心を探し求める水瓶座   作:リコレクションでも嬉しい

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第7話

 シオナside

 

 

 いよいよもって訳が分からなくなってきた。目が覚めたらリビングに原作メインヒロインが居るとはこれ如何に……とりあえずアクエリアスさん、事情を説明しなさいな。

 

 アクエリアス曰く、ロックマンとの戦いの後、ハープは騙していたことを白状して一悶着ありながらも二人は和解したそうだ。気が合うのもそうだが電波変換すれば世界中どこへでも行けるというメリットにミソラが食いついたらしい。アグレッシブだね、ミソラちゃん。

 

 さて早速世界の果てまで飛んでキューしようとしたところで登場したのが我らがアクエリアス。アクエリアスはハープとミソラが和解していると見るや以前と同様に手を組もうと提案したそうだ。

 

 アクエリアスに地球を破壊する意思は無く、なおかつハープの友人ということもあってミソラはその提案に二つ返事で頷く。ミソラ自身、今後他のFM星人に狙われる可能性を危惧していたらしい。もう一つ言えば、自分と同じ境遇の女の子に会ってみたかったのもあったそうだ。

 

 そうして私の与り知らぬところで同盟にも似た協力関係が築き上げられ、折角だから顔合わせもしてしまおうというのが今である。

 

 途中を大幅に端折ったアクエリアスからの説明で凡その状況は把握できたものの、もうダメだね。シナリオは銀河の果てまでフライアウェイしてしまったみたい。このままで大丈夫なのだろうか……。

 

 別にハープ・ノートもとい響ミソラと協力関係になること自体は悪くない、むしろ今後のことを考えればよくやったと言える。問題はロックマンとの関係性である。

 

 原作において響ミソラは母親を失ったことによる孤独と自分の歌をお金儲けのために利用しようとするマネージャーとの軋轢をハープに付け入られ、次々と市民を襲った。しかしそこで同じく孤独の痛みを知るスバルによって止められ、新たな絆を得たことにより一歩を踏み出すに至る。以降はシナリオの様々な場面でスバルの力になってくれる……のだが。

 

「それでね、マネージャーったら酷いのよ。いっつもお金お金煩いし、衣装は無駄にひらひらしてるし。マネージャー以外にもプロデューサーとかね──」

 

 延々と大人達に対する不満を語ること既に数十分。響ミソラってこんな愚痴とかを明け透けに言える性格だっただろうかと内心で首を傾げること十数回。それでもやはりゲームと変わらず元気で活発な面もあるなと納得することもう十何回。私の知る響ミソラと印象が結構違う件について。

 

 あるぅえ? 初期の頃の響ミソラは母親を亡くして間も無く、もっとダウナー入っている感じだったはずなのだけど。今度は生い立ちごと違うパターン? いや、影すらも感じられない育田先生とかの例もあるから一概には否定できないし、性格の変化で言えばスバルも当てはまるからなんとも言えない。

 

 とりあえず適度に相槌を打ちつつ話に耳を傾けていると、粗方吐き出したいことは吐き出せたのか勢いが止まる。打って変わってミソラは気恥ずかしげにはにかむ。

 

「ごめんね、初対面のあなたにこんなこと愚痴っても迷惑なだけだよね。えっと……」

 

「別に……あと、海鳴シオナ……シオナでいい」

 

「シオナね、分かったよ」

 

 うんと嬉しそうに頷く。ころころと表情が変わる少女だ、私なんかと違って……。

 

 原作においてスバルがミソラのことを大切な女の子として見ていた理由が何だか分かる気がする。初めてのブラザーバンドの相手であることも大きかったのだろうけど、それ以上に彼女には人を惹きつける魅力がある。流石はトップミュージシャン。当の本人はその現状に不満があるみたいだけど。

 

 愚痴の内容からしてミソラは誰かから与えられた歌を歌うだけの現状が不満らしい。自分で作った歌を沢山の人達に聞いてほしい。そんな折にハープが音楽の女神なるものを装って接触、騙されて利用されていたそうな。

 

 音楽の女神とかツッコミどころ満載だけど当の宇宙人達は私達を放っといて仲良くガールズトークしてるし、もうそっちは気にしないようにしよう。それよりも今は目の前のミソラである。

 

「自分の歌、作るの……?」

 

「うん。作りたいなって思ってるんだ。でもなかなかいい歌が浮かばなくて、ちょっと自信なくしてた……」

 

 私と変わらない歳で作曲活動に乗り出すとは恐れ入る。いや、三作目で実際にコンサートで自分の歌を歌っていたから何らおかしな話ではないのだけれど、現実になって目の前で四苦八苦している姿を見ると何だか応援したくなってしまう。

 

「……できる、と思う」

 

「え?」

 

 ボソッと小さく呟くとミソラが目を丸くした。

 

 私は言ってからちょっと小っ恥ずかしくなって顔を逸らしながら言葉を紡ぐ。

 

「ミソラは凄いから……皆がミソラのファンで、応援してる……私も好き……」

 

 嘘ではない。委員長達の熱意には遠く及ばずとも響ミソラの歌う歌が、何より彼女自身が好きだ。前世では一個の登場人物として、今世では一人の人間としてとても魅力的な女の子だと心から思う。

 

 ミソラならきっとできる。明確な根拠を提示できるわけではないけど、実際に顔を合わせて確信した。今日に至るまでの想定外の連続からシナリオ通りに行くとは口が裂けても言えないけれど、ミソラが一生懸命頑張ればきっと上手くいく。

 

「大変だと思うけど、頑張ってほしい……そうすれば、きっとできる……多分」

 

 断言できないあたりが情けない。いやでも仕方ないよね、ストーリーが何処かにインビジブルしてしまっているのだから。無責任な発言はできない。

 

 私の拙い言葉にミソラはしばし目を瞬かせていたが、やがてちょっと照れながら笑みを零す。

 

「えへへっ、ありがと。何だかできる気がしてきた。頑張ってみるよ」

 

 ぐっと両拳を握り締めて意気込むミソラ。その時、彼女の傍に置いてあった愛用のギターが振動した。どうやらギター自体がトランサーの代わりになっているようで、ヘッド部分に小さなディスプレイが取り付けられている。振動の理由は誰かからのコールが入ったからのようだ。

 

「うげっ、マネージャーだ……」

 

 コールの相手が誰か分かると途端に嫌そうな顔になるミソラだが、ふとこちらを見ると仕方なさそうに小さく溜め息を吐いて両手を合わせた。

 

「ごめん、ちょっと出てくるね」

 

 一言断るとミソラはリビングを出て行く。間を置かずして廊下の方からミソラと電話相手の会話が聞こえてくる。しばしミソラとマネージャーの口喧嘩というか、どうにか戻ってきてほしいマネージャーともうしばらく自由にしていたいミソラとの攻防が続き、十分近く経ってやっと会話が途切れた。

 

 通話を終えてリビングに戻ってきたミソラはやや不服げな表情を貼り付けていた。

 

「ちぇっ、せっかく世界一周でもしようかと思ってたのに……」

 

「どうかした……?」

 

「マネージャーに泣きつかれちゃってさ。というかあれはもう泣いてたかな……とりあえず、戻らないと行けなくなっちゃった」

 

 盛大な溜め息を吐くもののミソラに逃げようなどという意思は見られない。

 

「急に押し掛けておいてごめんね? そろそろ行かなくっちゃならないから……」

 

「気にしてない……頑張って」

 

「うん、ありがと……あっ、また遊びに来てもいいかな?」

 

「遊びに……?」

 

 私は思わず小首を傾げる。自慢ではないが私ほど面白みのない人間もいないだろう。そんな私と遊んで果たして楽しいものなのか甚だ疑問である。

 

「構わない……でも、私と遊んで楽しい……?」

 

「楽しいと思うよ? それに、私って遊びとかに誘える人とか全然いないからさ……友達が欲しいというか……」

 

「友達……」

 

 恥じらいながら告げられたミソラの言葉に少しばかり考え込む。

 

 思えば胸を張って友達と言える人物はスバルくらいしかいない。そのスバルはここ最近、委員長達との付き合いが増えて友達が増えつつある。しかし私にその流れはない。

 

 別段、友達の数で張り合おうとかいう考えはない。ただ、何となくこれはダメなのではないかという思いはあった。そこへミソラのこのお誘い。まさに願ったり叶ったりであった。

 

 不安げな眼差しのミソラに私はこくりと頷く。

 

「ん、分かった……暇な時なら、うぇるかむ……」

 

「ほんと? やったぁ! ありがと、シオナ!」

 

 跳ねんばかりにミソラは喜ぶ。

 

 二作目、三作目でも言及されていたけれど、小学生からトップミュージシャンということもあって本当に同年代の友達がいなかったのだろう。そこへ自分と同じく宇宙からやってきた電波星人と共同生活を送る友達ができたとあらば喜びも一入だろう。

 

「じゃあ、またねシオナ。お邪魔しました。行くよ、ハープ!」

 

『は〜い、分かったわよ』

 

 ミソラの呼び掛けに応える声がテレビのスピーカーから響く。どうやら今の今までテレビの電脳に居たらしい。

 

「──電波変換! 響ミソラ、オン・エア!!」

 

 目の前でハープ・ノートに電波変換するミソラ。ミソラの電波変換を間近で見られて内心で興奮していると、ミソラは「じゃあね!」と告げるとそのまま飛んで行ってしまった。

 

 賑やかなミソラがお暇したことで静かになるリビング。私は気を抜くように吐息を洩らしつつ一人用のソファに深く腰掛け直す。我知らず響ミソラとの対面に緊張していたらしい。

 

『ふふっ、よかったですねシオナ。新しくお友達ができたではありませんか』

 

「アクエリアス……」

 

 いつの間にかトランサー内に舞い戻ってきていたアクエリアスにジト目を禁じ得ない。普段からジト目のようなものであるけど、今回ばかりは文句を言わずにはいられなかった。

 

「驚くから……相談なしはやめて……」

 

『はい、ごめんなさい』

 

 謝罪の言葉を述べるアクエリアスであるが、全くもって反省しているようには思えなかった。またぞろこちらの度肝を抜いてきそうで気が気ではない。

 

「……もう、いい」

 

『あらあらまぁ、そんなに怒らないでください。別に悪い話ではなかったでしょう?』

 

「そうだけど……」

 

 既にシナリオどころかキャラごとの設定すらも当てにならない現状で響ミソラと縁を結べたのは確かに僥倖だと思う。その点に関してはアクエリアスぐっじょぶである。だからこそ文句を言い辛いのであるけれど。

 

 何とも言い難い想いを抱えつつ、仕方ないと溜め息を吐いた。

 

「それで……ハープとは話せた?」

 

『はい。協力関係についてきちんと取り決めておきましたよ』

 

「ありがと……」

 

 私とミソラがお喋りしている間、アクエリアスとハープはテレビの電脳内で互いの今後の立ち位置やどこまで協力し合うのかなどについて話し合ってもらっていた。果たしてどのような場所に落ち着いたのか、気になるところである。

 

『基本的には、困った時は助け合いましょう程度ですね。ミソラさんにもお仕事がありますから、何か事件があれば地球を守るように立ち回りますが、必ずしも対応できるわけではないとのこと』

 

「ん、仕方ない……」

 

 私達みたいな小学生と違ってミソラは忙しいのだ。しかもゲームと違って引退もしていないし、頑張れと言ってしまったからなおのこと忙しくなってしまうだろう。それでも、もはや当てにならないシナリオの展開でロックマンが詰みそうになるなら、その時は私が陰から手助けすればいいや。

 

「ロックマンの対応は……?」

 

 一番気になるのはそこである。敵対はないと思われるが、果たしてどのようなスタンスを取るのか。

 

『ハープさんはもう任務を放棄するそうですからその点はご心配なく。事件の際に出会しても協力すると仰っていました。ハープさんの協力を彼が素直に受け入れるかは五分五分ですが……幼馴染君の性格を思えば問題ないでしょう』

 

「そう……よかった」

 

 ほっと一息吐く。これで一つ肩の荷が下りて人心地つける。

 

 これから先、まだまだロックマンを襲う刺客は大勢いる。それに宇多海さんに至っては未だ行方不明のままだ。ついでにシナリオも行方不明だから本当に困る……。

 

 平穏無事にいくとは思えないけど、どうか上手くいくことを願う。スバルとウォーロックの戦いと、そして私達の目的も──

 

 

 

 

 

 

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