――ミヤコ外れの幽霊屋敷
通称、「なき人形の館」
「かつて、この屋敷に住んでいた一家は、ほんの些細な心のすれ違いから事件が起きたそうです。その犠牲となった子供が成仏できず、[[rb:幽霊 > おばけ]]となってこの屋敷に棲みついていると言います……」
「……ピノコニーにこんな屋敷が出るホラー番組があったね」
「それ、夢に出るレベルでホラーな館ってことだろ」
「アハハ…こ、ここに女の子が入っていくのを見た人がいるってことはたしかなんだよね?」
フブキが恐怖で固まっているミオを抱えながら言う。
「随分と慌てた様子だったと聞いています。時間は数刻ほど前ですので、行方不明になっている子かはわかりませんが……」
「まあ、確かめる必要はあるか。……ミオ?どうした?そんな絶望したような顔して」
「……ねぇ、無人の屋敷って言ってたよね?本当に誰も住んでないの……?」
「え?はい。少なくともヒトは住んでいないハズですが……」
「さっき、窓に人影が……」
ミオがそう言うと、イナリ一門の子らの顔が青くなる。
「え……あの噂、ガチ……?(ひそひそ」
「館に足を踏み入れた人を呪いで人形に変えちゃうっていう少女の幽霊ですかぁぁぁ?(ひそひそ」
「ひそひそと怖いこと言うのやめてえええええ!」
「……残念ながら、情報がなさすぎるからな。行かない選択肢がない」
「うぅぅ…頑張る……。フブキと一緒なら頑張れると思うから……」
ミオの言葉にフブキは「ミオが可愛い…」などと興奮している。
そんな2人を尻目に、終夜とアベンチュリンは「行くぞ」と2人を引きずって屋敷へと入っていった。
◇◇◇
「おじゃましまーす……。おぉ!すごーい!洋館ってやつだね!」
「ぜ、全然雰囲気違うね…うち、初めて入るよ」
「確かに、ヤマトでは珍しい様式だね。ホロアースなら、ウェスタなんかはこういう建物が多いハズだよ」
「ウェスタか。あそこはいい所だぞ。特に乳製品がうまい。角巻牧場っていうところが出しているんだがな」
「乳製品というと、チーズとか?」
「そうそう、牛じゃなくて羊乳を使ったもので……」
と、4人で話をしていると、バンッ!と大きな音がした。
「なに!?何の音!?」
「……扉が、閉まっているね?」
「か、勝手に閉まったってことぉ!?」
そう言いながら(ミオは泣きながら)扉に近づく。
扉は、開かない。
「開かないどころか、向こうの声も聞こえないな。イナリ一門の子らがいる筈なんだが」
「お、お兄ちゃん…なんか、さっきまでより妙に、暗くない…?」
「……暗いな」
「暗いね。閉じ込められた上に雰囲気も変わった。何か起きそうな予感がするね」
「その上……」
終夜が呟きながら当たりを見回すと……?
「囲まれたな」
「これは…人形かい?」
「なんでぇ!なんでこんな所に人形があるの!?さっきまでなかったよね!ね!?」
「さ、さっきまでは見逃してたとかー…は、ないですよねぇ!」
人形が、終夜達を囲んでいた。
――その数、5体。
「ニガ、サ、ナイ…」
「やっぱり襲ってくるよね」
「来るぞ!」
――そして、襲って来た5体の人形は……
「手ごたえ無かったな」
「戦いに慣れてないようだね。本体ってわけじゃなさそうだけど」
「館の主とやらが嗾けたんだろう」
一瞬で、殲滅されていた。
「やっぱ過剰戦力ですよコレ。白上でもアレなら対処できるのに。ゲームならクソゲー待ったなしですよ」
「戦闘用っぽくもなかったしな。致し方無い」
「と、いうより…この人形、普通にカンパニーで売られているものだね」
「は?」
アベンチュリンが人形を手に取りながら言う。
「ほら、ここにカンパニーのタグがあるだろう?確か、3400信用ポイントくらいだったと思うけど」
「……なら、本当に戦闘用じゃない?どういうことだ?」
「ねえお兄ちゃん。この人形、本当に白上たちを襲って来たのかな?」
「…え?いや、でも『逃がさない』とか言っていたぞ」
「でも、確かに『襲っては』来てないね。先手必勝とばかりに殲滅したけど」
「「「………」」」
3人は黙る。それはそうだ、敵かと思って殲滅したのが実は敵じゃなかったかもしれないのだから。
と、3人でどうしようかーと話していると、「ハナ、シテ、イイカ?」と、人形が話しかけてきた。
「普通に話しかけてくるんだね。どうしたんだい?」
「コッチ、ヘ、コイ」
そう言って人形はブリッジをしながらシャカシャカと廊下を進んでいった。
「……行っちゃった」
「罠……にしては、陳腐だよな?」
「あれだけボコボコにされて、まだ罠を仕掛けられると思ってはいないと思うよ。ついて行ってもいいんじゃないかな」
「ん-、取り敢えず、ついて行くか。行くぞ……?」
行くぞ、と言いながら、終夜は下を見る。そこには……
「コイツ、ずっと静かだと思ったら…」
「ミオぉ!?」
「綺麗に気絶しているね。神秘ちゃんは怖いものがよっぽど苦手なようだね」
ミオが気絶してぶっ倒れていた。