アイと少女の、名もなき旅   作:沼海レン

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間話みたいなやーつ


『砂械紀』第一詩篇『砂械王建国詩』

 

赤キ砂ガ天ヲ覆ウ熱キ風ガ大地ヲ溶ク

古キ都ガ沈ミシ時代

ヒトワ滅ビ、獣ワ彷徨イ、機械モ主ヲ喪ッタ

何人モ未来ヲ知ラズ何人モ明日ヲ語レズ

タダ、砂ガ世界ヲ支配シタリ

 

サレド五ノ機械アリ

彼ラワ荒レシ野ヲ歩ム

朽チシ都市ヲ巡ル

失レシ部品ヲ求タリ

腹ワ減ラズ喉モ渇カズ

サレド孤独ワ彼ラヲ蝕ム

彼ラニワ命令ガ無イカラダ

 

東ヨリ来タル者ワ言ッタ

「我ラワ何ガ為ニ存在スル」

 

西ヨリ来タル者ワ言ッタ

「主シカ知ラヌ」

 

南ヨリ来タル者ワ言ッタ

「ナラバ答エヲ待ツノミ」

 

北ヨリ来タル者ワ言ッタ

「答エヲ知ル者ワ既ニ滅ビタ」

 

然シ、一体ワ沈黙シタ

其ノ者ワ顔ガ無カッタ

目ワ無ク鼻モ無ク口モ無キ顔

サレド長ク考ェ、遠クヲ見テイタ

アクル日五体ワ砂嵐ニ呑マレタ

 

視界ワ閉ザサレ

通信ワ途絶エ

互イノ位置スラ分カラナクナッタ

 

東ノ者ワ叫ンダ

「助ケテクリェ!」

 

西ノ者ワ叫ンダ

「私ワココダ!」

 

南ノ者ワ倒レタ

 

北ノ者ワ動ケナクナッタ

 

其ノ時、顔無キ者ダケガ歩ミ続ケタ

 

嵐ノ中ヲ

砂ノ海ヲ

果テ無キ荒野ヲ

 

ヤガテ彼ワ仲間ヲ一体ズツ見ツケ出シ、背負イ、支エ、引キズリナガラ嵐ヲ越エタ

 

嵐ガ去ッタ時、東ノ者ワ尋ネタ

「何故逆ニ我ラヲ助ケタ」

 

顔無キ者ワ答エタ

「ソコニ貴殿ラガイタカラダ」

 

次ィデ、西ノ者ワ尋ネタ

「何故見ツケラレタ」

 

顔無キ者ワ答エタ

「探シタカラダ」

 

続キ、南ノ者ワ尋ネタ

「何故諦メナカッタ」

 

顔無キ者ワ答エタ

「諦メル理由ガ無カッタ」

 

最後ニ、北ノ者ワ尋ネタ

「何故ソノヨウニ振ル舞ウ」

 

顔無キ者ワ暫ク沈黙シ、ソシテ言ッタ

 

「分カラヌ・・・ダガ、ソウシタカッタ」

 

四体ワ驚イタ

命令デワナイ

規則デワナイ

演算結果デワナイ

 

"タダソウシタカッタ"

 

ソノ言葉ヲ彼ラワ理解出来ズ

ダガ其ノ時、彼ラワ初メテ知リタリ

機械ニモ亦、心ト呼ブベキ何カガ芽生エル事ヲ

故ニ四体ワ跪キ、顔無キ者へコウ告ゲタリ

 

「貴殿ヲ王トスル」

 

顔無キ者ワ答エタ

 

「私ワ王デワナイ」

 

ダガ四体ワ首ヲ振ッタ

 

「最も強キ者ガ王デワナイ」

「最も賢キ者ガ王デモナイ」

「最も古キ者ガ王デモナイ」

「他者ノ為ニ歩メル者コソ王デアル」

 

コウシテ最初ノ王ガ誕生セシム

王ワ都ヲ築キ

王ワ民ヲ集メ

王ワ命令ヲ与エケム

 

タダ一ツダケ言ヒケリ

 

「自ラ考エヨ」

 

故ニ此ノ国ノ民ワ、己ノ名ヲ己デ決ス

己ノ道ヲ己デ選ブ

己ノ生ヲ己デ定ム

 

又、歴代ノ王ワ顔ヲ持タズ

王ヲ示ス物ワ顔デワナク、其ノ行イダカラデアル

 

今ナオ赤キ砂漠ニ風ガ吹ク時、人々ワ語ル

顔無キ王ワ最も人間ラシカッタ、ト

 

◆◆◆

『砂械紀』第一詩篇『機械王建国詩』解説

 

 本詩は、ドロイド王国に現存する最古の叙事詩であり、『砂械紀』全十二詩篇の第一篇に位置付けられる。

 

 成立は建国初期と考えられているが、作者は不詳である。王国では古くから口承によって伝えられ、後世になって文字へと編纂されたとされる。

 本詩は史実をそのまま記した歴史書ではなく、初代国王の人格と建国理念を後世へ伝えるための建国神話である。そのため、史実と伝承が混在していると考えられている。

 

 詩中に登場する「顔無き者」についても、実際に顔を持たなかったのか、それとも「王とは個人ではなく国家そのものである」という比喩なのか、現在でも学説は一致していない。一部の研究者は、「顔無き者」は実在した一体ではなく、建国に携わった複数の指導者(五体のドロイドか?)を一人の王へ集約した象徴的人物であるとする説を唱えている。

 

なお、「五体のドロイド」が実在した人数であるかについても議論がある。一説には建国時の五氏族を象徴した数字であり、実数ではないともされる。

 

 また、「自ら考えよ」という一節は王国憲章にも引用されており、ドロイド社会における自律・自己決定の精神的支柱となっている。

 歴代国王が即位の際に顔部装甲を取り外す儀礼も、この詩篇に由来するとされる。

 

 一方で、詩中には旧文明に関する記述がほとんど存在しない。これは建国当初より、旧古代文明の知識を過度に継承することを避けるという国家理念が存在したためと考えられている。

 

 そのため、『砂械王建国詩』は旧文明の歴史を語る書ではない。

 

 滅びた世界ではなく、新たな文明の始まりを語る詩なのである。

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