デュエル・マスターズOverLord(オーバーロード)   作:シグレサメ

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夕哉とシイノは飛水の記憶を取り戻すためにデュエマに挑み、ギリギリのところで解決を見る。彼の無くした探究心を取り戻したことで飛水もカクメイジンとDracheと再契約することができたが、まだ記憶の鍵は埋まっていない、安心できない状態が続いていた。


消えたもの、消えないもの

 

飛水の記憶を取り戻した後のお昼過ぎ、夕哉とシイノは皇龍警察署へと向かっていた。夕哉達に協力してくれていた公輝達にもう一度思い出してもらうことを目的にして、そこまでやってきたのだが…。

 

「すいません、正路 公輝(しょうじ こうき)さんってここで働いてますか?」

「申し訳ありません、個人的な情報はお伝えできないので…」

 

と進展はあまり見られなかった。夕哉が諦めて警察署の外に戻ってくると、シイノは夕哉から貰ったあんぱんを食べながら、建物を眺めていた。

「ダメだったの?」

「うん、お手上げ」

「ユウヤ。警察って何?」

「うん、正しい人たちを守る仕事だよ。俺たちだけじゃ、子供だけじゃ解決できないこともあるから、沢山助けてもらってたんだ」

「ふーん……わたしの世界にはいなかったなぁ」

 

そう言ってシイノは石のようなものを先程の女性に飛ばすと、彼女は項垂れる。

「えっ、ちょ、何したのシイノ!?」

「ショウジコウキっていう人を知ってる?」

「今日は非番ですが、案内することはできます」

 

そう言って女性が立ち上がり歩いていくのを見て、シイノに夕哉は叱責する。

「ねぇ何したのシイノ!?」

「わたしの世界では、水晶から記憶を読み取る。それを応用して、記憶を再生してもらってるの」

「そういうことじゃなくて、ダメって言われたんだからダメでしょ!」

「でもそうしたら、あなたの世界は助からない。これくらい、仕方ないでしょ」

「そういうことじゃなくて…!」

「あっちが非人道的なことをするんだから、わたし達も手段は選べない。手段があるだけマシ」

「できる限り少なくする手段を、選ぶべきだと思う!」

「……それじゃ、本当は助けられた人を助けられない」

 

シイノは女性の後を追って歩いて行こうとする。夕哉とシイノの言い合いに人が集まり、何があったのかと聞かれる。結果的に案内された先は警察署の隅にある小さな部屋であり、7人程度が入るので精一杯なところであった。沢山の捜査資料が整頓されて置いてあり、部屋の主人の几帳面さを窺い知ることができた。そしてそこには部屋の主人も、勿論いたのだった。

「君たちは、何をしていたんだい?」

「公輝さん……」

「俺に会いたいって人がいるってさっき聞いたよ。何かあったのかい?」

「わたしたちは、世界を救うたムグッ!?」

 

ストレートすぎることを放とうとしたシイノの口を手で塞ぎながら、夕哉は必死に取り繕おうとする。その様子を公輝はじっと観察している。嘘をついたら1発でバレる。そして考え抜いた末に、両手をあげて降参のポーズをとりながら、椅子に深く座り直した。

「公輝さん。今から全部喋ります。多分信じられないと思いますし、信じられるとも思ってません。でも、言わなきゃいけないと思うんです」

「ユウヤ。言っても、分かってくれないと思う」

「……黒井くん。君の知ってる情報を全部教えてくれないかな。その情報を聞いてからで、とりあえず判断するよ」

 

そう言って夕哉はシイノに目で合図をし、夕哉とシイノは、できる限り誠実に話して行った。公輝もできる限り表情を表に出さず、ゆっくりと夕哉達の話を聞いて行った。

「成程ね……君たちの言い分は分かったよ。会いたいってそう言うことだったんだね。正直、信じられることじゃないけど、君たちのことを信じないと。俺も辻褄が合わないことを追ってるんだ」

 

公輝はそう言って捜査資料を片っ端から読んでいく。

「遥風(はるか)さんも、どうしたんだろう」

「再度言うけど、バロムが変えたのはジャシンの記憶だけ。でも記憶が変われば、どんどん記録や歴史が変わって行く」

「須谷くんのことまで知ってるのかい?…もう何も言えなくなりそうだよ」

「ユウヤ、前にも言ったけど安心して、記憶の鍵が全ての記憶を取り戻せば、世界は元に戻る」

「分かってるけど…」

 

公輝がページを捲る手を止める。そこにあったものは、皇龍市のある一区画で起きた爆発事故。日付は、今年の5/14。夕哉はその日付を見て目を覆う。その日付は、飛水の叔父である真沢(まざわ)と、その実験の被験体である虹村を止めた日である。

「皇龍市西区で、爆発事故…?」

「うん、死者は出てないみたいだけど、怪我人は出たんだ」

「俺がジャシンと会わなかった時の、辻褄が合うように変わってるってこと…?もしかして、緑も…?」

 

夕哉がその名前を告げると、今度は公輝がお手上げとばかりに両手を上げる。

「緑。その事件で僕が引き取った少年だよ。境遇が特殊だから実名報道してなかったのに知ってるのは、君たちの説得力を上げるものだね」

「緑はそこにいるんですか!?」

「でも、軽々と人に合わせられる状態じゃないかな、君たちが彼を助けられるとしても、俺自身の気持ちとしてあの状態の彼に無理をさせたくはない」

 

公輝はそう言いながら次のページを捲る。

「俺の感じた違和感は、これの処理を機械でし直している際に計算ミスが何回も何回も発生したことだよ。途中で行方不明者が2人急に増えた時、頭を直接弄られるような不快感が来て、それ以来って感じ」

「記録が書き変わる瞬間に、あなたは立ち会ったんだ」

シイノがそういうと、公輝は一度大きく頷く。

「話が合うなら、そうなるだろうね」

 

この記録では夕哉達と公輝が出会わなかったことで、真沢の実験への対応が遅れたのであろう。それでもこの被害者数に収まってるのは、もはや奇跡だった。

「ユウヤって、9月にもなんかやってたよね」

「……うん」

「才縁高校の事件だね。うちの警官が、そのテロを起こした人間の姉だったんだ」

 

そう言って公輝が広げたのは、才縁高校という皇龍市にある高校の、女性生徒が起こした事件。

「死者は、いない。正確には、辻褄を合わせるために変える必要がなかったんだと思う。でも、怪我人が出ている」

 

先程話に出た須谷遥風の妹、須谷風音(かぜね)が闇のクリーチャー、COMPLEXを使って起こしたテロは、元の歴史通りクリーチャーのことを隠した状態で事件となった。

「どっちも、怪我人出してないよ。絶対に」

「真名月は、ユウヤがやってきたことを、否定してる。酷い」

 

真名月とバロムの記憶改竄の影響が大きくなっている。そう思うと夕哉の拳にも力が入った。

「記憶の鍵か…。実際君達は、1人に会って記憶を思い出させてる」

「はい、飛水は思い出してくれました」

「……警察が確固たる証拠もなしに信じるのは言語道断なんだけどね」

 

そう頭を掻きながら公輝が言って、夕哉とシイノに手を合わせる。

「分かった、協力しよう。でもお願いがあるんだ。急に元気が無くなった俺の友人を助けて欲しい。そうしたら、緑くんにも掛け合うよ。これで取引できないかい?」

「分かりました。多分、公輝さんもあの人も、すごく辛いと思いますから」

 

公輝の友人。クリーチャーの秘密を共有している友人。そして、夕哉にデュエマを、デュエマの心構えを教えてくれた師匠のような存在、我龍 竜也(がりょう たつや)。本来の記憶なら海外で夕哉達のサポートをしていたが、夕哉がジャシンと出会わなかったことになったことで生まれなかったデュエリストの行いは、彼が1人で請け負う、いや、請け負わざるを得なかったのだろう。夕哉とシイノは公輝に見送られ、警察署の外へと向かって行った。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

DM Stationに着いた2人は、竜也を探して店舗内を見て回る。シイノは初めてみるものが沢山あることに驚いており、夕哉は彼女が別世界の人間であることを再認識するのだった。黒髪に赤いメッシュを入れているので目立つと思っていたのだが、どこにいるのか分からない。

 

「すいません店長、我龍竜也さんいませんか?」

「お、前に光屋さんに挑んだ子じゃないか、今度は彼に挑むのかい?」

「はい、今はいませんか?」

「いるよ。あのマシーンの中でコンピュータと戦ってるよ」

「分かりました、ありがとうございます!」

 

夕哉はそう礼を言って竜也のところに赴いた。

「すいません我龍さん、フリーお願いします」

「……あぁ、フリーね。いいよ」

 

夕哉が久しぶりに竜也の顔を見てギョッとする。その顔には覇気がなく、公輝の話した通りまるで生きる気力を無くしたかのように、ただそこでデッキを動かしているだけだった。シイノが追いつき、こう付け足す。

「この歴史でこの人は、ユウヤがやってきたことをやらされたんだ。たった1人で」

「俺だけじゃないよ。それを全部、背負わされたんだ」

 

その言葉の重みは、夕哉が一番分かっている。御白たちの誰一人が欠けてもできなかったことを、彼は歴史の辻褄合わせのために一人で押し付けられたのだ。海外で起きていたクリーチャーたちによる被害を彼が旅して止めてきたことを考えると不思議ではないが、一人で請け負うには、あまりにも重すぎる荷物だった。

「竜也さん…。大丈夫ですか?」

「うん、少し疲れてるだけさ。フリーだろう?大丈夫だよ」

「やりましょう。デュエマ。楽しいものだって教えてくれたのは、他でもない貴方ですから」

「………」

 

「「デュエマ、スタート」」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

マシーンに乗って2人はデュエマを始める。夕哉が先行で始まったそのデュエマは、夕哉は飛水戦から更にチューニングを重ねたアビスのデッキを、竜也は火光自然を織り交ぜたドラゴンデッキで迎え撃つ。

 

「俺のターン!2マナで《シックル=シーク》を召喚!」

「僕のターン。マナチャージしてターンエンドだよ」

 

竜也はゆったりとした立ち上がりであるが、夕哉は一切の油断をしていない。彼と《ドギラゴン》にデュエマの奥深さを教えてもらい、彼はこのデュエマの世界に入ったのだから。

 

「忘れない、忘れたくない。こんな大事な思い出を!《邪魂の王道(アビス・キング)ジャシン帝を3マナで召喚!更にシックルでシールドを攻撃する時、タップ時効果で山札の上から3枚を墓地へ!」

 

竜也 シールド4

「シールドチェック。無しだよ。申し訳ないけど、君の言うことが少し分からないんだけど…」

「俺だって、分からないことだらけです。すぐに海外に出かけちゃって、殆ど会えなくて…。でも、それでも色んなことで助けてくれた。それを無かったことにするわけにはいかないんです。ターンエンド」

 

「僕のターン。《ボルシャック・栄光・ルピア》を召喚。マナを1枚増やして、増やしたのがドラゴンだったのでボーナスでもう1枚。ターンエンドだよ」

「俺のターン!手札から《コミック=コロック》と《ジョーロー=スイーロ》を1と3マナでバトルゾーンに!コミックとジョーローをタップしてジャシンをOverハイパー化!」

「ハイパー化…?君もそれを使うのかい?」

「え、知ってるんですか!?」

「うん、訳あってそれを使うタイミングがあってね」

「それって、COMPLEXが暴れた日ですか?」

「………」

「……公輝さんが教えてくれました。絶対に思い出して欲しいものがあるって」

「公輝が?君は、一体何者…」

 

夕哉はジャシン帝をタップし、一気に攻めかかる。

「思い出してください!ジャシンのこと、クリーチャーのこと、俺をスタートラインに導いてくれた時のこと!俺にとって、貴方は最初のヒーローなんです!ハイパーモード能力で墓地を3枚増やして栄光ルピアを破壊!」

 

竜也はその言葉にぴくりと眉を顰める。

「僕が、ヒーロー…?それは大きな間違いだよ」

 

竜也は項垂れ、小さくつぶやいた。その後、悲しそうに顔を上げる。

「思い出したよ。君はジャシンと契約して、僕は海外で悪さをするクリーチャーを倒しに行った」

「竜也さん!!」

記憶を凄まじい速度で取り戻した竜也に、シイノも驚きを隠せない。

「凄い、こんなに早く…」

「じゃあ、俺たちに…」

 

竜也 シールド1

「でもね、結局のところ、僕は君を踏み台にしてしまったんだ。シールドトリガー、《光鎧龍 ホーリーグレイス》。相手のクリーチャーを全てタップする」

「な…!?シックルの効果でタップされた時3枚墓地を増やす!」

「分かるよ。COMPLEXも、人体実験騒ぎも、僕が直接犯人と戦った記憶はない。でも、結局のところ、君を守れなかったんだ」

「違う!記憶が戻ったと見たから…!!」

 

シイノがそう言ってマシーンの外を見回すと、深く帽子を被った老人がクリーチャーの力を行使して竜也に何かをかけている。

「もうバレたか。一度顔を見せたのは失敗だったのう」

「ユウヤ!わたし、行ってくる!」

「シイノ!?」

「僕は、本来何もしなくていい君を巻き込んでしまったんだ。なんで君が苦しむ歴史が、正しいんだろうね」

「……ターンエンドです、竜也さん」

(竜也さんのこれ…。間違いなくクリーチャーのせいだけど、同時に本心でもあると思う。前にも巻き込んで申し訳ないって話してたし、それが増幅させられてるんだ。だから、真の意味でそれを止められるのは、俺自身しかいない)

 

「僕のターン。火または光のマナが5枚以上あるため《頂上連結 ロッド・ゾージア5th》を4マナで召喚。登場する時、身代わりになるシールド、EXライフを追加して、登場時能力でパワー10000以下のクリーチャー、ジョーローを破壊するよ」

 

竜也 シールド2

「ぐうっ!ジョーローは破壊された時1ドローできる!竜也さん、俺は全然辛いだなんて!」

「分かってるんだ、君はそう言うって。でもね、大人が子供をそんなのに巻き込み、君はまた危険に乗り出そうとしてる。それを止めないで何が大人と言えるんだい?ロッドゾージアでコミック=コロックに攻撃」

「子供とか大人とか関係ない!だって…」

「君は僕をヒーローと言った。偽りの記憶とはいえ、僕は人を守れなかったんだ。ホーリーグレイスでシックルに攻撃」

「スレイヤーで破壊し返す!俺も1人でできたことだと思ってないです!」

「ターンエンド」

 

竜也の本心は、悲しみに満ちた夕哉への、子供達への謝罪の意思であった。それを汲み取った夕哉は、どうにか彼に自分の心を届けようとする。

「俺のターン!」

「ロッドゾージアの登場時効果は続いている。この君のターン、君はクリーチャーを1体しか出せない」

(Overハイパー化が封じられた…!というか今の俺のデッキだとどの道ジャスキル以上は厳しい!でも、モモキングをはじめとした革命チェンジ戦法では来てない…?とりあえず様子を見るしかない…!)

 

「俺のターン!墓地に5枚以上カードがあるので、《シェルフ=ガーチェルフ》を墓地から2マナで召喚!その登場時効果で相手クリーチャー1体、ロッドゾージアを破壊!」

「ロッドゾージアはEXライフを犠牲に生き残るよ」

 

竜也 シールド1

「ジャシンでシールドをブレイク!」

 

竜也 シールド0

「シールドトリガー無し。割り切りの判断か。偉いね」

「竜也さん、俺はジャシンと出会って、不幸だなと思ったことはありません!寧ろ幸せと感じることの方が多かった!仲間ができて、友達ができて、かけがえのない経験が沢山できました!それを否定するのは、例え竜也さんであっても許せません!」

 

竜也はその言葉を聞き、彼を纏っていた悲しみのオーラが消滅する。

「そっか。でも、今の君は怖がっている。それを放っておくわけにもいかないんだ」

「……バレていたんですね」

「怖い目にあった事は否定できないよね」

 

初めて真名月と戦った時、バロムに、クリーチャーに命を奪われかけた。シイノが助けに来なければ、夕哉は間違いなく今この場所にいないというその実感が、月の民がこのようにしてどこから来るか分からないという恐怖が、御白達の記憶を取り戻せるかという不安が、夕哉を少しずつ縛り付けていたのだ。

「君だって人間だ。ここで引き返して、僕が代わりに戦う道だってある」

「……怖いですよ。この先何が起こるか分からない、真名月に勝てるか分からない!」

「だったら……」

「でも!!もしそれで逃げ出したら、御白や夕花達の大事な存在を自分で投げ出すことになるんです。竜也さんに全部任せたら、今度は竜也さんが苦しむ!それは、本当に嫌だから…!」

 

夕哉は涙ながらにそう語る。その顔を見て、竜也は一度深くため息をついた後、山札に手を置いた。

「どこまでも平行線だね。こうしよう。僕がこのデュエマに勝ったら、君は真名月とは関わり合わない。強い方が彼と戦う方が賢明だしね。いいかい?」

「……お願いします」

 

夕哉の手はまだ震えている。

「僕のターン。…この時のためだったのかもね。6マナで《蒼き王道 ドギラゴン超(ハイパー)》を召喚!登場時効果でシェルフをマナゾーンに送る!」

赤いマントを靡かせて、蒼い鎧に身を宿した伝説のドラゴンが夕哉の前に立ち塞がる。シェルフ=ガーチェルフを一刀に切り伏せたのちに、一点、夕哉を見つめる。その威圧感は彼に、この先に進んで良いのかと暗示させるものであった。

 

「ロッドゾージアをタップして、ドギラゴンをハイパーモードに!僕のクリーチャーは全てスピードアタッカーを獲得する!ドギラゴンでジャシンに攻撃する時、ハイパーモード能力で多色のドギラゴン以下のコストを持つ、マナゾーンから《飛ぶ革命 ヴァル・ボルシャック》をバトルゾーンに!ヴァル・ボルシャックの登場時能力でロッドゾージアとドギラゴンをアンタップ!」

「ジャシンは破壊されます…!」

「ドギラゴンでシールドに攻撃、ヴァル・ボルシャックを出して、ドギラゴンをアンタップ。Tブレイクだよ」

 

夕哉 シールド2

「シールドチェック…!無し…」

「ドギラゴンで再度シールドを攻撃!マナゾーンからボルシャック・栄光ルピアをバトルゾーンに!マナを増やし、それがドラゴンなのでもう1枚増やす。シールドの残りをブレイク!」

 

夕哉 シールド0

「シールドチェック…!1枚目、無し…!」

「逃げ出すなら今しかない。どうする?」

「……俺は、逃げません!怖くても!進まなきゃ先がないなら!スーパー・シールド・トリガー!《撃髄医 スパイナー!》出た時の能力で

ヴァル・ボルシャック1体のパワーをマイナス6000!栄光ルピアのパワーをマイナス3000!」

「ヴァルボルシャックは破壊されるけど…!」

「スーパーボーナス!このシールドが最後に壊されたシールドなら追加能力発動!コスト4以下のクリーチャーを好きな数墓地から呼び出す!コミック=コロック、《アイロン=バイロン》を2体!《ナイフ=アライフ》、《ド:ノラテップ》、ジョーロー、ジャシン帝を1体ずつバトルゾーンに!」

「ナイフ=アライフの効果で相手全体のパワーをマイナス2000!栄光ルピアを破壊!」

「まだだ、ドギラゴン達のおかげでクリーチャーはスピードアタッカーを…!」

「アイロン=バイロンの登場時効果!手札を1枚捨てることで、竜也さんには1枚クリーチャーを選んで破壊してもらいます!それを2回分!」

「ヴァルボルシャックと、ロッドゾージアを破壊する、ドギラゴン超でダイレクトアタック!マナゾーンにいい多色クリーチャーはもういないね…!」

「コミック=コロックでブロック!」

「ターンエンドだよ…!」

 

「俺のターン!竜也さん、全部背負おうとしないでください!デュエマ、凄く楽しいんです!だから怖さも乗り越えて、俺は先に進みます!進めます!!ジャシン帝で、ダイレクトアタック!」

「……君を、幼く見過ぎてたんだね。ありがとう」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

デュエマの決着が着くと、外に出たシイノが息も絶え絶えに戻ってくる。

「ごめんなさい、ユウヤ、逃した…!」

「大丈夫、記憶は取り戻したし、また大丈夫になったよ」

「君がシイノくんかい?ありがとう、助けてくれて」

 

竜也がシイノに手を伸ばすと、シイノは手を取ろうとして、引っ込めてしまった。

「わたしは、そんなに凄い人じゃない」

「うん、僕も自分のことをそう思う。けどね、その行いが消える事はないし、それを自分で否定するのも、息苦しいんだよ」

「………」

「夕哉くんから教えてもらったことだけどね。僕は公輝と合流して、月の民のアジトを探ってみるよ。君だけに任せられないってのは確かだからね。でも、僕が伝えたデュエマを楽しむことを、君に思い出させてもらうだなんてね。ありがとう」

「……こちらこそ、ありがとうございます!」

「ありがとう、ございます…?」

 

竜也が手を振って出ていくと、シイノは不安げに夕哉に声をかける。

「それだけで、いいの?もっと話したいこととか」

「お互いにやること多いし…。今は御白達を優先しなきゃって思ってくれたのかも。取り敢えず、もう陽も落ちてるしご飯食べて戻ろう」

「……ねぇ、わたし、役に立ってる?」

「…なんで?」

「わたし、今日は月の民を1人デュエマで負かしただけ。捕まえられなかったし、ユウヤに頼ってばっかり」

「シイノはさ、どこまで、何をやりたいの?」

「……世界を救うまで。ユウヤ達の世界が助かったら、わたしの役目は終わり」

「ねぇ、明日さ。ちょっと来てほしい場所があるんだ」

「………?」

「大丈夫、明日土曜日だから、不審がられないよ」

「そういうことじゃ…」

 

シイノは夕哉の言うことに首を傾げながら、深淵の拠点へと着いて行った。




夕哉の、今日のカード紹介!
今日のカードは…《蒼き王道 ドギラゴン超》!
6コストのドリームクリーチャーで、同じ名前を1体しか出せない制約の代わりに、出た時に相手1体をマナ送りにして、ハイパーモードを開放することで味方全体をスピードアタッカーにしつつ、多色クリーチャーの攻撃時にそのコスト未満のクリーチャーをマナゾーンから出せる。竜也さんの新しい攻撃特化の切り札なんだ。
次回、『木漏れ日の当たる場所』
シイノは、頑張ってくれてる。でも、それがどうにも昔の俺を見ているみたいで…。
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