心を探し求める水瓶座 作:リコレクションでも嬉しい
キグナス・ウィングが引き起こした一件から数日。スバルは以前と変わらぬ日常を送っていた。
毎朝訪問してくる委員長をやり過ごし、学校には行かずに自宅で通信教育で勉強、夜はふらっと星を観察しに出かける。時折発生するウイルス事件を解決したりなどするものの、基本的に変わり映えのない日々だ。
スバル自身、現状に対して思うところがないわけではない。だがそれでも学校に行くつもりはなかった。が、ここで退屈な日々に文句をつける相手が現れる。というか、ウォーロックである。
ウォーロックはスバルの退屈な毎日に我慢がならず、何でもいいから刺激をとスバルに学校へ行くように求めた。それはもう、昼夜問わずトランサー内で騒ぎ立て、スバルが寝不足で折れるまで。流石のスバルも睡眠を妨害されては堪らなかった。
「じゃあ、行ってくるよ母さん……」
「いってらっしゃい、スバル」
心から嬉しそうにスバルを見送るあかね。今日までずっと登校拒否を続けていた息子がまた学校に行く気になり、喜びが声音に滲み出ている。ただし当人はウォーロックの睡眠妨害によって酷い顔をしているが。
「あ、そうそう。シオナちゃんにも声を掛けてあげるのよ。最近は顔を合わせてないけど、あの子もスバルのことを心配してくれてたからね」
「うん、分かってるよ」
頷きながらも扉を開けて家を出る。するとそこには例によっていつもの如くスバルを迎えに来た委員長達の姿があった。
「えっ!? ほ、星河君が家から出てきた……!?」
「また君か……はぁ」
「ちょっと! 人の顔見て溜め息吐くってどういう了見かしら!?」
顔を合わせてすぐに溜め息を吐かれては委員長も怒る。しかし寝不足状態のスバルに取り合う気力はなく、おざなりに謝りつつお隣の家へ向かう。
「待ちなさい、星河君。そこは学校じゃないわよ」
「そんなことは分かってるよ。シオナに声を掛けるんだ」
「シオナさん……海鳴さんのことね。あなたの友達なの?」
まるでスバルに友達がいるのかと言わんばかりの聞き方である。実際、シオナ以外に友達にカテゴライズできる人間がいるわけではないのでスバルは反論できない。よって無視して玄関の呼び鈴を鳴らした。
電子的なチャイム音が家の中から洩れ聞こえてくる。しかし反応は皆無。もしかしたらもう登校しているかもしれないと思ったが、シオナに限ってそれもないかとスバルはもう一度チャイムを鳴らす。
都合三回のチャイム音が鳴ったところで玄関扉の施錠が外れ、ゆっくりと中から押し開かれる。子供一人分の隙間から顔を覗かせたのは海鳴シオナであった。ただし長い青髪は寝癖だらけ、目は未だ覚醒していないのか殆ど閉じかかっている寝ぼけ眼、極め付けには頬に枕の跡がついているという、これでもかと寝起きを体現した姿であったが。
「ん……宅配便は……?」
「あ……お、おはようシオナ。起きてる?」
誰が見ても寝起きすぐだと分かる幼馴染に困り顔を浮かべながらもスバルは挨拶を絞り出す。
「スバル……どうかした? 遊びに来た?」
「違うよ。学校に行くから、シオナも一緒に行かないかって誘いに来たんだよ」
「学校……スバルが?」
表情自体に大した変化はないものの、小さい頃から幼馴染をやってきたスバルにはシオナが大変驚いているのが分かった。無理もないだろう。昨日まで登校拒否していた不登校児が何の前触れなく学校に行くと言いだしたら誰だって驚く。シオナに関しては他にも理由があるのだが。
「ん、分かった。鞄取ってくる」
「ちょ、ちょっと待ちなさい海鳴さん」
家の中へ鞄を取りに引き返すシオナを呼び止めたのはこめかみを押さえた委員長だ。
「なに……?」
「あなた、まさかその格好で登校するつもりじゃないでしょうね?」
「……あ、忘れてた」
「こ、この子は……! ゴン太! キザマロ! あなた達は星河君が逃げないように学校まで一緒に行ってなさい! 星河君も、先に行きなさい! あと、寝起きの女の子をジロジロ見るものじゃないわよ!」
「「「は、はいぃぃぃ!」」」
委員長に怒鳴られて三人は慌ただしく学校へと向かう。その背中を見送ることなく委員長は有無を言わさずシオナを家に押し込み、自分も一言断ると家に上がる。
「急ぐわよ、海鳴さん。いつもみたいにのんびりしてたら遅刻よ、遅刻! 分かったらまずは身嗜みを整える!」
「……姑みたい」
「何か言った!?」
「なにも……」
凄まじい委員長の剣幕に押されてシオナはいつになくテキパキと身支度を整えるのだった。
♒︎
シオナside
おのれアクエリアスめ、よくも嵌めてくれたな……!
アクエリアスに叩き起こされて宅配便が来たと言われ、渋々起き上がって出てみればそこにいたのは宅配便のお兄さんではなくお隣さんのスバル。どういう風の吹き回しか、学校へ一緒に行くお誘いであった。
昨日までアグレッシブ不登校児であったスバルの突然の心変わり、加えて不意打ちの自宅訪問に私は柄にもなくパニックになっていた。おかしいよ、オックス飛んでキグナスが登場したと思ったら今度はスバルが登校するなんて、ハープ・ノートはどこで迷子になっているのさ。バミューダラビリンスに迷い込んじゃったの?
おかげでスバルと何故かいた委員長達に寝起きの姿を晒すわ、委員長が家に上がって私の身支度を手伝うわ、朝っぱらから忙しない事この上ない。嵌めてくれた下手人も物言わぬトランサーを演じているし、踏んだり蹴ったりである。
「もう、星河君が来なかったら遅刻してたのよあなた。この私が委員長を務めるクラスに在籍してる限り、遅刻なんて認めません。ほら、シャキッとする!」
「ん……ふわぁ……」
朝から委員長は元気だなぁ……私には見習えない。朝は私にとっての鬼門である。こう、頭が働かないんだよね……。
軽く朝食を済ませて顔を洗って髪を整え、着替えも終わらせて身支度終了。さて、あとは指定鞄を持って登校というところで委員長に止められる。
「待ちなさい、海鳴さん。ちょっとこっちへいらっしゃい」
ブラシとドライヤーを両手に持つ委員長に呼び止められ、手を引かれて洗面所へ。鏡の前に立たされるといつも適当に纏めている髪の毛を丁寧に手入れされる。
「いつも気になってたのよね。あなた、身嗜みとオシャレに関心がなさすぎよ。もう少し女の子らしくしなさい」
いよいよもって委員長が姑かお節介な母親に見えてきた件について。善意でやってくれていることなので断りづらく、まあ遅刻しても委員長のせいにできるしいいかと納得して任せる。
毎日、巨大金髪ドリルを二つ拵えるだけあって委員長の手付きは慣れたもの。上手い人がやるとブラッシングは気持ちいいと言うけれど、委員長はその域にいると思う。正直、気持ちよすぎて眠気がぶり返して……。
「海鳴さん、星河君と仲が良かったのね。知らなかったわ」
「ん……幼馴染……」
「そう。考えてみれば当然よね。お隣さん同士だもの」
ブラッシングの手は止めないまま委員長が尋ねてくる。
「ねえ、あなたは星河君が登校拒否していたこと、どう思っていたの? 学校に来て欲しいとは思わなかった?」
「……別に、学校が嫌なら無理する必要ない」
「でも、学校に来ることは当たり前でしょ? 義務教育なんだもの」
「そう……でも、その当たり前ができない人も、いる……」
委員長の言葉は至極正しい。世間一般的に言えば支持されるのは委員長の意見だろう。けれどもその当たり前ができない人だって世の中には大勢いる。
「スバルは辛いことがあって、今は立ち止まってるだけ……また、歩き出せるようになる……だから」
私の後ろに立って髪の毛を梳く委員長を見上げる。
「無理やり連れ出すのは……やめて。スバルの嫌がること……しないでほしい……」
今回、スバルが登校するに至った経緯は知らない。私の知らないところでシナリオが進んだのかもしれないし、委員長達のアプローチに根負けしたのかもしれない。はたまたもっと別の要因があってのことかもしれない。
どちらにせよ、あまり気乗りしていないのは一目見て分かった。幼馴染として、あまりスバルの嫌がることをしてほしくないのは本音である。
じぃっと委員長の目を見つめる。無表情の視線に根負けしたのか委員長は不満そうに溜め息を吐くと、首を縦に振った。
「分かったわよ。そんな風に言われたら、私が悪いみたいじゃない……要は星河君が進んで学校に来たくなるようにすればいいのよね?」
「ん。それなら……文句はない」
「いいわ、やってあげましょう。この白金ルナの手に掛かれば、星河君を自分から学校に来させるくらい朝飯前。今に見てなさい……!」
やる気の炎を瞳に宿し拳を握り締める委員長。熱い、熱いよ委員長……次期生徒会長になるための点数稼ぎとか言ってた癖に、一度スイッチが入るととことん貫き通すのは流石と言わざるを得ない。でも程々にね?
メラメラと背後に炎すら背負い始めた委員長に、私は要らぬ油を注いだのではないかと今更ながら悟る。ごめん、スバル。アプローチは変わるかもしれないけど、熱意は以前よりも増してしまったみたい。ごめんね?
♒︎
久方振りの登校であるスバルは最初こそ戸惑っていた様子だったけれど、委員長や先生のフォローもあって問題なく授業に臨めている。元よりスバルは家で勉強を進めているのもあって、授業速度についていけないなどの問題もない。問題があるとすれば休み時間の会話相手が私と委員長達くらいしかいないことだろうか。それも登校再開初日である以上、仕方ないことだ。
気になるのは授業中、やたらとトランサー相手に格闘していること。授業が進むにつれて自分勝手に暴れるトランサーを抑えんとスバルは奮闘していた。恐らく、ウォーロックがトランサー内で暴れていたのだろう。
もしかしなくても、スバルが急に登校する気になったのはウォーロックが一枚噛んでいるのかもしれない。彼が学校を見てみたいだとか言って聞かないから、渋々学校に登校したとか。気に入ったとか言う理由で勢い余ってオーパーツを飲み込んでしまうウォーロックなら有り得そうだ。
しかし、そうなるとスバルは今日一日だけの登校になる可能性が高い。トランサーの暴れ具合からしてウォーロックは学校がお気に召さない様子であるし、スバルも進んで通いたいと望んでいそうには見えない。よほどスバルの心を掴んで離さないものでもない限り、スバルはまた登校拒否に戻るだろう。
スバルの心を掴んで離さないもの……。
そう言えば、ついこの間の改装でとある施設ができていた。それならスバルも興味を示すかもしれない。
委員長に協力するわけではないけど、ちょっと勧めてみようかな。
授業が終わり放課後となったところで私はスバルを探す。皆が仲の良い子同士で遊びの約束を取り付けているのを尻目に、スバルは一人教室を出ていくところであった。
私も手際よく荷物を纏めてスバルの後を追いかけようとするも、走り出したところで文字通り後ろ髪を引かれて止められてしまった。
「ちょおっとお待ちなさい、海鳴さん。あなたにも色々と協力してもらうわよ……あの、大丈夫かしら? そんなに強く引っ張ったつもりはないのだけど?」
「痛い……」
勢いよく走り出した瞬間に後ろ髪を引っ張られたため、地味に後頭部が痛い。委員長の顔からして悪気があったわけではないのは分かるけど、ちょっと痛みが治まるまで待って欲しい。うぅ、髪の毛とか抜けてないよね……?
委員長に後頭部を摩られながらじっと痛みに耐えること一分ほど。ようやく痛みが和らいできたので委員長の話を聞く。
「それで……協力ってなに?」
「そうそう、星河君が好きなものとか教えてくれるかしら? 星河君が自分から望んで学校に来るようにするため、まずは彼のことを知ろうと思ったのよ」
なるほど。今までの早朝突撃手法といった無理やりな手口ではなく、委員長なりに知恵を絞ったわけだ。悪くないというか、小学五年生にしては随分と大人らしい考え方ができるなと感心する。やっぱり委員長は頭がいいだけではないみたい。
無理やり連れ出すような手口でない以上、私に拒否するつもりはなかった。それに私が直接接触する機会を増やすより、委員長達に頑張ってもらった方が私達にとっても好都合。ここは三人に任せるとしよう。
私は快く委員長に情報提供をする。勿論、きちんとプライバシーは守るとも。教える内容は主に星や宇宙に纏わる話には目がないこと。委員長ならきっとそれだけの情報でスバルへの具体的なアプローチ方法を思いつくはず。
案の定、私の話を聞いた委員長はふふっと得意げな笑みを浮かべた。
「なるほど、よく分かったわ。ありがとね、海鳴さん。おかげで星河君を学校に登校させられそうだわ」
「ん……お安い御用」
これでスバルが学校に来るようになるもよし、また登校拒否に戻るならそれはそれ。どちらにせよ、育田先生もいない学校にスバルが登校したからと言って事件が起きるわけでもないのだし、来るか来ないかはスバルの自由だ。
「さあ行くわよ二人とも! 星河君に必ず学校に来たいと思わせるのよ!」
「「はい! 委員長!」」
いつもの如くゴン太とキザマロを引き連れて委員長はスバルを説得するべく教室を出ていく。その後ろ姿を見送り、ややあってから私もこっそりと後を尾けようかとしたところでパカパカとトランサーが一人でに開いた。
『よかったのですか、シオナ? せっかくの機会をあの子に譲ってしまって』
「別に……あんまり近づきすぎると……アクエリアスの存在を気取られる。それは、困るでしょ……?」
『うふふっ、そうですね。彼が幼馴染君の元を離れないことが確信できたら、私のことを明かしてもいいのですが……彼ってば、私が近づくとすぐ逃げてしまうものですから。困りものです……』
珍しく憂鬱げなアクエリアスの声音。ただ一人の男を思い続け、驚異の先回りまでして地球にやってきた彼女にしては弱々しい反応である。
『それに、私が彼についていることを他のFM星人に悟られるのもしばらくは避けたいですので、当分は陰から手助けになるでしょう……やっぱり幼馴染君とお話したいですか?』
「気にしてない……それに、話そうと思えば話せる」
家がお隣同士である以上、話したければアクエリアスにちょっと出掛けてもらえばいいだけ。それも今は特別必要性を感じないから問題ない。アクエリアスと違って、私はスバルと距離が離れても気にしない
『毎晩のように窓から幼馴染君の部屋を覗いてたのはどこの誰でしょうか……』
それはその……スバルがいつウォーロックと出会うか分からなかったから見張っていただけであって、決して寂しいとか話したいとかそんな理由ではない。だからその生温かい目をやめてくださいお願いします。
アクエリアスから向けられる視線を遮るためにトランサーを閉じて尾行を開始する。委員長達はどうやら屋上に向かったらしい。すぐに私も屋上に向かうと、委員長達とスバルの話し声が聞こえてきた。
屋上に繋がる扉に張り付き話の内容を窺う。やはり委員長はスバルに新設されたプラネタリウムの見学を勧めている。星や宇宙が好きなスバルは物の見事に食いついていた。
善は急げとばかりに一行はプラネタリウムへ向かう。私もこそこそと気付かれないように尾行した。
少し前の改装工事で新設されたプラネタリウムは現代の電波技術の粋を集めて作り上げられた無駄にハイテクノロジーな代物だ。登録したトランサーで簡単に操作することができ、見たい惑星や銀河などを解説付きで立体映像として浮かべたり、プラネタリウムらしく星空を投影することも当然可能。授業でも利用されている。
自由に自分の見たい宇宙を投影することが可能なプラネタリウムにスバルは夢中だ。あれほど迷惑がっていた委員長と楽しそうに会話しながら、子供らしく瞳を輝かせている。委員長は委員長でいつになく饒舌なスバルの宇宙に纏わる話を興味深そうに聞いていて、端から見ると何だかいい雰囲気だ。
『あらあらまぁ、そんな顔をするくらいならシオナが案内してあげればよかったでしょうに。複雑な乙女心……』
「アクエリアス、うるさい……」
私の顔はいつもと変わらず無表情ですよーだ。もう前と同じ手には引っ掛からない。今朝といいアクエリアスは隙あらば私をおちょくってくるから、落ち落ち気も抜けないよ。
幾つもある座席の陰に隠れながらスバルと委員長が仲睦まじく話している様子を眺めていると、不意にプラネタリウムの天井にサッカーボールが直撃する。何事かとサッカーボールが飛んできた方を見やれば、何やら山ほどノートを抱えたゴン太とキザマロがいた。サッカーボールを蹴ったのはゴン太らしい。
ふむ……ゴン太の様子からして委員長とスバルが仲良さ気にしているのが気に食わないのだろうか。ゴン太の心情としては友達ないし好意を寄せる相手がぽっと出のスバルに取られたという感じなのだろう。気持ちは分かるとも。
ゴン太は一頻り不満そうな顔で二人のやり取りを眺めた後、寂しげに溜め息を吐いてプラネタリウムを出ていく。先ほど委員長がノートをスバルの机に置いてきてと指示していたので教室に戻るのだろう。何だかちょっと可哀想に思えてきた。
シナリオではスバル(ウォーロック)の強烈な一撃でノックアウトしてしまい、委員長から役に立たないなどと言われて心に孤独が生じたところをオックスに付け込まれ、オックス・ファイアになってしまった。今のゴン太はシナリオとはまた違うもののオックスに付け込まれかねない心的状態に見える。キグナスの一件もあるし、少し心配だなぁ……念のために様子を見ておこうか。
星座談義を始めた二人を一瞥してからゴン太を追って外に出る。とぼとぼと肩を落として歩くゴン太の姿はすぐに見つかった。
「アクエリアス……」
『はい、お任せあれ』
どんよりと暗いオーラを背負う大きな背中から一定の距離を取りつつ、近くにオックスらしき電波体の反応がないかアクエリアスに感知してもらう。
『うーん……あの子の側にFM星人らしき電波体の気配はありませんね……おや?』
「どうかした……?」
『いえ、少々お待ちを……っ、いけないっ! シオナ、離れてくださいッ!!』
「え──?」
いつになく切羽詰まったアクエリアスの声に驚く私の目の前で、廊下を歩いていたゴン太の姿が轟音と共に瓦礫と粉塵に呑まれて消える。校庭に面する壁が外側から破壊され、その余波に巻き込まれたのだ。
「っ……ゴン太……!?」
『いけません、シオナ。近づいてはダメです』
「どうして……!?」
すぐにでもゴン太を救出しようと駆け出した足を私は止めざるを得なかった。濛々と立ち込める塵煙に浮かび上がる怪物の影を認めたからだ。
「ブルルルオォォォ!!」
立ち込める塵煙が轟く怒号と共に晴れ渡ると、そこには牛島ゴン太ではなく赤い雄牛の怪物が火を噴きながら立っていた。FM星人オックスと牛島ゴン太が電波変換した姿であるオックス・ファイアだ。
オックス・ファイアは一際荒々しく火を噴くと壁に開いた大きな穴から外へ飛び出す。向かう先には委員長とキザマロ、そしてスバルがいる。姿は見えないが恐らく近くにはウォーロックもいるのだと思う。
オックス・ファイアの狙いはウォーロック、延いてはウォーロックの持つアンドロメダの鍵だ。積極的に委員長とキザマロが狙われるとは考え辛いけど、巻き込まれないとも限らない。これは早々に事態を収拾しないと大変なことになる。
「アクエリアス……」
『皆まで言わずとも分かっています。行きましょう、シオナ。ただし』
「隠れて援護だけ……バレないようにする……」
『はい、よろしくお願いします』