デュエル・マスターズOverLord(オーバーロード)   作:シグレサメ

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皇龍市を奪ったデーモン・コマンド達を追い返すため、御白は魔法陣を護るザガーンと衝突し、どうにか勝利。魔法陣の1角を沈めたがまだ儀式は終わっていないと、御白は次の場所へと向かっていった。


怒りに溺れた者達へ

 

シイノは走っていた。皇龍商店街の中に魔法陣が展開されており、そこにデーモン・コマンドがいると言う情報を遥風から受け取ったのだった。そこはシイノが異世界から落ちてきた場所であり、シイノは浅からぬ因縁を感じたのだった。

 

そこには沢山のクリーチャー達が暴れていた。暴れていたと言っても略奪だったり、形式だったものは何もない、無秩序が広がっていた。クリーチャー達の怒声が響き渡り、あるクリーチャーが同族のクリーチャーを殴りつけ、それに怒り狂ったそのクリーチャーがまた別のものを怒りのままに殴りつける。

 

「酷い……」

 

シイノは自分の滅んだ世界のことを考えた。人々からタブラの記憶が消え、その信仰に強く紐づいていたシイノの世界の記憶も消えた。人々はお互いの階層や文化を失い、お互いに傷つけ合い始めた。不安と文化、考える力を失った人々の行き着く果ては、ただ力を浪費し倒れていくだけであると、シイノは嫌と言うほどわかっていた。

 

「怒り、それは最も強いエネルギー。これを真名月様とバロム様に見せればきっと喜んで貰えることでしょう」

「……何、貴方」

「自分は《魔誕の猛将ダイダロス》と申します。貴方が異世界から現れたデュエリストですね?話は予々聞いております」

 

とても周りの怒りの感情を支配しているとは思えないそのクリーチャーの立ち居振る舞いに、シイノは困惑する。

「貴方からここを守らなければ、完全な人間界のクリーチャー世界化を止められてしまうそうですね」

「知ってるなら話が早い」

 

シイノはそう言ってデッキを取り出すが、ダイダロスはそれに待ったをかけた。

「確かに決闘が一番早いですが、場所を移しましょう。ここではクリーチャー達の横槍がいつ来るか分かりませんからね」

「……わかった」

 

そう言って二人は商店街から少し離れた大通りに出た。

「ここならいいでしょう」

「質問したい、貴方は、怒らないの?」

「怒る?よく分かりませんね。怒る理由がなければ怒ることはありません。辛いことがあった、許せないことがあった。それがないのに怒るのも不自然でしょう」

「……じゃあ、あのクリーチャー達は」

「怒りのエネルギーを得るため、起こり続けてもらっています」

 

ダイダロスは自身の体についた大きな砲台をシイノに見せつける。

「この中にはクリーチャーをひどく興奮させる液体が入っています、これをバロム様達の力で増幅させれば、クリーチャー達が怒り狂い、エネルギーが手に入りますからね」

「そのクリーチャー達は、どうなるの」

「いずれは力が尽きて死ぬでしょうが、また新しいものを持ってくれば問題ありません。クリーチャー世界の人口問題も解決できて、一石二鳥ではありませんか」

「……そう。もう話すことは、ない」

「どうしました?怒っていますよ?私が興奮剤を使っていないのに」

「そんな風に、人を踏みつけにする奴は、わたしが許さない」

「そうですか。ならもう質問は終わりですよね」

 

「「デュエマ、スタート」」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

シイノとダイダロスのデュエマは、シイノの先行で幕を開ける。一番信頼できる自然のゼニスを使い水晶マナを貯めるシイノに対し、ダイダロスもマナ加速で追いつこうとする。周りが怒り狂ったクリーチャー達で溢れる中、2人は落ち着いた立ち上がりとなった。

 

(やったのは真名月で、別人だってわかってる。でも、こいつを放っておいたらわたし達と同じ悲劇がまた起きる。絶対に、止めないと。……なのに、頭が凄く落ち着いてる、なんでだろう……)

 

シイノ シールド5 マナ4(水晶マナ3)

《Dの寺院 タブラサ・チャンタラム》

ダイダロス シールド5 マナ3

 

「自分のターンです。3マナで《カオス・チャージャー》。ダイダロスと《混沌の獅子デスライガー》を手札に加え、ターンエンドです」

「わたしのターン。まず3マナで《シャングリラ・クリスタル》。水晶マナが2枚あるから2ブースト。更に3マナで《呪華のサトリ カナザー》を召喚。カナザーの登場時効果で山札を4枚捲り、《「戦鬼」の頂天 ベートーベン》を手札に。ターンエンド」

 

ダイダロスは不敵に笑い、ターンを貰い受ける。

「自分のターンですが、ここで自分、《魔誕の猛将ダイダロス》を召喚します。効果でヨビニオンを発動させます。山札をめくって行って……。《絶速 ザ・ヒート》をバトルゾーンに。効果で山札の上から3枚を墓地に置き、墓地から《覇帝なき侵略 レッドゾーンF(フォーミュラ)》を手札に」

「やっぱり侵略デッキ……!」

「ダイダロスで攻撃する時、攻撃時効果でパワー3000以下のカナザーを破壊」

 

ダイダロスがカナザーを簡単に殴り潰し、シールドに突っ込んでくる。

 

シイノ シールド3

「シールドトリガー、ない」

「ならザ・ヒートで攻撃する時、侵略を発動。覇帝なき侵略 レッドゾーンFに進化させましょう。そのままシールドをWブレイク」

 

シイノ シールド1

「シールドトリガー、《偽りの名(コードネーム) プラット》!レッドゾーンFをマナゾーンに!」

「成程、ターンエンド」

「わたしのターン」

 

シイノはそれを見てカードを引き抜く。しかしそこにあったのは、《蝿の王 クリス=タブラ=ラーサ》。

「なんで………!?」

「シイノ、私を使わなければ、あの者に殺されるのです、私を使いなさい」

「使わない。そう言って、また乗っ取る!」

「私が無ければ何もできない小娘が、何を意固地になっているのですか」

「違う、貴方の力にはもう頼らない、来て、ベートーベン!」

 

シイノは振り切るようにベートーベンを召喚する。しかし頭はタブラ=ラーサがまた勝手にデッキに入り、自分の意識を乗っ取ろうとしていることでいっぱいになってしまっていた。

「ベートーベンの召喚時効果で山札上3枚を全てマナゾーンに!」

「何をしているのです、カナザーを回収しなさい、勝つ気がないのですか!?」

「……ベートーベンで、ダイダロスに攻撃!」

 

シイノが攻撃を命じ、ベートーベンがダイダロスを打ち倒したものの、一切ダイダロスは動じない。それどころか、

「成程、それがタブラ=ラーサですか。確かに関係が悪そうですね。そんなことを言っては、相棒も悲しんでしまいますよ?」

「五月蝿い、これはわたしの問題!」

「そうですか、フフフ……」

 

このように焚き付けられ、完全にペースはダイダロスのものとなっていた。

「それではこちらのターンです。再びダイダロスを召喚。効果で再びザ・ヒートをヨビニオンし、ザ・ヒートの効果で墓地から《R・S・F・K》を手札に」

「次のターンに出る火のコマンド……!」

「いやぁそんなことより、墓地を見た方がいいんじゃないですか?」

「墓地…?まさか……!」

「ザ・ヒートでベートーベンを攻撃する時、《禁断の轟速 ブラックゾーン》に2枚侵略」

「2枚も…!」

「登場時効果で最もパワーの小さいクリーチャーに封印をつけます。これを2回、これで封印がついたクリーチャーには攻撃ができないので、バトルは成立しませんね」

「そんな、ベートーベンの攻撃誘導が、こんな簡単に……!」

「ダイダロスでシールドを攻撃、流石に侵略はもうありません」

 

シイノ シールド0

「トリガー、無し……!」

「ターンエンド。これを再現するのには時間がかかりましたが、良いデッキになりましたよ。バロム様の別次元に追放する力のようなものですからね」

「………わたしのターン」

 

「まだわからないのですか。私を使えば、私に任せればこんな苦戦をせずに勝っていた。今からでは打点が足りない」

「………静かにしていて!」

 

自分がどうすればいいのか、シイノが一番分かっている。この場を切り抜ける『だけ』であれば、タブラ=ラーサを前のターンに革命チェンジして呼び出せば良かった。相手の手札を無くせばほぼ返される事がなかったのは確かであったからだ。だが、シイノを乗っ取り、真名月が自分たちの世界に来ずともこの神は搾取を続けていた。そんな割り切れない思いが、シイノを思いとどまらせていた。

 

「ごめん夕哉、わたしは貴方みたいに強くない……!」

 

「わたしは結局、ただの役立たずの生き残りだ……!」

 

『大丈夫よ。夕哉とシイノちゃん達が守ってくれるんでしょう?』

 

暁美が言った言葉がこだまする。

 

「ごめんなさい、ごめんなさい……!!」

 

シイノがそう言いながら頭を抑え座り込む。痺れを切らしたタブラが意識を乗っ取ろうと身体に取り憑いた時、シイノの意識はぷつりと切れた。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

目を覚ましたシイノの目に飛び込んできたのは、洞窟の中だった。自分が生まれた、あの世界の洞窟。奥から音が聞こえてくるのに気づき奥へ奥へと進むと、かつての仲間達が食べて、歌い、喋っていた。

 

「皆……!!」

 

そう言ってシイノは近づくが、その仲間達は反応を示さない。意を決して触ってみると、その手は仲間達の体をすり抜け空を切った。

 

「やっぱり、夢……」

 

分かっていても、辛いものであった。夕哉達の力でかなり立ち直ってきたが、この景色を知っているのは正真正銘自分だけだ。そんなことを考えたら余計寂しくなって、だんだんと体から力が抜けていく。膝から崩れ落ちたシイノが座り込もうとした時、後ろからぽんぽんと肩を叩かれた。

 

「お姉……ちゃん…!?」

「そう、あなたのお姉ちゃんのシスロよ。元気してた?」

「元気してたって…!お姉ちゃんは、お姉ちゃんは……!」

「うん、分かってる。『ここにいる人たちに殺されて死んだんだ』でしょ?」

「………!」

 

目の前にいる姉とは少し違った幻影に、シイノは縋り付く。

「でも、あの子達に近づいたあたり、貴方は皆を仲間だと思ってる」

「当たり前……!だって、全部、真名月が……!!」

 

シスロはシイノに優しくハグをし、背中をさすりだした。そのリアルな感触に、今目の前にいる姉はただの夢ではない、少しだけ、『本当の神様』がくれた奇跡なのだとシイノは感じた。

「大丈夫。どんなに辛い事が起こっても、そこに戻らなかったとしても、貴方の中でその時間は生きてる。今の貴方の大切なものも」

「……夕哉達の…こと……?」

「そう。……見ないうちに、強くなったね。背も高くなって、戦って」

「……あっちの世界で、ご飯も食べれるようになった」

「そっか。じゃあもっとご飯を食べられるようにしないとね」

「………うん」

 

シスロはシイノから手をゆっくりと、名残惜しそうに離す。シイノが後ろを振り向いた時には、シスロの声は残響しか残っていなかった。しかし。

「ねぇ、シイノ!折角なら、私達にできなかったことをやって!」

「……え…?」

「神様と一緒に戦うの!今や私たちの世界のことを覚えてるのは貴方と神様だけ。だったら、同じ気持ちもどこかで芽生えるんじゃない?」

「そんな……!」

「大丈夫!最初からそうじゃなくていい、とにかく、前を向いて進んで!『私達』のシイノ!!

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「わたしの……ターン!!」

「何!?私の……乗っ取りを……!?」

 

シイノは目を見開き、ほぼ同化していたタブラを追い出そうと精神を強く持つ。タブラがもう一度乗っ取り直そうとし、身体に激痛が走るが、シイノは必死で意識を手放さない。

 

「何故だ……私を…!!」

「わたしは、あなたを許せない……、けど!私たちの世界を奪ったバロム達、真名月達を倒したいと言う気持ちは同じ!今までの思い出だって、少しは一緒のことを思い出せる!だから……!」

 

(夕哉とジャシンの関係になれなくても、わたしは……)

『私は、タブラと一緒に歩いて行く!!』

「まさか、これが、契約……!!」

「方法は夕哉達に教えてもらってた。あとはわたしの踏ん切りだった。タブラ、お墓まで付き合ってもらうよ」

「シイノ……!!」

 

「再び水晶ソウルを使って13マナ、ベートーベンを召喚。効果で山札の上から3枚を見て、《「奇妙」の頂天 クリス=バアル》を手札に、残りをマナゾーンに。更に《水晶設計図(クリスタル・ディスティニー)》を2マナで詠唱、山札上4枚からクリス=バアルを手札に。そしてG・0、水晶マナが5枚以上あるのでクリス=バアルを召喚、ここでタブラサ=チャンタラムのDスイッチを発動!」

 

チャンタラムが急激にぐるぐると回転し始め、ダイダロスはさらに吹き飛ばされかけるが、近くの柱を持って持ち堪える。

「あなた、何を……!!」

「ゼニスを召喚した時、水晶マナを全てアンタップ。そして自然マナと復活した水晶マナを使い、《偽りの名 ワスプメリサ》を7マナで召喚、水晶武装4で、クリーチャーの出た時効果を発動させない」

「そんな、簡単に……」

「水晶設計図で2枚目のバアルを回収、そのまま召喚して再び水晶設計図を回収、そして唱えて3枚目、4枚目をバトルゾーンに」

「場にゼニスが、5体も……!」

「ベートーベンでダイダロスを攻撃」

「ぐうっ…!」

 

シイノの鮮やかな動きに、ダイダロスは付いて行くので精一杯であった。そして突然回転が止まったかと思った瞬間、蝿の王がダイダロスのシールドの目の前に現れていた。

「バアルから革命チェンジ、《蝿の王 クリス=タブラ=ラーサ》!お互いの手札を全てマナゾーンに置き、こちらの水晶マナ枚数以下のコストを持つ呪文を唱えられなくする。こちらの水晶マナの数は、もう教えなくても良さそう?」

「………人を、人を見くびったようなことを言うなぁぁああ!」

 

ダイダロス シールド0

(クリーチャーも、呪文も…!何も、できない……!!)

「少し化けの皮が剥がれたら、誰もがこんなふうになる可能性があるのを、わたしは知ってる。でも、化けの皮を残して、人と優しく、楽しい世界を作って行くのも、また人間なんだよ」

 

タブラ=ラーサが4本の大きな腕と2本の小さな腕から力を集め、大きな水晶の塊を作り出し、クリス=バアルがその水晶の塊を受け取る。

「やめろ、俺を殺すのか、そんなことしていいと思ってるのか、そんな下を見るような目で、俺を見るなぁぁあああーーー!!!」

「最後に本音が言えて、よかったね」

 

巨大な水晶の塊が、ダイダロスを押し潰した。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

後に残されたクリーチャー達は正気に戻り、シイノはそのクリーチャーたちが元の場所に帰るようにゼニス達を呼び出して誘導していった。その途中でグレイテスト・グレートが魔法陣を見つけ、グレートに命じて壊したところで、シイノは商店街の大通りから見える皇龍市の街並みを見渡した。

 

「……この力も、タブラのもの。でも、タブラを使ったのに、暴走しなかった」

 

夕哉とジャシンのように上手くいった、とは断言できなかった。あれ以来タブラは何もこちらにコミュニケーションを取ろうとしてこないし、自分自身、そう何度もタブラを使える自信がない。だが。

 

「実際に一回使えたことと、あの夢は、絶対忘れない」

 

そう言ってシイノはクリーチャー達が避難したのを確認すると、夕哉達の元に向けて走り出したのだった。




シイノの、今日のカード紹介!
今日のカードは…《魔誕の猛将ダイダロス》。
召喚時ヨビニオンしてスピードアタッカーとガードマンを与えて、更にダイダロス本人の攻撃時に4000以下を破壊する。とにかく攻めっ気の強い恐ろしいカード。
次回、『哀しみに狂ったもの達へ』
タブラの力に、もう飲まれないようになれる。
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