デュエル・マスターズOverLord(オーバーロード)   作:シグレサメ

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バロムやデーモン・コマンド達の支配する皇龍市から一度避難し、体制を立て直した夕哉達。その後夕哉達は作戦会議を行い、真名月の元へと向かっていくのだった。


喜びに酔った者達へ

 

御白は走っていた。辰登りの丘、COMPLEXとの最終決戦となった場にマナが溜まり、巨大な魔法陣を展開する場所として適していると、そこに守り手のデーモン・コマンドがいることを。

 

辰登りの丘に着いた御白は、ゴルドランを呼び出し様子を伺う。しかし数が多い。恐らくデーモン・コマンドに関係ない種族も混じったその部隊は、1匹1匹は小さくとも、これだけ数がいればいずれバレてしまう。そう思った御白は、メカ・デル・ディネロ達を呼び出し、一斉にハザードランプを焚かせ、クラクションを大音量で鳴らさせた。クリーチャー達は突然のことに大混乱に陥り、あるクリーチャーは訳のわからない場所に走り出し、あるクリーチャーは別のクリーチャーとぶつかった。しかし彼らは、その後不自然なほどに笑い出し始めたのだった。

 

「これ、前に見ました。じいやがかぐらさんにやられたやつです。本当に嫌なもの……」

 

そう言って御白が上がると、黄色い体色の中に透明な発光する骨格が特徴の、光のデーモン・コマンドが現れた。

 

「我が名は《魔誕の騎士 ザガーン》。クリーチャー達を愛し、クリーチャー達に真の喜びを与える者」

「真の喜び?都合のいい喜びの間違いなんじゃないですか?」

「生物は喜びを得るために生きている。自分の存在を証明した、他人を蹴落とした、自分の子孫を残した。それらによってしか得られない喜びのために苦しみ続けるのは余りにも割が合わない。だから我がこのようにして、世界に喜びを振り撒き、ゆくゆくはワルドバロム様と真名月様に認めてもらい、笑顔だけの王国を作るのだ」

「笑顔だけの……王国?」

「その通り、笑顔で一杯の王国は、世界で最も幸せな場所として……」

「そんなの、ぜんっぜん幸せじゃありません!」

「……なんだと?」

 

ザガーンの顔と声色から、笑顔が消えた。

「私、ずっと考えてました、火奈ちゃんとカイザーが別れて、私とゴルドランさんが離されそうになって。辛いことがあるから喜びになるんです、辛いことがあるからもし少なかったとしても、喜びを、幸せを大事にすることができると思うんです。そこら中に喜びが溢れてしまったら、きっと誰もそれを大事にしなくなります」

「……我の理想郷に、文句があるのか?」

「かぐらさんのやり方は間違っていました。人を傷つけて喜ぼうとするなんて、自分勝手です。でも、その喜びを得るための過程すら捨てさせる貴方はもっと酷い!絶対に許せません!」

「そうか……。じゃあ、デュエマで殺してやる。それを唱えるものがいなければ、喜びで満ちた人間しかいなくなるからな」

「御白さん、こいつ、おかしいです!」

「はい、絶対に倒します!」

 

「「デュエマ、スタート!!」」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

御白とザガーンのデュエマは、ゆっくりと始まった。ザガーンの先行で始まったデュエマはザガーンが光の軽減クリーチャーを並べ、御白は闇文明も含めた光闇のゴルドランデッキで迎え打つ形となった。

 

ザガーン シールド5 マナ3

《Re:奪取 アクロアイト》、《巡礼者 アパリシオ》

御白 シールド5 マナ3

《楯教の求道者 ザゼ・ゼーン》、《アシステスト・アルデッド》

 

「我のターン、《魔誕の騎士 ザガーン》をアクロアイトで1マナ軽減し4マナで召喚。ヨビニオンを発動させる」

「ヨビニオン、5コスト未満のクリーチャーを出すわけですから、かなりの闇鍋なんじゃ…!」

「それで問題はない。《獲銀月 ペトローバ》をバトルゾーンへ、このクリーチャーは次のターンまで離れない。そしてターン終了時、アパリシオのバラバラエティ3が発動。山札の上から1枚をシールド化し、シールドを1枚回収。ターンエンド」

 

「私のターン!」

(4ターン目にクリーチャー4体、その上で離れないのが1体、擬似的にドローできるのが1体。ザガーン本体はエスケープを持っている。厄介ですが、戦う手段はあります!)

「アルデッドで軽減、4マナで《アーテル・ゴルギーニ》を召喚します!効果で4枚墓地を増やし、コスト4以下のクリーチャーである《光喜神官 ジョナス》をバトルゾーンに!登場時効果でアンタップしているアクロアイトを破壊します!」

「何!?」

「そしてアルデッドでシールドに攻撃する時革命チェンジ!《鎧機天 シロフェシー》!この効果で私の次のターンの初めまで貴方は5以下の呪文を唱えられなくなります!」

 

ザガーン シールド3

「シールドトリガー無しだ」

「シロフェシーの効果で自身をアンタップ!ターンエンドです!」

 

「我のターン。しかしよくもやってくれたな、ならこちらも返すとしよう。5マナで2枚目のザガーンを召喚。ザガーン本人のヨビニオンに加え、元から出ていたザガーンの効果で、手札から出たザガーンに2つ目のヨビニオンが発動する」

「なんですって!?」

「来い、アクロアイト!アパリシオ!アクロアイトをタップしてペトローバをハイパー化!」

「盤面を減らすどころか、更に増えた…!?」

「ザガーンでシールドをWブレイク!」

「これはもらえません!シロフェシーでブロック!」

「エスケープでシールドを回収する」

 

ザガーン シールド2

「そしてペトローバでシールドを攻撃、2枚目のペトローバをバトルゾーンに!」

 

御白 シールド3

「S・トリガー、《光器マドレーヌ》!相手クリーチャーを全てタップします!」

「ターンエンド、アパリシオの効果でシールドを2枚増やし、回収はしない、ターンエンド」

 

ザガーン シールド4

 

御白は見た目以上に追い込まれていた。それもそのはずであり、自分の弱点を的確についてくるデッキだったからである。

「……1枚でもクリーチャーを残せば、増幅したヨビニオンや展開効果でまたクリーチャーを埋め尽くされる。複数処理ができるデッキじゃない私のデッキの天敵です」

「そのようだな。真名月から教えてもらった情報は正解のようだな?」

「……なんですって?」

「アイツは今、バロムと融合し始めてる。真名月はバロムの影響で少しだけ未来が分かるらしい。世界を破壊するために使う技能だが、これを使えば対策するデッキを作ることもできると。こんなに有利なデッキを作ってもらえて、我は幸せ者だ!」

「……そうですか。貴方がそのデッキを作ったなら、尊敬していたかもしれないのに。貴方が自分の意思でそのデッキを作ったなら、リスペクトできたかもしれないのに…!」

「なんだ?怒りは我の喜びの国では似合わないぞ?」

「ただ考えるのをやめたような人に、私は絶対負けません!ドロー!」

 

(勝つ方法は1つ、上からあのカードを引くこと!)

御白が見た山札の上にいたカード、それは《超天使(ハイパーエンジェル) ゴルドラン・ゴルギーニ》。

「行きますよ、ゴルドランさん!!」

「はい、どれだけ傷つこうと、全力で戦いましょう!」

「まずは2マナで《光器アメリア》を召喚、シールドを追加して、次のターン開始時に回収します!これでザゼ・ゼーンの条件達成!アンタップしてこのターン離れなくなります!」

 

御白 シールド4

「成程?」

「ハイパーエナジーでアメリア、アーテル、シロフェシー、マドレーヌをタップして2マナ!ゴルドラン・ゴルギーニを召喚です!」

 

ゴルドランとザゼ・ゼーンの2体が揃い、お互いの光が共鳴して強大な力をお互いに与える。

「ザゼ・ゼーンでアパリシオを攻撃!シールドを追加した後、ザガーンを次のターンまでタップさせ、破壊します!」

「ニンジャ・ストライク、《光牙忍 ライデン》」

「ニンジャ・ストライクは『手札から出る』クリーチャー…!!」

「その通り、出た時効果でザゼ・ゼーンをタップし、ヨビニオンでアパリシオをバトルゾーンに。アパリシオ1体は破壊され、ライデンは山札に戻るが、これで元通りとなる。何事もなかったようにな」

 

御白 シールド5

「……ターンエンド…!シロフェシーをアンタップします!」

 

ザガーンはニッコリと笑いを浮かべたのち、カードをドローした。

「我のターン、アクロアイトの効果で5マナで《法理の使徒サンアーマ》を召喚、相手クリーチャーを全てタップし、ヨビニオンでアクロアイト、《単騎連射(ショートショット) マグナム》をバトルゾーンに!」

「ゴルドランさん達が!それに、マグナム…!?相手クリーチャーが自分ターン中に出るのを封じる…!」

「あぁ、ヨビニオンをし続ければ、いずれ1枚採用のカードに辿り着くからな」

「これが大量ヨビニオンの行末…!」

「これで、チェックメイトだ、サンアーマでペトローバをハイパー化」

「………まだ、です!まだ、負けてません!!」

「アパリシオでシールドを攻撃」

 

御白 シールド4

「シールドトリガー無しです…!」

「ザガーンで追撃、Wブレイクだ」

 

御白 シールド2

「ぐうっ!Gストライク、アクロアイト!ハイパー化しているペトローバの動きを止めます!」

「その程度か!ザガーンでWブレイク!!」

 

御白 シールド0

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

ワルドバロムに殺されかけた時に考えたのは、夕哉くんならどうしたか。それが起きたからといってデッキ、戦況の何かが変わる訳ではないなのに、それを考えていました。

 

自分の記憶がなくなった世界のことを考えて、夕哉くんや火奈ちゃん達に会えなかったらどうなったか、嫌というほど理解させられました。自分は少しイヤな人になってて、見つからなかったものが沢山あって。何より、友達を失うのがすごく怖かった。実際に記憶を失わずに私達と離れた夕哉くんは、もっと苦しかったと思いました。

 

「だから………!」

「ゴルドランさんだけじゃ、私のこだわり『だけ』じゃ勝てない!だからこのカードを入れようと、私は思ったんです!」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

御白とザガーンの戦っていた辰登りの丘に光の雨が降り始め、それを食らったクリーチャー達が次々と破壊され始めた。喜びに狂っていたザガーンのクリーチャー達が次々と破壊され、一部のクリーチャーは正気にすら戻っていた。

 

「なんだ、敵味方問わず破壊する呪文、まさか!?」

「シールドトリガー、《アポカリプス・デイ》!しかし滅びるのは、貴方達だけです!」

「場にクリーチャーが6枚以上ある時、場のクリーチャーを全て破壊する。他のクリーチャーは破壊されてしまいますが、アーテルはアメリアを犠牲に生き残り、ゴルドランとザゼ・ゼーンは自身の効果で生き残ります!」

(今盤面を枯らされたら、即時打点を持たない我のデッキは詰まされる!)

「ザガーン2体のエスケープを使い生き残らせる!」

 

ザガーン シールド2

「しかしそれ以外は破壊され、このターンは生き残れます」

 

破壊される直前、シェケダン達の声が聞こえる。

「御白様、ゴルドラン様!絶対勝ってください!!」

「………ありがとうございます!勝ってきます!」

 

次々と光の雨によってクリーチャーが消えていく。そのクリーチャー達の応援の言葉にゴルドランは1体1体頷き返していった。残ったのはザガーンとゴルドラン、そして少数の部下だけ。

「なんだ光屋御白?今更罪悪感に苛まれているのか?」

 

ザガーンが煽るが、御白は動じない。

「私もドランさんに最近教えてもらいましたが、光文明は、別に倫理がどうとか言う文明ではありません。それは貴方が知っているはずです。光の信じる正義と平等が満たされるなら、闇文明とだって組む。場に6体以上が簡単に並ぶこのデッキと、アポカリプス・デイの相性はとても良いですからね」

「ほぉ?」

「多分私は、こんな風に自分から何かを捨てて、失わなければならない時はたくさん来るんだと思います。お父様とお母様の娘である以上、そして何より、そうやって使うカードを狭めたら、本当に必要なものを掴めなくなります!大好きなものを楽しめなくなります!だからせめて、前のお父様達のように冷酷になりきらず、失ったものも、覚えて、繋いでいきます!」

「そんなエゴで!!」

「幸せにしろと頼まれていないのにそれを押し付ける貴方も同じ!それを無視して笑顔という結果だけ産もうとする貴方を、私は許せません!私の、ターンです!」

 

御白はカードを引き、あのカードを場に呼び出す。

「《アストマープル-T3(テックスリー)を召喚!効果でコスト3以下のクリーチャーまたはタマシードを呼び出します、そして呼び出すのは単騎連射マグナム!」

「何!?」

「ゴルドランさんの展開効果とハイパーエナジー、どちらにも対応する強力なカードです!押入れで私を待っていてくれました!更に2コストで《パトファール-P4(ポリスフォー)》を召喚!ゴルドランさんを離れなくします!」

 

ゴルドランはヘイロゥから力を集め、光の巨大な光球を作り出した。

「ゴルドランさんでシールドを攻撃!シールドを追加してザゼ・ゼーンをアンタップします!」

その光球が、ザガーンのシールドを直撃する。

 

ザガーン シールド0

「Gストライク!《魔誕の覇者 ガジラビュート》!ザゼ・ゼーンの動きを止める!」

「まだ止まっていません!アーテル・ゴルギーニで、ダイレクトアタック!!」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

ザガーンが倒れ、訳のわからない場所に連れ去られていた小型のクリーチャー達は、正気を取り戻し逃げ惑い始める。

 

「大丈夫です、メカ・デル・ディネロの皆さんについていってください。必ず安全な場所まで届けてくださいますから」

 

最初は全く動かなかったクリーチャー達だったが、御白が何度も呼びかけ、ゴルドラン達も呼びかけに参加したことで、群衆は少しずつ動き出した。

 

「ゴルドランさん、多分クリーチャーが沢山いたところに、魔法陣の一部は隠されてますよね」

「そうでしょう。手当たり次第やるしかないですね」

 

そういって御白は自分のクリーチャー達に頼み、丘全体を探し回った。その途中で御白はクリーチャー達に謝っていたが、呼び出したクリーチャー達からは大丈夫と言われるのだった。

「なんか、もっと怒られると思ってました。辛い目にあったことには変わりないのに」

「御白さん、真面目すぎるところが出ていますね。まぁそんな御白さんだから、皆さんついてくるんでしょうが」

「そうなん……ですかね……」

「そうですよ。だから御白さんのお父様も、任せてくれたんじゃないでしょうか?」

「……ゴルドランさん、ありがとうございます」

 

少しの沈黙の後、御白はこう続ける。

「私、お兄様ほどでなくても、光屋コーポレーションの役に立ちたいなと思ってます。だから、その為には苦手な勉強や運動、いっぱい頑張ろうと思ってます」

「そうですか。私も御白さんに言わなければならないことが」

「………?」

「引退して、一線を退こうと思っています」

「!?え、今なんて……」

「勿論今すぐではありませんが、バロムの厄災を落ち着かせたら、引退して隠居するのもアリだと感じています」

「そんな……」

「ですが決して後ろ向きな選択ではありません。確かに原因にバロムからの負傷はありますが、人間と同じくクリーチャーには無限の可能性があります。引退した後の方が元気だったなんてこと、ザラにありますからね」

「そう……ですね……」

「でも御白さんの為に一緒にいることは変わりません。そこは安心してください」

「あ、安心って……」

「光文明は自分が守らなければ。そんな考えを無理にしなくても良いと感じたのは、御白さんがいたからですよ」

 

そう言い終えた時、ゴルドランは地下に埋め込まれていた魔法陣の一端を見つけた。大きな黄色の石であり、恐らくこれが喜怒哀楽の喜の力を注ぎ込む媒体なのだろうと推測した。

「これを、ぶっ壊せば!!」

 

ゴルドランが石を殴り壊すと、魔法陣の輝きが少し弱まり、街を徘徊するクリーチャー達の活気が少し落ちたように見えた。

「御白さん、夕哉さんのところにいきましょう」

「……はい!!」

 

御白は決意を胸に、また皇龍市を走り出した。

 

 




御白の!今日のカード紹介!
今日のカードは…《魔誕の騎士 ザガーン》!
自分自身がヨビニオンを持ち、手札から出したクリーチャーに更にヨビニオンを与える展開デッキの王様です!普通に使っても倍々ゲームでクリーチャーが増えますし、ニンジャストライクやシールドトリガーなどでカウンターで盤面を増やすことも可能。正直、本当に強かったです…。
次回、『怒りに溺れた者たちへ』
懐かしい皆さんと戦えて、よかったです!
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