波動のない勇者 〜魔力ゼロの格闘家、異世界で拳を貫く〜   作:ゆでダコ

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第四話「報酬と誘い」

 

王都の夕暮れは、魔力灯の淡い光に包まれていた。

リュウとガルドは、魔狼討伐を終えてギルドへ戻ってきた。

道中、二人の会話は少なかったが、沈黙の中に奇妙な安定感があった。

 

ギルドの扉をくぐると、受付の女性職員が顔を上げた。

 

「おかえりなさい。討伐任務、無事完了されたようですね」

 

リュウは頷き、魔狼の素材が詰まった袋を差し出す。

牙、毛皮、魔核──すべてが揃っていた。

 

職員は手際よく確認し、報告書に記入する。

 

「魔狼三体、討伐確認。素材も良好です。

報酬は銀貨二十八枚──宿代にして、二週間分に届くかどうか、というところですね」

 

リュウは無言で頷いた。

初任務としては十分。だが、生活の余裕はまだ遠い。

 

職員が報酬袋を差し出す。

 

「では、お二人で分配を──」

 

「いらん」

 

ガルドが短く言った。

職員が目を見開く。

 

「え……?」

 

「報酬は、リュウに渡せ。俺は、戦いを見たかっただけだ。

金で動いたわけじゃない」

 

リュウは少しだけ目を細めた。

 

「……理由は聞かない。だが、礼は言う」

 

ガルドは頷き、斧を背負い直した。

 

「また、どこかで会うだろう。そのときは、背中を預ける」

 

それだけ言って、ギルドを後にした。

 

職員は困惑したようにリュウを見たが、彼は報酬袋を受け取り、静かに礼を言った。

 

「……ありがとう」

 

---

 

ギルドの裏手。

人目のない通路を抜け、ガルドは静かに歩いていた。

その先には、王都の情報局がある。

 

彼は扉を叩き、無言で報告書を差し出す。

 

「魔力ゼロの拳使い。波動と呼ばれる技を使用。

魔狼の魔核を破壊可能。魔力感知個体にも有効。

現時点では脅威なし。ただし、成長の可能性あり」

 

係員は黙って書類を受け取り、頷いた。

 

「報告、確かに。引き続き、接触を継続してください」

 

ガルドは何も言わず、背を向けた。

その瞳には、任務とは別の感情が宿っていた。

 

「……あの拳、ただの力じゃない。何かが、ある」

 

彼はそう呟き、夜の王都へと消えていった。

 

---

 

ギルドの前。

リュウは報酬袋を手に、静かに歩き出そうとしていた。

夕暮れの風が、道着の裾を揺らす。

 

「ねえ、あなた──リュウさん、でしょ?」

 

突然、背後から声がかかった。

振り返ると、そこには一人の少女が立っていた。

 

年の頃は十六、七。

淡い紫のローブに、魔法石をあしらった杖。

長い銀髪が風に揺れ、瞳は鮮やかな青。

 

「……誰だ?」

 

「私はミリア。魔法使い。ギルド所属のCランク冒険者。

あなたの試験、見てたの。魔力ゼロなのに、あの拳──すごかった」

 

リュウは無言で彼女を見つめる。

ミリアは一歩踏み出し、真剣な表情で言った。

 

「私と、パーティを組んでほしいの。

魔法と拳──相性、悪くないと思う」

 

リュウは少しだけ眉をひそめた。

 

「……なぜ、俺を?」

 

「魔法だけじゃ、限界がある。

でも、あなたの拳なら、魔法が通じない相手にも届く。

それに──なんか、面白そうだから」

 

その言葉に、リュウは少しだけ笑った。

 

「……軽い理由だな」

 

「でも、悪い気はしないでしょ?」

 

リュウは拳を握り、空を見上げた。

夕暮れの空が、赤く染まっていた。

 

「……考えておく。明日、また来い」

 

ミリアは笑顔で頷いた。

 

「うん!待ってる!」

 

彼女は軽やかに去っていった。

リュウはその背を見送りながら、拳を見つめた。

 

魔力がない。

だが、拳は通じる。

そして今、拳に興味を持つ者が、少しずつ集まり始めていた。

 

---

 

ギルドから少し離れた路地裏。

ミリアは足を止め、振り返ることなく呟いた。

 

「……あの人……やっぱり、あの“リュウ”だよね……」

 

その声は、誰にも届かないほど小さかった。

だが、確信に近い響きがあった。

 

彼女はそれ以上何も言わず、静かに歩き出した。

その背に、何かを探すような気配が漂っていた。




どっかのタイミングで話数を合体させるかもしれません。このペースだととんでもなく増えそうなので(-_-;)
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