心を探し求める水瓶座   作:リコレクションでも嬉しい

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第8話

 その日、スバルは訳あって非常に困っていた。

 

 事の発端は昨夜、ロックマンとなってウイルス騒ぎを解決していた時である。例によっていつもの如く追いかけてくる五陽田に現場付近で出会したことで一層疑念を抱かれたことが原因だ。

 

 二度に渡る夜間徘徊による保護とロックマンの出没した付近に度々姿を現すことから、本格的に星河スバルがロックマンではないかと疑い始めた五陽田がスバルの尾行を始めたのである。

 

「参ったなぁ……」

 

 授業が終わって放課後、朝から続く五陽田の監視は変わらず続いている。今も校門近くの街路樹の陰で張っているのが校舎内からもよく見えた。

 

「ボクがロックマンだってばれたんじゃ……」

 

『さてな。いっそ一発締めとくか?』

 

「ダメだよ、そんな乱暴なことしちゃ。それこそ逮捕されちゃうよ」

 

『ケッ、面倒くせぇ……』

 

 スバルの溜め息とウォーロックの舌打ちが重なった。

 

 憂鬱な思いで窓の外を見ていると通りかかったルナが声を掛けてきた。

 

「あら、星河君じゃない。そんな所で何をしているのかしら?」

 

「委員長……」

 

 もはや言うまでもなくゴン太とキザマロを引き連れたルナの姿にスバルは何となく微苦笑を洩らす。この三人組も見慣れたものである。

 

 そんなスバルの態度にルナは訝しげに首を傾げる。

 

「何かしらその態度……まあいいわ、よかったら星河君も美術館に行かない? 美術のレポートを書くために行くのよ」

 

「あー、お誘いは嬉しいけど遠慮しておくよ。ちょっと用事があって……」

 

 用事というより問題であるが、ルナ達に迷惑をかけるわけにもいかない。美術のレポートはまた別の機会に書くことにしてスバルはルナの誘いを断った。

 

「そう、用事があるのなら仕方ないわね。きちんとレポートは書くのよ?」

 

 ルナも無理強いする気はなかったのかしつこく誘うこともなく、ゴン太とキザマロを連れてそのまま美術館へと向かっていく。ルナ達を見送ったところでスバルは困り果てたように項垂れる。

 

「どうしよう……」

 

 恐らく五陽田は何らかの確証を掴むまでスバルの尾行を止めないだろう。つまり今日一日を乗り切ったところで根本的な解決にはならない。どうにかしてスバルがロックマンでないと思わせなければならないのだ。

 

 しかしこのスバル、嘘や誤魔化しがあまり上手い性質(タチ)ではない。口八丁で五陽田を騙す自信は微塵もなかった。

 

「逃げるしかないのかなぁ……」

 

 これからの楽しくない追いかけっこの日々に憂鬱な思いを抱えるスバル。その傍らにすっと小柄な影が忍び寄った。

 

「──スバル」

 

「わっ!? なんだ、シオナか……」

 

 突然話しかけられてスバルは驚く。あれこれと悩んでいた時に話し掛けられたのもあって反応が少しばかり大袈裟になってしまったのは仕方ないだろう。

 

 声を掛けたシオナはほんの微かに眉尻を下げた。

 

「ごめん、驚かせた……」

 

「うぅん、こっちこそごめん。ちょっと大袈裟だったよ」

 

 驚いたとはいえ女の子相手にあの驚き様は失礼だったと思い謝る。シオナも驚かせるような近づき方をした自覚はあったのでそれ以上は何も言わず、いつまで経っても帰ろうとしない幼馴染に疑問を投げかけた。

 

「スバル、帰らないの……?」

 

「えぇっと、帰りたいのは山々なんだけど、止むに止まれない事情があるというか……」

 

 すすっとスバルの視線が横にスライドする。釣られて視線の先を追ったシオナの表情がほんの微かに顰められた。

 

「サテラポリス……」

 

「え、知ってるの?」

 

「……頭が、サテラポリスみたい」

 

「まあ、言われてみればそうだよね」

 

 五陽田は常日頃から頭にランプ付きのアンテナを着けている。緊急時にはあれがパトランプよろしく点滅するのだ。ちなみに頭から生えているわけではなくヘッドギアのようなものらしい。

 

 頭からアンテナを生やした怪しい風体の男が校門側で張り込んでいる。犯罪臭の漂う光景だ。

 

「スバル、困ってる……?」

 

「う〜ん、困ってると言えば困ってるのかな……」

 

 実際困ってはいるものの事情が事情なだけに何とも言えない。そんなスバルの煮え切らない態度に対して幼馴染が困っていると断定したシオナの行動は早かった。

 

「ちょっと待ってて……」

 

 その場にスバルを残しててくてくと廊下を歩いていくシオナ。何をするのか分からないものの言われた通りに待っていると、数分ほどしてシオナが戻ってきた。

 

「何をしてたの?」

 

「ん、不審者がいるって先生に言った……」

 

「え!?」

 

 驚いてスバルが校門方面を見やれば数人の教師に話しかけられ非常に困った様子の五陽田がいた。何やら必死に身の潔白を証明しようとしているようだが、実際に小学校前で張り込んでいた以上、弁解のしようもないだろう。

 

「ぶいっ……」

 

 無表情のままピースサインをしてみせるシオナ。幼馴染であるスバルも流石にこの展開には苦笑いだ。同時に、シオナを敵に回すようなことをしてはならないと改めて肝に銘じた。

 

 教師陣によって敢え無く五陽田が撤退したのを確認してスバルとシオナは今度こそ帰路につく。今朝とは違い後方の気配に気を配らなくていい分、スバルの足取りは非常に軽やかだった。

 

 しかしそれもしばらくすると曇ることになる。

 

「今度は車かぁ……」

 

 徒歩のスバルとシオナの後方をのろのろと走行するパトカーが一台。運転手は言うまでもない、五陽田である。

 

「むぅ、しつこい……」

 

 スバルと二人っきりの下校に水を差されてシオナの機嫌が急降下を始める。

 

 今度はどんな手で追い返してやろうかと幼馴染が考えている傍ら、これ以上シオナに迷惑を掛けまいとスバルは単独行動を決意した。

 

「ごめん、シオナ。ちょっと用事を思い出したから先に帰ってて」

 

「あ、待っ……」

 

 止める間もなくスバルは走り去ってしまう。その後を追う五陽田inパトカー。

 

 ぽつねんと残されたシオナは心なしかしょぼーんとした雰囲気を背負うのだった。

 

 

 

 

 

 ♒︎

 

 

 

 

 

 シオナside

 

 

 五陽田に、レーダーミサイル、打ち込みたい。海鳴シオナ、心の一句。

 

 発展した電波社会の治安を守るため日夜駆けずり回っているサテラポリス。三作目では大変頼り甲斐のある組織となっていて、その仕事ぶりには頭が下がる。大規模な電波騒動を未然に防ぐために活動しているのも理解しよう。

 

 でもいくら怪しいからって小学生を朝からつけまわすのはほんとどうかと思う。前々からスバルが怪しい動きをしていたのは事実であるし、実際ロックマンの正体は我が幼馴染に相違ないので五陽田警部を一方的に責めることはできないけど、何事にも限度がある。

 

 ゲームでも人の家に押し入るわ、他人のトランサーを覗くわ、いくら警察機関だからって許されること許されないことがあると物申したい。

 

 結論、やっぱり五陽田inパトカーにレーダーミサイル3を打ち込みたい。状態異常でないと当たらない? でぇじょうぶだ、ナックル系カードがある。

 

 とりあえず状態異常にするためにスタンナックルかフリーズナックルでも叩き込もうか。

 

『いつになくシオナの目が本気ですね……先に言っておきますが、あまり効果はないと思いますよ。あのパトカー、見た目以上に頑丈のようですから』

 

 まさかアクエリアスに宥められるとは思わなかった。いつでもどこでも恋する相手を陰からチェイサーする乙女にしては珍しい。

 

『ですので、狙い所は車から降りたところでしょうか。周波数を変えて背後からサクッとやってしまうのがよろしいかと』

 

 訂正、やっぱりアクエリアスはアクエリアスだった。

 

 五陽田警部の尾行を振り切るためスバルが一人で駆け出してしまったあと、私は電波変換してパトカーと必死の追いかけっこをする幼馴染の追跡を始めた。流石に男の子の脚力に生身で追いつく自信はなかったよ。

 

 曲がり角や路地裏を利用して追跡を撒こうとするスバル。その行く先々にパトカーで悠々と先回りする五陽田inパトカー。小学生と大の大人による大人げない追いかけっこはしばらく続く。

 

 いつまでも続くかと思われた追いかけっこは、しかし通りかかった美術館で何やら騒ぎが起きたことで中断を余儀なくされる。

 

「なに……?」

 

 ウェーブロードから見下ろす美術館はあちこちから煙が上がっており、所々外壁が崩れて大勢のお客さんが避難していた。どうやら中で何かが暴れているらしい。

 

「ウイルス……?」

 

『ウイルスにしては気配が妙です。これはむしろ、私達に近い存在……』

 

 私達に近いとなると暴れているのは電波人間ということになる。でもアクエリアスの反応からして相手はFM星人ではなさそうだ。となると考えられる可能性は一つくらいしかない。

 

「ジャミンガー、かな……」

 

 確かあれは電波体に取り憑かれた生身の人間とかいう設定だったはず。それならウイルスではないし、FM星人でもない。

 

 何にせよ、早いところ騒ぎの元凶を抑えなければ被害が拡大しかねない。早いところ元凶を叩こうと美術館に足を向けかけ、ふとスバルの姿を探す。

 

 いつもなら人目につかないところで電波変換して現場に急行している頃なのに一向に現れない。一体どこにいるのかと周辺を見回して、パトカー内に閉じ込められた幼馴染を発見した。恐らく五陽田警部にやられのだろう。

 

「あいつ……」

 

 いよいよもってピッチングマシンの登場かな? それかサテラポリスに通報するべきではないだろうか。五陽田警部もサテラポリス? 知らないよそんなこと。お仲間に逮捕されてしまえばいい。

 

 その五陽田警部は未だ騒ぎの収まらない美術館へと生身で特攻、一般市民の避難を促しつつ内部へと突入していた。一般市民を守ろうとするその姿勢は素晴らしいけど、スバルへの仕打ちを考えて五陽田警部の株は緩やかな下降にしておこう。

 

 ともあれスバルである。このままではみんなのヒーローロックマンが登場できず、挙句スバルがロックマン説が五陽田警部の中で更に有力になりかねない。ここは先にスバルを助けておくべきだろう。

 

 ウェーブロードから適当な建物の陰に降りて電波変換を解除。逃げ惑う人の流れに逆らいつつスバルの閉じ込められたパトカーの元へ向かう。

 

 パトカーは内側からは開けられないようになっているらしい。美術館での騒動を前にどうにか外へ出ようとしているスバルに、ドア越しに声をかける。

 

「スバル……どうしたの?」

 

「シオナ!? どうしてここに……いや、それより開けてほしいんだ!」

 

 私の登場に驚くもスバルは窓を叩き、開けてくれと訴える。

 

 元よりスバルを解放するのが目的なのでさっさとドアを開ける。内側からはロックが掛けられていても外からは容易く開くものでよかった。鍵やパスワードとか必要だったら詰んでいたかもしれない。

 

「ありがとう! シオナも早く避難するんだよ!」

 

 お礼の言葉を残してスバルは足早に美術館方面へと駆けていく。私に怪しまれる心配はしなくていいのかな? それとも幼馴染だから信用し切っているのかもしれない。どちらにせよ五陽田警部に与するなんてありえないから私経由でバレる可能性は皆無だけど。

 

 美術館内にスバルの背が消えるのを見届け、私もすぐに後を追う。勿論、電波変換した状態で。生身で事件現場に突入する勇気はない。

 

 気配を悟られないよう侵入する。途中、何だか見覚えのある三人組の姿を見たような気がしたけど気のせいだ。ちゃんと建物外へ避難できていたようだし、気に留める必要もないだろう。

 

 事件あるところに委員長達が居合わせるのか、それとも委員長達がいるところで事件が起きるのか。だんだん某小学生探偵染みてきたな。

 

 中ではロックマンとよく分からない人型の電波体が交戦していた。ジャミンガーかと思っていたけど違う、フォルムからしてあれはウイルスのバサリカに似ている。

 

『ふむ、どうやら何かの拍子にウイルスと人間が合体してしまったようですね。さしづめウイルス人間といったところでしょうか。あの程度であればロックマンの敵ではないでしょう』

 

「そう……」

 

 アクエリアスの言葉通り、ただ見境なく暴れるだけのウイルス人間はロックマンの手でサクッと倒され、合体していた人間は無事救出された。さすがロックマン、もといスバル。

 

 そこからはいつも通りの流れ。「待てぇい、ロックマン!」と追いかけようとする五陽田警部と厄介事はごめんとばかりに去るロックマン。こっちはこっちで某怪盗三世みたくなってきたな。

 

 私も早いところ戻ろう。一応避難していたようにみせるため、美術館から離れた場所で電波変換を解除して道を戻る。パトカー前ではスバルと五陽田警部が何やら話し込んでいた。

 

「君はロックマンのファンか」とか「追っかけもほどほどにしろ」などと聞こえてきたのでもうスバルが追いかけられることはないかな。何はともあれめでたしめでたしだろう。

 

 離れていくパトカーを呆然と見送るスバル。何やら勝手に納得して帰ってしまった五陽田警部に今後どうすればいいのか分かりかねている様子。

 

 ふむ、仕方ない。ここは幼馴染たる私が一肌脱ごうか。

 

「スバル……」

 

「シオナ? 避難してたんじゃなかったの?」

 

「した……その後、戻ってきた」

 

「戻ってきちゃダメじゃないか。危ないよ」

 

 苦笑まじりにスバルは言う。事件が起きた現場に戻るのは確かに危ない。でもそれを言うなら事件現場に真正面から飛び込んでいくスバルも大概だと思うんだ。

 

 それはさておき、スバルの手を掴む。

 

「スバル、帰ろ……」

 

「……そうだね。ボクも疲れたし、帰ろうか」

 

 私の手を握り返してスバルは頷いた。

 

 その後、道中問題なく私とスバルは二人並んで帰宅するのだった。

 

 

 

 

 

 

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