心を探し求める水瓶座   作:リコレクションでも嬉しい

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第13話

 シオナside

 

 

 はい、始まりましたジェミニ・スパークとの戦闘である。よもやこんなにも早く対峙することになるとは思わなかった。それもハープ・ノートと肩を並べてだなんて。

 

 戦うことになってしまった以上は仕方ない。腹を括って戦うことにしよう。ハープ・ノートという心強い味方もいる訳だし、やれるだけやってみよう。

 

 とりあえず初手はやっぱりこれだね──

 

「バトルカード──バリア……」

 

 自らの周囲を球状に守るバリアを展開する。事故って電撃の一つでも受けたら堪らないからね。ゲームでも初手インビジブルとバリアは常識である。

 

 しかしジェミニ・スパークからすればバリアを張る行為は臆病者に見えたのだろう。馬鹿にするような嘲笑を浮かべている。

 

「ふっ、攻撃を受けるのがそんなに怖いなら尻尾を巻いて逃げたらどうかな」

 

『アクエリアスに比べて、中の女は小心者らしい』

 

 好き勝手言ってくれるねぇ、じゃあちょっと本気出しちゃおうか。

 

「バトルカード、ベルセルクソード1……!」

 

「なっ……!?」

 

 油断しているホワイトにソードで連続斬りを仕掛ける。ベストコンボ組に多用されるくらい扱いやすく強いバトルカードだ。唯一の難点はターゲットが複数になるジェミニ・スパーク相手にはちょっと相性が悪いことだけど、現実となった今は狙う相手を自分で決められるから問題なし。

 

「くっ、エレキソード!」

 

 咄嗟にホワイトが反撃をしてくるが構わない。バリアで受けて三連撃を叩き込む。

 

 まさかエレキソードをガン無視されるとは思っていなかったのだろう。意表を突かれたホワイトはソードの三連撃をもろに食らった。

 

「うぐっ!?」

 

 小さく悲鳴を上げて膝を突くホワイト。良かった、ゲームと違って白い方を殴ってもちゃんとダメージが入るみたいだ。これで心置きなく、ホワイトをボコれる。

 

 ホワイトに当たりが強くないかって? 別に、ブラックでも同じようにボコる所存ではあるけど。スバル、もといロックマンを好き勝手ボコってくれたんだから、その分ボコり返しても文句はないよね? 

 

『貴様ッ!?』

 

 相方をやられてブラックが怒りながら攻撃直後の私を狙う。バリアはエレキソードの一撃で剥がれてしまっており、回避は技を終えた直後で難しい。今の私にブラックの攻撃を防ぐ手立てはなかった。

 

 でも心配は要らない。だって私は今、一人で戦っている訳ではないから。

 

「ショックノート!」

 

『ちっ!?』

 

 ハープ・ノートがスピーカーから放った音符攻撃がブラックの攻撃を中断させる。直撃こそしなかったものの、着弾時の衝撃を受けてブラックは忌々しそうに顔を歪めた。

 

「ぐぅ……調子に、乗るな!」

 

 ダメージから復帰したホワイトが姿を消し、直後に私の背後に現れエレキソードで斬りかかってくる。戦闘中にも拘わらず自在に周波数を変えて四方八方から奇襲する戦法。なるほど、実際に受ける側になると厄介なものだと思う。

 

 でも、あんまり舐めないでほしい。こちとら流星シリーズ三作をやり込んできたゲーマーである。理不尽コンボや攻撃には慣れている。

 

 振り下ろされるエレキソードを私は躱さない。そのまま袈裟懸けの斬撃をその身に受けた。

 

「アクア・レディ!?」

 

『威勢が良かったのは最初だけか』

 

 ハープ・ノートが悲鳴を上げ、ブラックが嘲笑する。そして確かな手応えを感じたホワイトは──斬られた私に代わって出現した狸の人形に目を見開いた。

 

「なっ、ヘンゲノジュツ──」

 

「いぐざくとりー……」

 

 奇襲戦法がジェミニ・スパークの専売特許だと思ったら大間違い。さあ、私を舐めたツケをその身で払ってもらおう。食らえ! 見た目はただのワイドソードなのに木属性160ダメージ! 

 

「うぐあああああ──!?」

 

 流石に弱点属性二倍ダメージは効いたのか、ホワイトは絶叫して浜辺に倒れ込んだ。意識は失っていないようだけど、ベルセルクソードに続いてこのダメージは無視できないだろう

 

 さて、どうしてやろうか。スバルの分の仕返しとしてはもう十分な気もするけど、このまま逃がすのも面倒だ。正体は確信しているが、学校でスバルに接触できないように電波変換を解除させてもいいかな。

 

 倒れ伏すホワイトの処遇をどうしようかと考えていると、不意にハープ・ノートの叫び声に耳朶を叩かれた。

 

「危ない、アクア・レディ!」

 

「…………っ!?」

 

 反射的に私は頭を下げる。直後、私の頭上を電撃を纏ったロケットパンチが通過していった。ブラックによるロケットナックルだ。

 

『食らえ、アクア・レディ!』

 

 続けざまにブラック本体が残った腕をプラズマガンに変えて……って、プラズマガン!? バトルカード使うの、ジェミニ・スパーク!? 

 

 意表を突かれた私は回避が遅れる。元々ロケットナックルの回避で体勢が崩れていたタイミングだ。しかも攻撃はプラズマガンという出の早いバトルカード。被弾は避けられない。

 

「あぐぅ……!?」

 

 全身を貫く電撃に思わず膝を突いてしまう。プラズマガンの威力はキャノンなどと比べると低めに設定されているけど、弱点属性で二倍になれば受けるダメージは馬鹿にできなくなる。何よりもプラズマガンは直撃した相手に麻痺を付与させる。ゲームでの麻痺ですら状況によっては致命的なのに、現実で麻痺して硬直なんてしたらどうなるか。

 

 麻痺して動けなくなった私に一度は外れたはずのロケットナックルが軌道を曲げて向かってくる。噓でしょ、そのロケットパンチ一直線に進むだけじゃなかったの? 聞いてないよ、そんな話。

 

「マシンガンストリング!」

 

 真っ直ぐ向かってくるロケットナックルを呆然と見つめていると、横合いから伸びてきたギターの弦が身体に巻き付いた。そして直後、一本釣りもかくやの勢いでその場から強制的に引っ張り上げられ、気付いた時にはハープ・ノートの細腕に抱きしめられていた。

 

「間に合った! 怪我はない、アクア・レディ?」

 

「ん、だいじょーぶ……」

 

 弦を伸ばす攻撃でこんなことができるんですか、そうですか。駄目だ、ゲームの固定観念が邪魔して予想外の攻撃に反応が一歩遅れている。ここは現実で、0と1で構成された虚構の世界じゃないことをちゃんと認識しないと……。

 

「ごめんね、黒い方を抑えきれなくて。あいつ、思ったより強くて……」

 

「問題、なし……多分、勝てる」

 

 ホワイトと戦ってみた感じ、勝ち目がない程の実力差は感じられなかった。二対一ならきついけど、分断して一対一に持ち込めば十分に勝てる。ホワイトよりもブラックの方が強い可能性は考えられるけど、それだって実力差が引っ繰り返る程のものではないはずだ。

 

 後は私が固定観念を捨てて戦闘に全集中できればいいんだけど……それが一番難しいことだったりする。

 

『おい、大丈夫か?』

 

「くっ、頭がおかしい割に随分と強いじゃないか。あの女は前からあんなに強かったのかい?」

 

『いや、むしろ戦士としてはハープと同じで下から数えた方が早かったはずなんだが……今日のところは退くぞ』

 

「仕方ないね……」

 

 ブラックの肩を借りながらも立ち上がったホワイトが私を忌々し気に睨んでくる。負けじとヴェール越しに睨み返すが、果たして我が無表情フェイスはちゃんと睨み返すことができているのだろうか。

 

『今日のところは退いてやる。だが覚えておけよ、ハープ、それからアクエリアス。お前達が裏切ったことはFM王に報告させてもらう』

 

『勝手にすればいいんじゃない? どうせ今後も戦うことに変わりはないんだもの。ね、アクエリアス?』

 

『そうですね……ところで、ジェミニ。貴方に聞きたいことが一つあるのですよ』

 

『裏切者と話すことなんてない』

 

『うふふっ、そんなつれないことを仰らないでください。貴方もきっと興味を持つ話ですよ。何せ──我々以外の裏切者の存在についてですから』

 

 アクエリアスの発言に、取り合う気などなかったはずのブラックが動きを止めた。

 

『ほう、お前達とウォーロック以外にも裏切者がいると?』

 

『ええ、その通りです。その者はFM王の側に控え、詭弁を弄してFM星と友好関係を結ぼうとした数々の星を滅ぼさせてきたとのこと……最近で言えばAM星、そしてこの地球。何か、心当たりはありませんか?』

 

『……さあな。少なくとも、俺の知る限りそんな輩はいない』

 

 僅かな間を置いて答えたブラックを、水瓶の姿となったアクエリアスは無言で見据える。痛い程の沈黙が流れ、完全に蚊帳の外であるホワイトが苛立ちを募らせ始め、状況が理解できないハープ・ノートが困ったようにおろおろし始めた。

 

 そしてアクエリアスと電波変換している私はと言えば、特にこれと言って口を挟むつもりはない。だってその裏切者情報をアクエリアスに告げたの、私だしね。ただ、あくまでその情報はゲームの時のものであり、現実となった今、本当に裏切者がいて暗躍しているとは限らない。

 

 アクエリアスもそれは重々理解しているはずだから、今の質問の意図はあくまで確認だろう。あるいは鎌かけかもしれない。

 

 緊迫した空気が続くことしばらく。長い沈黙を破ったのはブラックだった。

 

『これ以上、裏切者の戯言に付き合っていられるか。帰るぞ』

 

「そうだね」

 

 アクエリアスの言葉を戯言と切って捨て、ジェミニ・スパークはこの場から撤退した。後に残されたのは私と、困ったようにこっちを見つめるハープ・ノート。そして浜辺に倒れたままのロックマンだけだ。

 

 

 

 

 

 

 ♒︎

 

 

 

 

 

 

『ちょっとアクエリアス。さっきの話、本当なの? 初耳なんだけど』

 

『言っていませんでしたか? と言っても、私もあくまで小耳に挟んだ程度で確証も何もないのですが』

 

『聞いてないわよ。もしその話が本当だったら、大変なことじゃない』

 

 FM星を統べる王が側近の詭弁に惑わされ、幾つもの星を滅ぼしてきた。それが事実だとしたら、地球への侵略行為も正当性が疑われることになる。何せ地球侵略は、先に侵略行為を働いた地球への報復という名目で行われているのだから。

 

『真実は分かりません。それを調べるためにも、探りを入れていく必要がありますね』

 

『もしかして、アクエリアスが地球に二週間も早く来ていた訳って、それなの?』

 

『いえ、それは単純にウォーロックが地球に向かう気配を察知したので先回りしただけですが?』

 

『あ、そう……』

 

 見直し掛けたアクエリアスの株がすとんと落ちた音が聞こえた。気持ちは分かるよ、ハープ。何処までいってもアクエリアスはアクエリアスだから仕方ないんだけどね。

 

 FM星人が小難しい話をしている一方、私とミソラは和気藹々と盛り上がっていた。

 

「ねえねえ、これって私達の勝ちでいいのかな?」

 

「ん、いいと思う。ぶいっ……」

 

「友情パワーの勝利って奴だね!」

 

 いえーい! と私の手を取って上下するミソラ。うーん、何をしてもミソラは可愛いなぁ。目が離せない完璧で究極のアイドルだ。

 

「あ、そう言えばロックマンは大丈夫? 手酷くやられていたみたいだけど」

 

 おっと、そうだった。ロックマンはジェミニサンダーをもろに受けてダウンしているんだ。そろそろ起きてもおかしくない頃合いだけど、流石にダメージが深かったのだろうか。

 

 ミソラと一緒に浜辺で倒れるロックマンに近寄る。するとロックマンの左腕であるウォーロックが何やら騒ぎ始めた。

 

『おい待て来るんじゃねぇ! 何をするつもりだ、アクエリアス!?』

 

『おやまぁ、そんないけずなこと言わないでください、ウォーロック。せっかくの再会なのですから、もっと感動的で情熱的な言葉を頂けませんか?』

 

『嘘つけぇ! お前だろ、オレ達をずっと付け回していたのは!』

 

 モノレールの事件から今日まで。影からこそこそと付け回し──もとい助けていたのは確かに私達だ。ウォーロックも流石に察しが付いていたらしい。

 

『付け回していただなんて、そんな人聞きの悪い。私はただ、影から日向から貴方の勇姿を見守り、時に手助けしていただけですよ』

 

『だったら普通に助けろよ!? 何だってコソコソと隠れてやがった!?』

 

『だって、逃げるじゃないですか?』

 

 ちょっと拗ねたような口調でアクエリアスが言うと、ぐっと小さく唸ってウォーロックが黙る。図星だったのだろう。まあアクエリアスの過去の所業を聞いた私からすると、ウォーロックの反応も宜なるかなと思う。

 

 行く先々に現れては一方的な愛を説き、妻を自称して追いかけてくるやべー女。突き放そうとしてもまるで堪えた様子もなく、銀河の果てだろうと見つけ出して追いかけてくるようなトンチキストーカーだ。

 

 挙句に過去の行動から次の目的地を地球と割り出し、ウォーロックがやってくる二週間も前に地球へ先回りするような離れ業をやってのけた。あのウォーロックだってノイローゼになってトラウマを抱えてしまうのも無理はない。

 

『ですが、もう逃げられる心配もないでしょう。何せ貴方は大切な相棒(パートナー)を見つけてしまったようですから』

 

『てめっ、この……!』

 

 うふふっ、と笑うアクエリアスにウォーロックは何も言い返すことができない。これもまた図星だったからだろう。スバルの正義感に付き合って、勝ち目の薄いジェミニ・スパークとの戦いに挑んだのがその証左だ。

 

『これからはFM星の裏切者同士、助け合いましょうね、ウォーロック?』

 

『嘘だろ、地球まで来てもオレはこいつから逃げられないのかよ……』

 

 ショックの余り放心するウォーロックがちょっぴり可哀想だけど、諦めて受け入れてほしい。私はアクエリアスの味方だから、ウォーロックの精神ダメージに関してはノータッチを貫かせてもらう。

 

 唯一この場で全面的にウォーロックの境遇に同情しているのはハープだけど、彼女もアクエリアスの友人で優先するとなれば女の友情である。結果、ウォーロックの味方はいなかった。

 

 うぉーん、と男泣きするウォーロックを努めて無視して、私は倒れ込んでいるスバルの顔を覗き込む。バイザーに隠された表情は苦しそうで、ジェミニ・スパークの攻撃のダメージが抜けていないのが見て取れた。

 

「どう? ロックマン、大丈夫そう?」

 

 私と一緒に顔を覗き込んだミソラが聞いてくる。生憎と私はお医者さんではないので分からないが、目を覚ましそうな気配は感じる。問題は受けたダメージかな……だったら。

 

「バトルカード、リカバリー200……」

 

『……おい待て、なんでこっちに来るんだ?』

 

「回復すれば、目が覚める……かも?」

 

 電波体状態ならばリカバリー系である程度ダメージの回復ができる。前に見ていた感じ、ロックマンがバトルカードを使う時はウォーロックに食べさせて読み込んでいた。だったら、スバルの意識がなくともバトルカードを使うことはできるはずだ。

 

『おい、おい待てヤメロ! 無理やり食わせようとするんじゃねぇ!?』

 

「えいっ……」

 

 リカバリー200のバトルカードをウォーロックの口の中に突っ込む。ウォーロックが苦しそうな声を上げているような気がするけど、きっと気のせいだろう。OS更新で様々なデータを口から詰め込まれた時だってなんとかなったんだから大丈夫、大丈夫。

 

『おごごごご……がはぁ!? ヤメロ馬鹿が! 死んじまうだろうが!?』

 

 すぽっと腕を引っこ抜くとウォーロックが怒って叫ぶ。ごめんて。でもこれでちゃんとバトルカードを飲み込めたでしょう? 

 

『くそっ、アクエリアスと電波変換するだけあって、中身も相当ヤベー女だな……リカバリー200』

 

 何やらとんでもなく失礼なことを言われたような気がするけど聞かなかったことにしてあげる。次、同じこと言ったら覚えておいてね、ウォーロック? 

 

 私が密かにウォーロックへの報復カウンターを溜めていると、ロックマンの身体が淡い光に包まれた。リカバリーが効果を発動したようだ。その証拠に、苦しそうだった表情が穏やかなものに変わった。

 

「うっ……ここは」

 

『目が覚めたか』

 

「ウォーロック……そうだ、ボク、ジェミニ・スパークに負けちゃって……」

 

 よろよろと身体を起こしたロックマンは周囲をきょろきょろと見回して、すぐ側にいた私とミソラことハープ・ノートを見て目を丸くした。

 

「あれ、君達は……」

 

「久しぶりね、ロックマン。私のこと覚えてる?」

 

「ハープ・ノートだったよね。覚えてるよ。でも、そっちの君は……」

 

 ロックマンの目が私に向けられる。前に戦ったことがあるハープ・ノートと違って、こうして顔を合わせるのは初めてだ。人工衛星落下未遂の時に擦れ違ったけど、あれはノーカンでいいだろう。

 

「私はアクア・レディ……よろしく」

 

「うん、よろしく。もしかして、ボク達をいつも助けてくれていたのは君かな?」

 

 ロックマンの問い掛けにこくりと頷きを返す。顔はヴェールで隠れているから問題ないけど、声や口調で身バレする可能性は十分ある。受け答えは可能な限りハープ・ノートに任せて、私は言葉少なに話を進めよう。

 

「そっか、もしかして今日も助けてくれたの?」

 

「そうよ。私とアクア・レディの友情パワーでジェミニ・スパークをコテンパンにしてあげたんだから」

 

『嘘つけ、有利に戦ってたのはアクア・レディだけだろうが』

 

「何か言った、ウォーロック君?」

 

『ケッ、何もねぇよ……』

 

 キッとハープ・ノートに睨まれてウォーロックは不満そうに黙り込む。自分達が完敗した相手に、勝利こそしなかったが善戦していたことが面白くないのだろう。

 

 それはロックマンことスバルも同じで、自分が一方的に負けた相手に私達が勝利を収めたと勘違いして、情けなさから落ち込み始める。

 

「強いんだね、二人は。ボクがしゃしゃり出る必要なんて、なかったんだ……」

 

「……そんなこと、ない」

 

「えっ?」

 

「ロックマンは、一人。私達は、二人だった……ジェミニ・スパーク相手に、あなたは一人で頑張った……一回くらい負けても、気にしないで」

 

 ……しまった、喋り過ぎないように決めた直後に滅茶苦茶喋ってしまった。でもスバルが落ち込んでいる姿を前にして黙ってもいられないし、変に自信喪失されてしまっても困る。だから今のフォローは必要経費ということで。

 

「あ、ありがとう。頑張ってみるよ」

 

「ん……」

 

 私の拙い励ましで少しは持ち直したのか、ロックマンは表情を明るいものへと変えた。

 

「改めて、助けてくれてありがとう、二人とも」

 

「いいのいいの。その代わり、私達が困ってる時はロックマンも助けてね?」

 

「……一連托生」

 

 ジェミニに裏切者認定を受けた以上、私もハープ・ノートもFM星人達に狙われることになる。アンドロメダの鍵を隠し待つウォーロックと比べれば危険度は低いだろうけど、絶対に安全とは言い切れないのだ。

 

「分かったよ。二人が困ってる時はすぐに駆け付ける」

 

『オイ、いいのかよそんな安請け合いしちまって?』

 

「だって、二人には危ないところを助けてもらったんだから、お返しをするのは当然だよ。アクア・レディはずっと前からボク達を助けてくれていたんだし」

 

『お人好しめ……知らないからな、どうなっても』

 

『随分な言い草じゃない、ウォーロック。私達に助けられるのが不満なら、一人でもジェミニを倒せるようになることね』

 

『ウルセェ! あんなヤロウ、オレ達が本気を出せばコテンパンにできらぁ!』

 

「ちょっと、ウォーロック。仲良くしようって話してるのに喧嘩しないでよ」

 

 売り言葉に買い言葉で喧嘩を始めるウォーロックと、煽るだけ煽って笑っているハープ。板挟みになっているスバルは気苦労が絶えなさそうだ。

 

 因みにうちのアクエリアスはウォーロックが逃げない確信を得たからか大人しいものだ。心の内で何を考えているかまでは分からないけど。

 

「じゃあ、ボク達は先に帰るよ。またね」

 

 このまま話を続けるとウォーロックが四方八方に噛み付きかねないと思ったのか、ロックマンは慌ただしい様子で話を切り上げるとウェーブロードに乗って帰っていった。

 

「それじゃあ、私達もそろそろ……って、そうだ。忘れるところだった」

 

 ハープ・ノートが懐から何やらチケットを取り出し、私に差し出してくる。映画か何かのチケットかな。

 

「次の休みにライブやるの。よかったら、遊びに来ない? 早く来てくれたら、舞台裏の案内とかしてあげちゃうけど……どうかな?」

 

「いいの……?」

 

「もちろん!」

 

 おぉ、ライブ前のミソラに会えるだけでなく舞台裏の見学までさせてもらえるとは。世のミソラファンが知ったら血涙を流しそうな話である。

 

「行く……」

 

「やたっ、じゃあ待ってるね!」

 

 私にライブのチケットを手渡すとミソラは嬉しそうに表情を綻ばせ、風のように浜辺を去っていった。ライブに行くだけであそこまで喜んで貰えるのなら、私も友達冥利に尽きるというもの。当日は遅れないよう、早めに会場に向かおう。

 

 ライブ当日を楽しみに考えて、ふと貰ったチケットを見やる。てっきり一般販売のチケットかと思ったけど、よく見たらこれ関係者用のチケットだ。しかも裏面にはミソラ直筆のサインまである……もしかしなくても、超プレミアチケットでは? 

 

 とんでもないものを貰ってしまったと内心で戦慄しながら、絶対に失くしたり汚したりしないようにしようと心に誓って家路に就くのだった。

 

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