心を探し求める水瓶座   作:リコレクションでも嬉しい

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第2話

 シオナside

 

 

 昨日は疲れた。シナリオにはないモノレール事故は起こるし、最後はロックマンに追いかけられそうになるし。散々とまではいかないけど、アクエリアスと出会ってから今までで一番忙しい一日だったと思う。これからそれ以上の事件が続くんだけどね……。

 

 しかし疲れていようと学校はある。今日も今日とてスバルは登校していない。懲りずに委員長達が突撃したみたいだけど梨の礫。無理矢理連れてこようとしても嫌がるだけだと思う。

 

 ちなみに平日の学校がある時間帯、アクエリアスはトランサー内にいない。私が頼み込んでスバルの監視に回ってもらっている。シナリオ序盤は学校に通っておらず、平日の昼間にウォーロックと共に色々と活動していたからね。いつ何処でイベントフラグが立つかも知れないし、動向の把握はしておかないとならない。

 

 今頃は何をしているのやら。因みに私は体育の真っ最中である。体操服に着替えて運動場でみんなで仲良くサッカーの時間。私はこっそり抜けて木陰で昼寝の真っ只中だけど。

 

「あぁ、愛しのロックマン様。またお会いしたいわ……」

 

 む、何やら馴染みのある単語が聞こえてきた。起き上がって声の主を見やれば、案の定乙女モード全開の委員長がキラキラと瞳を輝かせて浮かれた表情で空を見上げていた。

 

 昨日の一件で完全にロックマンに恋する乙女となったらしい委員長。彼女にしては珍しいことに授業中も上の空で、先生やクラスメイトからも心配されていた。事情を知るゴン太とキザマロは対応に困っているけど。

 

 ロックマンに夢中の委員長。そのロックマン様の正体が実は絶賛登校拒否かましているスバルだって知ったらどんな反応をするだろうか。やっぱりゲームみたいな感じにツンデレながらも内心デレデレにブラザーバンドを迫ったりとか? 

 

 でもゲームと違ってこの世界にはブラザーバンドが民間で普及していないから、そもそも無理な話か。ブラザーバンドがないからボッチに優しくないキズナリョクなる数値も存在しない。キズナリョクの数値次第で有名大学入学できるとかちょっとおかしいと思っていたからその点に関しては納得するんだけども、アビリティ強化できないことは懸念事項の一つである。

 

 まあそもそも、ゲームのようにHPが数字で明記されていることもない。ウイルスバスティングのシステムも、経験としては役に立っているけど全てが全て同じでもない。盲目的にゲームの知識やシステムを当てにするのは止めた方がいいだろう。

 

 ゲームとの相違点と言えば先生と双葉少年もそうだ。

 

 私達の担任の先生は女性、今も体育の授業を取り仕切っている人だ。間違ってもアフロみたいな髪型の育田道徳先生ではない。というかこの学校には育田先生がいないし、学習電波なる怪しげなものを導入する気配もない。校長も気の良い優しそうな人であるし、もう訳が分からないよ。

 

 そして双葉ツカサ。彼に関しては育田先生と違って学校に居るには居た。ただしクラスが違うためスバルと接触する可能性は低く、何より原作と違って二重人格ではない可能性が高い。

 

 確証はない。匿名であれこれとアプローチを掛け、最終的にはヒカルの名で呼び出してみてもまるで反応がなかったことから、多分二重人格ではないのだと思う。そうなるともうただの穏やかな性格の少年になってしまうのだが、念には念をとスバルと接触するようなことがあれば注意するようにしている。今のところはないけど……。

 

 原作知識との相違点の数々に溜め息を零すと、一瞬だけ上空を何かが駆け抜けた気がした。気のせいかな、まさか真昼間からウェーブロードをあちこち移動していたりしないよね?

 

 ないないと内心で否定しつつ私は努めて委員長のロックマン様トークから耳を背け、再び昼寝の時間に勤しむのであった。

 

 

 

 

 

 ♒︎

 

 

 

 

 

 授業が終わって放課後。特別親しくしている友人もいない私はさっさと下校である。別に虐められているとかいうことはない。次期生徒会長を目指しているだけあって委員長がそんなものを許すはずもないから。とは言えその点数稼ぎのために学校へ連れ出されそうになっているスバルにとってはいい迷惑だろうけど。

 

「ただいま……」

 

 静かな家に響く虚しい声。ここ最近はアクエリアスが返事をくれたので気にならなかったけれど、誰もいない家はとても静かだった。

 

 私一人だけのリビングでソファに腰掛け、特に何をするでもなくぼうっと時間を潰す。そうしてしばらく、窓の外が暗くなってきたところで友人が帰ってきた。

 

『ただいま戻りました……って、灯りもつけずに何をしているのですか、シオナ?』

 

「……ん、別に。おかえり、アクエリアス……」

 

 トランサーに映るアクエリアスの姿に胸中で安堵の息を洩らし、部屋の電気を点ける。変わらず私以外に人のいない部屋は広いけど、すぐ側に友人がいるというだけで空気が明るくなったような気がした。

 

「それで、進展は……?」

 

『気になるのは分かりますが、お夕飯をきちんと食べないとダメです。話はそれからですね』

 

 おのれアクエリアスめ、ここで勿体振るとは。いや、ちゃんと晩御飯を食べていない私が全面的に悪いけど、段々とアクエリアスがお母さんに見えてきた件について。

 

 スバルの近況は気になるけどまずは晩御飯。今日は何を食べようか。フードディスペンサーはレシピにある料理なら何でも出せる優れもの。その分、お値段は張るし出来上がる料理も手料理とは違って味気のない代物だけど。

 

 あまりお腹も減っていないしホットケーキでいいや。それポチっとな。

 

『おや? 夕餉にそれだけ? もっと食べないと大きくなれませんよ?』

 

 うるさいわい、余計な御世話よ。それに心配しなくとも毎朝牛乳は飲んでいるから、五、六年後にはスタイル抜群のお姉さんになっているはずだから無問題。

 

『ネットで調べましたが、牛乳を飲んだからと言って必ずしもスタイルが良くなるとは限らないと思うのですが。涙ぐましい努力ですね……』

 

 そんな本気で憐れむような目で見るのは止めて欲しい。大丈夫、大丈夫。今はちんちくりんだけど将来性はあるはずだから。母はヒンヌーで父はミニマムダディだけど、心配ないさ。世の中には隔世遺伝という素晴らしいものがある。私は私の将来性を信じているよ。

 

 出来上がったホットケーキを手早く食べ進める。やっぱりあかねさんが作る手料理と比べると温かみがない。美味しくないわけじゃないけど、物足りないなぁ……。

 

「ちゃんと食べた。話して……」

 

『はいはい、本当にシオナは幼馴染君のことが好きですねぇ』

 

 いやだから、そういうのじゃないって。まあ否定するのも面倒なので流しておくとしよう。

 

『そうですね、今日の幼馴染君の行動を一言で言うなら、電波変換に慣れるためのトレーニングでしょうか。ウェーブロードを走り回ったり、ウイルスバスティングをしたり、あとは何処かの研究施設にも寄っていましたね。確か……』

 

「天地研究所……?」

 

『はい、確かそのような名前でした。そこで何やら研究員達が言い争う様子を見ていました……』

 

「研究員……」

 

 天地研究所。元NAXA職員の天地守が所長を務める、宇宙についての研究を主としている町外れの研究所だ。その天地守はスバルのお父さんの後輩で、その関係からスバルとは親しい間柄である。

 

 しかし何故この時期にアマケンに? まだオックス・ファイアも出ていない時期であるのに、まさか先にキグナスが暴れるなんてことはないだろう。いや、決めつけはよくない。既にシナリオとの食い違いが多数発生している以上、FM星人襲撃の順番が前後してもおかしくはないだろう。

 

 となると、アクエリアスが見た言い争う研究員達は天地さんと宇田海さんかな。もう少しその研究員の特徴を聞いてみよう。

 

 私がより詳しく話を聞こうとしたところで、アクエリアスが思い出したとばかりに声を上げた。

 

『あぁ、そうでした。その後の幼馴染君を追っていましたら、研究所で言い争ってた研究員の一人が町外れの山で空を飛んでいました。すぐに墜落してましたけど、地球人は面白いことをするのですね』

 

 確定、宇田海さん以外の何者でもないよその研究員。また実験場所が展望台ではなくて別の場所に変わっているけど、生身で空を飛ぼうと試みる人間を私は他に知らない。というか展望台はどうしちゃったの? もう忘れ去られちゃったの?

 

 一向に気配すら漂うことのない展望台に胸中で黙祷を捧げた。

 

 さて、お巫山戯はここまでにして。スバルは宇田海さんと接触したの?

 

『えぇ、そのおかしな研究員が墜落したら血相を変えて助けに行きました。あまり近づけないので会話の内容までは知れませんが、険悪な雰囲気ではなかったと思います』

 

 あるぅえ? 悪い雰囲気ではなかったと? それってもう心理的な問題は解決しているということではないのだろうか。スバル、話術で未然に事件を防いだのかな。

 

 もうこのままキグナスによる一連の事件も発生しないのではないかと考えていると、アクエリアスがやや固い声音で呟く。

 

『ですがあの研究員……ちょっと気になります。FM星人が好みそうな周波数を出していましたので』

 

「孤独の周波数……?」

 

 確か、FM星人が取り憑く人間が発している固有の周波数だったはず。その周波数を発している人は心に孤独を抱えていて、FM星人はその心の隙間につけ込む。

 

 ふむ……つまりアクエリアスも私に孤独の周波数を感じたということだろうか。

 

 ちらとトランサー内のアクエリアスを見やると、いつもと変わらぬ微笑みを返される。私の考えはお見通しだったみたい。まあ別にそれならそれでいいんだけども。お陰で私は友人が増えたわけであるし、文句はない。

 

『ふふっ。それで、どうしましょうか?』

 

「……取り敢えず、スバルの監視は続行……明日も、お願い」

 

『えぇえぇ、承りましたとも』

 

 基本的に彼女は私に優しいから、お願いすれば大抵のことは聞いてくれる。お節介だったり揶揄い癖があるのが玉に瑕だけど。

 

 リビングのソファに身を沈めて少し物思いに耽る。

 

 スバルとウォーロックが出会い、ロックマンとなったことで物語は動き始めている。これから先、数々の事件をスバルはウォーロックと共に解決していく。私は表立って手を貸すことはできないので、しばらくは陰ながら手助けすることになるだろう。まあ最悪、私=アクア・レディであることさえ隠し抜けばいいはず。そこまで行動を制限されることもないだろう。

 

 でも迂闊にスバルと接触するのも正体が露呈しかねない。電波世界、現実世界共に気を払っておこう。

 

 何はともあれ、しばらくは様子見だ。他のFM星人の襲撃を警戒しつつ、シナリオの進み具合を把握していこう。正直、既に原作知識は息をしていないような気がするけど……。

 

 

 

 

 

 ♒︎

 

 

 

 

 

『シオナ……起きてください、シオナ!』

 

「んむぅ……なに、アクエリアス……」

 

 トランサーから響くアクエリアスの声に眠りから覚める。まだ半分ほど意識が夢の世界に残っているけど、残り半分でアクエリアスの声に耳を傾けた。

 

『幼馴染君が出掛けたのです、こんな朝早くに。何かあるのではないかと思いまして』

 

「んぁ……いま、なんじ……?」

 

『朝の六時ですね』

 

 はやっ……そんな朝早くに起きて何処へ行くのか。学校……はあり得ない、となると今のスバルの活動範囲からしてアマケンぐらいしかない。それにしても朝早すぎるよ、私は登校ギリギリまで惰眠を貪りたいタイプなのに……。

 

 でもアクエリアスの言う通り、こんなに朝早くから行動するのは珍しい。何か起きる予兆とも取れる。一応、追いかけてみよう。勿論、私は電波変換して向かう。だってまだ寝間着だし支度もできていないから。

 

 あー、でも……。

 

「ふあぁぁ……眠い」

 

『まったく、シオナは本当に朝が弱いですね。ほら、シャキっとして、早く幼馴染君を追いかけましょう』

 

「ふぁい……」

 

 寝ぼけ眼をこすりながらもお布団の誘惑を断ち切り、テキパキと身支度を整える。アクエリアスが文句を言うけど急ぎなので朝食はチョコフレークバーだけで済ませて準備完了。

 

「ん、準備おっけー……ふぁ……」

 

『まだ半分寝てますね。ウェーブロードから落っこちたりしてはいけませんよ、シオナ?』

 

「心配無用……」

 

 流石にそんなドジはこかない。それに意識ははっきりしているのだ。ただちょっと小学生の体が眠気を振り払えていないだけである。

 

「行くよ、アクエリアス……」

 

『はい、早く幼馴染君を追いかけましょう』

 

 その場で電波変換してウェーブロードに乗って天地研究所を目指す。支度に時間が掛かってしまったけど、時刻はまだ六時半である。何事もなかったのならば家に蜻蛉帰りして登校すれば遅刻にはならないだろう。

 

 呑気にそんなことを考えていた時だった。前方に見えてきた研究所が爆発し、あちこちから煙が上がり始めた。

 

『あらまぁ、どうやら始まってしまったようです』

 

「みたい……」

 

 トラックの暴走よりも先に天地研究所の事件が先に起きたことに多少驚きつつ、事件の渦中にある天地研究所へ急行する。やはりというか、騒動を起こした主犯は宇田海さんに取り憑いたキグナスらしい。天地研究所の上空を飛ぶキグナス・ウィングと地上に立つロックマンの姿がそれを物語っていた。

 

「どうしよ……ん?」

 

 ロックマンとキグナス・ウィングの戦いから離れた位置に、見覚えのある金髪ドリルを含めた三人組を認めて首を傾げる。シナリオでは確かに巻き込まれていたけど、何故今ここに委員長達がいるのだろう。まさかスバルを学校に連れて行くため? 委員長も諦めが悪いというかしつこいというか……まあ、そのお陰で愛しのロックマン様に会えたのは良かっただろうね。

 

 三人組に呆れの吐息を零しつつ私は離れた位置からロックマンの戦いを見守る。流石に今までのウイルスのようにはいかないらしく、随分と苦戦していた。初の対人戦故に精神的な問題もあるのだろう。大丈夫かな……取り敢えず、いざという時のために援護の用意だけしておく。

 

「バトルカード──ヘビーキャノン……」

 

 ゲームのように残り体力が数値で見えるわけではないので何とも言えないが、もしもの時はこいつを打ち込めばなんとかなるだろう。過剰火力? 手抜かりをしてロックマンが負けたり、怪我をするなんてことになるよりはマシ。念には念を入れるのが私のポリシーなのだ。

 

『ふふっ、そうですね、シオナ。愛しい人を傷つけるような害虫は塵も残さず消しとばしてしまえばいいのです。さあ、一思いに()ってしまいましょう』

 

 恐ろしいことを言わないでほしい。いくらロックマンが窮地に陥ってしまっていたとしても、敵を塵も残さず消し飛ばすだなんて危険な発想はしない。せいぜい、ヘビーキャノンを横っ面に打ち込んでノックアウトするくらいだ。

 

 胸中で盛大な文句を吐きながら建物の陰から顔を覗かせる。やはり戦況は思わしくない。徐々にではあるが押されてしまっている。それに、ロックマンは頻りに上に気を取られて戦闘に集中できていない。

 

 上……? 上に何かあるのだろうか?

 

『……これは、いけませんね』

 

「どうかした……?」

 

 珍しく焦った様子のアクエリアスに尋ねる。何やら退っ引きならない事態らしい。

 

『上を見てください。何か見えませんか?』

 

「ん、小さな豆粒……鳥?」

 

『人工衛星です』

 

 え……? ジンコウエイセイ? それは宇宙に浮かぶあの人工衛星のことだろうか。だとしたら、私の気のせいだと願いたいのだけど、その人工衛星、段々地上に近づいていやしないかな?

 

『どうやらキグナスの策謀のようですね。あれが落ちたら一巻の終わりかと』

 

 ちょっとキグナス、何してくれてるの。あなたが起こす事件はもっと極小スペースで擬似的に作られた宇宙空間で白鳥の舞パニックだったはずでしょうが。それが擬似宇宙どころか本物宇宙から人工衛星(ゲスト)をお呼びするとか、スケールアップも甚だしい。

 

 そもそも、人工衛星なんて代物が宇宙空間から落下してきたら研究所消滅どころかコダマタウン壊滅である。本気で洒落になっていない。何が何でも止めなければならないだろう。

 

「アクエリアス……!」

 

『はい。キグナスは幼馴染君に任せて、私達であちらをどうにかしましょう』

 

 ロックマンがキグナス・ウィングの相手に手一杯な以上、人工衛星の対応は私がする他ない。ロックマンとキグナス・ウィングが鎬を削る様子を横目に見つつ、上空遥か高くにまで伸びるウェーブロードに乗って人工衛星を目指す。

 

 電波状態なら大気圏も宇宙空間も何のその。そもそも呼吸すら必要としないので海中でも活動できる私にそんなものは障害にすらなり得ない。

 

「着いた……けど」

 

『止められるのでしょうか……』

 

 無理な気がする。私の体の何十倍もある物体を、それも既に大気圏突入し掛かっているような代物を止めるなんて物理的に不可能だ。キグナスのヤツは正気なのだろうか。

 

「止めるのは、無理……」

 

 だったら、落下地点を変えるしかない……! 幸いにもコダマタウンは海に近い街。上手く軌道を逸らせば海に落とすことも不可能ではない。津波やら二次災害が起こる可能性もないとは言い切れないけど、そこはもうコダマタウンの技術力に賭ける。それでもできるだけ遠海に落とすように努力はするけど。

 

『何処を狙いますか?』

 

 狙いは決めてある。昔から事あるごとにスバルから宇宙談義を聞かされていたお陰で、何処を狙い撃てば人工衛星のバランスが崩れるかは理解しているつもりだ。

 

 キグナス・ウィングを撃ち抜くために用意したヘビーキャノンの銃口を人工衛星の太陽光パネルの付け根に向けて──撃つ!

 

「えいっ……!」

 

 発射されたキャノン砲は狙い過たず太陽光パネルの付け根部分に直撃、目論見通り太陽光パネルが分離した。重心がずれた人工衛星は容易くバランスを崩し始め、徐々にではあるものの軌道が曲がる。

 

『流石ですね、シオナ』

 

「よゆー……」

 

 私がやったことはただキャノンを撃ち込んだだけだしね。それに、大変なのはこの後。お願いだから最小の被害で済んでほしい。

 

 落下速度を上げていく人工衛星をその場に残し、私は一足先に地上へ戻るのだった。

 

 

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

 

 

 

 ロックマンとキグナス・ウィングの戦いはあと一歩で決着するというところでキグナス・ウィングが逃亡、宇田海を助けること叶わずとなってしまった。

 

 戦闘を終えたロックマンは忸怩たる思いを抱えつつ、現在進行形で地上に迫る人工衛星の対処に追われた。人工衛星の落下を阻止するべく上空へと続くウェーブロードを駆ける。

 

「ねえ、ウォーロック。さっき、キグナス・ウィングと戦っている時に誰かが人工衛星に飛んで行ったよね?」

 

『ああ。一瞬だったんで見落としかけたし、キグナスのヤロウと戦ってたせいで追えなかったが、この先に誰かがいるのは間違いねぇ』

 

「それってもしかしてモノレールの時の人かな?」

 

 先日、電波ウイルスにより発生したモノレールの事故。その解決の際に、自分達に陰から助太刀した謎の人物が人工衛星を止めるべく行動しているのかもしれないと、スバルは内心で考えていた。

 

『ハン。どうだかな。どちらにせよ、この先にそのお相手がいるはずだぜ。いっちょ顔を拝んでやるとするか』

 

 誰にせよ相手はFM星人、つまりは逃亡者たるウォーロックを追ってきたか地球を破壊する命を帯びた敵。誰が出てこようとウォーロックは基本的に好戦的な態度である。

 

 落下中の人工衛星に辿り着くまでもう幾許かもないというところで、進行方向で青い光が瞬く。直後、ロックマンは猛スピードで地上へ帰っていく謎の電波体とすれ違った。

 

 互いに高速状態での交錯であったため相手の詳細は分からない。辛うじて認識できたのは全体的に青い衣装であったことと、電波変換しているのが女の子であったことぐらいだ。

 

「あ! 待って!」

 

 反射的に立ち止まって振り返るももう遅い。既にすれ違った相手の姿は見えず、眼下にあるのは青い地球だけだった。

 

「あの子がモノレールの時の人……? どうしたのさ、ウォーロック。急に静かになって」

 

『……えねぇ、見間違いだ。あいつがここにいるわけがねぇ』

 

「ちょっ、ウォーロック!? びっくりするくらい震えてるよ!?」

 

 ぷるぷると産まれたての仔鹿の如く震える左手、というかウォーロック。心なしか顔色が悪く見える。目の焦点も合っていない。ここまで強気で乱暴な態度ばかりのウォーロックからは想像もできない状態だ。

 

『い、いや。なんでもねぇよ。ちょっとありえねーモンを見た気がしただけだ。オレの勘違いに決まってる。そんなことより今は人工衛星が先だろ、スバル』

 

「うん、分かってるよ。行こう」

 

 ウォーロックの変調は気になるものの今は人工衛星の対処が優先。今なお落下を続ける人工衛星を止めるべく、ロックマンは宇宙を目指した。

 

 その後の展開を端的に語れば、人工衛星を止めることはできないものの既に軌道を逸らすように対処が施されており、ロックマンが手を加えることなく人工衛星が研究所に墜落することは防がれた。人工衛星が遠海に落下したことで生じた被害も軽微、研究所並びにコダマタウンは守られたのだった。

 

 しかし事件が本当の意味で解決したわけではない。黒幕であるキグナスは宇田海を連れて行方を眩ましてしまい、彼の消息は不明。サテラポリスも懸命に捜索しているものの行方を掴むことはできなかった。

 

 

 

 

 

 

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