心を探し求める水瓶座   作:リコレクションでも嬉しい

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第4話

 シオナside

 

 

 オックス・ファイアが飛び出したのと同じ穴から外へ出て私は屋上に上がった。屋上ならば高低差からこちらの姿が確認し辛く、なおかつ援護するには最適の位置取りだと考えたからだ。

 

 屋上から見下ろす校庭ではいつの間にやら電波変換したスバル──ロックマンとオックス・ファイアが戦っている。基本的にはオックス・ファイアが直線的な攻撃でタックルで突っ込み、ロックマンが余裕を持って躱すだけであるのだが、その余波で校庭にある照明やら遊具やらが次々と破壊されてしまっていた。

 

 何より問題は未だ委員長とキザマロが校庭内をあっちへこっちへ逃げ回っていること。どうやら校庭外へ逃げ出すタイミングを失い、電波体故に姿が見えないオックス・ファイアから闇雲に逃げ回っているようだ。あれではいつオックス・ファイアのタックルに巻き込まれたものか分かったものじゃない。

 

 できれば私が委員長達を避難させたいところだけど、それをすると十中八九ロックマンに見られる。アクエリアスがそれを望んでいない以上、姿を晒すリスクは冒せない。私にできるのはせいぜいで委員長達にタックルが当たりそうになったらオックス・ファイアを止めることぐらいだろう。

 

「バトルカード──ヘビーキャノン」

 

 ヘビーキャノンであればタックルの軌道を捻じ曲げることも可能だろう。直線的に動き回るオックス・ファイアに銃口を固定する。あとは引き金を引くだけだ。

 

「ブルルルオォォォッ!! ちょこまかと鬱陶しい。逃げるな! ロックマン!!」

 

 いやいや、ロックマンは一ミリ足りとも逃げてないよ。ただオックス・ファイアの攻撃が単調過ぎて当たっていないだけ。一撃の威力は凄まじいものがあるが、ここまで直線的だともはや動く的である。

 

「いくぞ、オックス・ファイア! 今度はこっちの番だ!」

 

「グオォォォォッ!?」

 

 強烈なタックルを軽やかにジャンプで回避し、そのまま無防備な赤い背中へとロックマンのバスター攻撃がヒットする。さしもの巨体とパワーを誇るオックス・ファイアでもロックバスターを何発も受けては堪らないらしい。というか、とても攻撃力10のロックバスターの威力とは思えないのは私だけなのだろうか。

 

 この調子ならば問題なくロックマンの勝利で終わるだろうと安心して見守っていると、オックス・ファイアの目線が不自然に動く。その目が見る先にいるのは……委員長とキザマロ!

 

「ブル……ブルルルオォォォッ!!」

 

 再びオックス・ファイアのタックル攻撃。しかしその狙いはロックマンから逸れて逃げ回っていた委員長達へ真っ直ぐ向かう……でも、させない!

 

「しゅーとっ……!」

 

 気の抜けそうな掛け声と同時に発射されたヘビーキャノンがオックス・ファイアの後頭部を直撃。キャノンとは比べものにならない威力の砲撃にオックス・ファイアは思いっきりつんのめり、タックルの勢い余って顔面から校庭へダイブすることとなった。

 

 ズザザアァァァ! と顔面で校庭に轍を作るオックス・ファイア。やった私が言うのもなんだけど、ゴン太大丈夫かな? ロックマンもちょっとドン引きしているし……やりすぎ?

 

『うふふっ、お見事です。流石はシオナ』

 

 アクエリアスだけだよ、この状況で満足気にしているのは。我が友人ながらこの人はちょっとどうかしているというか、一度敵対したら容赦が微塵もなくなる。それが同じFM星の元仲間であってもだ。

 

 土煙を上げながらもオックス・ファイアが何とか立ち上がる。しかしヘビーキャノンと顔面スライディングのダメージが効いているのか、既にフラフラの満身創痍状態。ロックバスターをもう数発でも撃ち込めば倒れそうである。

 

「えぇっと……バトルカード、プレデーション! ソード!」

 

 若干戸惑いながらもバトルカードをウォーロックに飲み込ませ、左腕をソードに変えたロックマンが斬りかかる。止めの一撃は大した抵抗もなくオックス・ファイアに吸い込まれ、憐れ赤い雄牛の電波体は断末魔にも似た雄叫びを最後にゴン太の体を飛び出していった。

 

『クソッ……覚えておけよ、ロックマン!!』

 

 間一髪で消滅を免れたオックスは何やら捨台詞を残して逃げていく。後に残されたのは微妙な顔のロックマンと電波変換が解除されて校庭に投げ出されたゴン太、そして走り回って疲れ果てた委員長とキザマロの四人である。

 

「無事終わった……」

 

 またゲームのシナリオガン無視の展開ではあったものの、無事に解決してよかったと安堵の息を零す。残念ながら校庭や校舎の一部は無残に破壊されてしまったけれども、人的被害が出なかっただけマシだろう。ほんと、放課後の学校でよかったよ。

 

『シオナ、そろそろ離れましょう。ロックマンに気づかれてしまいます』

 

「ん、らじゃー……」

 

 もうこれ以上長居する理由もなし、遠くからサテラポリスのサイレンも聞こえてきたのでさっさと屋上から立ち去る。ロックマンも五陽田警部に追いかけ回されては堪らないと、委員長からのラブコールを躱して逃げに徹しているようだ。

 

 あ、スバル、そのまま帰ってしまうみたいだけど教室に置いてあった鞄はいいのだろうか……後で届けてあげればいいか。私も早いところ電波変換を解除しよう。でないと五陽田警部との嬉しくない鬼ごっこが始まりかねない。

 

 私は五陽田警部に気づかれないように注意を払いながら校舎内に戻り、人目に付かないよう女子トイレの中で電波変換を解除するのだった。

 

 

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

 

 

 

 オックス・ファイアとの戦いを終えて五陽田警部に追いかけ回されるのを嫌ったロックマンは、委員長からの熱烈なアプローチを華麗にスルーして自宅まで撤退した。そこで気づく。

 

「あ、鞄忘れちゃったよ……」

 

 色々と焦っていたために教室に鞄を置いていたことをすっかり失念してしまっていた。しかし今から取りに行くのも面倒である。明日、また取りに行けばいいかと納得してスバルは自室でウォーロックと向き合う。

 

「ねえ、ウォーロック。やっぱりさっきのって、前の時と同じだよね?」

 

『あぁ、また誰かが横槍を入れやがったんだ。ったく、いよいよ訳が分からなくなってきやがったぜ……』

 

「え? どうしてさ?」

 

『忘れちまったのか、スバル。オレはこれでもFM星から逃げてきた逃亡者で、地球に送り込まれてきたFM星人は全員、オレを始末するか地球を破壊しようとしてるんだぞ? だってのに、モノレールといい人工衛星といい、こいつはオレ達を手助けしたり、挙句の果てには仲間であるはずのFM星人を撃ちやがった。訳が分からねぇ……』

 

 敵対者であるはずのFM星人側からの度重なる助太刀。基本的に自分以外のFM星人は敵だと認識しているウォーロックにとっては理解し難い状況である。

 

「でも、それって単純にボク達の味方をしてくれているってことじゃないの?」

 

『さぁな。何か企みがあるのかもしれねぇ。油断させて後ろからブスッとやるとかな』

 

「うーん、そんな感じはしないんだけどなぁ……今日だって、委員長達が襲われそうになったのを防いでくれたみたいだったし」

 

 戦闘中に横槍が入ったタイミングはオックス・ファイアの狙いが委員長達に切り替わった時だった。つまり介入した人物には地球人を助けるという確かな意図があったということだ。スバルとしては味方の可能性が高いと思っている。

 

 対してウォーロックは一貫して懐疑的な姿勢である。ある意味では釣り合いが取れたコンビなのかもしれない。

 

 二人で膝を突き合わせてあーでもないこーでもないと議論を重ねていると、部屋のドアがコンコンとノックされた。

 

「スバルー。シオナちゃんがあなたを訪ねてきてるわよ」

 

「え、シオナが? 分かった、すぐ行くよ」

 

 あかねに返事をしてからスバルは、はてと首を傾げる。幼稚園の頃からの付き合いであるシオナであるが、彼女から自分を訪ねてきたことはあまり多くない。基本的にスバルから訪ねることが大半だ。

 

「どうしたんだろ……」

 

『オイ、スバル。シオナってのは朝に見たあのおチビのことか?』

 

「そうだけど、本人におチビだとか言うのは止めてよね。シオナ、あれで結構気にしてるんだ」

 

『ケッ。お前ら子供なんざ大して差もねえだろうが。あのキザマロとか言うヤツの方がよっぽど小さいぜ』

 

「それ、前に誰かがシオナに似たようなことを言ったんだけど、次の日になったら発言した子は泣きながらシオナに土下座してたよ」

 

『何がどうしてそうなったんだよ!?』

 

 泣きながら土下座するに至った経緯が気になって仕方ないウォーロック。スバルは小学生とは思えないほどに達観した眼差しで虚空を見上げる。

 

「女の子の容姿を揶揄ったりしちゃいけないんだ。世にも恐ろしいものを見たくなければね……」

 

『ス、スバル……まさかお前も……』

 

「いや? ボクはシオナの体格を揶揄ったりなんてしたことないよ。うん、シオナを揶揄った子が放課後に体育器具庫に引きずり込まれて、次に出た時にはこの世の終わりを見てきたような顔をしていたことなんて知らない」

 

『もういい、もういいんだスバル。嫌な思い出は忘れちまえ』

 

 何時になくウォーロックは優しくスバルを気遣う。スバルとしてもあまり思い出したくない記憶であるため、回想なんて心的負担の大きい行為は止めて玄関に向かった。

 

 あかねが招き入れたのかシオナは家の中に入っていた。例によっていつもの如く眠たげな無表情のシオナは、スバルの姿を認めるとほんの微かに表情を変化させる。

 

「お待たせ、シオナ。どうかした?」

 

「ん、これ。スバルの忘れ物……」

 

 すっと差し出されたのはスバルが教室に忘れていった鞄。どうやら教室に置きっぱなしになっていたのに気づいてわざわざ持ってきてくれたらしい。

 

「ありがとう、シオナ。助かったよ。これで取りに行く手間が省けた」

 

「どういたしまして……ねえ、スバル。学校はどうだった……?」

 

「えっ? えぇっと……」

 

 何とも答え辛い問いかけにスバルは面食らいながらも、今日一日を振り返りながら答える。

 

「そうだね……思ったより悪くなかった、かな」

 

 授業の内容こそ既に家で学習済みの範囲であったため退屈であったが、放課後に委員長達が案内してくれたプラネタリウムは良かった。それに案外話してみると委員長達も悪い人ではないということも分かり、学校に対する苦手意識は大分薄らいだような気がしている。

 

 スバルの返答にシオナは何故か驚いたようにぱちくりと目を瞬かせた。

 

「どうかしたの、シオナ?」

 

「ん……何でもない。じゃあ、スバルは明日も学校に来る?」

 

「あ、えっと、それは……」

 

「…………」

 

「うっ……」

 

 じっと、何かを期待するような視線に見つめられてスバルは小さく呻く。しかしやがて根負けしたのかスバルは首を縦に振った。

 

「うん、分かったよ。明日からもちゃんと通うことにする」

 

『はあ!? 何言ってんだスバ──』

 

 ヒュンッ! と空を切る勢いで右腕を閃かせ、スバルは勝手に開きかけたトランサーを叩き閉じた。微かにウォーロックの声が洩れ聞こえたような気もしなくないが笑顔を繕って誤魔化す。

 

 幸い、シオナはスバルの意味不明な挙動に首を傾げているだけでウォーロックの存在には気づいていないようだった。

 

「どうかした……?」

 

「い、いや? 何でもないよ?」

 

「そう……でも、よかった。スバルがまた、学校に通うようになって……」

 

 ほんの僅かにシオナが無表情を崩して穏やかな微笑みを零した。

 

「……ごめん、心配掛けた」

 

 父親を失ったショックから登校拒否をして、家に引きこもりがちになったスバルを心配していたのは何も母親であるあかねだけではない。幼馴染のシオナもまたスバルを案じ、時折星河家にお邪魔しては様子を見にきてくれていたのだ。

 

「ん、大丈夫。またスバルが学校に来てくれて、嬉しい……」

 

 基本的に無表情がデフォルトのシオナであるが、ことスバルのこととなるとそこそこに感情が見え隠れするようになる。今はスバルの登校再開を心から喜んでいるようで、目元が嬉しそうに綻んでいた。

 

「じゃあ、私は帰る。また明日……」

 

「あ、ちょっと待って──」

 

 踵を返して玄関の扉に手を掛けたシオナを思わず呼び止める。

 

「なに……?」

 

「えっと……久しぶりにご飯食べていったらどうかな? 最近、来てなかったよね」

 

 両親が二人揃って海外出張で滅多に帰ってこないシオナは基本的に家では一人だ。それを気にかけたあかねの計らいで星河家の夕食にお呼ばれされたりすることが間々あったのだが、ここ最近はめっきりその機会がなくなっていた。わざわざ鞄を届けてもらったお礼代わりにとスバルは誘ったのである。

 

「でも、急にお邪魔したら迷惑……」

 

「あら、迷惑なんてそんなことないわよ?」

 

 リビングの扉を開けて顔を出したのはあかねだ。どうやらスバルとシオナのやり取りを聞いていたらしい。

 

「というか、もうシオナちゃんの分も用意しちゃってるから、遠慮される方が困っちゃうの。ここ最近はご無沙汰だったし、せっかくだから一緒に食べましょうよ。ね?」

 

「でも……」

 

 困ったようにシオナの視線が左腕のトランサーに向けられた。ほんの一瞬であったのでスバルとあかねは気づかなかったが。

 

 しばし小さな眉間に皺を寄せて悩み込んでいたシオナであったが、意思とは無関係にぐぅと腹の虫が鳴ったことで断る選択はなくなった。

 

「……お邪魔します」

 

「うん、どうぞ上がって」

 

 ぺこりと頭を下げるシオナをスバルとあかねは笑顔で迎え入れるのだった。

 

 

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

 

 

 

 久方ぶりに星河家であかねの手作り料理にありつくことができたシオナはいつになく熟睡していた。いつもは無表情で固定されている寝顔も今日は微かに喜色に染まっている。よほど星河家での温かな時間が楽しかったらしい。

 

『幸せそうな寝顔ですね……』

 

 あどけない寝顔を慈しむような眼差しで見守るアクエリアス。トランサー内から抜け出した彼女はまるで実の母親のようにシオナの傍に佇む。

 

『……おや? これは……もしや』

 

 不意にアクエリアスは窓の外に目線を移す。視線の先にあるのはコダマタウンにある電波塔の一つ。そこから発せられる懐かしい音波をアクエリアスは敏感に察知した。

 

『なるほど、彼女も地球にいらしていたのですね。ちょっと会いにいってみましょうか』

 

 音波の発信源と発信者を特定したアクエリアスは迷うことなく家を出る。

 

 未だなお発せられ続けている音波の発信源目掛けて一っ飛び。電波体に距離の概念などあってないようなものであるため、電波塔にはすぐに辿り着いた。そしてアクエリアスの予想通り、そこにはFM星に居た頃からの友人の姿があった。

 

『やはり貴女でしたか──ハープさん』

 

『ポロロン……あら、アクエリアスじゃない。こんな所で会えるなんて奇遇ね〜』

 

『えぇ、本当に。奇遇ですね』

 

『…………』

 

『…………』

 

『奇遇じゃないわよね?』

 

 スルーしかけたハープであったが、流石に不自然なタイミングだと思い直す。問われたアクエリアスは常と変わらぬ微笑みを浮かべるだけだ。

 

『おかしいわよね。どうしてアクエリアスが地球にいるのかしら……』

 

 ハープはFM王からの指令で遠路遥々、地球までやってきた。偏に任務遂行のため、ウォーロックの抹殺か地球の破壊を実行するためだ。他にも同じ内容の指令を受けたFM星人がこの地球に降り立っているはずである。

 

 しかしハープが知る限り、そのメンバーの中にアクエリアスはいなかった。ウォーロックがアンドロメダの鍵を奪って逃走した際の追撃部隊にも姿はなかったはず。それがどうして地球にいるというのか。

 

『どうしてと申されましても。彼のある所が私のある所ですから』

 

『……ま、まあ、あなたならやりかねないわね』

 

 友人としてアクエリアスの習性を知っているハープはとりあえず納得した。しかしそれでも腑に落ちない点は他にもある。

 

『アクエリアス。あなた、どうして私の居場所が分かったのかしら?』

 

 わざわざウォーロックを呼び出すためだけに彼のコール・バンド──一種の直通電話──を利用して音波を飛ばしていたというのに、現れたのは待ち人ではなく別人。ハープをして理解不能な事態である。

 

 困惑するハープにアクエリアスは含み笑いを零す。

 

『貴女が呼んだからですよ』

 

『いやいや、呼んでないわよ。私が呼んだのはウォーロックであって、彼のコール・バンドで音波を飛ばしていたはずなんだけど……』

 

『私がハープさんと彼のコール・バンドを把握してないとでも?』

 

『やだ、この子怖い……』

 

 知っていて当たり前の如くに言い切ってみせる友人にハープは戦慄を禁じ得ない。どうやら自分はアクエリアスの執着心を見誤っていたようだ。

 

 頭が痛いとばかりに吐息を洩らし、ハープは抹殺対象とされているウォーロックに心の底から同情した。そして同時に、任務を遂行してFM星に帰還することが非常に困難になったとも悟る。

 

『それよりハープさんは彼に何か用があるのでは?』

 

『あーうん、まあそうなんだけど……』

 

 まさかウォーロックを呼び出して襲うため、なんて馬鹿正直には言えず口籠るハープ。そんな彼女にアクエリアスは悪戯っぽく笑みを浮かべる。

 

『ふふっ、私に遠慮することなんてありませんよハープさん』

 

『えっ? けど……』

 

 ちょっと、いやかなりおかしなところがあったりするもののアクエリアスはハープにとって友人だ。そこそこに親しい間柄だと認識している。そんな友人の曲がりなりにも想い人を襲うのは元より気乗りしていなかったとは言え憚れる。

 

『ご心配には及びません。ハープさんでは彼を倒すことは無理ですから』

 

『むっ。確かに私は武闘派じゃないからあまり強くないけれど、電波変換すれば負けないわ』

 

『おや、電波変換の相手を見つけたのですか?』

 

『そうよ。これがまた気の合う子でね。ちょっとお転婆なところはあるけど可愛い子なのよ〜』

 

 楽しげに語るハープはその地球人のことを心から気に入っているらしい。その態度を見てアクエリアスはふむと一つ頷く。

 

『でしたらFM王からの任務など無視して、いっそ地球に移り住んでしまうのはいかがでしょう。ここはFM星と違って基本的には平和ですし、ハープさんの好きな音楽にも溢れています。悪くないと思いますが?』

 

『あなた、凄いこと言ってくれるわね。でも……』

 

 悪くないかも、と腕を組んでハープは悩み込む。FM星に帰りたいという気持ちはあるものの、今の生活を悪くないと思っている自分もいる。しかし明確にFM王と敵対しようものならウォーロックと同じく抹殺対象にされるのが関の山だ。

 

『もしもFM星を見限るおつもりがあるのなら手を組みませんか?』

 

『手を組む?』

 

『はい』

 

 にっこりと、小悪魔のように微笑みながらアクエリアスは裏切りを勧めるのだった。

 

 

 

 

 

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