デュエル・マスターズOverLord(オーバーロード)   作:シグレサメ

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火奈は避難所に現れたクリーチャー、イミッシュ・イツァヤナと衝突、遥風達から防護盾を貰い戦うことに。どうにか勝負を続ける火奈が戦う中、ボルシャック・ドリームドラゴンから《轟炎の竜皇 ボルシャック・カイザー》を呼び出すのだった。


涙すらも武装に変えて・後

 

「お前が、俺を目覚めさせたのか」

 

火奈の目の前に現れたドラゴンの第一声は、今の環境に戸惑うものであった。

 

「ここはどこだ、お前は、クリーチャーなのか?」

「え……。違うよ、人間!赤坂火奈だよ!」

「どうやらそいつはお前のことを覚えていないようだぞ?」

 

イミッシュの煽りを火奈は聞き流しながら、カイザーの身体をゆする。

「ねぇ、思い出せない?あたしのこと、この世界のこと!」

「……わからない、何故俺はここにいるのか。何故、この世界はこんなにもニンゲン、とやらで溢れているのか」

「ここは人間の世界なの、でも、カイザーは人間にもクリーチャーにも優しくて、あたしたちのために助けてくれて…」

 

そう言っても、カイザーの目には火奈は映らない。火奈の目から、涙が流れ出していた。

「………ごめんね、急に呼び出して」

「分からない、何故こんなにも涙を流す。すまない、何も思い出せないんだ。俺は、君と会ったことがあるのか」

「ごめんなさい、あたし……」

 

「おい、火奈!!」

 

突如イミッシュの後ろにいたラマト・カーン達を、ある2頭のドラゴンが吹っ飛ばす。《芸魔王将 カクメイジン》に乗って、飛水がここまで戻ってきていたのだった。

 

「散々ぱら俺に諦めるなつって自分は諦めるのかよ!」

「だって、カイザーはあたしのことを覚えてない、前と別人なんだよ…」

「そんなことねぇ!生まれ変わりで少し変わっていたとしても、カイザーはカイザーだろ!何より、また巡り合うことを信じて頑張っていたのはお前自身じゃねぇか!お前が一番最初に諦めるんじゃねぇよ!!」

「飛水……」

 

火奈は、カイザーを見てこう言った。

「思い出せないなら、1歩ずつ。クリーチャーとその相棒の繋がりが大事なんだよね。カイザー」

「………」

「デュエルを、続けるよ」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

火奈 シールド0 マナ9

《ボルシャック・ドリームドラゴン》×2、《ボルシャック・栄光・ルピア》、《ボルシャック・大河・ルピア》、《轟炎の竜皇 ボルシャック・カイザー》

イミッシュ シールド5 マナ9

《イミッシュ・イツァヤナ》、《エツナブ・ナワル》

 

「ドリーム・ドラゴンでのシールドへの攻撃は続行してる!ここは意地でも通す!」

 

イミッシュ シールド3

「トリガーなしだと…」

「よっし!これで火のクリーチャーが5枚、あれがいけるぞ、火奈!」

「うん、ボルシャックカイザーのシビルカウント3、スピードアタッカー、バトル中パワーをプラス50000!更にシビルカウント5、攻撃時にアンタップ、無限攻撃だよ!」

「なんだと……!?」

イミッシュは戦慄する。土壇場で復活したドラゴンが、ここまで強力であることに焦っていた。

 

「ニンゲン、俺のことをどこまで知っている?何より俺はその力の呼び出し方を知らない。お前の期待には添えない」

「大丈夫、あたしとあたしのクリーチャー達がサポートする。カイザーのことなら、誰よりも知ってるよ。カッコいいところ、カッコ悪いところ、面白いところ、素敵なところ、全部ね」

「………。昔の俺は、なんだったんだ」

「ゆっくり思い出して行こうよ、それがきっとあなたの力になる。ボルシャック・カイザーでエツナブに攻撃!アンタップ!」

 

ボルシャック・カイザーがエツナブに火でできた槍を投げつける。それは一撃でエツナブを仕留め、一瞬にして焼き尽くす。

「そう、そんな風にロマノグリラやVolVal8を倒してくれたの!あたしあの時契約とかでいっぱいいっぱいだったけど、すごくカッコよかったの、ずっと覚えてる!続いてイミッシュに攻撃!」

「そのまま記憶を戻させてたまるか!『お前だけ、元に戻してたまるか』!!」

「そんな風に人の足引っ張っているうちは、そんな都合のいいことなんて起きやしねぇよ」

「……知ったような口をぉ!」

 

飛水の言葉に集中を欠いたイミッシュを見計らい、カイザーはイミッシュに飛びかかる。イミッシュは自然のマナから作られたビームを放つが、それをカイザーは素手で払いのける。

(身体から力が湧き続ける、これは一体……)

「神谷祈雨ちゃんに会って、初めて負けて。負けるもんかーって2人で頑張って、ボルシャック・ライダーになって。その時さ、一緒に走ってくれる人がいるって、こんなに素敵なことなんだって思えたんだよ」

 

イミッシュが必死に抵抗するが、カイザーは意に介さず拳の連打をイミッシュに叩きつける。1発ずつ打ち込む中で、何か温かく、無くしてはいけなかったようなものが、少しずつ戻ってくる。ついにイミッシュの体力が切れ、カイザーは最後の一撃を叩きつけ、イミッシュを破壊する。

 

「これでターンエンド」

「ニンゲンよ、いや、赤坂火奈よ。攻撃しないのか?」

「カイザーを使い込んできてるからね、弱点も、強みも、全部知ってるから。色んなクリーチャーのいる文明を回って、いっぱい勉強したんだから」

「………そうか」

 

「舐めるな、私のターン!《熱愛妖精 バニタス》、《ラマト・カーン》を召喚!ターンエンド!」

「場にクリーチャーを並べられたか」

「大丈夫だよ!あたしのターン、7マナで《ボルシャック・ヴォルジャアク》!クリーチャーが出た時にシールドを追加!ドリームドラゴンの効果で2体のクリーチャーをタップ!そのクリーチャー達にドリームドラゴン2体で攻撃!」

「火奈さん、予備の防護盾を!」

「ありがとうございます!」

 

火奈 シールド1

火奈は遥風から防護盾を受け取り、地面に突き刺す。

「赤坂火奈。その後は、どうだったんだ」

「うん。荒れ果てた火文明を助けるために太陽の力、《ボルシャック・バクテラス》を手に入れたんだ。でも、リスクのある力だった」

「……そうか」

「ドリームドラゴンで呼び出すのは《輝く革命 ボルシャック・フレア》と、《ボルシャック・栄光・ルピア》!そのままバトルに勝利だよ!」

「そんな、馬鹿な……!」

「ボルシャック・カイザーでシールドを攻撃!」

 

イミッシュ シールド2

「シールドトリガーが……!来ないだと……!!」

「カイザーでもう1回攻撃。それをどうにかする方法もあったんだけど、月の民に台無しにされて。カイザーはそれがきっかけで記憶を失ったの、でも、また会えるって言ってくれた」

 

イミッシュ シールド1

「シールドトリガー、《コウバシポルチーニダケ》!攻撃誘導があるが……」

「意味ないよ!カイザーでコウバシポルチーニダケに攻撃!しっかり焼き上げてあげるから!」

 

カイザーがそのクリーチャーに火の槍を投げつけて香ばしく焼かれた時、カイザーは頭を抑える。

「カイザー、大丈夫!?」

「大丈夫、だ……。記憶が、流れ込んでくるんだ。もう少しで、何かが……」

「カイザー、苦しいの?」

「あぁ、だが、続けてくれ。俺にとって必要であることは、もう分かっている」

「うぅん。これで話は終わりだから。あとはカイザーがどうするかだよ」

「………。どういうことだ」

「カイザーの名前があっても、生まれ変わる前と後じゃ、厳密には別の存在になるって言ってた。だからその先は、『今のカイザー』が決めるの。でも、自分が元々何者かだけは、知っておいて欲しかったんだ」

「赤坂火奈。いや、火奈。思い出したよ。俺は火文明の守護者であり、お前の相棒だった」

「カイザー……」

「だが、それはあくまで記憶だ。だからこれから、体験として俺はお前と進んでいくとしよう」

「ーーー!!うん!ボルシャック・カイザーで、シールドを攻撃!」

 

イミッシュ シールド0

「シールドトリガー、《死滅の大地 ヴァイストン》!こいつは攻撃誘導とスレイヤーを持っている!これがあれば、お前は誰かの犠牲を払わなければならなくなる!」

「そんな……」

「大丈夫だ、火奈。そのまま攻撃してくれ」

「え……?うん、分かった!カイザーでヴァイストンに攻撃!」

 

ヴァイストンが4本の腕をカイザーに巻き付け爆発する。それによって起きた土煙が近くにいた人々は目を瞑る。ただし火奈は、ずっと前を見据えていた。

「カイザーが破壊された時、カードを1枚引いて、名前に《ボルシャック》とあるクリーチャーをバトルゾーンに出せる。1枚、ドロー!」

 

火奈の手元にやってきたのは、火奈とまた出会い、新たな生を歩み始めた、新たなボルシャックの姿であった。

「召喚酔いしている栄光ルピアを、進化!!」

「進化だと!?カイザーは……!」

「俺はここだ。目の前の敵に正々堂々勝たず、人への嫌がらせのみに傾倒していくようなクリーチャー如きに、俺がもう負けるわけにはいかない。……行け、火奈!!」

「ボルシャックで、ダイレクトアタック!!」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

イミッシュには今目の前の少女の存在を許すことはできなかった。何故ならこのクリーチャーも、自分の世界を失ったのだから。

 

イミッシュの世界は鬱蒼とした森に包まれた世界であり、そこに住んでいた人々は採集社会を形成していた。イミッシュはそこにいたいわば土着神であり、彼は元々かなりの善神であった。人々の前に現れては人々に自然の恵みを与え、人々の生活を少しだけ豊かにしていた。

 

その頃、バロムがやってきた。記憶が奪われ、誰も自分の祠を訪れず、祠を離れ村に向かえば、化け物だなんだと言われて自分は追い出された。いわば夕哉やシイノと同じであった。自分だけが全てを覚えている世界に、突然投げ出されたのだから。

 

イミッシュは怒り狂った。『自分の手で滅ぼした』。人々に裏切られた怒り、やるせなさ、悲しみ、恨み。それらをぶつけているうちに、その森は全て焼き尽くされてしまった。

 

バロムが現れたのはその後であった。

「お前のおかげでこの世界の支配は円滑に進んだ。だが、人々にとっての善神であったと言う記憶は、これからこの世界を月の民のものにするために不要なものだ。『お前は、人々に嫌われた悪神だ』」

 

忘れないようにしていた。イミッシュはなまじクリーチャーとしての力は強く、忘れないようにすることはできた。しかしそれを長い間繰り返していくうちに、「守る相手もいないのに、自分は何を覚えているのだろう」という気持ちが芽生えてしまった。

 

『私が神になれる場所があれば、またあの楽しい世が戻ってくる』

 

イミッシュはこれを歪んだ形で考えた。その頃には精神が擦り切れ、善神だったころの記憶は、本当に消えてしまった。それでも彼は考え続けるのだろう。朧げに残る自分の大好きな世界が戻ってくる『奇跡』を。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

火奈がイミッシュを倒した時、後ろから大歓声が起きた。その大声に後ろを振り向こうとする火奈を、飛水が止める。

 

「後ろを向くな。顔が撮られるだろうから」

「……あたしは、大丈夫だよ。撮られ慣れてるし、皆も安心したいだろうし」

「じゃあ、光屋達の安心のためだ、関係を掘られるのも困るだろ」

「…わかった、そうする」

 

気づけばカメラはボルシャック・カイザーの背中が塞いでいた。気づいて気を遣ってくれたのだろうと、火奈は思った。

「ねぇ、イミッシュ」

「………」

「私は、悪神だ。ここでも、拒絶された」

「あたし、似たような人を見たことがある。考えることはあったはずなのに、人を無碍にする方法をとられたら、それを聞いてくれる人もいなくなっちゃう」

「………なるほど。私は、忘れていたのだな。自分が手段を選ばなくなった時、相対する者も手段を選ばなくなる」

 

飛水がそれに付け足す。

「でも、落ち着いた手段が取れない環境にいたら、そうなっちまうのも無理はない。それも見たことあるからな」

「まぁね。それが本当は不可能なのもわかってるけど……」

 

火奈はレントのことを思い出していた。今考えてみれば、あのようにすることしか、彼の存在証明はなかったのだろう。結果的にカイザーは戻ってきたとはいえ、彼のしたことは許せない。その気持ちも変わらない。

 

「イミッシュ、あたしたちは覚え続ける。だから、せめて……」

「……あぁ、助かる」

 

イミッシュはそう言って消えていった。それと一緒に、避難所を取り囲んでいたラマト・カーンたちも消えていくのだった。

 

「カイザーと同じなのかな。イミッシュは」

「だが、お前はここにいる人々を守った、1人残らずだ」

 

カイザーにそう肯定してもらい、火奈は久しぶりに安堵したような表情をした後、ボルシャック・カイザーに抱きついた。

「カイザー!!」

「おい落ち着け、そこは炎だ、お前の赤い髪が燃えてしまうぞ」

「大丈夫、今はカイザーとまた会えた喜びで……」

 

フラッと火奈がふらつく。カイザーが来るまで1人で戦い続けていたのだ、体力の限界が来てもおかしくなかった。その時遥風と公輝の声が聞こえてきて、遥風が「とりあえず館内に戻って休息を取って欲しい」と伝える。

 

「とりあえず、俺は夕哉達を助けにいく」

「うん。……来てくれて、ありがとね」

「俺も安心したわ。戻ってきてくれて良かったな」

「……うん!」

 

飛水はそう言ってカクメイジンに乗って、再び皇龍市内へと向かっていくのだった。

 

「ねぇ、お父さん達に見られちゃってるかな」

「あそこまで派手にやったならそうだろうな」

「謝らなきゃね」

「俺も一緒に出るとしよう」

「余計驚かせちゃうんじゃ……」

「……そうかもしれないな」

「ねぇカイザー、最後にやったの、あれなんだったの?」

「分からない。だが力が湧き、これを使えると思ったんだ。そうしたら気づけばという感じだ」

 

デッキの中にそのカードはもう入っていない。火奈は不思議そうにデッキを見た後、

「じゃあ、安定してできるようにしないとね」

と笑顔で語るのだった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

夕哉とジャシンは、ついに皇龍市の中心にある住宅街へと辿り着いた。道中に大量のクリーチャーがいたため全て倒し、どうにか短い休息を取っていたのだった。

「ようやく落ち着けるけど、真名月にこんなところでやられたら……」

「あぁ、ここにある家は愚か、どこまで吹き飛ぶだろうな?」

「もう……」

 

その時、ジャシンが急に体を震わせた。驚く顔をするジャシンに、夕哉も質問をする。

「え、大丈夫?このタイミングで風邪?」

「そんなわけがないだろう!……何かが、生まれたようだ」

「何か?真名月みたいな悪い奴がまた!?」

「そうではない」

「じゃあ何を……」

「そうではないと言っている」

「……よくわかってないんだね」

 

夕哉はそう言って歩みを進める。その時、目の前に小さな塔があった。その塔はガシャンガシャンと動いており、何かを地面に打ち込んでいる。鉄塔の下には円形の地面が敷かれており、間違いなくここ数日で作られた者であるとわかった。

「え、え、何……!?」

「ダイダロス達が残っていれば、もう少し早く終わったのだがな。

「バロムの魔力によって地面の一部が抉り取られ、地面が掘られている」

「そんな!?」

 

夕哉とジャシンが驚くのを目にした真名月は満足そうに語り出す。真名月は上下を黒く、儀式を始めるようなローブで着ており、その出立ちから上機嫌であることが伺える。

「過剰なマナを与えれば、クリーチャーを滅ぼすことができる。いわば俺はマナを操る資格を手に入れたわけだが。まぁまずは俺のクリーチャー化記念だ、褒めてくれ」

「クリーチャー化?何をするつもりだよ」

「単刀直入に言おう、この塔から放つマナは、人間をクリーチャーにする」

「人間を、クリーチャーに……!?」

「そんなことをして何の意味がある!」

「マナがなければクリーチャーは生きられない。マナがありすぎてもクリーチャーは生きられない。答えはもう簡単だろう?」

「資源を競合せずに奪い取るための……」

「そして、マナを抜くことができるなら、クリーチャーとなった人間達を滅ぼすために手っ取り早い方法だな」

 

「あぁ、ワルドバロムになって手に入れた、『俺だけが住める大地』だ」

「……ふざけるな…!」

「この塔は地面中に穴を掘り、そこからマナを打ち込む。それによってまずは日本列島をクリーチャー化させるとしよう。クリーチャーにした人間を兵士として使うのも悪くないな!」

「……真名月、どこまでも自分勝手に、人を傷つけるお前を!俺は絶対許さない!」

「やってみろ、俺は俺だけの大地を作る!!」

 

ついに正反対の2人が、お互い決して相入れることのない2人が、ぶつかり合い始めたのだった。




火奈の!今日のカード紹介!
今日のカードは…《轟炎の竜皇 ボルシャック・カイザー》!
火の5コストのクリーチャーで、シビルカウント3でスピードアタッカーとパワーアップ、シビルカウント5で無限攻撃!そしてこのクリーチャーが破壊された時、1枚引いてボルシャックを呼び出すことができるよ!
次回、『人はそれを愛と呼ぶ・前』
おかえり、あたしの相棒!
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