fate/stay night ~no life king~   作:おかえり伯爵

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再会

召喚の儀式を終え一同はリビングへと場所を移した。アーカードは甲冑からいつもの紅いコートへと服装を戻し、優雅に椅子へと腰掛ける。その様はどこか高貴さを感じさせる。雁夜は困惑気味ではあるが警戒することなくアーカードの向かいの席に腰掛けた。桜は雁夜の隣に座った。どう切り出すべきかと考える雁夜を尻目に桜は取り合えず確認の意味合いも込めて問いかける。

 

「えっと、私たちの知っているアーカードで良いんですよね?」

 

「ああ。間違いなく私はお前が知っている吸血鬼だ」

 

アーカードは肘掛に肘を乗せて頬杖にして組んでいた足を組みかえる。前髪の隙間から覗く紅い眼が桜を捕らえる。

 

「でも私はサーヴァントを召喚したはずです。貴方がアーカードなら私が呼び出したサーヴァントはどこへ行ってしまったんですか?」

 

「お前は私を無意識の内に触媒とし私を召喚した。従って紛れも無く私はお前が今回召喚したサーヴァントだ。しかし向こうの世界での私の時が随分と進んでいるようだ。お陰で私の命のストックは前回の聖杯戦争の頃

のそれを上回っている」

 

「理屈は分かりましたが・・・それだと貴方が二人存在してしまいます」

 

「同一の存在が二つもあれば世界の歪みは許容できる範囲を超えてしまう。故に私という殻に中身を流し込んだようだ。知らないはずの記憶まで流れ込んでいるがな」

 

アーカードを別の何かで例えるならばそれは国。命を際限なく溜め込むその城そのものがアーカードであり、城内の命もまたアーカードなのだ。だからこそ城を媒介にサーヴァントを召喚すれば当然城内の命が召喚される。

 

これを聴いた桜と雁夜は開いた口が塞がらない。この吸血鬼を殺せるモノなどこの世界にありえるのか。ようやく数えるほどになったアーカードの命が万、億かそれ以上になってしまった。もはや神の悪戯があったと言われても納得してしまう。

 

「ほんと何でもありだな聖杯は。・・・まてよ。戻ったのは命だけか?」

 

「フッ気が付いたか。宝具も元に戻っている」

 

「ってことはーー」

 

「来い婦警。いやセラス・ヴィクトリア」

 

アーカードと桜たちの間に円状の光が現われ円で囲われた中央から金色の髪がおっかなびっくり姿を見せた。次に紅い瞳、紅い服、最後に茶色の長い革靴。10年前に消失したアーカードの片割れが舞い戻った。

 

「遅いぞセラス」

 

「すみませんマスター。少し大変だったもので」

 

元人間現吸血鬼(ドラキュリーナ)である彼女は人間だった頃の癖が抜けないのか後頭部に手を当てて軽く会釈をするセラス。

 

「ふ、けいさん?」

 

「ただいま戻りました我が主桜。・・・あれ、なんか凄く成長してませんか?」

 

可愛らしく首をひねるセラスに桜は思わず笑みが、涙と一緒に零れ落ちる。ずっと後悔していた。10年前にセイバーの足止めなど頼まなければ彼女は消えずに済んだ。

 

「ええぇぇっ!!な、泣かないでください。マスター、なんで笑ってるんですかっ!?」

 

「やはりお前など婦警で十分だ」

 

「酷いっ!!」

 

いつしかこの場にいる皆が声を上げて笑いだした。まるで今までずっと共に過ごして来たかのように。

 

「吸血鬼(ドラキュリーナ)になってしまったんですね婦警さん」

 

「・・・はい」

 

桜の視線の先にはセラスの左腕。セラスの左腕は形を成しておらずユラユラと蠢く。瞳もサファイアブルーからルビーレッドに変わってしまっている。雰囲気も昔と比べ落ち着いている。彼女が元の世界で体験したであろう過酷な日々を想像して桜は内心落ち込んでいた。助けられるばかりで助けられない自分に自己嫌悪しつつ、努めて笑顔を絶やさない。桜にはそれしか出来ない。その様子を察してかセラスの左腕が桜の髪を撫でる。当の本人はしまったと慌てて腕を引っ込めた。

 

『おいおい、せっかくの美人さんが貼り付けた笑顔を見せるなんてもったいないねぇ』

 

「今、男性の声がーー」

 

音の発信源はセラスの左腕。腕からほのかにタバコの香りが漂い、セラスは苦笑する。

 

「勝手に腕を動かさないでください隊長!!・・・紹介します。こちらベルナドット隊長です。えっと・・・以上です」

 

『おいおい嬢ちゃん。そりゃないぜ。ごほんっ。俺はベルナドット。元傭兵で今は嬢ちゃんの相談役ってとこだな。美しいレディに会えてうれしいぜ』

 

「は、はぁ・・・。こちらこそよろしくお願いします」

 

「腕が喋った・・・俺もあんなことできるのか」

 

「あのぉ、私の時と態度が違いません?」

 

『当然だろ?嬢ちゃんは嬢ちゃんでレディはレディだ』

 

仲良く喧嘩するセラスとその腕。完全におかしなシーンだが本人たちは至って真面目だ。喧嘩をするほど仲が良いとはこのことかと桜は隣の雁夜の肩に頭を乗せて目を閉じる。雁夜はそっと桜の髪を撫でて彼らを見る。吸血鬼と人間の共存は可能か否か。その答えの一例が目の前にある。互いに触れ合えなくても幸せそうな二人。心で繋がる二人が羨ましく、切ない。

 

「雁夜さん。二人で探していきましょう」

 

「そう、だな」

 

『おーっとそうだそうだ。これから戦争するんだったな。んで、相手の情報とかもうわかってるんですかい?』

 

「露骨に話を逸らしましたね・・・」

 

「今のところはアインツベルンがヘラクレスをアーチャーとして召喚したという情報しか」

 

『ヘラクレスってあの?あちゃあ、こりゃ面倒なこって』

 

サーヴァントは召喚される際に予め召喚される時代の知識を聖杯から与えられる。セラスとベルナドットはアーカードの宝具として召喚されたが知識は同様に与えられている。その知識から解るのは絶望の一言に尽きる。

 

サーヴァントの宝具は英雄たちが持っていた或いは生前に為したとされるものを再現するもの。アーサー王のエクスカリバーがその良い例で、その数はサーヴァントによって変化する。ヘラクレスは数々の偉業を成し遂げた半神半人の大英雄である。必然、彼の持つ宝具は複数になる。

 

また、サーヴァントは呼び出される地の知名度や認知度にステータスを左右されるがヘラクレスはこの冬木では知らぬものの方が少ない。つまり最高補正の可能性が高い。

 

「最低でもヒュドラの毒矢、馬鹿げた身体能力、ネメアの獅子の衣は宝具として持っている可能性が高い」

 

「えっとぉ、ケルベロスとかは・・・?」

 

『嬢ちゃん・・・。ケルベロスを使うならライダーのクラスだろ』

 

「あっ、そうですね」

 

「やはりマスターを狙っていくのが無難、か」

 

マスターからの魔力供給がなければ霊体のサーヴァントは限界し続けられない。サーヴァントで劣っているならば供給源を断つしかない。

 

「それは・・・最後の手段にします。まだ相手の情報がはっきりと掴めていませんから。それにアーチャーなら単独行動のランクによってはマスターなしでも戦えますからね」

 

サーヴァントにはそれぞれクラススキルが付加される。セイバーなら対魔力と騎乗。ランサーなら対魔力。アーチャーなら対魔力と単独行動。ライダーなら対魔力と騎乗。キャスターなら陣地作成と道具作成。アサシンなら気配遮断。バーサーカーなら狂化。これらは召喚されたサーヴァントが精通しているかどうかでランクが変わる。

 

アーチャーの単独行動スキルはランクが高いものであればマスターなしでも聖杯戦争中は限界できる場合もあるため迂闊にマスター狙いをすると別のマスターと契約して2対1になりかねない。

 

「アーカードの使い魔たちも全て潰されてしまいましたし」

 

「あの巨体であの機動力。神を肯定した化け物なだけはある」

 

「神を否定した貴方が言うと説得力がありますね」

 

全騎が揃ってから聖杯戦争を始めるのでは遅い。始まる前に可能な限りマスターやサーヴァントについて調べ上げ対策を練ってこそ相手の一歩先を行ける。物理的な戦いではなく情報戦。聖杯戦争は既に始まっている。

 

「取り合えず今日はこれでお開きにしましょう。明日は学校もありますし」

 

「そうだな・・・って、学校には凛ちゃんがいるけど大丈夫なのか?」

 

「姉さんなら問題ありません。直接命を狙うほど堕ちてはいないはずですから」

 

「でも心配だなぁ」

 

「あ、なら私がいきます!!」

 

「婦警さん、おねがいしますね」

 

「お任せを!!」

 

『レディのエスコートなら任せな』

 

軽口を叩き合う二人に部屋を用意して雁夜と桜は寝室のベッドの上に体を預ける。互いに会話はないが握った手は離れることはない。温もりと優しさが手のひらから腕へ心臓へ伝わり鼓動が早まる。

 

ーーこの優しい愛おしい手だけは離さない。

 

 

 

 

某所。

 

 

赤色と茶色の混じった短髪の少年がゆっくりと扉を開く。正面には十字架。十字架の前には大勢の信徒達が静寂を聖歌に祈りを捧げている。胸の十字架を握り締める者、両手を合わせて祈る者。彼らに共通するのは神への祈り。少年が扉を開けた音すらこの静寂を乱すものではないのは少年も知っている様で迷わず十字架へと向かう。少年は信徒たちの祈りの間を確かな足取りで進み主祭壇に立つ神父の前で足を止めた。神父は主祭壇から少年を見つめてーー嗤った。

 

「ほう、どうやら準備が整ったようだな」

 

「はい、先生。今回も短い滞在になってしまいましたが、良い経験になりました」

 

「吸血鬼狩りを良い経験になったという輩はここに集まった馬鹿どもだけだと思っていたが・・・お前も馬鹿やろうだったわけだ」

 

「そこまで言わなくても良いじゃないですか・・・」

 

「わざわざ死にに行くやつを馬鹿と呼ばずしてなんと言う?」

 

神父は主祭壇から降りて少年の前に立つ。二人の距離は僅か数十センチ。神父の丸眼鏡が妖しく光を反射する。刈り上げた金髪に浅黒い肌。戦士を思わせる岩のような肉体。その場にいる信徒達が息を呑む光景。しかし、少年の表情は緊張も恐れも感じさせない。

 

「せ、先生・・・近いんですけど」

 

「ぷ・・・ぷははははははっ!!これは素晴らしいっ!!我らイスカリオテを前にしてこの豪胆ぶり!!無信教の島国には惜しい男だ!!」

 

「いや、まぁ神様を否定するわけじゃないですけど・・・俺には目標があるので」

 

「目標ーー正義の味方だったか。寄る辺の無い正義を振りかざしてお前は一体どこを目指す?」

 

神父の問いかけに少年は凛とした面持ちで答える。

 

「恒久的世界平和です。俺は親父の目指したものを叶えてやりたい、いや叶えないといけないんです。だから行ってきますーー冬木へ」

 

決意を語る少年に差し込むステンドグラスを通した光。神話の英雄たちが神託を受けた時のような絵になる光景に神父は息を漏らす。そして懐から黒い箱を取り出して放り投げる。箱は少年の手の中に納まり、少年が見上げると神父は既に背を向けていた。

 

「餞別だもっていけ」

 

「・・・ありがとうございます」

 

少年は一礼して背を向ける。扉の閉まった音がした頃に神父はポツリと呟いた。

 

「死しても尚残存する呪いか・・・。迷える子羊に救いをーーエイメン」

 

 

某所終了。

 

 

 

聖杯戦争。

現在の参加者2名。

候補4名。

正義の味方見習い1名。

戦いの狼煙はまだ上がらない。

 

 

サーヴァント紹介

 

 

 

name アーカード(ヴラド・ツェペシュ、ヴラド・ドラキュラ)

クラス バーサーカー

筋力B+ 魔力E 耐久D 幸運E 敏捷B+ 宝具D+~EX

 

宝具

 

454カスールカスタムオートマチック ランクD+ 吸血鬼に対しては補正

 

13mm拳銃ジャッカル ランクC+ 吸血鬼に対しては補正

 

セラス・ヴィクトリア(覚醒ver)ランクA++ セラス・ヴィクトリアを単独行動スキルA+保有の状態で召喚できる。またセラス保有の武器も再現される。

 

拘束術式開放第1~3号 ランクC~A ほぼありとあらゆる姿に変形変身できる。幻想種などは不可

 

拘束術式開放第零号(死の河) ランクEX 全てを飲み込む死の河。ストックされた命全てをサーヴァントとして召喚する。これらはランクC程度の単独行動スキルを持つ。結界系ではないので街をそのまま飲み込む。範囲の設定は出来ない。また、吸収した命を全て放出するため、本体が殺されれば本体ごと全て消滅する。

 

保有スキル

 

同化A 物や風景や生物と同化、すり抜けなどができる。日が出ていると制限されるものがある。

 

狂化B バーサーカー固有のスキル。吸血鬼であるため狂化しても言語を話すことができる。

 

命の通貨EX 血を吸った相手の命を自分のものとしてストックできる。吸った命の分だけ死んでも蘇生する。ストックがとてつもない為ほぼ死なない。不死殺しの概念をもった武器でも殺せない(不死ではなくストックが膨大にあるだけなので)。ただし、直死の魔眼の場合は例外なく消滅する。

 

魅惑の魔眼E 目を合わせた人間を従わせる。魔術師やサーヴァントには効果がない。

 

吸血鬼 日の当たる場所だと身体能力全般が1ランク下がる。逆に満月だとワンランクアップ。また自身の姿を自由に変えることが可能。

 

カリスマE 戦闘における統率・士気を司る天性の能力。吸血鬼化によってほとんど失われてしまったためほぼ無意味。一人か二人を上手く統率できる程度の能力。

 

千里眼C 吸血鬼化による副産物。夜であれば更にワンランクアップ。

 

直感A 人類を超えた感覚から生まれたもの。未来予知に近い。

 

説明

 

15世紀のワラキア公国の君主。オスマン帝国からルーマニアを守った英雄。

別名 悪魔 吸血鬼 ドラキュラ ノーライフキング 伯爵 ナイトウォーカー 

 

 

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