デュエル・マスターズOverLord(オーバーロード) 作:シグレサメ
世界からジャシンの記憶を奪い、バロムに捧げようとする月の民と、その首魁である真名月(まなつき)。夕哉は力を失ったジャシンと共に挑むが、彼らの信仰する神であるバロムに一手上回れ、敗北してしまう。用意周到に用意された計画に敗れるかと思った時、夕哉の前に謎のクリーチャーが現れ、別の場所へとワープさせられるのだった。
「かぐら」
真名月が部屋の奥にある人間を呼び出しに行く。ぬいぐるみで溢れたベッドの上に眠っている金髪の少女は、ムニャムニャと幸せそうな夢を見ている。
「かぐら様を使うのですか?」
「お前もだ、流狼(るろう)。黒井夕哉とあの少女が俺を倒すことを考えずに現状を打破するには、記憶の鍵になっている人間から正しい記憶を引き出すことを狙うだろう」
「逆に狙いがわかりやすいということですね」
「あぁ、残りの2人も呼び戻して他の人間を見張らせる。概ねこの世界の記憶の鍵の人間は、予想ができているからな。流狼、少女の方のデッキの特徴を聞くか?」
「俺の性格知ってますよね?楽しみは初見で見たいんですよ」
「……知っている。自由にやれ」
その言葉を聞いて満足げに流狼はアジトを出て行った。
「どうしてこうもあいつらは癖が強いのか…。しかしアビスの力を考えると、この時間の間に俺も力を蓄えなければならないな」
そう真名月がため息をつくと、話し声でかぐらと呼ばれた少女が起き上がる。御白と同じような背丈、中学生くらいのその少女は年不相応の花柄の寝巻きを着ており、まるで妖精のような出立ちに見える。
「おはようございますですわ、真名月様。幸せな夢でしたわ…」
「あぁかぐら、起きてすぐで悪いが、見張りに入ってくれないか?」
「ふぁあ。私(わたくし)1日12時間は寝たいですのよ?」
「知っているさ。けれども今は緊急事態だ、俺はあの儀式のダメージで動けない。弱体化したとはいえジャシンを侮っていた。頼むぞ」
「真名月様が言うなら仕方ないですわぁ。行きましょう、エルボロム」
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夕哉がワープで投げ出された先は、誰もいない公園だった。真名月と戦っている間に陽は落ち、すっかり月が顔を見せている。
「貴様ぁ!ワープの仕方があるというものだろう!」
「ジャシン落ち着いて!まずは相手のことを知らなきゃ」
「ごめんなさい。でも、私もあなたのことを知りたい」
そう言った少女は、火奈より少し背が低いくらいの高校生くらいの顔立ちの茶色の目の少女だった。上下共にボロボロの服に身を包んでおり、こちらもボロボロな大きな鞄が目を引く。殆ど手入れされなかったであろうボサボサの白い髪が、彼女の境遇を伺わせた。
「ねぇ、君も異世界から来た人?」
「うん、私はシイノ」
「待って、なんで言葉通じてるの!?」
「……私の契約したクリーチャーは、世界を渡れる。その為に言語の壁を越える力があるの。昨日月の民の力で眠らされそうになったけど、そのクリーチャーの力を借りて起きたりもしたの」
シイノと名乗るその少女は夕哉と握手をしようとし、夕哉もそれに応える。しかしその少女の手が震えていることに気づいた夕哉は、手を離した後でまず思っていたことを聞く。
「色々気になることあるんだけどさ、君は俺たちのことをどこまで知ってるの?」
「クリーチャーの世界から、伝わったことなら」
「ほう、つまりクリーチャーの世界をレンズにして余達のことを嗅ぎ回っていたわけか」
ジャシンが口を挟んでシイノがびくついたのを見て、夕哉はジャシンをカードに戻す。あちらからも警戒されていたことに気づいた夕哉は、とりあえず歩み寄りの姿勢を見せることにした。
「お腹減ったんだけど、シイノも…呼び方シイノで良いよね。なんか近くのコンビニで食べ物と温まるもの買ってくるから、ちょっとそれまでに落ち着けるかな」
「……うん」
「オッケー、じゃあなんか欲しいのとかある?」
「……あんぱん」
「あんば…了解。ちょっと待ってて」
そう言って夕哉が走って買い物に行くのを見て、シイノはぼおっと、黒井夕哉を思っていたよりもなんとなく良い人なのかなと感じていた。
夕哉があんぱんを1つ、適当なお弁当とスープを2つずつ、そしてジャシンの好物のウィンナーを買ってくると、シイノもある程度緊張が解けたのか、コンビニのブランコに乗ってキイキイと不思議なものを試すように動かしていた。
「…結構、自由人なのかな」
「いただきます」
「いただき、ます…?」
「フン、夕哉よ、早く渡せ」
「駄目、いただきますは?」
「余の血肉になることに感謝するが良い」
「……ギリッギリ合格」
夕哉とジャシンが仲良く食べているのを見ながら、シイノは頭の中でまとめていた言葉を口にする。
「私は、あなたしかいないから助けた。他に記憶を持っている人がいないから」
「やっぱり、あれから御白達は思い出せてないんだ」
「うん。最初、ジャシンを使う人間とは会いたくなかった。でも、良い人だった」
やはり警戒されていたのかと、夕哉は思った。しかしシイノは今のやり取りに安心感を覚えていたようだ。
「ユウヤは、なんで思い出せたの?」
「…記憶を消されたのがジャシンに関する記憶だから、俺だけ違和感を感じることが多かったのかも。俺はジャシンに沢山救われてきたから」
「沢山、救われた…」
「真名月の言うことが正しいのなら、今は偽りの歴史という名の別の川の水が流れてきて、本当の川を汚染している状態だ。いわば川の分水嶺の近くにいた夕哉が、異変に気づくのは自然だったといえるな」
ジャシンの言うことに首を縦に振ったシイノは、鞄から日記帳を取り出す。
「これ」
「えっと、何これ……なんて読むの?」
「あ……。代わりに読む」
「夕哉よ、コイツ大丈夫なのか?」
「『月の民は、狩場を変えて移動する民族のようなもの。狩り尽くしたら世界を越えて、次の世界に狩場を探しに行く』」
「それが、真名月達の目的…。月の民ってことだし、多分複数人いるよね」
「うん。その先遣隊が真名月達なの」
「ねぇ、そんなに知ってるってことは…」
「違う。私は月の民に滅ぼされた世界の人間」
シイノが目を伏せる。世界単位で自分の居場所がなくなると言うことは、夕哉からは想像もつかないことであることと、自分がとんでもないことを言ったことに気づいた。
「……ごめん!辛いこと思い出させて」
「…大丈夫。でも今は、私の世界みたいなことに、誰も巻き込ませないために来たの」
「そのために、来てくれたの?自分の世界が助かったりは…」
「関係ないの、それがわたしの使命だから」
シイノの目には覚悟が写っている。夕哉はこれ以上の追求をやめ、これから自分がやることを決心する。
「ねぇシイノ、俺はどうすればいいの?どうすれば御白達の記憶が戻るの?」
「一つは月の民の首領、真名月を倒すこと。でもこっちは可能性が低い」
「確かにデュエマに負けたけど…。次は負けないよ」
「駄目、多分見つからない。隠れて夕哉以外の記憶を思い出させないことで、無理矢理記憶を書き換えようとすると思う」
シイノのその言葉にジャシンが付け足す。
「余が勝てば確かに全て解決だろうが、ヤツは前よりも対策を組んでくるだろう。ジャブラッドなどの主力が欠けた状態で、さらに言えば手の内も見られている。正直賢明ではないだろう。負ければ今度こそ一巻の終わりだ」
「シイノが戦うのは?クリーチャーと契約してるんでしょ?」
「無理。前に一度戦ったけど、負けた」
「そっか…」
「でももう1つある。記憶の鍵、間違った記憶が多く流入してる人に直接接触して、正しい記憶を取り戻してもらう。そうすれば、世界の記憶が戻って、元の世界に戻ってくれる」
「成程。川の濁った部分を地道に浄化していくという方法か。お前が儀式の魔法陣を壊して流入口を壊しているからできる方法だな」
ジャシンの言葉に再度首を縦に振り、シイノは夕哉達のことを調べたページを開く。
「ここに書いてある人達が記憶の鍵の筈」
「うん、御白、飛水、火奈、緑。皆クリーチャーと特殊なつながりがある人達だよ」
「どうする?誰から取り戻す?」
「今の皆の情報がないと…って感じかなぁ。とりあえず飛水だと思う。明日学校に行けばすぐ会えると思うから」
「分かった。じゃあ……へぷし」
シイノが小さくくしゃみをする。10月の夜、寒空の中では中々辛いものがあるだろう。
「喋り疲れた…」
「シイノ、一回俺の家に帰ろう。風邪引いたら元も子もないよ。服もなんか別のを着た方がいい」
「駄目、絶対に見張られてる」
「そっか。宿泊施設を取るにも…手持ちのお金そんなに無いんだよな…せめて家に戻れれば…」
「夕哉よ、寒空さえ凌げればいいのだな?」
そう言ってジャシンは闇文明への入り口を開く。
「え!?ジャシンの住処はやられたって…!」
「余がなんの対策もしてないと思うか?深淵の奥に一部の臣下しか知らんスペースを用意している。先のデュエルで貴様が使ったアビスはそこに避難した者達だ。2人がそれぞれ寝る程度のスペースはあると約束しよう」
「……ありがとうジャシン!助かる!凄く助かる!!」
「…ここまで感謝されるとは思わなかったが」
ジャシンは少し困惑しつつも、深淵の中に夕哉達を入れる。
「そうだごめん、流石に婆ちゃんと夕花には連絡取らなきゃ…!」
「家族?」
「うん、バレるかもしれないけど、それでも心配はできる限りかけたくないんだ」
シイノに聞かれて、夕哉はそう答える。
「うん、そっか」
準備していたシックル=シーク達から掛け布団代わりの布を受け取り、シイノと別のスペースに入る。寒さこそないが周りが闇に埋め尽くされたこのスペースは、間違いなく心細さを生み出すものであった。
「夕哉よ」
ジャシンが夕哉の部屋に入ってくる。クリーチャーの世界に来た以上クリーチャーの力が強まっているが、今この状況でジャシンが危害を加えることはないと夕哉は確信していた。
「シイノという少女、貴様は信頼できるか?」
「五分五分。月の民じゃなくて俺たちを助けに来た行動は間違いないし、嘘じゃないと思うけど。でも、今日喋ってくれたことが全部とは思えないよ」
「そうだろうな。尋問するか?」
「なしで。ジャシンを怖がってたし、俺もそんなことしたくない」
「……貴様、甘いよな」
「今更でしょ。寝つくの時間かかりそうだからもう寝るね、お休み」
「……今更だが、こやつと契約してかなり面倒に巻き込まれているな」
ジャシンはそう愚痴りながら、急拵えの自分の王室へと戻っていった。
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夕哉が闇文明の中から出てきて公園で朝食を取っていると、シイノはもう起きて準備を済ませたようで、公園から太陽をぼーっと見ていた。深淵からそれなりの服を見繕ってもらったのか、黒いシャツを着ており、一応歩いていて奇異の目で見られることは無さそうだった。
「直接太陽見ると目が悪くなるよ」
「……そうなの?」
「うん。そっちの世界にはなかったの?」
「あったけど、私達の家は洞窟の中にあったから」
「…どうやって生活していたの?」
「これを使ってた。ご飯食べたら、出かけよう」
そう言って少女は石のようなものを見せてくる。開目見当もつかない夕哉は、とりあえずおにぎりをお腹に押し込み、出発の準備をした。
「まずはどこに向かうの?」
「皇龍高校。飛水、火奈、御白に関しては絶対にいる筈だから。緑は、どう記憶を無くしているかで変わると思うけど…」
「分かった、行こう」
そう言って2人で皇龍高校に向かっていく。そこには見覚えのある一人の青年が立っており、校門の前で夕哉達を待ち構えていた。
「昨日ぶりだね。俺は流狼。さて、言いたいことは分かるよね?これ以上は見逃せないんだ」
夕哉がデッキを取り出そうとすると、シイノが前に出る。
「わたしがやる。ユウヤは先に行って」
「…分かった。無理しないで」
「うん。絶対合流する」
「真名月様に負けていたらしいんだけど、俺は君のことを知らないんだよね。俺の知識欲的にも、君と戦いたいかな」
「関係ない。わたしはユウヤを助けるだけ」
「そうだね。じゃあ早く始めようか」
「「デュエマ、スタート(!)」」
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シイノは自然文明に加えて、どの文明にも属さないゼロ文明を使い、流狼は火と水文明を使うクリーチャーを用いたデッキ。先に動き出したのは先行のシイノだった。
「D2フィールド、《Dの寺院 タブラサ・チャンタラム》を2マナでバトルゾーンに展開」
シイノの背後から、大きな蠅のクリーチャーが模られた不思議な建物が現れる。それがフィールドを覆い尽くし、特殊な雰囲気でそれが覆われる。
「ターンエンド」
「俺のターン。2マナで《ボルシャック・疾(トット)・ピピッチ》を召喚。ターンエンドだ」
(2マナのD2フィールド?敵味方合わせて1枚しか出せないフィールドをすぐに出してきたあたり、相当戦術の核なんだろうな。でも、何をするつもりだ?)
「わたしのターン。マナチャージ。その時、チャンタラムの効果でそのカードを裏向きに置き直す」
「裏向きに?何の意味が?」
「裏向きにしたマナ、《水晶マナ》は何の文明も持たない1マナとして扱う。呪文、《シャングリラ・クリスタル》。山札の上から1枚を裏向きに置いて、水晶武装2を発動。マナゾーンに水晶マナが2枚あれば、もう一枚マナゾーンに置ける。ターンエンド」
(あっという間に裏向きのマナ、水晶マナが3枚か。ボーナス効果があったけど、その後何をするつもりなんだ…?)
流狼はそう思いながらも、初めて見る戦法に心が高鳴っていた。
「俺のターン。来たか相棒!3マナで《楽識の夜 フミビロム》!」
フミビロムと名付けられたクリーチャーは、まるで古代中国の文官のような出立ちで沢山の本を持って帽子を被り、ブツブツと何かを書き込んでいる。そんな不思議なクリーチャーに、シイノは少し嫌悪感を抱いた。
「フミビロムは少し個性的でね。知らないままにすることが許せないタイプなんだ。デュエマ中ずっとなんか書いてるけど、気にしないで」
「いや、気にするけど……」
「まぁまぁ。フミビロムは俺の手札の数×1000だけ他の味方をパワーアップさせる。さらに疾・ピピッチをタップして、フミビロムをハイパーモード、Wブレイカーに。疾・ピピッチのタップ時能力で、フミビロムにスピードアタッカーを与えるよ。フミビロムでシールドを攻撃。その時手札が5枚になるようにドロー、1枚引くよ」
シイノ シールド3
「シールドトリガー、無い」
「ターンエンド、さぁ、次は何が出てくるかな?」
「わたしのターン。マナチャージする時水晶マナを作って、6マナで《偽りの名 ワスプメリサ》を召喚。ターンエンド」
「へぇ、少し事故かな?」
「余計なお世話。水晶武装4。ワスプメリサの効果であなたはクリーチャーの登場時効果を使えない」
「成程。水晶マナを貯めて能力を起動させて戦うのが君の戦法か。さて、こっちは決めに行こうか!3マナで《麗泳者(れいえいしゃ) マツバメモノ》、1マナで《凶戦士 ブレイズ・クロー》を召喚。ブレイズ・クローをタップしてフミビロムを再びハイパーモードに。これでこのターンでトドメだ!」
そう言って流狼はフミビロム達に総攻撃を命じる。
「フミビロムでシールドをWブレイク!手札を5枚になるまで増やす!」
シイノ シールド1
「シールドトリガー、《ベートーベン・キューブ》。山札の上から2枚をマナゾーンに。そして水晶武装4で山札の上から3枚を見て、アンノウンまたはゼニスをバトルゾーンに出す。来て、《「戦鬼(せんき)」の頂天 ベートーベン》」
そうシイノが言うと金色の鎧を着たゼニスが空から降ってくる。槍と盾を構えたそのクリーチャーはシールドの前に鎮座し、シイノの新たな盾となった。
「タダ出し呪文、しかも13マナの大型を…!」
「ベートーベン・キューブの効果でベートーベンをタップ。そしてベートーベンの効果でこのクリーチャーがタップ状態で、場を離れるまで私はアタックされない」
「成程ねぇ。フミビロムの効果でパワーを上げても、19000のベートーベンには届かない。ターンエンドだよ」
(こっちには宣言したコストのクリーチャーの動きを止める《奇天烈 シャッフ》がいる。ボルシャック・疾・ピピッチでSAを付与すれば、ワスプメリサがいても動きを止められる!)
「わたしのターン。自然のマナをマナチャージして裏返さない。水晶ソウル3を発動。私のマナゾーンにある水晶マナは、ゼニスを呼び出す時無色の3マナとして働く。2体目のベートーベンを自然1マナ +水晶4マナの13マナで召喚。山札の上から3枚を見て好きな数のクリーチャーを手札に、残りをマナゾーンに送る。今回は全部をマナゾーンに。そしてタブラサ・チャンタラムのD(デンジャラ)スイッチ発動。ゲーム中一度、ゼニスが出た時にこのカードの上下を逆にすれば、わたしの水晶マナが全てアンタップする」
「そんな無茶苦茶な…!」
「まだ終わってない。水晶マナ3枚+1マナで、呪文、《黙示録の水晶(クリス=ラグナ=カリプス)》。相手のコスト5以下のエレメント、表向きのカードを全て山札の下に。そしてベートーベンの3体目を召喚。今度も全てマナゾーンに送る」
「これが、水晶マナの力…!?」
「ベートーベンでシールドをQ(クワトロ)ブレイク」
流狼 シールド1
「……シールドトリガーはないよ」
「ワスプメリサで攻撃」
流狼 シールド0
「シールドトリガーはない。でも君はトドメをまだ刺せない!」
「分かってる、ターンエンド」
ベートーベンが3体。ワスプメリサでクリーチャーの登場時効果も封じられ、クリーチャーも全滅。ほぼ勝負は決まってしまったが、流狼は最後のドローに全てを賭ける。
「ドロー!来た、呪文、《スパイラル・ゲート》!タップしているベートーベンを手札に戻す!」
「エターナル・K(カッパー)発動。マナゾーンの水晶マナを3枚表に戻すことで、ベートーベンは場に留まる」
流狼は合点が言ったのか手を叩いてこう言う。
「成程ねぇ。これは俺が勝てなくて『真名月さんにやられるのも』無理ないや。ターンエンド」
「……分かってる。だからせめて、ユウヤのサポートに回ってる」
「じゃあ俺の好奇心ついでに。君は何のために戦っているんだい?戦っても、君の世界は帰ってこない」
「……あなたに言う義理はない」
「君、一度もこのデュエマ中感情を見せなかったね」
「……わたしのターンに、速く譲って」
「はいはい。ターンエンド」
「ベートーベンで、ダイレクトアタック」
「はぁ。退散退散」
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シイノが流狼と決着をつけた頃、青海飛水(おうみ ひすい)が授業のため渡り廊下を歩いていると、突然横から黒いモヤが現れ、そこから人の腕が伸びてきて掴まれる。
「うぉっ!?なんだこれ、離せ!」
「ごめん飛水!少し我慢して!!」
飛水がモヤの中に引っ張り出されると、そこにはジャシンが闇文明から集めてきた大量の廃棄された楽器があった。
「……なんだここ、気味悪ぃ」
「飛水!」
「おま、黒井!なんだこの、なんだ!?早く帰してくれよ!」
「ごめん飛水。少し付き合って欲しいんだ」
そう言う夕哉を、飛水は怪訝な目で見ることしかできないのだった。
シイノの、今日のカード紹介。
今日のカードは、《「戦鬼(せんき)」の頂天 ベートーベン》
水晶ソウル3で水晶マナを使えば軽く呼び出すことができて、召喚時のマナ加速とマッハファイターでクリーチャーを処理しながらタップすることができる。このクリーチャーがタップしていたら自分が攻撃されない能力と、エターナル・Kの除去耐性が合わさって、わたしを守る頼れる壁になってるの。わたしの、今の切り札だよ。
次回、『未来を探せ、探求者よ』
ユウヤ待ってて。すぐ追いつくから。