fate/stay night ~no life king~   作:おかえり伯爵

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淑女の御持て成し

「作戦開始」

 

合図に合わせて魔力が集約していく。紫色に見えるその魔力は塊となって圧縮と膨張を繰り返しながら球の形をとって大砲の弾ほどの大きさになった力の奔流は流れを造り始め球の中を運動し始めた。

 

「ーー」

 

それは如何なる呪文か。ローブの奥から聴こえたその一言で球は射出され膨大なエネルギーを纏って音速の壁をぶち破る。しかし、音速を超えた時に生じる衝撃波や爆音はない。完全な無音。目視すれば誰もが危険だと分かるというのにその魔力の塊はあまりにも静かすぎた。進む先には今は誰も使っていない洋館。このまま着弾すれば洋館は木端微塵となって地図から消えるだろう。しかし、目的もなく無人のはずの洋館に攻撃をするはずはなかった。

 

「宣戦布告もなしに攻撃とは穏やかじゃない。キャスターらしい姑息さだ」

 

いつの間にか現れた男は不快そうな顔を隠そうともせずそう呟いた。彼はイヌ科らしき巨大な獣の背に乗っており手には手綱を握っている。それを少し引くと獣は勢いよく飛び上がり魔力球をボールをキャッチするように口で咥え、噛み千切った。

 

「自分一人では何も出来ないライダーにだけは言われたくないわね」

 

「騎乗兵が乗り物を使うのは当たり前だ。お前とて魔術がなければ何もできまい」

 

「他力本願なのが気に入らないのよ」

 

「ならば他のサーヴァントにも言ってやれ。英雄なんぞ武器や生まれのおかげで成れるもんだからな。本人の努力なんてほとんど関係ない。でなければ努力した人間が英雄に成れないわけがない」

 

「屁理屈ね。つまらない男」

 

「ネチネチと喧しい女だ。どうせ男に捨てられたんだろう?お前のような女は何人も見てきた」

 

「・・・死にたいようね」

 

「図星をつかれて逆上か?これだから女は面倒なんだ」

 

「ーー」

 

耐えきれなかったキャスターはライダーの頭上に氷の塊を発生させ落下させる。空を覆い尽くす1tの氷の塊を一瞬で発生させるキャスターの能力に関心を抱きつつ手綱を操り紙一重で抜け出す。キャスターはタイミングを合わせて大魔術を展開するがライダーの駆る獣に食い破られ慌てて空へと飛び上がりそのまま空で浮遊を始めた。

 

「魔術師としては一流か。だがそれ故考えが読みやすい。おとなしく籠城でもしていろ。でなければここで消えるぞ」

 

「くっ、やっかいな狗ね。魔力を食べる狗なんてそうはいないけれど・・・聖杯で呼べるものかしら」

 

思い浮かべたのは北欧の神喰い狼。あんなものを呼ばれれば勝ち目など万に一つも許されないだろう。

 

「俺の真名に辿り着くのは至難の業だぞ?」

 

獣が地を疾走し、キャスター目掛けて飛び上がる。キャスターは軽く手を振って小型の魔術30を波状に展開して逃げ場を与えない。波状攻撃の中に同じ魔術は存在せず、雷、火、氷など属性も規模もバラバラで速度も統一ではない。そこに付け入る隙があるはずではあるが、キャスターには空中というアドバンテージがあり、地を駆ける狗では空中で方向転換が出来ない。だからこそ速度を合わせる波状攻撃よりもどの属性が一番効果的かを調べるためワザとバラバラな属性で仕掛けたのだ。キャスターの予想通り狗はキャスターの魔術を弾くことも躱すこともままならず主人の盾となって地面に叩き付けられた。

 

「あら、呆気ないのね。対魔力も牙だけのようだし、期待外れだわ」

 

「君を見くびっていたようだ。正直肝が冷えた」

 

「ご自慢の子犬ちゃんは再起不能だけれど次があるの?」

 

そう。ライダーが乗っていたのは小さな子犬。宝具の影響を受けて巨大化しキャスターの魔術を食い破るまでに強化されただけで宝具の影響下から抜ければ子犬に戻るだけ。息がまだあるとはいえ長くはもたない。ライダーも見捨てる気はないらしく忌々しげにキャスターを睨む。

 

「期待されては仕方ない。次を用意しよう」

 

ライダーは足元の木の枝を拾って綱を巻き付ける。すると木はみるみる姿を変え巨大な木製のゴーレムとなった。これにはキャスターも驚きを隠せない。相手はライダーであってキャスターではない。キャスターでもこのサイズのゴーレムを造るのには時間を要する。それをライダーは数秒で完成させたのだ。

 

「面白い宝具ね。実体のあるモノに使うとそれがなんであれ宝具になるってとこかしら。支配、変化、強化、投影の応用か・・・魔術師に喧嘩を売ってるわ」

 

「貰い物に文句を言われてもな」

 

「・・・ほんとつまらない男」

 

ゴーレムの拳をキャスターはヒラリと躱しゴーレムの肩に乗っているライダーに火の矢を飛ばす。矢はゴーレムの手に阻まれたがキャスターの狙いは直接攻撃ではなくゴーレムへの様子見。ライダーのクラスが騎乗するものには少なからず神秘が宿っているもので対魔力持ちの幻獣やゴーレムなども珍しくない。いくらその辺の枝を使った急造ゴーレムであっても宝具を使っている以上油断は許されない。唯の犬が巨大な狼となりキャスターの魔術を食い破った。このゴーレムが対魔力を持つ可能性は否定できない。幸いキャスターのマスターは聖杯戦争の備えをしていたため魔力に関してはアドバンテージがある。急ぐ必要も無理をする必要もない。情報のないサーヴァントを調べるのが目的であって倒すのはまだ早い。彼女はマスターを嫌っているが方針に逆らうほどでもない。足りないものを補うのは魔術師として間違っていないしキャスターもそうしたことがある。利用してその見返りとして聖遺物のコピーなどを与えているからギブ&テイクで等価交換も守っている。ただ少し気に入らないだけ。

 

「火がつかない」

 

「生木は燃えにくいんだ。そんなことも知らないのか?」

 

「・・・どう見ても枯れ木だったはずだけれど?」

 

「成長して動くのなら生木であっているだろう?」

 

「・・・」

 

今の会話からこのライダーは神代か紀元前の生まれだとキャスターは推測した。ライダーの先の言葉に冗談は混じっていなかった。彼にしてみれば木が動くのは普通らしい。それがファンタジーだとしらないのだ。キャスターの視線がライダーの手綱を捉える。宝具にしては神秘が薄い。また、長さが対象によって伸縮している。ライダーのクラスは他のクラスより真名の判別が容易のはずだがこのライダーは見当がつかない。枝で戦ったランスロットは有名でも枝を使ってゴーレムにするなんて伝説は聞いたことがないからだ。

 

「ん、魔力切れか?」

 

「いいえ、まだまだ余裕はあるけれど今日はここまでにしておくわ。貴方のマスターが無事だと良いわね」

 

「マスターなら問題ない。丁度いま戦闘が終わって、君のマスターを返り討ちにしたとこだ」

 

「・・・なんですって?」

 

「信じるも信じないもお前次第だ」

 

キャスターはローブを翻して虚空へと消えた。と同時にゴーレムは崩れた。

 

「・・・危なかった。次はもっと強い触媒を集めないとな」

 

子犬を拾ってライダーは屋敷に戻った。彼のただいまという言葉に彼のマスターはおかえりなさいと微笑んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

キャスター襲撃に合わせて衛宮士郎は屋敷に潜り込んだ。キャスターの張った結界のおかげでライダーにも気付かれてはいない。囮にしたキャスターへのサポートが出来ないので早期に事を終わらせなければならない。足音を消して一階を調べたが人影はない。二階へ続く階段を上り愛用のトンプソン・コンテンダーを握り締め屋敷の主を探す。が、見つからない。そこまできて士郎は自分が相手の胃袋の中にいると悟った。開いた左手で黒鍵を投影し窓に投擲する。

 

「・・・クソッ、騙されたな」

 

窓は黒鍵を飲み込み亀裂の一つもつけられない。この空間はある意味異界と化しているようだった。

 

「騙すのは貴方の特権ではなくてよ?招待状を渡したのはわたくしですが物騒なものをもってきたのですから当然ですわよね」

 

「・・・エーデルフェルト」

 

天工が魂を注ぎ込んだとしか思えぬ美貌。金色の巻髪と青いドレスが彼女を一層引き立てまるで有名な舞台女優のような優雅さと美しさ。纏うオーラは獅子のようで生来のカリスマも感じさせる。

 

「ええ、わたくしはルヴィアゼリッタ・エーデルフェルト。エーデルフェルト家・現当主にしてエルメロイ教室の首席候補とまで言われているーー貴方はご存知でしたわね」

 

「君には参加しないようエルメロイ先生に頼んだはずだ」

 

「ええ、言われましたわ」

 

「なら、何故?」

 

「貴方とミス遠坂の事が気に入らない、ではいけませんか?」

 

「とてもフィンランドに居を構える宝石魔術の大家とは思えない発言だ」

 

「わたくし、力のない人間に指図されるのが嫌いでして。ご理解頂けましたか?」

 

彼女は宝石を見せつけて姿勢を落とした。彼女は言外にこう言っているのだ。『止めたければ力を示せ』と。

 

「はぁぁぁああああ!!」

 

プロレス技の一つにスピアーという技がある。これは助走をつけてラグビーやアメフトのタックルのように低い体勢で相手の腹部へ肩、頭からぶつかっていく体当たりで一般的にテイクダウン技である。しかしそれは常識の範囲での話でこれに魔術が加わると劇的な変化をもたらす。

 

「美しくっ!!」

 

両足に仕込んであった宝石を惜しげもなく解放し、肉体、特に頭を強化して亜音速で50メートルほどの距離を移動する。ランサーのサーヴァントの速度にも届くその一撃を士郎は反応しきれず腕で受けた。

 

「ーーカハッ!!」

 

士郎は重力など無視した水平方向に飛ばされ壁に埋まる勢いでぶつかり結果、士郎の腕、肋骨は軋みを上げてそのまま折れた。ルヴィアはフンッと鼻を鳴らして胸元からデザートイーグルを取り出して士郎に向けて全弾発砲した。士郎の体に44マグナム弾がその威力を発揮し士郎を破壊ーーすることはなかった。

 

「タイムアルター・・・ダブルアクセル」

 

一瞬で士郎は射線上から逃れ物陰に隠れる。

 

固有時制御。自身の時間流を加速・減速させる魔術で高速戦闘やバイオリズム停滞などによる隠行を可能とさせる魔術で亡き養父切嗣の形見でもある。

 

「ぐあぁああ」

 

いかに形見であっても魔術は等価交換。2倍の速度で動けば反動も大きい。正統な衛宮の魔術師でない士郎は使用はできても反動は切嗣のそれより大きい。眩暈と吐き気、全身の痛み。切嗣の魔術は士郎の体を蝕んでいく。

 

「・・・これが正義の重みなんだよな、爺さん」

 

「骨は確実に折った手ごたえがありましたのに丈夫ですのね、貴方」

 

「普通なら死んでたぞ・・・。あと、魔術師が銃なんて使って怒られないのか?」

 

「呼吸も安定してますわね。治癒系魔術なんて習得してましたの?」

 

「会話のキャッチボールって知ってるか?」

 

「もちろんですわ。互いにボールを投げあってどちらが先に倒れるか競う遊びですわ」

 

「・・・」

 

「冗談ですわ。それに淑女を質問攻めにするのは趣味が悪くてよ」

 

「淑女がタックルかましてくるわけないだろっ!!」

 

物陰からトンプソンをルヴィアに撃って弾かれる音で場所を特定した士郎はトンプソンを腰のホルダーに入れて無手で身を乗り出す。届かぬ距離ではないが圧倒的に銃のほうが早い。そう考えて身を乗り出した士郎を迎えたのは指で銃の形を作ったルヴィアだった。その人差し指は士郎に向けられている。

 

ーーやばい!!

 

銃ならばいくらでも弾き様はあった。着ている服は銃弾でも通さないし、この距離ならば勝てるという自信があった。それもあくまで相手が銃で応戦する場合のみ。

 

「ガンド」

 

シングルアクションで迫りくる呪いは防げない。フィンの一撃に例えられる彼女のガンドは銃弾より強力で質が悪い。掠りでもすればその部位は呪われ行動が制限されることだろう。

 

「タイムアルター・・・ダブルアクセル!!」

 

目の前を通り過ぎるガンド。固有時制御を一旦解除し、倒れたくなるのを必死に堪えて士郎は投影を開始する。創造するのは祝福儀礼済みのバヨネット。師にあたる神父の好む武器。

 

「トレース・オン」

 

口から血が流れても士郎は戦いを止めない。

 

「遅い!!」

 

ガンドから既に構えを変えていたルヴィアは士郎の剣を躱して周り込み背後から腕を回して士郎を持ち上げて勢いのままアーチを作る。プロレスで言うジャーマンスープレックスが決まった。士郎の頭部は床に埋まり、士郎の活動も止まった。

 

「タフなのは好きですが、しつこいのは嫌いですわ。早く持って帰ってくださらない?」

 

転移魔術で虚空から現れたキャスターにそう言ったルヴィアは胡乱気に肩を竦めた。

 

「・・・今お嬢さんを始末してあげましょうか?」

 

「出来もしないことを口にしてはいけませんわ」

 

「ふふ、そうね。ここは結界の中。差し詰め能力減退ってとこね。ライダーが戻るまで時間がないし」

 

「流石はキャスター。種類まで当てるなんて。敵にすると恐ろしいですわね」

 

「褒め言葉として受け取っておくわ。また会いましょう、お嬢さん」

 

「御機嫌よう、キャスター。そこの貴方も芝居など止めて真剣に勝負なさい。次は本気でいきますわよ」

 

闇夜に紫蝶が舞い風は吹き抜けていった。

 

 

 

 

 

 

name ルヴィアゼリッタ・エーデルフェルト

マスター(ライダー)

BWH 不明 体重49kg

物腰優雅で白鳥の美貌、気品溢れる言葉遣いのお嬢様。遠坂凛とは犬猿の仲。趣味はプロレスが好きで自身もプロレスを嗜む。特徴的な青いドレスは腕の部分が取り外せるようになっており、ドレスのまま戦闘ができるように改造されている。お嬢様口調に金髪縦ロールは私の大好物です。

ルヴィアの参戦理由も追々書いていくつもりですので生暖かい目で見守ってくださると幸いです。ちなみに私はucでルヴィアが持ちキャラです。

 

 

 

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