デュエル・マスターズOverLord(オーバーロード)   作:シグレサメ

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緑はデスライガーというクリーチャーと対峙し、デュエマをしようとするものの、緑の本当の親の記憶を刺激され、大ピンチに陥る。そんな中早く決着をつけたシイノが救援に現れ、どうにか勝利を収め切るのだった。


楽しみを捨てた者達へ

 

緑とシイノがデスライガーを倒した少し前の話に戻る。

 

飛水は走っていた。夕哉達と離れてから10分ほど、皇龍高校の屋上に、大きな魔法陣があると遥風に言われ、急いでそこまでやってきた。そこには1匹のデーモン・コマンドがおり、そこで魔法陣を守っていた。

 

「さて、吾輩を楽しませるといい」

 

皇龍市中からキラキラしたものをぐちゃぐちゃにして、ステージにしたようなものがそのクリーチャーの正面に立てられている。そこで水のデーモン・コマンド達が慌てふためきながら、芸のようなものを始めた。しかしそれは段取りがめちゃくちゃで、とても芸とは言えるものではなかった。挙句最後にはガラガラとぶつかり、ステージが倒れてしまった。

 

「面白く無い、吾輩を愚弄する気か!」

 

そういうとそのクリーチャーは何梃も持つ銃から巨大な渦を呼び出し、その中にクリーチャー達を消してしまった。

 

「さて、次に吾輩を楽しませるのは誰か…」

「ようクリーチャーさん、一戦俺と遊ばないか?」

 

飛水がそのクリーチャーに声をかけた。そのクリーチャーは待っていたとばかりに手を叩きながら、

「吾輩のところに来たのは青海飛水か!楽しい遊びができそうだのぉ!」

「……あのクリーチャー達、どこ飛ばしやがった」

「早い話ブラックホールじゃ。ワルドバロム様から貰ったもので、ゲームに勝ったりして『完全に力で上回ったもの』を超次元に送ることができるのじゃ」

「そうか。それはお前が楽しむために必要なのか?」

「勿論。面白く無いものが視界に映っていては不愉快だ。お前ら人間も、楽しさに水を差すものは嫌いだろう?」

「あぁ、それで直接消そうとするのはちょっと話が違うだろうけどな」

 

飛水の毒を含んだ言い方にそのクリーチャーは眉を顰める。

「お主も、要らなかったら消すとしよう。吾輩の名前はオルゲイト、《魔誕の斬将オルゲイト》。せめて楽しいものを見せておくれ」

「楽しかったら良いな、そう思う間があればいいが」

 

「「デュエマ、スタート」」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

オルゲイトの先行で始まったデュエマは、お互いにクリーチャーを横並びさせる形で進んでいく。飛水は普段のマジックでは無く、違い水と闇をマナに置き、ムゲンクライムのカードをマナに置きながら進行していく。オルゲイトはそれに水単色のデッキで対抗する。その戦法を見て、飛水はどこか嫌な予感をさせながら、デュエマを続けるのであった。

 

オルゲイト シールド5 マナ2

《ビリビリ・ジェリー》、《ツイン・シックス》

飛水 シールド5 マナ2

《AQ Vibrato》

 

「吾輩のターン、ハイパーエナジーで4マナ、ツイン・シックスの効果で1マナ軽減し、2マナで《魔誕の斬将オルゲイト》を召喚」

 

大量の銃を構えた悪魔が、飛水の方に銃口を向けながらバトルゾーンに現れる。そして突然AQ Vibratoの方に銃口を向けたかと思えば、彼はオルゲイトに撃ち抜かれていた。

「オルゲイトの登場時効果、《AQ Vibrato》を手札に、ターンエンド」

「ぐっ!だがこんなの…!」

「分かっているぞ、マナに埋めたムゲンクライムのカードは、クリーチャーがいなければ使えない」

 

「……俺のターン!3コストで《終止の時計(ドゥームズデイ) ザ・ミュート》!登場時効果で2枚引いて1枚捨てる!」

「おー、面白い見せ物だ」

「お前、何を言って……」

「それを、使わせてもらうぞ」

 

オルゲイトはミュートから銃によってエネルギーを吸い取り、その銃を再度放つことで力を発揮させる。

「こちらも2枚ドローして1枚捨てる。ふむ、やはり良い見せ物だ。吾輩の銃はクリーチャーの輝く瞬間を切り取り、それを自分が使うことができる」

「お前……!」

(登場時効果のコピー?手札交換したらあっちも手札交換、除去飛ばしたらあったからも除去か。厄介だな…)

 

「吾輩のターン、再びビリビリ・ジェリーとツイン・シックスをタップし、《楽しみの夜 フミビロム・パラダイス》を召喚」

「な……!?」

「ふむ、最高に面白いのう。真名月の亡くなった部下のカードらしいが、これをそのままにしておくのは勿体無い。擦り切れるまで、吾輩が使ってやるとしよう」

「………!!」

 

フミビロムは本を広げ、いつも通り知識を得ようとしている…。ように見えた。その実『ただ本を広げているだけ』であり、その魂は、もうどこにも存在しない。

「フミビロムの登場時能力、3枚ドローし2枚捨てる、そして手札から捨てた《楽識 コフミ》のコストを参照し、3コストのミュートを手札に」

「くっ、ずっと盤面が残らないのかよ」

「オルゲイトでWブレイク!」

 

飛水 シールド3

「シールドトリガー!《逆転の影 ガレック》!」

「おっと?隠し玉を引くのが早すぎたか?」

「こいつはパワーマイナス3000、墓地肥やし、3以下のクリーチャーの蘇生。これを使うことができる。俺が使うのは除去2回と蘇生。ツインシックスとビリビリ・ジェリーを墓地に送り、墓地からAQ Vibratoを復活させる!」

「成程。それならこちらもそれを真似よう。使うのはパワーマイナスと蘇生2回。Vibratoを墓地に送り、先ほど破壊された2体を蘇生する。これで元通りだな?」

「だよな……」

「ターンエンド。中々楽しめているぞ?」

「……俺のターン」

 

飛水は一度大きく息を吐き、考え出した。

(やっぱりきついのはオルゲイトの存在。こっちが強力な能力を使えば使うほど、自分の方に跳ね返ってくる。そこにフミビロム・パラダイスの馬鹿みてぇなパワー、ブロッカーばかりの小型も相まって、殆ど損害なしに除去をするのは現実的じゃねぇ。だったら……)

「飛水、大丈夫ですか。やはり私達を使ったデッキの方が…」

「我たちも演算をしよう、だから……」

「いや、演算はいい」

「「どうして!?」」

「これは俺のいろんなことへのけじめだ。俺に夢だけ託して勝手に死んでいった流狼の形見、あのままじゃあんまりだろ。だから…!」

 

そう言う飛水を、Dracheは後ろからじっと見つめている。

「自分一人で立つことをこんなに怖がっていた飛水が、自分の判断で戦えると言っているんだ。2人とも、飛水に任せて見ないか」

「……一人で考えるなと言ったのは飛水だ」

「ですが、彼を信じないと言うのも、またこれまでの論理に反します」

「……人間って、たまに合理的じゃ無いそうだ。それに賭けるのも、悪く無い」

 

飛水はカードを引き抜き、オルゲイトにカードを見せてそのまま攻撃を始める。

「力借りるぞ礼児、vibratoを召喚、ドローして、《飛翔龍(フライングブイ) 5000VT》を、お互いの場の数だけ軽減して2マナで召喚!」

 

巨大なギターを持ったまるでドラゴンのような大型のクリーチャーがギターをかき鳴らし、強烈な音波に耐えられないクリーチャー、ビリビリ・ジェリーとツイン・シックスをどんどん吹き飛ばしていく。

「こいつの能力はパワー5000以下のシャットアウト!相手の手札に戻し、次のターンまで呼び出せなくなる!」

「だが、そいつは登場時能力!吾輩も真似ることができる!」

「あぁ、強いやつしか残れない、デスマッチと行こうぜ」

 

オルゲイトが5000VTの音波を跳ね返し、それは飛水の小型クリーチャー達にもぶつかる。結局場に残ったのは、飛水の5000VTと、オルゲイトが持つフミビロム・パラダイス、オルゲイトだけだった。

「使う前よりお前の盤面が減った、面白い見せ物だ」

「お前もハイパーエナジーが機能しないじゃねぇか、随分と辛そうだな?」

「ふん、マナチャージ。《悪魔世界の激流(ワルド・ストリーム)》5コスト以下のヨビニオンを発動する呪文だ」

 

ヨビニオンでめくれたカードは、《ツイン・シックス》。

「5000VTの効果があってよかった、ヨビニオンは不発だ」

「だが!クリーチャー1体、オルゲイトは選ばれず、攻撃されなくなる!」

「な……!?」

「理解して青ざめたな!いまここでブロッカーを引かない限り、吾輩のダイレクトアタックは成立する!何より、次のターンは反射した5000VTの能力でクリーチャーを呼び出すことができない!それが無くても反射が発動する!これで終わりだ、青海飛水!フミビロム・パラダイスで攻撃!!」

(8コストは引かれてないが、ここでトリガーが来なきゃお終いだ!)

 

飛水 シールド0

「シールドトリガー、《罪無 ドロキオ垓》!タップした時相手1台を止められるブロッカーだ!」

「成程、これで攻撃を凌ぐわけか!!」

 

オルゲイトが拍手をするが、飛水は苦い顔を続けている。

(ドロキオ垓があっても『攻撃が受かるだけ』。次のターンにあの2体を倒し切れる保証は無いし、何より『あの呪文』が使えない。だったら……)

「今から、もう1枚引くしか無い」

「ほぉ?これでも十分なのにまだシールドトリガーを望むか」

「まぁな。俺達は欲張りなんだよ。ボルシャックを、皇龍市を、流狼を!こんなめちゃくちゃにされといて黙ってられるか!来い、シールドトリガー!」

 

飛水の引いたカードは、《未ダ識ラヌ事象コソ我ノ楽シミゾ》。

「その呪文は、フミビロムの……!」

「あぁ、それでカードを1枚引き、3コスト以下の《バブル・ボール》と《終末の時計 ザ・クロック》を踏み倒す。これでクロックの効果が発動し、お前のターンはこれで終わりだ!」

「吾輩のコピーから逃げ切っただと!?」

「ちゃんと芸が終わるまで待っててくれてありがとな、オルゲイト『さん』!俺のターン!」

 

飛水はカードを引き抜き、流狼から託されたカードを高らかに宣言する。

「呪文、《♪ハックより 一時ずらして じゅうとなな》!これは場にいる数だけコストが下がるハイパーエナジー呪文。今俺の場には4体のコストの異なるクリーチャーがいるから、それによって8コスト下がり、5コストで詠唱。数字の7を宣言し、墓地を7枚増やさせてもらう」

「その数字に何の意味が…!」

「ねぇよ、強いて言うなら俺が7って数字が好きなだけだ。その効果でミュートで肥やした墓地から、《サイバー・J・イレブン》をバトルゾーンに!」

「サイバーJイレブン?場に11枚のクリーチャーで特殊勝利ができるカード…」

「解説ご苦労さん、そしてそのままターンエンド。その時、この呪文は真価を発揮する!バラバラエティ3!追加ターンの獲得だ!」

「なんだと!?」

 

飛水が高らかに追加ターンの宣言をすると、オルゲイトの周りをクリーチャーが取り囲み始める。彼らがエネルギーをJイレブンに集め始めたのを見たオルゲイトは次のターンに11体の水のクリーチャーが揃った瞬間、自分の負けであることを悟る。

「しかし、次のターンに6マナで後6体並べる!?それはかなりの難題なのでは無いか!?」

「それ、本気で言ってないよな?5000VTのコピー効果も切れた、俺のターン、たっぷり楽しませてやるよ!」

 

飛水がカードを引き抜き、クリーチャーを大量に並べ始める。

「まずは《ツイン・シックス》を召喚、続いて《罪無(クライム) ヴォダラ垓》をツインシックスとバブルボールをタップして2マナでムゲンクライムで召喚、2枚ドローする」

 

飛水 クリーチャー7

「くそ、除去をできるようなカードを出してくれない…!」

「そしてヴォダラ垓をタップしてムゲンクライム。1マナで《罪無(クライム) ビカビカ兆》を墓地からバトルゾーンに召喚」

 

飛水 クリーチャー8

「はは、やはり無理だった!後1マナでクリーチャー3体を並べることはできない!」

「できるんだよな、相棒なら」

「!?」

「場のターボ兆、クロック、5000VTをタップし、手札からハイパーエナジーで6軽減!《爆藍月 Drache der’Zen》を召喚!こいつの能力は、手札または墓地からコスト5以下の呪文の詠唱だ」

 

飛水 クリーチャー9

これを聞いてオルゲイトの顔が一気にサァッと青ざめる。あと2体クリーチャーを出すだけなら、簡単な方法を、もう彼は見ているからであった。

「呪文、《未ダ識ラヌ事象コソ我ノ楽シミゾ》!カードを1枚引き、ツインシックスとAQ vibratoをバトルゾーンに!」

「いや、Dracheの登場時効果で呪文を唱えた!この能力をコピーs…「まだ、ライブは終わってないぞ?」

 

飛水 クリーチャー11

オルゲイトは逃げ出そうとしたが、そこをJイレブンが立ち塞がり、10体のクリーチャーからもらった力で作り上げたサッカーボールをリフティングしている。

「待ってくれ、やめろ、今度は吾輩がお前を楽しませるようなクリーチャーを探す、だから、やめてくれ……!」

「俺からの要求は一つだ、流狼の形見、フミビロムを返してもらう」

 

そう飛水が言うとJイレブンはサッカーボールを思いっきり蹴り込み、それはオルゲイトに命中する。サッカーボールの回転はどんどん威力を増していき、そのまま屋上のフェンスに、まるでゴールネットに突き刺さるボールに巻き込まれるように、オルゲイトは叩きつけられたのだった。

 

「Drache、メイさんジンさん、魔法陣の端っこを探すとしますか」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

皇龍高校は何度も通っているため、カクメイジンがすぐに座標を割り出し、すぐに魔法陣の端、青色の石が見つかった。それをDracheがハイクの力で無力化する。それを見て一息ついた飛水は、倒れて気を失ったオルゲイトからフミビロムのカードを引っ張り出すのであった。

 

「…まぁなんつーか、こんなにスッキリしないかって感じだな」

「失ったものは帰ってこない。当たり前のことだが、それを心の底から受け入れられる者など、存在しない」

「確かにな。皆大事なものがあるわけだもんな」

「自分本位な者は、やがて誰にも助けてもらえず消えていく。これも演算の中に入れるべきだろう」

「オルゲイトぶっ飛ばした後だと説得力が違うな」

「飛水。この後どうしますか?」

「どうするつっても、公輝さんにオルゲイト回収してもらって、夕哉のサポートに回る感じかな……」

 

そこまで行った時、北の方で爆音が起きる。

「……は…?」

 

飛水の顔が一気に青ざめる。あの場所は、公輝達が仮初の拠点にしている場所、何より、火奈や家族達が避難している場所だった。

「嘘だろ、おい……!!」

 

飛水はそのまま走り出した。大人達からの連絡は来ない。携帯を取り出しグループ通話をつけ、バテてきたのでカクメイジンに乗せてもらいそのまま北へ突き進む。

 

「くっそ、夕哉と緑にも連絡つかねぇ!」

『飛水、わたし達も戻ろうか?』

「シイノも光屋も緑と夕哉のサポート行け!これで救援している間にワルドバロムが完全に魔誕したら、避難所とか関係なくゲームオーバーだろうが!」

『でも、飛水くんは大丈夫なんですか!?』

「訳あってデュエル内でカクメイジン使ってないから余裕だ、とにかく行ってくる!」

『わ、分かりました!!』

『お互い、無事で』

「あぁ、頼んだ!」

 

飛水はそう言ってカクメイジンに乗って避難所の体育館までやってきた。しかしそこまでの階段を上がろうとした時にいたのは、多数の蛇のようなクリーチャー。

「ZFfsQrGAiTxm」

「LQtAeeTZScSD」

 

「言葉がわかりません、恐らく真名月が別の世界から連れてきたクリーチャーでしょう」

「だろうよ……。こいつら倒さなきゃ中に入れねぇなら、3ターンで決着をつける!いくぞ、メイさんジンさん!」

「はい!」「おぉ!」

 

飛水はデッキを取り出し、クリーチャー達に向かって行った。




飛水の!今日のカード紹介!
今日のカードは…《爆藍月 Drache der’Zen》!
7コストのクリーチャーで、ハイパーエナジーを持ってるクリーチャーだ。手札または墓地から5以下の呪文を唱えることができるから、あんな風な離れ業ができたわけだ。…Dracheとフミビロムに感謝しないとな。
次回、『涙すらも武装に変えて・前』
避難所がやられたら終わりだ、絶対に辿り着く!
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