デュエル・マスターズOverLord(オーバーロード)   作:シグレサメ

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夕哉と御白を助けることに成功した緑とシイノに、流狼から情報を手に入れた飛水。回復し、灰理達に思いを託された夕哉と御白は、一度避難所で英気を養うのだった。


夜は共にあり

 

魔誕の中心から10km程先に、皇龍市の人々が避難している場所があった。市民体育館を利用して、もうすでに自衛隊や警察などが集まっており、炊き出しが行われていた。

 

「夕哉!」

「母さん」

 

夕哉の母小夜が、夕哉達の迎えにやってきた。

 

「大丈夫なの夕哉、怪我したって……」

「大丈夫ではなかったけど、ジャシン達が助けてくれた」

「そう……!ジャシンさんが……!」

「ジャシンさんとはなんだジャシンさんとは!」

「それより、お腹空いたでしょう?まずは食べましょう」

 

「夕哉、光屋。話を聞いてはいたが、顔見ると安心するな……」

4人が炊き出しの場所に向かうと飛水もおり、何か大きな荷物を背負っていた。

 

「飛水、今どんな感じなの?公輝さん達は?」

「クリーチャーのことをどう誤魔化すかって感じだ。つっても、クリーチャーはもうカメラで沢山撮られて拡散されてる。どうするのか……」

「全部合成ですって言っちゃうとかですかね?」

「無茶だろ色んな意味で」

「じゃあ、どうするの……?」

「それは、俺もわかんねぇけど……」

「皆、話が始まるみたい」

 

『こんばんは。豪龍警察署の警部、正路公輝です。今日は今回の皇龍市にモンスターが現れたという事件について、お話しさせていただこうと思います』

「始まった」「何話すんだろう」「私たちいつ帰れるの?」

 

『まず、あのモンスター達については、デュエル・マスターズというゲームのクリーチャーが、理由あって実体化したものとされています』

「デュエル・マスターズ?」「子供がやってるやつよね」

 

突然言い出した公輝の言葉に、夕哉達も驚く。

「え、全部言っちゃうの……!?」

「そんなことしたらパニックになってしまいますよ!」

「もうパニックになってるといったらそこまでだが…!」

 

『落ち着いてください。デュエル・マスターズのクリーチャー自体に罪はなく、それを実体化させて操った人間が、皇龍市を掌握しようとしている、そのような状況となっています』

「デュエマが悪いのかー!?」「あれはどうにもならないの!?」「その人間を捕まえられないのか!」

 

非難が公輝に集中する。しかし公輝は整然とそう答えた。

『クリーチャーに打ち勝つには、クリーチャーを高いパフォーマンスで扱うしかありません。そして私達にはその手立てがあります。それができる人々がこの世界にはいるのです。私たちは彼らを助け、あのクリーチャー達を倒す必要があります』

 

「俺たちのことは避けてくれてるけど……」

「正直、公輝さんが全部受け止めるってことだよな……」

「何より、デュエマが悪者にされそうで嫌です!」

「悪いのは真名月なのにね」

 

また喧騒を浴びせられた公輝はこう続ける。

『落ち着いてください。それは包丁を使う人間に包丁は人殺しの道具だから使ってはいけないというようなものです。そしてデュエマはただの遊び道具、クリーチャーを実体化させる力を、それも悪用しない限り、人に害されることは一切無いのです』

「だけど…!」「それで俺たちは困ってるんだぞ!」

 

『何より。その疑心暗鬼で人を追い出したりしたら、私達こそが自分の都合で他人を傷つける、そのクリーチャーと、それを従える人間と同じになります。本当にそれでいいのですか?』

「今私達にそんなことを気にしろって言うの!?」

 

その時壇上に1人の少女が現れる。

「お兄さん、話したいことがあるんです」

『…わかりました、どうぞ』

『ここに、私をクリーチャーから助けてくれたお姉ちゃんが来ています。お姉ちゃんは、光みたいなもの、クリーチャーを出してクリーチャーを追い払いました。わたしにとって、お姉ちゃんは、その相棒のクリーチャーと一緒で、ヒーローなんです。だから、しんじてください!』

 

そこに夕哉の聞き覚えのある声がする。

「俺も!信じられないと思うけど助けられたんだ!悪いやつを倒すまで、少し待つくらいしようぜ!」

「私達5人、その人たちに助けてもらったの!一歩間違えたら私がその悪者になってたかもしれない、だから他の人たちがやらなくても、私は人々を疑わないわ!そして何より、その正体をひけらかすこともしない」

 

「朝陽……!」

「愛澤先輩、ここに来ていたんだな…!」

 

「今やるべきは排斥ではなく、助け合うことだ!一人一人の力は小さくとも、集まれば帰れるのが1日でも早まるはずだ!!」

 

老年層の拍手を受けながら、神谷祈雨(きう)も声をあげる。少しずつ場の雰囲気が変わり、皇龍市の人々の感情も揺れながらも、少しずつ否定から離れて行っている。

 

『私たちはこの被害を皇龍市だけのものにする為、全力で働きます。どうかご協力をお願いいたします!!』

 

公輝が大きく頭を下げて、配信は終わった。

 

「……ありがたい話だよね」

「はい。助けた人達が、こうやって私達を助けてくれるんですね」

「後は世論次第だな」

「でもあの女の子。ゆうや達は助けた覚えある?」

その疑問を抱えながらも夕哉達がその場を離れようとした時、1人の少女がこちらに手を振って寄ってきた。

 

「皆!あたしも、仲間に入れて!!」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

『デュエマのステルスマーケティング?』『新しい映画の撮影?』『嘘にしてももっとマシな嘘つけよ』

「正直、皇龍市近辺より外にある、いわば『まだ関係ない人達』のリアクションはこんなもんだ。現実味なさすぎて流し見されてる」

スマホのニュース画面を流しながら、飛水はそう言う。

 

「寧ろ助かると思います。変に騒がれるよりよっぽど」

「本当に騒がれないためには、俺たちが早く終わらせなきゃだね」

「ひな、何をしていたの?」

「えっとね……。避難する最中に、あの女の子に会って…」

「無茶したの?カイザーもいないのに?ひな?」

「いやー、それは……。あっはっは……」

「カイザーと言えば。火奈ちゃん、どうやって女の子を助けたんですか?」

「あたしもよく覚えてないんだ。必死であの子を運んでたから、全然」

「……とりあえず、今は作戦会議」

「シイノの言うとおりだ、やろう」

「それ、あたしも聞いていいんだよね!」

「勿論、賑やかしがいないと話が重くなってたまらん」

「飛水ー?」

 

皆の目につかない場所でそれぞれの今の状況を説明し、配られた食事を食べながら6人は作戦会議を始めた。

「じゃあ夕哉くんは、アビスをもう全部使えるんですね」

「うん、だから今なら真名月とも互角に戦えると思う」

「というか、真名月に誰が勝てるかから逆算した方が早いな」

 

そう言って飛水は1枚紙を取り出して書き出して行った。御白が見たカードからデッキリストを推測し、対策を立てていく。

「あのデッキ、5色バロムは、硬い守りと破壊力が特徴のデッキなんです」

「一番警戒しなきゃなのは、御白ちゃんの言ってた3つの厄災だよね?」

「手札が無くなって、クリーチャーが破壊されて、マナが使えなくなる。ボクじゃ戦える気しないよ…!」

「俺もハンデスがキツイな。後はバロム・ナイトメア。御白が見た通りのテキストなら、シールドを素通りできても俺はそこで詰む。シイノは?」

「ドルバロムに入れ替えられるオチだと思う。戦うならそれなりに闇を入れなきゃだと思う」

「じゃあ、俺になるんだ……」

「そうでなくても、ジャシンは強力ですからね!」

「まあね。自然文明も使えるし、俺が真名月を倒す役に回るしかなさそう」

「消去法で夕哉なの、ちょっと怖いよな…」

 

そう言いながらも、皆は話と思考を止めていない。

「でもでも、逆にこんなにデッキが分かってるパターン珍しいし、対策のしようはいくらでもあるよね!」

「ワルドバロム、バロム・ナイトメアへの対策は必須として、それをどうやるかですよね」

「はい!バロム・ナイトメアまで使わせて、次のターンにもう1回突っ込む!」

「シンプルだが結構ありだな、ボウダン=ロウならできなくはないだろ」

「ジャビビルとのコンボ前提だけどね。実際バロム・ナイトメアは1体しか出せないから、先に攻撃してシールドトリガーで返すのは正解かも」

「ワルドバロムのマナ消しと、バロム・ナイトメアを進化元にするパターンがあります、完全な対策とは言えないです」

「はいはーい!除去耐性!!」

「ウルトラ・セイバーを添えるのはボクもやってる、なら自然文明の《オ:ンータイ》が使えるんじゃない?」

「じゃあ闇自然で組むのは確定」

「ワルドバロムは1発で1つの文明しか消せないのも噛み合ってるな。多色を入れすぎないでならいけるんじゃないか」

 

そう言いながら6人での夜は更けていった。途中から全員に熱が乗ってきて、ずっとあぁでもないこうでもないと、楽しそうに話をしていた。それは夕哉たちの知らない間に、避難している人々にとって、かなり安心できるものであることに、元気付けられるものであった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

荷物を明日のために纏めて、休息のために寝静まった後。ゴルドランはカードから出てきて、ジャシンに話しかけた。

 

「ジャシン。話があります」

「なんだ。貴様も余も明日は戦いがあるだろう。早く休ませろ」

「それは、そうなのですが。……助けていただき、ありがとうございます」

「なんだと?闇文明を嫌う光文明の頭からそんな言葉を聞かせられるとはな。鳥肌が立ってしまうわ」

「中々言う機会がありませんでしたからね。御白さんを何度も助けていただいたお礼を兼ねて、ですね」

「フン……」

 

他のクリーチャー達は寝静まっており、ジャシンとゴルドランだけがデッキケースから外の景色を覗いている。ここまで来ればクリーチャーの鳴き声などは聞こえなかったが、その叫びでここが征服されるのも時間の問題だろう。空は青く黒く澄んでおり、冬が本番となるのを感じていた。

 

「ジャシン、今日はこちらの暦で12/10だそうです」

「だからなんだ」

「12/25に、クリスマスというのがあります」

「クリスマス?」

「はい、海外では神の誕生を祝う祭りですが、日本ではその文化は日本人のために変化し、親しいものにプレゼントを贈ったり、一緒に過ごして気持ちを伝えたりする日だそうです」

「虫唾が走るな」

「そんなことはないはずです」

「なんだ急にキッパリと」

 

ジャシンは不思議そうにそう返す。

「貴方に、いつかの問いの続きをお願いしたい。『貴方の本音は、今どこにあるんですか』」

 

ジャシンはそこまで言われて、少しずつ喋った。

「余の復活に必要なのは、大量の闇のマナとそれを集める傀儡、つまり夕哉だ。それだけでいい。だが黒井夕哉は、なんの躊躇いもなく周りのニンゲンを庇い、無茶をする」

「そうですね。御白さんも困ってました」

「なら余はどこまで守るべきなのだ。余が光屋御白を守れなければ、黒井夕哉は間違いなく、真名月に立ち向かう意思を失っただろう」

「強迫観念にも似てますよね」

「あぁ、あやつは妹を失いかけた経験から、無茶をするだけの馬鹿だと思っていた」

「思っていた……?」

 

ジャシンはため息をついた後こう続けた。

「ヤツはあぁ見えてかなりの利己主義だ。自分の必要だと思うものに妥協はしないし、余がついてからというもの、それが悪化しているとすら感じる」

「ジャシンの力があればこそ、と言うことが多いと」

「余をなんだと思っているんだ、ヤツは」

「確かにそうかもしれません。関係を利用してジャシンが助けざるを得ない状況にして、自分の意思を通していることも何度か見ました」

「ですが彼がワルドバロムの攻撃から私達を庇った時、彼は貴方を待たずに飛び出していました。そしてその逆も、私は見ています」

「ヤツに言われると分かっていたからな」

「それだけじゃないはずです。それだけでは、ないはずですよ」

「……なんだと?」

「人間というのは不思議なものです。ですから、面白いんです。『他人を大事に思える』って、尊いことなんだと思います」

「……余はジャシンだ。人から力を借りるのではない、人が余から力を与えられるのだ」

「……そうなんでしょうね。もう遅いです、私は寝ます」

「貴様、余を起こしておいて勝手な……!」

 

そう言う内に、ゴルドランはデッキケースの中に戻ってしまった。

「一体何なのだ今日のあやつは……」

 

『ヤツはあぁ見えてかなりの利己主義だ。自分の必要だと思うものに妥協はしないし、余がついてからというもの、それが悪化しているとすら感じる』

 

「それなら、余が力を貸さなければいいだけだろう。何より、他の仲間が死ねば黒井夕哉は心が折れる。余が乗っとるチャンスが来ると言うのに…。何が、余の何が、それを否定するのだ……!」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「皆、準備できた?特に母さん達が作ったお弁当、あれ超美味いから忘れたら後悔するよ」

「夕哉くんのお母様の料理ですからね、美味しいに決まってます、頑張りましょう!」

「遠足かよ…?一旦整理するぞ、流狼の本によると、魔誕による膨大なマナは、本来なら地球そのものを飲み込む程度にはクリーチャーを呼び出すものらしい。だから本来それをされていたら俺達は詰んでいた」

「でも、そうならなかったんだよね」

「いろいろ考えられるけど、夕哉がジャガイスト復活のために闇のマナを持って行ったこと、御白がワルドバロムの足止めをし続けたのが大きいはず」

「じゃあ今回も同じことするの?」

「遥風さんによるとそうもいかないらしい。あの魔誕した場所を再度中心として、世界の穴を広げる儀式が、真名月の目標になる。そしてそこを守る4体のデーモン・コマンドも強力なのが揃ってる。大方流狼達のポストをそのまま渡して、報酬で釣ってるオチだ」

 

夕哉が手を挙げて、真名月撃破の役割を申し出る。

「じゃあ、俺がジャシンと一緒に真名月本体を、残りの4人はデーモン・コマンド達を相手にするってことだね」

「火奈ちゃんはどうするんです?」

「留守番、しかできないからね。何があってもあたしが避難させるから大丈夫だよ!」

「じゃあ行きましょう、デュエマ部、ファイトー!」

「オー!」

「………」

「そんな掛け声あったっけ……?」

「今考えました!」

「御白……」

「……緊張はほぐれたよ!」

「フォローが苦しい…」

「うぅ、恥ずかしいです……」

 

顔を隠す御白を見て、火奈がくすりと笑った。

「皆、行ってらっしゃい!」

「「「「「行ってきます!」」」」」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

真名月は1人で食事をとっていた。食事は皇龍市中から奪い尽くしてきたもの達で、かなり豪勢なものも揃っていたが、調理をする方法も、一緒に食べるような相手も、真名月は持ち合わせておらず、ただ貪り食うだけの食事となっていた。

 

「……ワルドバロム、俺は感じる、まだこの世界が終わっていないのを」

 

ワルドバロムはただ真名月の方を一瞥する。

「希望を失った世界は、人々から笑顔が消える。活気が消える。だが偵察のクリーチャーの話を聞くに、まだそうはなっていないらしい。ジャシン達は、黒井夕哉達は、まだ死んでいない」

 

ワルドバロムは元の、世界の穴を完全に開くための魔力を自分の身体へと取り入れる儀式へと戻って行った。

「もうすぐ月の民だけの世界が完成する。月の民だけの、デーモン・コマンドだけの、俺だけの………!!!」




夕哉の!今日のカード紹介!
今日のカードは…《邪幽 ジャガイスト》!
出た時に手札を2枚捨てるとアビスメクレイド5、山札からクリーチャーが出るとそのコスト以下のクリーチャーを墓地から発射する凄い相棒。真名月にやられてる間に力を失って1枚しか使えなくなったけど、まだまだやれるよ、彼なら。
次回、『楽しみを捨てた者たちへ』
頑張って、飛水!
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