アイと少女の、名もなき旅 作:沼海レン
「ふあぁ」
朝日を眺めていると、不意にあくびが漏れた。理由は明白、徹夜して戦い続けたせいで疲労が溜まっているのだ。
「さすがに寝るか」
「はい、睡眠を強く推奨します」
私は武器庫へと入り、寝袋を出して寝る準備を整えていく。
「私が寝てる間に色々と調べておいて。黒錆の人のこととか」
『了解しました。では良い夢を』
「うん、おやすみ」
勝利に酔った感覚のまま、私は武器庫の端で眠りについた。
◆◆◆
その光景には見憶えがあった。
現実の赤い砂漠とは対照的な、白銀の雪原。そして、そのなかに聳え立つ、黒い肌と葉のない枯れ枝が象徴的な、大木。古代人の感覚的に言えば“世界樹“
「ここは、夢の世界か」
その“世界樹“の根本に目を向けると、やはり、夢の世界の少女がポツンと佇んでいた。
「あれは……」
前と同じくワンピース一枚だけの格好だが、前は持っていた赤い果実"リンゴ"を持っていなかった。
「はぁ、やっと来たのね」
そんな華奢な彼女は呆れた面持ちで、その透き通った目でこちらを見ている。この前とは違って私から逃げない。
「今日は逃げないの?」
「逃げる必要が無さそうだもの」
どうやら、私の機嫌を伺っているようだった。
「リンゴは?」
「リンゴ? ああ、腐る前に私が食べたわよ」
「……そう」
せめて夢の中だけでいいから、一度だけでいいから、食べてみたかった。
「ねえ、貴女はさ。なんで旅をしてるの?」
不意に、彼女が質問を投げかけてきた。その唐突で核心を突いた質問に、私の思考は停止した。してしまった。
「……そんなの、分からない」
「何も知らないのね」
その普段通りの彼女の些細な微笑みが、私が無知であることへの嘲笑に見えた。少し、腹立たしい。
「逆に貴女はなんで私を、私の全てを知ってるの? 前言ってた“あの約束“って、“約束の地“って何? 知ってるなら教えてよ!」
彼女の不親切さによるその苛立ちから思わず衝動的になる。
「さぁ……? それを探すのが貴女の役目じゃない?」
「まっ……」
いつの間にか、吹雪が強まっていた。いくら手を伸ばしても、白銀の雪によって視界が白く、淡く、ぼやけていく。
◆◆◆
「……って!」
なんだか感傷的になった私は外を眺めた。
まだ外は薄暗いが、朝日が上りかけているのが見える。どうやら、ほぼ丸一日寝ていたようだ。
「……おはよう」
『おはようございます』
「ん……ねえ、どいて。邪魔だよ」
『申し訳ありません。今どきますね』
アイは何故か私の上にまた乗っており、胸もまた激しく鼓動していた。
「解析はどう? なんか分かった?」
『黒錆の人については詳細は分かりませんでした』
「まあ、それはそうか」
初遭遇して間もないのだから分からなくて当然だ。だが、少なくとも機械獣よりは知的に見えるし、実際に強い。警戒するに越したことはないだろう。
「機械獣の方は?」
『機械獣の群れですが、周辺に大規模な生活巣がある可能性が高いです』
「なんで?」
『機械獣が、古代人の成れの果てだからです』
その言葉に、私はあの廃村での出来事を思い出した。
機械獣である彼らは愛を持っている。その愛は、"ナニカ"が欠けている私を満たしてくれるかもしれない。満たしてくれなくても、何か手がかりになるかもしれない。
「そういえば、そうだった」
『はい。ですから習性として、群れで生活している可能性は高いと推測しました』
「じゃあ行こう。その巣に」
私はそれを聞き、迷いなく即答した。この心の欠落は、何か動いてないとすぐに広がってしまう。そんな気がした。
『主よ、その選択は非常に危険です。安全なルートを提示し……』
「アイ、今までどんだけ危険な目に遭って、ここまで来たと思ってるの。今更だよ」
アイの心配を遮ってまで言い切る私の意見に、アイは深く考えているのか、暫く沈黙した。
『……分かりました。アイは主に従います』
「それに、ここで巣を潰せば旅は安全で快適になると思うよ?」
『たしかに、それもそうですね』
そして、巣へ向かって私たちは砂漠を歩き始めた。
◆◆◆
「あれは……?」
砂に揉まれながら歩いていると、巨大な構造物が沈んでいるのが見えた。長さは最低でも3000mはあるだろう。
『恐らく、あれは太古の戦いで利用されていた主力戦艦のようですが……』
砲塔や堅牢な装甲、上部には艦橋が見える。戦艦としての面影はあるが、長年の風化や錆びの進行で、今はガラクタ同然であった。
「それが、今は機械獣の棲家になってるのか。それにしても数が多い……」
『視認範囲内だけでも100以上の数を確認、未確認個体も含め、300体以上在留していると予測します』
そんなガラクタの家には、それだけの大量の機械獣がいるらしい。 そうして私はレールガン《サンドスネーク》を構え、アイは多目的レーザーを展開した。
「さぁ、アイ。私たちの力を機械獣に見せつけてやろう」
『はい、了解しました』
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本作の良いところは?
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ストーリー
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文体
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雰囲気
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キャラ
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テーマ