨てたんですか!!」

「そうだ、あいつは自分の意思に目覚めそうになった。そうなれば感情の収集が滞る。レントが死んだ時から考えてはいたが、魔誕というプランに切り替えようと本当に決めたのは、光屋御白、お前がかぐらを殺してくれた時だ」

「どこまで……自分勝手なんですか!!」

 

御白は怒りに身を任せながらも、冷静にシリエスをタップする。

「シリエスでシールドを攻撃!その時、ゴルドランさんの効果でシールドを追加し、シールドが増えた時のザゼ・ゼーンの能力を発動!このクリーチャーをアンタップし、次のターンまで離れなくします!」

 

真名月 シールド4

「シールドトリガー、《魔誕の前兆(ワルド・サイン)》。効果でコストの合計が7になるようにデーモン・コマンドを出すことができる。出すカードは《魔誕幻獣 ボンメェ》と、《邪爪の魔法陣》をバトルゾーンに。ボンメェは効果で1マナ加速、邪爪の魔法陣は効果でゴールド・フラウムを山札下に送り、1マナ加速させる」

(除去とはいえ、私のマナを伸ばしてきた?)

「さぁどうする?光屋御白」

「ターンエンド。下手に自分の戦い方は曲げません」

「そうか、俺のターンだな」

 

真名月はそう言ってカードを引き抜く。もう五芒星はマナによって光り輝いており、どう考えても異常な事態となっている。人々は五芒星の外で野次馬になっており、そのざわめきを真名月は歓声として受け取った。

「光屋御白。ここにいる人間達の生命力、全て合わせたらどれくらいだろうな?マナチャージ、《悪魔世界 ワルドバロム》」

「何をするつもりですか……!?」

(5色のカードなのに、マナが発生している…!?)

「まずは5マナ、《魔令嬢バロメアレディ》、マナを2枚増やす。そして残った4マナで、呪文《秩序の意思》。ゴルドランは封印だ」

 

「ぐうっ!御白さん!」

「はい、絶対に解放します!」

ゴルドランの下に五芒星型の封印が現れ、そこから現れた暗い光でゴルドランは沈黙する。

「バロメアレディでドメチアーレに攻撃。その時、マナ枚数以下、8コスト以下の《悪魔世界 ワルドバロム》を、5つの魔法陣の上に進化させる!」

 

5つの魔法陣が五芒星のへと向かい、その頂点で止まり、真ん中、真名月の丁度上空に向けて力を放つ。

 

「行け、バロムナイトメア!」

 

バロムナイトメアがカードから現れ5つの魔法陣からの力を受け取ると、少しずつ体が変わっていく。バロムではあるのだろう。特徴的な角、特徴的な坐禅を組むような出立ち。しかし彼の後ろに浮くまるでクリーチャーが無理やり剥製にされたような、そんな恐怖を煽る5つの、5色の大口。羽を伸ばして全身を顕現させたワルドバロムは、今にも相対するものを全て飲み込む勢いであった。

 

「ワルドバロム第一の厄災」

 

御白の手札にワルドバロムから強烈な雷撃が飛び、御白の手札が全て墓地へと飛んでいく。

「きゃぁあ!?」

「バロメアレディでドメチアーレに攻撃」

(ザゼ・ゼーンでブロックしたら、次のターン攻撃できなくなる!)

「そのまま攻撃を通します!」

 

「ワルドバロムでシリエスを攻撃、攻撃時、ワルドバロム第二の厄災がお前を襲う」

 

ワルドバロムが手を開いたかと思えば、大量の光のマナが御白のクリーチャーたちを襲い始めた。

「なんで、光のマナが!?」

「人間が酸素を取り過ぎれば死ぬように、クリーチャーはマナを過剰摂取すれば死に至る。相手と同じ文明のマナを充填させて放てば、そのクリーチャー達を消すことなど造作もない」

「ぐうっ!シリエスはマリハダルを犠牲に生き残ります!」

「だがワルドバロム本体の攻撃は避けられない」

 

ワルドバロムの光に耐えきれず、マリハダルとアクロアイトが消し飛ぶ。シリエスもどうにか逃げ回っていたが、ワルドバロムはすぐさま光マナによる光弾を作り出し、シリエスに投げつけて吹っ飛ばした。

 

「ターンエンド」

「私のターン!ドロー!」

 

御白の引いたカードは、《金天使 クローネ・ゴルギーニ》。

「クリーチャーを1体タップするカードでコマンド!これならワルドバロムに対抗できます!」

 

そう言って御白がマナゾーンに手を置こうとした時、カード達から色が消え始めた。1枚、また1枚と、真っ白く、ただのカードへと形を変えていく。

「な、なんで……ですか……!?」

 

「ワルドバロム第三の厄災。このワルドバロムが出た次のターン、お前のマナは全て、マナを生み出すことができなくなる。マナを過剰供給させることができるなら、その逆もできて不思議じゃないだろう?」

「そんな……!!」

「どんな凄腕なデュエリストであっても、マナが無ければ何もできない。これが魔誕の力か。何よりドルバロムが効かないジャシンにも使える。今から黒井夕哉を潰すのが楽しみになるな」

「……まだ!終わってません!マナチャージして、ザゼ・ゼーンでシールドをWブレイク!」

 

真名月 シールド2

「悪あがきだな」

「いいえ、負ける気はありません!」

 

その時夕哉がようやく御白の元に到着する。

「御白!!」

「……夕哉くん!!」

 

夕哉がドラゴンにまたがり、五芒星の中心にやってきた。勿論そのドラゴンの名前は《邪幽 ジャガイスト》。眠りから目が覚め、復活したのだった。

「御白、大丈夫!?」

「少しピンチですが…大丈夫です!!」

「シイノには先に皆を避難させてもらってる、もうここにいるのは俺と御白だけだよ!」

「それなら良かったです、あとは勝つだけですから!」

 

御白は震えた声でそう言う。強がっていることを見抜いた夕哉が御白に近寄ろうとした時、地面からデーモン・コマンド達が現れ、夕哉の行手を阻む。

「黒井、夕哉……。待っていろ、光屋御白を殺した後、ちゃんと俺の手で殺す。それが、俺のけじめ、俺の、今ここにいる意味……!!」

「真名月!!」

「お前が俺から奪わなければ、ワルドバロムを呼び出さずに済んだんだ、分かってるか?今の事象は、全部お前のせいなんだよ……!!」

「夕哉くん、逆恨みです、耳を貸しちゃいけません!」

「う、うん、分かってる!!」

「あー……いや、お前にはこっちの方が効きそうだな、黒井夕哉」

 

 

「お前が希望を見出させたせいで、光屋御白が死ぬんだ」

 

 

御白と夕哉がその言葉を認識した時、真名月はワルドバロムの上にもう1枚のワルドバロムを進化させていた。

「3つの災厄が、再度お前を襲う」

直後、皇龍市全体が揺れた。強力なマナの奔流が地面を伝い、地下からデーモン・コマンド達を復活させ始めた。そしてその中心にいた夕哉と御白は吹っ飛び、夕哉は意識を失った。

 

御白 シールド0

 

「トドメを刺す前に死んだか」

 

煙の中で1枚だけ光るカードが、真名月を一瞬だけ怯ませる。

「まだ、です…!シールドトリガー…!!《ウィリデ・ゴル・ゲルス》…!相手のクリーチャーが3体いるのでシールドトリガーになります…!ゴルドランさんの封印を解除!2体のブロッカーで……!」

「革命0トリガー、《ミラクル・ミラダンテ》があるな?」

「……え…!?」

「光の呪文のみのカードを神楯と天門と正義の決断以外見ていない。それ以外のカードは全て光のクリーチャーだ。ハイパーエナジーを使うことも考えると、コマンドの多い俺のデッキの対策として持ってきていることぐらい、予想がつく」

「………バレましたか」

「お前達の諦めないギラついたその目、本当に大嫌いだ。だから黒井夕哉が目覚めた時、2度と立ち上がれないようにその心の支えを折っておくとしよう」

 

「バロメアレディでプレイヤーを攻撃、その時マナ枚数以下のバロム、《悪魔神 バロム・ロッソ》をバトルゾーンに。効果で闇以外のクリーチャーを破壊し、各プレイヤーは手札から闇以外のカードを全て捨てる」

 

ゴルドランは必死に堪えようとするが、バロム・ロッソがそのままゴルドランに掴み掛かり、バキバキと身体をへし折り、闇の中に体が消えていく。そしてその音で、夕哉は目を覚ましてしまった。

「御白……さ……!!」

「ゴルドランさん!!」

 

そしてゴルドランは、一片たりとも残らずに闇の中に消えていった。

「嘘……ゴルドランが……!!御白、御白!!」

御白には、もう言葉が届いていない。

 

 

御白 シールド0 クリーチャー0 マナ0

 

 

「……………」

 

(何も……考えられない……、何か……打開の……打開の………)

 

「バロム・ロッソで、トドメだ」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

薄れる意識の中で、俺は不思議な夢を見た。

 

ジャシンが、俺たちを運んでいる。ボロボロで動けない俺たちを、ジャシンが抱えて走っている。

 

夢みたいな光景だ。実際、夢なんだろうけど。

 

でも、確かに感じたことがあった。夢なのにリアルな感触で。

 

ジャシンの心臓のあたりが、ほんのりと暖かかったんだ。前に深淵に行ったりしたり、一緒に戦った時に何度もジャシンの近くにはいたけど、ジャシンのカードから、ジャシンの身体から、温かみを感じるなんて初めてだった。

 

その暖かさがジャシンらしくなくて少し気持ち悪いやら、ちょっと安心するやらで、俺はまた少しずつ微睡んでいってしまった。




次回、「最悪を逆転せよ・前」
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