心を探し求める水瓶座   作:リコレクションでも嬉しい

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 エグゼもですが、流星のロックマンのアニメが存在していたことを知っている人は、果たしてどれほどいるのだろうか……。


第1話

 

 その夜、海鳴シオナはとある少年が運命と出会う瞬間を待ち望んでいた。

 

 日もすっかり沈み、小学五年の少女が出歩くには遅い時間帯。シオナは高い建物の屋上に立ち、見晴らしのよい海に面した海岸通りの芝生に寝転がる奇抜なデザインのゴーグルを掛けた少年──星河スバルを見下ろしていた。

 

 表情は眠たげな無表情で、長い青髪を後ろで一括りに縛った風体。感情の読み取りづらい瞳で少女はただただじぃっと眼下で寝転ぶスバルを見つめ続ける。

 

 不意にシオナは目線をスバルから外して上空へ向ける。

 

「──きた」

 

 ぼそりとシオナが呟いた刹那、緑の閃光が夜空からスバル目掛けて真っ逆さまに落下した。落下地点にいたスバルは悲鳴を上げ、そのまま芝生に倒れこんでしまう。

 

 芝生に倒れたままピクリとも動かないスバル。彼は今、この先一生の相棒となる宇宙からの来訪者と邂逅している。水を差すような真似はしまいと自然に目を覚ますのを見守っていると、迫ってくるサイレンの音。どうやら異常な電波を感知してサテラポリスが出動してきたらしい。

 

「ん? 何で、あの人がいるの……」

 

 駆けつけたパトカーから降りた、頭に妙なアンテナをつけた男──五陽田警部を認めてシオナはこてんと小首を傾げる。彼の登場はまだ先であったはずと記憶していたが……。

 

『どうかされましたか、シオナ?』

 

 疑問符を浮かべるシオナのトランサーが一人でに動く。トランサーの画面には水瓶を肩に担ぐ女性型の電波生命体が映っていた。

 

「ん、ちょっとおかしい……知らない展開……」

 

 困ったようにほんの僅かだけ眉根を寄せるシオナ。予想よりも早い刑事の登場だけではない、記憶に残る知識と食い違う事柄が多くてシオナは内心でかなり戸惑っていた。その身近な例はトランサー内に居る存在だが。

 

『ですが、それで何か困ることがありますか?』

 

「……今は、ない……多分」

 

『ならよいではありませんか。私もお目当の方を一目見れましたし、今日のところは帰りましょう? 幼馴染君も連れて行かれたようですから』

 

「あ……」

 

 言われて気づいたのか、サテラポリスの人間に保護されるスバルの姿を見て動揺の声を洩らす。スバルもスバルで茫然自失といった様子であるし、今日のところはこれ以上見張っていても無駄だろう。無理に追ってサテラポリスに目を付けられても敵わない。

 

「分かった……」

 

 渋々といった風にシオナは頷き、一応電波ウイルスが暴れていないかの確認をし、トランサーに居座る数少ない友人と息を合わせる。

 

「行くよ、アクエリアス……──電波変換、海鳴シオナ、オン・エア……」

 

『ええ、いきますよ、シオナ──!』

 

 気の抜けそうな掛け声にアクエリアスが合わせ、直後シオナの体が青い電波の光に包まれる。光が霧散するとそこには流線的なシルエットの深海を思わせるような衣装を纏い、右肩に水瓶を載せ、顔を薄いヴェールで隠したシオナの姿があった。

 

『さあ、帰りましょう、シオナ。いえ──アクア・レディ』

 

「ん、家まで一っ飛び……便利」

 

 眠たげな無表情のまま呟き、アクア・レディは夜空を走る無数の電波の道、ウェーブロードに乗って自宅まで一っ飛びしたのだった。

 

 

 

 

 

 

♒︎

 

 

 

 

 

 

 シオナside

 

 

 生まれた時から私には自我があった。第二の生を授かって最初の記憶は暗く狭くも温かい世界。そこから光ある世界に出て大きな腕に抱き上げられたところで、私は自身を取り巻く凡その状況を悟らずにはいられなかった。

 

 要するに、私は前世の記憶を持ったまま新たな生を授かった。俗に言う転生である。驚きはしたものの、まあそんなこともあるんだ、ちょっぴり強くてニューゲームでラッキー程度の感慨しか抱いていなかった。生まれ落ちた世界の正体に気づくまでは──

 

 最初に違和感を抱いたのはこの世界の技術水準の高さ。明らかに前世よりも文明レベルが高いというか、SFの域に両足を突っ込んでいるレベル。いくら前世の時代より二百年ほど先に生まれたとはいえ、ここまで変わるものなの? 両親曰くこれも電波技術の発展と三つのサテライトによる恩恵とのこと。

 

 三つのサテライト。その時点では何だか聞き覚えがあるな、程度で特別気にもしていなかった。車が完全オートで走行可能でも、外の街並みが前世とはまるで違っても、電波を物質化して食べ物を作り出すレベルで技術が発展していても、人間の進歩は偉大なんだねと内心で白目を剥きつつも納得してきた。

 

 だが電波ウイルスやバトルカード、並びにお隣さんのお宅が星河という苗字でかつ私と同じ歳の子供の名前がスバルということを知った時点で、私は全てを悟った。

 

 ──あぁ、ここ流星のロックマンの世界なのね。

 

 大人気シリーズロックマンにおいて新シリーズとして打ち出された流星のロックマン。私もプレイした口でナンバリングごとに各バージョンを揃えるなんてこともした。今では遠い昔の話で、意識的に思い出そうとして何とかシナリオの大まかな流れが浮かぶ程度。でも、何一つサッパリよりはマシだと思う。

 

 先の展開を知っていれば巻き込まれないよう事前に行動できるし、上手くいけばスバルにも助言できる──なんて思っていた時期が私にもありました。現実はゲームのシナリオとは食い違いだらけで、原作知識は今の所呼吸困難に陥っている。

 

 まず、星河スバル。ゲームにはいなかった私という幼馴染がいたからか、お父さんが宇宙ステーションで事故に遭い生死不明となってもそこまで悲観していない。大きなショックを受け学校こそ登校拒否しているものの、自ら宇宙飛行士になって行方不明のお父さんを探しに行くんだと息巻いている。この子だぁれ? 私の知っている星河スバルよりも五割増しで前向きなんだけど……。

 

 別に前向きなことは悪くない。私も、幼稚園の頃からの幼馴染がいつまでも落ち込んでいる姿を見ていたいわけじゃないから。立ち直ったとは言えないものの、希望を持って生きてくれていることは素直に嬉しいから文句はない。

 

 問題は私の知っている原作知識と乖離してしまうこと。完全に乖離してしまえばもう原作知識は役立たずとなる。できればシナリオ通りに進んでもらいたいところ。まあもうどうしようもないくらいの予想外(イレギュラー)が私の身近にいるから今更なんだけど……。

 

 幸い、昨夜の時点でスバルはウォーロックと接触した。場所が私の知ってる展望台でなかったり、その後サテラポリスに連れて行かれるなどのハプニングはあったけど、ウォーロックと擦れ違わないでくれたなら無問題だ。毎晩、スバルが出掛けるのを見張っていた甲斐があったよ。

 

 ところで今日のスバルはどこへ行くつもりなのだろうか。家を出てからずっと尾行しているけど、モノレールに乗って隣町まで来てと。シナリオではコダマタウンで他人のトランサー覗きに勤しんでいた時期だったと記憶していたんだけど。

 

『おやおや、またそんなに眉間に皺寄せて。可愛いお顔が台無しですよ』

 

 カパッとトランサーが勝手に開いて声を発した。二週間くらい前、私の目の前に唐突に現れたかと思いきや、気に入っただとか波長ピッタリなどと言って私のトランサーに住み着いた電波宇宙人ことアクエリアスだ。今ではお互いの目的を達成するために共存・共謀する間柄である。

 

「……余計な御世話。あと……声を出すと、気付かれる……大人しくして……」

 

『ふふっ、シオナのいけず。ちょっとぐらい、いいでしょう? それに、そんな愛想のないお顔で幼馴染君と会ったら幻滅されてしまいますよ?』

 

 うるさいわい、余計な御世話よ。だいたい、私だって好きでこんな無表情かつコミュ力弱めな話し方をしているわけじゃない。口から飛び出る言葉も時々思ってることと微妙にズレた発言になるし……。これも全部、放任主義が過ぎて小学五年生の子供を一人暮らしさせて海外出張に出掛けた両親のせいだ……多分。

 

 いや、冗談抜きでちょっとどうかと思うよ私の両親。いくら便利な世の中で比較的私が自立できているからとはいえ、小学五年生の子供に一人暮らしさせる? 定期的にトランサーで近況報告こそしているけれど、私じゃなかったらグレても文句は言えないと思う。

 

 まあそのお陰でお隣の星河さんがちょくちょく様子を見にきてくれたり、お夕飯のお誘いをしてくれたりするからいいんだけど。あ、でもしばらくはスバルの家にお邪魔するのは控えないとダメか。アクエリアスを連れて訪問なんてしたらパニックになりかねないし……あかねさんの手料理、しばらくお預けかぁ……。

 

 しばらくはフードディスペンサーの味気ない料理になることを胸中で嘆いていると、スバルに動きがあった。挙動不審に柱の陰に張り付き、キョロキョロと周囲の様子を窺っている。まるで誰かから隠れているみたい。

 

 実際、スバルはとある三人組から身を隠していたみたい。私の丁度真正面から教室でしょっちゅう見る金髪ドリルと愉快な仲間達が来ている。委員長こと白金ルナさんとそのお友達の牛島ゴン太と最小院キザマロだ。

 

「あら? そこにいるのは海鳴さん? 珍しいわね、こんな所にいるなんて」

 

「ん……」

 

 あ、しまった。委員長に話しかけられた。スバルには……大丈夫、気付かれていない。スタスタと足早に駅構内を出て行こうとしている。早く追いかけないと……。

 

「ごめん……私、急ぐから……」

 

「あ、ちょっと!」

 

 委員長の制止の声を振り切り、少し駆け足になりながらスバルの背を追いかける。スバルはトランサーの画面と会話しながら歩いていたのですぐに追いつけた。私が言うのも何だけど、歩きトランサーは危ないから止めた方がいいよ、スバル。

 

 トランサー内のウォーロックとやり取りを交わしているスバルが事故に遭わないか冷や冷やしながら見守っていると、不意に後方から爆発音。驚いて振り返れば先ほどまで乗っていたモノレールが爆発しており、一部車体がレールから外れてしまっていた。

 

『電波ウイルスですね。それも大層な数』

 

「分かってる……」

 

 だいたい、この世界で起きる事件の殆どが電波ウイルスのせいだ。スバルのようにビジライザーなんて便利な物がなくとも、何か起きたら電波ウイルスが原因と思っておけば対処は可能だ。民間人でもバトルカードを利用すれば退治できる。

 

 でも、ここで私がしゃしゃり出てはスバル達に正体が割れてしまう。ここは傍観に徹してロックマンかサテラポリスに任せるが吉かな。

 

 なんて他人事のように考えていたら聞き覚えのある悲鳴。見上げれば開いてしまったドアから身を投げ出され、落っこちまいとモノレールに掴まる委員長の姿があった。そう言えばさっき乗っていたものね……というか、また知らない展開だよ。

 

 参ったなぁ、流石に顔見知りをこのまま見捨てるなんて後味の悪いことはできない。サテラポリスの到着を待つわけにもいかないし、仕方ないか……。

 

 ちらりとスバルを確認する。やはりまだ電波変換の経験はないのか、どうすればいいか迷っている様子。そこですぐに逃げないあたり、流石に主人公だなとは思う。っと、感心している暇はなかった。

 

「行くよ、アクエリアス……」

 

『よろしいのですか? シオナのこと、バレてしまうかもしれないですよ?』

 

「大丈夫、すぐに気付かれることはない……多分」

 

 大丈夫、大丈夫。ゲームでもロックマンの姿形から正体が看破されたことはないし、私もロックマンとはちょっと違うけどヴェールがある。電波変換した姿なら見られても問題ないはず。むしろアクエリアスの方が見られたら問題あるんじゃないかと心配しているまである。

 

「アクエリアスは、いいの……?」

 

『うーん、そうですね……できればまだ身バレは避けたいので、遠距離攻撃だけで我慢してもらえますか?』

 

「でも、それだと委員長が……」

 

『ふふっ、その心配は無用です。格好いいヒーローが向かってますから』

 

「え……?」

 

 アクエリアスの言葉に驚いて慌ててスバルを探せば、電波変換もせずに建物をよじ登り、レールの上を目指している真っ最中だった。恐らく、バトルカードで電波ウイルスをデリートするつもりなのだろう。

 

「……っ、無茶する……アクエリアス」

 

『あらあら、慌てちゃって。分かっていますよ』

 

 茶化すような口調ながらもアクエリアスはきちんと私の想いに応えてくれる。

 

「電波変換、海鳴シオナ、オン・エア……」

 

 物陰に隠れてからの電波変換。まさか自分がすることになるなんて夢にも思っていなかったけど、回数をこなせば慣れていくもの。ちょっと格好が恥ずかしいけど。

 

 電波体となった私は建物だろうと何だろうと周波数を変えれば自由自在に透過可能、一般人にも見える状態にだってなれる。更には宙を走る無数のウェーブロードを駆けることができてしまう。今回は遠距離攻撃のみなので離れた建物の屋上、その給水塔の影に隠れて狙撃する。

 

「バトルカード──プラスキャノン……」

 

 バトルカードを実体化させてトランサーにスキャン。ゲームと違って逐一読み込ませないといけないのが手間だけど仕方ない。キャノンの形に変化した右腕を、モノレールを破壊する電波ウイルスに向ける。

 

「えいっ……」

 

 ふははっ、食らうがいい雑魚メット共。こちとらシナリオが始まったらちょくちょくスバルにあげようかなと、コツコツとバトルカードを集めてきたのだ。手持ちのフォルダ内のバトルカードは全て2以上を取り揃えている。序盤のウイルスなど物の数ではないのだよ。

 

 ところで現実になったからなのか、やたらメットリオが可愛く見える私はおかしいのだろうか。こう、鳴き声とか聞くとぎゅっとしたくなる。まあきっちりデリートするんですが、無情。

 

 続けざまにプラズマガン2をぶっ放し、ウイルスをデリートしていく。取り敢えず露払いは請け負うから早く委員長を助けてよ──ロックマン。

 

 ウイルスで溢れ返るレールの上を青い戦士が駆け抜ける。左手に付いたウォーロックの頭部からバスターを放ち、次から次へとウイルスを殲滅しながら華麗に委員長を救出してみせた。

 

 う〜ん、流石はロックマン。格好いいね。人々からも拍手喝采を送られて、助けられた委員長も色んな意味で落ちたかな? まあ仕方ない。絶体絶命のピンチを颯爽と救われたら、乙女なら恋に落ちてもおかしくはないものね。

 

『おや? おやおやまぁ、どうしたのですか、シオナ。そんなに顔を顰めて』

 

 くすくすと笑いながらの指摘に私は思わず手を顔に持っていくが、触ってみてもいつもと殆ど変わりない。ちょっぴり眉根が寄せられているような気はしたけど誤差だ。

 

『ふふっ、シオナったら動揺して。そんなに幼馴染君を取られるのが嫌なのでしょうか』

 

 おのれアクエリアスめ、私を謀りおったな。別に委員長がロックマンに惚れようと私の預かり知るところではないし、恋愛するもされるも自由である。だから私は気にしてないし、そんな大人気ないことは考えておりません。閑話休題。

 

 アクエリアスの揶揄いを努めて無視しつつウイルスの残党を片っ端から打ち抜く。何となく気分が乗ったので大盤振る舞いにヘビーキャノンを披露して差し上げた。八つ当たりじゃないよ?

 

「ん……モノレールを壊した大元は……?」

 

 さっと視線をレール付近に走らせると他のウイルスより大きな影。巨大なアックスを携えたウイルスことビグリッパがしつこくもモノレールを叩き落そうとアックスを振り上げている。こらこら、まだ中にはゴン太とキザマロがいるから止めたまえよ。

 

「バトルカード──ガトリング2……」

 

 ガトリングガンと化した右腕を構え容赦なく弾丸をばら撒く。全弾的中確認……む、中々しぶとい。殆ど死に体だけれどウイルスは周波数を変えて逃走を計った。ここまで追い込んで逃すつもりはないよ。

 

「バトルカード──……あ」

 

 新たなバトルカードをインストールしようとしたところでロックマンが飛んでいった。どうやらモノレール内の人達を救出し終えたらしい。残りのウイルス目掛けて突貫していく。

 

 ロックマンは何やらバトルカードを取り出すと左手のウォーロックに食べさせて……え、ウォーロックってバトルカード食べるの? 驚愕の真実。食べたら左手が武器に変化しているし、ゲームでもそういう原理だったのだろうか。

 

 キャノン、ガトリングからソードへと武器を取っ替え引っ替え。少し拙い感はあるし、時々蹴つまずいているところはあるけれど、初のウイルスバスティングにしては及第点以上だろう。少なくとも最初の私よりは百倍動けている。

 

 スバルはそのまま左手をソードに変えると弱り切ったビグリッパを見事に両断、デリートして見せた。

 

「ん、終わった。もう安全……」

 

『そうですね。下は別の理由で騒がしいですが』

 

「……? また、あの人……」

 

 建物から地上を見下ろせば何台ものパトカーと五陽田警部。相も変わらず頭のアンテナランプを赤く光らせて何やら喚いている。

 

「コラーッ! ごようだ、ごようだ! ロックマン!」

 

「喧しい人……」

 

 ゲームではスバルの手でピッチングマシンの投球を受けたり、気絶している間に捜査データを真っさらにされてたりと面白可哀想な人だったけど、今は只管に鬱陶しい。あの人があちこちに駆けつけるせいで私も随分と苦労させられているのだ。

 

 また怪電波だの異常電波だのと追い回されるのも嫌なのでさっさと電波変換を解除しようとしたところで、此方に急接近する電波体に気づく。というか、ロックマンだった。

 

「やばっ……」

 

『早く逃げてしまいましょう』

 

「ん、ラジャー……」

 

 即座に踵を返して撤退を計る。幸い早いところで接近に気付けたのでロックマンに接触することはなく、今日の尾行は打ち切ってそのまま家まで帰った。

 

「ふぅ、疲れた……」

 

 家に帰って電波変換を解除し、ようやく人心地つく。今日は色々と疲れたからちょっと寝ちゃおう。小学五年生の体とだけあって疲れるとそのまま睡魔になって返ってくるのは困りものだ。

 

 ふかふかのベッドにそのままダイブしてベッドラックの目覚まし時計に手を伸ばすけど、正直眠気が限界。もうだめ……。

 

『ふふっ、仕方のない子……私がちゃんと起こして差し上げますから、もうお休みなさい』

 

「ん、ありがと……」

 

 短く礼を告げて私はそのまま泥のように眠りについた。

 

 

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

 

 

 

 モノレールを破壊するウイルスをデリートしてすぐ、ロックマンはとある建物の屋上に急行した。そこから誰かが援護していたのにウォーロックが気付いていたからだ。

 

「ウォーロック、確かにここに誰かいたよね?」

 

『あぁ、間違いねぇ。誰かは知らねえが、ここに誰かがいたのは間違いないな。微かに電波の痕跡もあるし、お前もここから人影が飛んでいくのを見たろ』

 

「そうだね」

 

 誰かは知らないその人物は、ロックマンを邪魔しないようにウイルスのデリートに手を貸してくれていた。途中からやけに威力の高いキャノンやらガトリングやらが飛んできたものの、それらも全てウイルスを狙ったもの。

 

 しかしその人物はロックマンが接近するや否や猛スピードで逃げていってしまい接触は叶わず。結局、相手の正体は謎のままである。

 

「味方、なのかな……?」

 

『さぁな。まあどっちにしろ、既にどっかの地球人がFM星人に洗脳されているのは間違いないがな』

 

「……FM星人は地球人を洗脳して操るんだったね」

 

『そうだな。まあ、スバルの場合はどうしてか操れないし、自我もきちんと残ってるけどな』

 

 あっけらかんと言ってのけるウォーロックだが、もしもダメだった時は意識も残らず操られていたということ。そしてこの場にいた人物は高確率でそうなってしまった人間であることを悟り、スバルはやや固い表情で黙り込む。

 

『なんだ? 人相手だと戦えないってか? 心配すんなよ。FM星人に取り憑かれた人間は倒せば元通りになるはずだ。むしろ助けたいと思うならきっちり倒してやった方がいいぞ』

 

「……そう、そうだね。うん、ボク、頑張るよ」

 

『おうよ、その意気だ。んじゃあ、そろそろ帰ろうぜスバル。オレはもう疲れた。これ以上は電波変換が維持できねぇ』

 

「え!? ちょっと待ってよウォーロック! ここで解除したらボク、帰れなくなっちゃうんだけど!?」

 

 高層ビルの屋上、勿論入り口は施錠されている。ここで生身に戻ってしまえばスバルはウォーロックが回復するまで立ち惚けを食らうことになる。それはごめんだと、ロックマンは慌てて地上へと下りるのだった。

 

 

 

 

 

 




 ちなみにこれを書いていた頃、作者が好きだったのはロクアカのリィエルでした。青髪ヒロイン、いいよね。
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